お昼のベンチ
サチ
(あれから何をしても、集中力が持たない、、、すぐにあの光景が浮かぶ、、、とても嫌な気持ちになる、どうしても我慢できない、誰かに相談したい、、、。)
そんな思いでトモコに電話をした。
サチ
「あっ、もしもしトモコ?今大丈夫、、、うん、その、、、昼間はごめんない、、、うん、、ありがとう、、、それでね、トモコに言われて考えたの、、、うん、、、その後キャンパスの門で彼を見かけて、、、うん、、、そう、、、彼、、、女の人一緒に歩いてた、、、うん、、ぐっすん、、うん、、わたし彼が好き、、、」
そう言うとサチはしばら泣いていた。
ひとしきり泣いた後、トモコが助言をしてくれ電話を切った。
まずは鏡を見ろ?自信が付いたらタダノ君に質問しろ、、、?言われるがままにまずは鏡を見る。
いつも変わらない顔、自分で言うと恥ずかしくなるけど、整った顔出しをしている、、、。
そうか!だから自信なんだ!ありがとうトモコ!
次の日、お昼にキャンパスのベンチで本を読んでいるノリヒトを見つけて声をかける。
サチ
「こんにちわ、タダノさん!」
ノリヒト
「やぁ〜海野さんこんにちわ!」
サチ
「なに読んでるんですか?」
ノリヒト
「あ、、、これ?妹が少しは恋愛物も読めってうるさくてね、、、」
サチ
「へぇ〜妹さんが、、、。」
そう言いながら、サチは表紙を覗き込む、、、。
シェークスピア、ロミオとジュリエット。
そう書いてあった。
サチ
「随分古い小説ですね〜。」
そう言いながらノリヒト隣に座る。
ノリヒト
「えっ!そうなの?あいつ、、、ところで何かようかい?」
サチ
「なんでですか?」
ノリヒト
「ほら、珍しいじゃん!海野さんが声掛けてくれるなんて。」
サチ
「まぁ〜ちょっと気になる事がありまして〜その、、、質問いいですか?」
普段絶対に男に見せないとびっきりの笑顔で言う。
ノリヒト
「僕が答えれることなら、、、。」
ノリヒトは思わず目をそらす、、、。
サチは勝機を感じて、ここぞとばかりに、
授業の質問をする。
案の定ノリヒトは嬉しそうに、質問の答えを丁寧に答えてくれる。
ひとしきり質問を答えてもらうと、ノリヒトの警戒心がかなり取れたのか、真っ直ぐ目を見て話してくれるようになった。
サチ
(なんだ、この人、私に照れてただけだったんだ、、、。)
そう思うと、ものすごく嬉しくなった。
次第に会話の流れが途切れ途切れになる。
この辺が潮時と判断して最後に、、、
サチ
「そういえば、昨日タダノさんを門で見かけたのですが、、、女性の方と一緒でしたね、彼女?ですか?」
不安を感じながらも思い切って聞いてみた、、、。
ノリヒト
「あ、、、あの子は妹だよ、、、。」
サチ
「えっ、そうなんですか?」
思わずガッツポーズをしそうになるがなんとか堪えた、それと同時に疑問も、、、。
サチ
「でも、あまり、、、。」
思わず声に出してしまう、、、。
ノリヒト
「似てないだろ?」
サチ
「あっ、はい可愛い子でしたけど、、、。」
ノリヒト
「実は血は繋がって無いんだ、そもそも正式な妹でも無い、、、。
俺は児童養護施設で育ったんだ、、、。」
返す言葉を失った。
なんて返せば、そう考えていたら、、、。
ノリヒト
「そんな顔しなくて良いよ!気にして無いから」
ノリヒトが苦笑いをして言う。
サチ
「ごめんなさい、、、返す言葉に戸惑ってしまいました。」
サチは素直に謝った。
ノリヒト
「きみ面白いね!」
ノリヒトは無邪気な笑顔で言う。
ノリヒト
「だから施設の子供達は、みんな兄弟!兄貴だったり、姉貴だったり、弟だって、妹だっている。」
そう言っている、ノリヒトの顔見て思わず笑顔がこぼれて、、、。
ノリヒト
「タダノさんは素敵な人ですね、、、。」
サチは無意識に言葉にしていた。