第四話:初任務の敵は猫ですか?
訓練が始まり約一か月。あの時(小さいころ)レクチャーしてくれた隊長のあの動きは洗練された動きで一挙手一投足が正確だったことを思い出し、改善する余地はまだまだありそうだと悟った。
「だいぶ慣れてはきたけど、まだまだ疲れるな。このために結構体力作りとかしてたんだけどな」
もともと体力はあるほうではあったが思いのほか辛すぎて最初のほうは教官に何度も教育という愛の鞭を食らっていた。幾度もの逃走を図ったが、仲間と思っていたほかの隊員に内部告発され、追加メニューを強いてきた。
「それにしてもこの一か月でよくついてこれるようになったな!春久!」
「だな。初めのほうはいつも逃げ出そうと考えているのが見えていたからな。しっかりと性根を叩き直せてよかったな。鷹島」
おおらかに笑うこの二人は、最近訓練をサポートしてくれているベテラン隊員である。
熱血を体現したような男は 菊池太陽といい、面倒見がいい黄弾の先輩。
冷静沈着だが内なる闘志を秘めている男は 桜恭輔といい、仲間思いの黄弾の先輩。俺とは違う部隊に所属しているが訓練自体は全員共通なのでよく面倒を見てもらってし、俺が入隊してから何かと眼をかけてもらっているのでとてもありがたいと思っている。
そんな俺たちは今食堂で一緒にご飯を食べていた。今日のご飯は日替わりの焼き鮭であった。
「そういえば、さっき訓練ありがとうございます。菊池さん、桜さん。俺一人だったら逃げてましたよ」
「なはは、何を言ってる逃げ出そうとしてたじゃないか。で、いつも恭輔に思考を読まれて捕まっているのにな。」
「テレパシーの前ではどんなことだってお見通しだぜ。特に春久の考えていることなんて丸わかりだからな」
桜さんが髪をなびかせて眼鏡をクイクイとしてこちらに見せてきた。一見インテリっぽい風貌であるがそんなことはなくゴリゴリに武闘派のほうでもある。そして三人で他愛もないことを談笑をしていると向こうから墨坪が不服そうやってきて言う。
「桜さんのその能力ちょっとずるくないですか。あたしも何度か考えてること、読まれたことがあるけどその、乙女の心を読むなんて恥ずかしくないんですか。」
「まったくだな。ここにいる女性隊員の心はみんな読んできたぜ。おとなしそうにしている子が内心あんなことやこんなことを考えてるなんてあの時は思いもしなかったな。まぁここにいる隊員たちの思考は大体読んできたな」
墨坪は何を読まれたのか俺にはわからないがなんか少し恥ずかしそうにもしていたが桜さんは満面の笑みであまり気にしてない感じであった。この男、実は欲望まみれなのではないのか。墨坪は一目でわかるくらい引いていた。
「そういえば恭輔、お前アケツミの思考は読めなかったんじゃなかったっけ?」
「ああ、そうだな。アイツの内心はよくわかんなかったな。脳内が霧に囲まれたように何も見えなかったしな」
さすがは事象改変。ジャミングくらい朝飯前なのだろう。食べながら小休憩していると基地内に放送がかかった。誰かと思ったら山風指揮官であった。
「特別殲滅部隊はただちに作戦本部室に来るように。以上」
山風指揮官は淡々と告げてそのまま内線を切った。すると菊池が言う。
「おっ、ようやく任務に駆り出されるな。はじめての任務だからそこまで難しくはないと思う。俺ラン時もそうだったよな?」
「確かにな。まあ、あれが優しかったかって言うとわからんがな・・・」
二人は顔を見合わせながらなんかありげな顔で話していた。とりあえずこの話はまた今度でも聞いておこうかな。
「緊張してたけどそれなら安心ですね。」
墨坪は安堵したようで息を零した。
「それでは行ってきますね」
そういって俺と墨坪は作戦本部室に移動した。
■■■
作戦本部室は多くのオペレーターが東奔西走していた。すると苦い顔をしながら山風指揮官が言う。
「遅かったじゃないか。こっちはお前たちが来るまで大変だったんだからな」
「すいません。春久君が途中で刀を取りに帰ったり、トイレに行ったりしておくれたんですよ。」
「おい!。何言ってんだよ確かに取りに帰ったり、トイレしていったけど墨坪だって思い出したかのように言ってたじゃん!」
「ぁ、あたしはいいんだよ。女の子だもん。仕方ないじゃん。そんなことも許容できないなんてもてないよ!」
お互い罪を擦り付けるように言い合っていると隊長たちが、
「そのくらいにしないか。二人とも。今は言い争ってる場合じゃないぞ。そんなことをしているうちに事態はどんどん悪化する」
「そうね。早いとここの件をかたずけましょうね。」
「では早速だが、今から君たちには城ヶ島のほうまで行ってもらう」
「どうしてそこに行くんですか?」
墨坪が気になったのかそう尋ねると、
「今回の任務は増殖した野良猫の捕獲だ」
「猫の捕獲ですか?。なぜそんなことをするのですか」
猫なんて無害なかわいい愛玩動物なのになんて思っていると、
「この猫にはとある寄生虫みたいなものが寄生していて、そいつが悪さをしているんだよ。今までにも何度か同じ事態が起こっているんだが、今回は少し今までとは違っていてな。猫に触ってしまった人に寄生をして、体内から細胞を破壊していってるそうなんだ」
すると墨坪がおびえた顔で
「え、そんな怖いことが起こっているのに私たちが何とかするのですか。もっと任務に慣れている人たちのほうがいいんじゃないでしょうか」
「そうだな。本来なら君たちのやる任務ではない。しかし今後もっと危険な任務や作戦が行われる時が来る。そのため、こうして新人隊員は初めての任務はハードなものをやらせているんだ」
おぞましいことこの上ないと思っていると、山風指揮官は続けて言う。
「すまない。少し脱線した。説明の続きをいうと、寄生虫がとりついている猫の特徴は普通の猫の大きさよりおおきく猫又のようにしっぽが二つあるそうだ。まぁ特徴はそんな感じだ」
「肝心の捕獲はどうするんだ。触ってしまうと寄生されてしまうのだろう。それとも何か策があるのですか」
どうやって捕まえるのだろうと思い、そう尋ねると隊長が答えた。
「技術員の人たちが特製の手袋を作ってくれている。これには、転送装置が付いていてこちらの施設に送られてくる」
「なるほど~。それなら少しは安全ですね」
墨坪はそう言って落ち着いたような表情をした。
「それでは輸送用のヘリを出すから頑張っていってこい」
そういわれ俺たちは各々気を引き締めてヘリポートへ向かった。
先のことを考えてタグを少しいじりました。また変えるかもしれません……。不慣れなものですいません。
今後とも読んで下さると幸いです。




