第九話:時戻しはロマンの塊
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香熾さんについて行って10分。今俺たちは地下二階のすごそうな治療室の外に来ています。周りがもうなんだかS〇P財団のような感じである。そして肝心の相棒なのだが、
「あの、中で椅子のところにいる人が千楽寺隊長ですか?」
「ええ、そうよ。あそこにいるのは正真正銘千楽寺君よ」
リクライニングチェアのような椅子に横たわっていた。そしてその横には彼を介抱していると思われる女性がいた。その女性はこちらがいることに気づいたのかこちらにやってきた。扉から出てきた彼女は深々と例をしながらご挨拶をした。
「東雲さんお久しぶりです。また特別殲滅部隊のお二人は初めまして。私の名前は朱鷺香純といいます。医療班に所属している看護長の一人です」
落ち着いた雰囲気の彼女は綽綽としていてとても引き込まれそうな声をしている。また背丈はやや小さくセミロングの髪からはほのかにいい香りがしてきた。
「初めまして俺の名前は鷹島春久って言います」
「あたしは墨坪凉よ。凉って呼んでね!」
「・・・それで今はあなた以外の看護師はいないのかしら?」
香熾さんは少し不愛想に朱鷺さんに聞いた。いつもは流麗でお淑やかなイメージのある香熾さんの珍しい感情が見えたような気がした。
「そうですね。今は千楽寺秋くんの専属の看護師をしています」
「?千楽寺秋君?それって千楽寺隊長のことですか?」
「はい。そうですよ」
「あれ、でも確か相棒はアケツミって名前だった気がするんですが、」
そんな名前だっけなんて思っていると香熾さんが説明をしてくれた。
「あなたたちはここにきてまだ一年も経ってないからまだ話していなかったのだけれども千楽寺君の本当の名前は千楽寺秋と言うの。ただ事情があってアケツミと名乗っているのよ」
「ではなんでいまはそのような名前で生活をしているのですか」
単に好奇心からなのかとても気になってしまった。それと同時になぜか聞いてはいけないような気もしてしまった。墨坪も俺と同じようなことを考えてそうな顔をしていた。
「それは秋くんに直接聞いたほうがいいと思いますよ」
「!香純、あなた千楽寺くんから言わせる気なのですか。あのことはあとで私のほうから伝えときます」
「それでも私は彼の口から伝えるべきだと思います。それが今でなくても、この先背中を預けることになる大切な仲間にはね」
香熾さんは”それでも・・・”と何か言いたそうにしていたが口を閉じて肩を少し落とした。
墨坪はこの空気に耐えられなかったのか話題を変えに来た。
「そういえば香純ちゃんはどうやって千楽寺隊長を直したんですか。たしかとんでもなく血が流れてきてたと思うのですが」
「・・・まぁ能力を使って回復させたのだけよ。私は時間を巻き戻すことができるの。これで一日前に体の状態を巻き戻しただけよ」
香純ちゃん呼びに困惑しつつ答えてくれた。時戻しは、俺の住んでいた村のおじさんも同じ能力を持っていたし、当時はうらやましいなぁなんて思っていた。壊れてしまったランドセルなんかを直してもらったものだな。
「時戻しはロマンが詰まった能力ですよ!朱鷺さん。どのくらい前まで時間を巻き戻せるのですか?」
「今は1年が限界です。昔は五秒くらいしか戻せなかったのですが、いろんな人たちの役に立ちたいと思い、頑張って特訓したのですよ」
そう言ってにこやかな笑顔をした。その後も朱鷺さんたちとたわいもない話をして今日は解散となった。
ーーー
自室に帰ってくると玄関に刀が置いてあった。誰が持ち運んでくれたのだろうか?もう俺の部屋誰かれ構わず入られている気がする。そんなことを思っていると、テツテツが話しかけてきた。
「小僧、大丈夫だったか。倒れてしまってからしばらく動いていなかったからな。一応少しは心配したのだぞ」
「ああ、平気だよ。特にもうどこも痛くないし、もう訓練できそうなくらい元気だよ」
「そりゃあよかったな。」
口調はいつも通りだが、でも確かに心配していそうな雰囲気が刀から漂ってくる。
「というかなんか部屋からおいしそうな匂いがするんですが。」
『誰かが不法侵入して料理をしているだと!。今はとてもお腹がすいているから有難いと言えば有難いが・・・この場合はひとまず連絡すべきか?いや、山風指揮官に伝えるべきか?でもそんなこと伝えられても困ってしまいそうだな。とりあえず護身用に刀を持っておくか』
鞘から刀身を引き抜き、恐る恐る廊下を歩いてキッチンのある所の角までやってきた。
『よし、テツテツ。3,2,1,の合図で行くぞ』
そう伝えると刀が呼応するように持ち手が熱くなった。
「3,2,1,突撃!!!~」
叫んでキッチンに行くとそこには見知った顔の人がいた。
「キャーーーーーー。何ですかいきなり。そんな物騒なものをもって、私を食べる気ですか~~~~」
「なんでいるんですか。泉野さん」
かわいいエプロンをして泉野さんが料理を作っていた。刀で脅かされたせいか今にも泣きそうな顔をして怯え散らかしていた。
「落ち着いてください。刀は納めますから。とりあえずなんで俺の部屋にいるのかお聞きしてもよろしいですか。一応ここ女性禁制の場所なんですけど」
「すみません。私としたことがこうなることは何となく予想できたはずなんですけど。それでなぜここにいるのかですよね」
「はい」
「それは院長と鷹島さんの指揮官のほうから言われてきたんですよ。『きっと無茶をしてあばらが折れちまうわ』なんて言っていました。なので本日は私が直々に料理を作りに来た所存ですよ」
そう言い切ると無い胸を張って、ムフーという感じでこちらを見てきた。
「そういう事情でしたか。わかりました。それで晩御飯に何を作ってくれたんですか?もう昼から果物以外食べてなくてお腹が超すいているんですが」
「焦らないでください。きちんと用意、してますから。とりあえずお風呂にでも入ってきたらどうですか」
そう催促されて俺はお風呂に向かって行った。
『あれ?特に考えずにお風呂に入ってしまったが、今この状況かなりアウトに近いのでは?付き合ってもいない男女が同じ部屋に存在していて俺は服を置いてきてしまっている。というか泉野さんとは今日初めて会っているよな、俺?。もしかして向こうがそういうところが抜けているだけなのか?』
湯船につかって悶々と考えていると扉越しに泉野さんの声が聞こえてきた。
「お湯加減とかは大丈夫ですか。鷹島さん。脱衣所にお着替えを用意しておきますので上がったらこれを着てください」
「大丈夫ですよ。ありがとうございます」
なぜ俺の服の収納ケースが分かったのかはさておいて感謝の旨を伝えると泉野さんはその場を離れていった。あれもしかしなくて泉野さんはとても献身的な方なのでは?そんなことを思い、俺は少ししてからお風呂から上がった。
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お風呂から上がりリビングに行くと食卓にはおいしそうな料理が並んであった。
白米に味噌汁、ちょっとボリュームのある白菜の漬物に、焼き鮭が置いてあった。しかも二人前
「すごくおいしそうですね。泉野さんは料理もできるんですか?」
「当たり前です。立派な看護師になるために磨いてきたスキルなんですよ。・・・まぁあまり使う機会もないですけど。それでも今でもこうした機会のために研鑽を積んでいるのですよ。ではいただきましょうか」
「はい。それではいただきます」
そう言って初めに味噌汁を一啜りすると、とてもまろやかで心が温まる味がした。これはいいお嫁さんになりそうだ。
「お味噌がいい味を出していておいしいです」
「ありがとうございます!。ここにあったお味噌ですけどね」
次に焼き鮭を箸で分けてから食べた。焼き加減も申し分なくいい塩加減である。白米が3杯くらい行けそうだな。
「この鮭はどうやって焼いているんですか?焦げ具合が最高です」
「普通にグリルで焼いているだけですよ」
ふふふと泉野さんが笑っている。
極み付けに白菜の漬物を食べると、ちょうどいい具合の味付けであった。
「旅館の夕飯にで出来てもおかしくないくらいのクオリティーですね」
「もうそんなに褒めても何もで出来ませんよ。鷹島さんは褒め上手ですね」
泉野さんは顔から零れ落ちそうなくらい笑顔が溢れていた。
総括:最高のひと時であった。
「最高の晩御飯でございました。今後も作ってはもらえないでしょうか」
「ふふ、だめです。また今度の時に、ロマンチックな誘い方をしてくださいね」
まぁ予想はしていたけれども・・・でもとても幸せな時間ではあった。
「それでは御飯も食べ終わりましたし、食器も洗って片付けましたので、私はこの辺で帰ります。鷹島さん、先ほども言いましたがあまり無理はなさらないでくださいね。あと私のことは乃々葉と呼んでくださってもいいですよ・・。それではおやすみなさい」
そう言い残すと、泉野さんは風のように帰って行った。家には仄かに芳香剤のにおいが充満していた。




