イントロダクション “呪われた祝福” ①
なあ、アンタ一人なら……ちょっとした愚痴に付き合ってくれないか?
ん?
ああ、一杯くらい奢ってやるさ。
俺の話を聞いてくれるならな……
▽▽▽▽▽▽▽▽
俺はな……つい一年前まで異世界に居た。
おいおい、そんなツラすんじゃねえよ。
あっ? 酔ってるのかイカれてるのかどっちかだって?
はっ、そいつは自分でも判断に迷うところだが……せっかくの奢りだぜ?
俺が正気かどうかは、グラスの中身を飲み干すまで話を聞いてからにしろよ。
きっかけはよくある……ほら、神の手違いで不慮の事故に……ってヤツさ。
なに?
そんなのがよくあってたまるか?
ククッ 違いない……
まあ、それは置いとこうや。
とにかく俺は異世界に飛ばされた。
テンプレよろしく神さんにチートスキルを貰ってな。
モンスターやら魔人やら魔王やら邪神やら……それはもう景気よくぶっ殺してやったさ。
自慢じゃないが俺の貰ったスキルはハッキリ言って無敵だった。
まさに“神の権能”ってやつだ。
ん? どんなスキルかって?
スキルの名は“死神”……
ズバリ能力は『刈り取る』だ。
……意味不明? ああ、そうだろうな。オレもおんなじ感想だったさ。
だがな……コイツはマジで無敵だった。
“命を刈り取る”のなんか当たり前。どんなヤツでも俺が一撫ですりゃ次の瞬間には死んじまうのさ。
あ? 一撫でする前に攻撃されたらどうすんだって?
もっともな疑問だ。
確かに……異世界にはオリハルコンすら溶かすブレスを吐く炎竜とか、触れると腐り落ちる瘴気を撒き散らす不死の王とかザラに居たからな。
でも大丈夫。
俺のスキルは本当に無敵だったのさ。
千里の先まで見通す炎竜の竜眼も……
全ての真理を見通すノーライフキングの“賢者の目”も……
俺自身の“存在感”を“刈り取って”から近づけば……ヤツらなんにも出来やしなかったぜ?
俺は本当普通に歩いて近づくだけ。
だが、奴らときたら……俺の存在そのものに気付きもしないんだ。
まあ、炎竜の住む山に登ったり不死王の城に忍び込むのは面倒だったが……
いや、魔王城よりは全然簡単だったな。って、そんな事はどうでもいいんだ。
面倒なんで飛ばすが……俺は人類の敵性生物である魔王をサクッと殺して、ついでに魔王の栽培者を名乗る邪神もサクッと……
いや、邪神は流石に強かったわ。
ヤツの邪眼は、存在感を刈り取ったはずの俺でも見つけやがるし、魔法攻撃は俺に刈り取られるからってんで、白兵戦をしかけてくるし……
まあ、とにかく一等面倒な相手だったが……最後はヤツの持ってたスキルを全部刈り取って、ゴブリンより無力な存在にまで落としてやった。
えっ……やり方がエグすぎる?
お前……アイツらが異世界でどんだけ暴れまわってたか知らないくせによく言うぜ。
あっちじゃな、地球の文明圏みたいに、建前でも『基本的人権』を掲げてる様な国なんて一つもありゃしないんだぜ?