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第3章・タクヤ(4)

僕たちが謁見の間に入り込んだとき、そこには見たことのない異形の化け物の姿と、それを取り囲むトルネッタ姫、マイロナ姫、そしてラベルラの三人の姿があった。


なんだ、この化け物は!


第二章のボスである、真の姿を取り戻したべスタロドに似ている雰囲気がある。

こいつが、本来のシナリオでは登場しなかった、バルバレオの真の姿だろうか。


やはり、本来のシナリオとは異なる展開が積もり積もって、このような形で世界に影響を与えてしまったに違いない。


トルネッタ姫は立つこともできない様子だ。

相当なダメージを負っているのだろう。


それなのに、回復役(ヒーラー)のラベルラは動こうとしない。

魔力(MP)がなくなっているのか?


「セロフィアはトルネッタ姫を回復! レアリィは距離を取ってひたすら魔法攻撃!」


「わかりました! 強治魔法(ヘヴィ・ヒール)を使います!」


「新しく習得した魔導炎塊(フレア・スマッシュ)をお見舞してやるわ!」


二人に命令を出した僕は、対悪魔用の被ダメージ軽減スキルを発動させる。


対魔耐性(アンチ・デモンズ)!」


この場にいる皆に、魔法の薄い膜が張られた。

これでバルバレオから受ける攻撃も少しは(やわ)らぐだろう。


「おのれ! 人間どもの数が少し増えたとて!」


トルネッタ姫に襲い掛かろうとしていたバルバレオは、目標を僕に変更したようだ。

僕に向かってまっすぐ駆け寄ってくると、強烈な打撃を繰り出してきた。


「いつっ!」


僕はそのダメージの大きさに驚く。

チート級の装備に身を固めた上に対魔耐性(アンチ・デモンズ)を使用しても、結構なダメージを受けたのだ。

こんなものの直撃を受けたら、一発で瀕死状態だ。


バルバレオはすぐさま僕に向かって拳を振り上げる。


――この速さは、二回行動か!


「くうっ!」


二連撃を受けた僕の体力(HP)は相当削られていた。

三、四発受けたらアウトといったところだろう。


「セロフィアは、敵から攻撃を受けた味方に対して回復を!」


その指示を受けたセロフィアはすぐさま僕に強治魔法(ヘヴィ・ヒール)を僕にかける。


「燃やし尽くしてやるわ! 魔導炎塊(フレア・スマッシュ)!」


レアリィは自分の位置取りに注意しながら、炎の魔法による攻撃スキルで確実なダメージを与えていく。


守備低下(シールド・ブレイク)!」


僕は相手の防御力を下げるスキルを発動開始した。

スキルが発動完了する前に、バルバレオは僕に殴りかかってくる。


「カカカカッ!」


痛い!

今のバルバレオは、僕に集中攻撃を仕掛けてくるようだ。


これもひとつの主人公補正というヤツだろうか。

前世の知識によれば、ボス格の敵はパーティのリーダーを積極的に攻撃する傾向がある、という思考ロジックが組まれている。


この場においては、僕がリーダーの立ち位置であると、バルバレオに認識されたようだ。


守備低下(シールド・ブレイク)が発動完了して、バルバレオの防御力を下げることに成功した。


「マイロナ姫! 君はバルバレオに対してひたすら攻撃を繰り返して!」


どうしたらよいのか分からず、オロオロとした様子を見せていたマイロナ姫だったが、僕の一言を聞いてからバルバレオに突撃していった。


「やあぁぁっ!」


ドムッと衝撃音をさせながら、マイロナ姫はバルバレオに正拳突きを放った。


「カカッ!?」


守備低下(シールド・ブレイク)によって防御力が低下した状態で受けるマイロナ姫の一撃は重かったようで、バルバレオは(ひる)んだ様子を見せる。


次はトルネッタ姫への指示だ。

プレイアブルなキャラではない彼女が、どんな性能でどんなスキルを習得しているのか、僕は知らない。

なので、指示は曖昧なものになった。


「トルネッタ姫は、とにかく高ダメージを与えるスキルを連発して!」


僕の声を聞いたトルネッタ姫は少し迷った様子を見せながらも、攻撃スキルを発動させた。


魔式斬刀デモニック・スライサー!」


本来であれば敵専用のスキルをトルネッタ姫が発動させたことに、僕は驚いた。


なるほど、元々べスタロドの支配下にあったトルネッタ姫だ。

悪魔が使うようなスキルを習得していてもおかしくない。


「さっきから、ピーチクパーチクとやかましい!」


べスタロドは僕に殴りかかってくる。

これまた僕にとっては痛い一撃だが、まだまだ残りの体力(HP)には余裕がある。


強治魔法(ヘヴィ・ヒール)!」


すかさず、セロフィアが僕の体力(HP)を回復させる。


「おのれ人間どもめ……まとめて始末してくれるわ!」


そういうとべスタロドは僕たちの中心に陣取った。


魔式爆撃デモニック・デトネート!」


「くっ!」「うわわっ!」「きゃあっ!」


べスタロドが発動させた範囲攻撃は、打撃時ほどの重いものではないものの、範囲内にいる味方に対して一度にダメージを与えてきた。


この状態を放置するのはマズイ!


僕はラベルラに駆け寄って、魔法回復薬(エーテル)を彼女に使用した。

クリプトの温泉水から作られた、効果量の高い特別版だ。

これで、彼女の魔力(MP)は全快に近い状態になったはずだ。


「ラベルラは、今の一撃を受けたみんなをまとめて回復させて!」


「わ、わかったよ! 広範回復(ワイド・ヒーリング)!」


ラベルラの回復スキルによって、べスタロドの範囲攻撃を受けた味方の体力(HP)はみるみる回復する。

これで、べスタロドの魔式爆撃デモニック・デトネートも怖くない!


魔導炎塊(フレア・スマッシュ)!」「たああっ!」「魔式斬刀デモニック・スライサー!」


レアリィ、マイロナ姫、そしてトルネッタ姫の三人から集中攻撃を受け続けているバルバレオは、明らかに苦しそうな様子を見せていた。


――大丈夫、この勝負には勝てる!


「ていっ!」


僕もバルバレオへの攻撃に参加した。

僕の剣が深々とバルバレオの体に突き刺さる。


「お、おのれっ……!」


バルバレオは僕に向かって腕を振り下ろす。

やっぱりこの攻撃は痛い!

だけど、致命的な一撃とはほど遠い!


強治魔法(ヘヴィ・ヒール)!」


セロフィアは僕の指示通りに、ダメージを負った僕をすぐに回復させてくれる。

だから、バルバレオの攻撃が多少痛くても、大丈夫だ!


「やあぁぁっ!」


僕はバルバレオの胸に向かって手に持った剣をまっすぐに突き立てた。


「……こんなことで、我が計画が……魔王様、申し訳ありません……カカカ……」


僕の一撃がトドメとなって、バルバレオは倒れた。

バルバレオの体は煙とともにその場から雲散霧消(うんさんむしょう)した。


「アタシの力、思い知ったか!」「やりましたね、ラオウール様!」


レアリィとセロフィアが僕に駆け寄ってくる。


前世では知ることのなかったバルバレオの真の姿であったけれど、僕たちの力を合わせることで無事に討伐することができた!


僕たち三人は手を取り合って喜んでいた。


「よく頑張ったね。大丈夫かい?」


僕は手近なマイロナ姫に声をかけながら、頭の上にポンと手を置いた。


「……はい、大丈夫です……」


マイロナ姫は僕の目をまっすぐに見上げながら、小さな声で答えた。


「九死に一生を得たね……トルネッタ。無事かい?」


ラベルラがトルネッタ姫に近寄る。

トルネッタ姫は(うつむ)いたまま、立ち尽くしていた。


「お怪我はありませんか? トルネッタ姫」


僕もトルネッタ姫に近寄って、手を差し伸べる。


「……助かりました」


トルネッタ姫はその一言だけを口にすると、僕とは視線を合わせようとせず、僕の手を取ろうともしなかった。


彼女は僕と同じで、この世界の知識を持った転生者のはずだ。

自分の思い通りの展開とならなかったことに、どんな思いを巡らしているのだろうか?


「お主たち、よくやったのう! ホッホッホ!」


どこから現れたのか、霊媒師(シャーマン)のデュレクトが僕たちに混ざって笑い声をあげていた。


――これで、ここでのイベントは本来の形を取り戻すに違いない!


正念場を無事に乗り切ったことで、僕の心の中は喜びに満ち溢れていた

お読みいただきありがとうございました。

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