第四十四話:瀬戸内決戦②
どうも井中です。私事で小説を書くペースがかなり削られてしまって投稿がかなり遅れてしまっています。これから先もこのようなことも続く可能性がありますがなるべくこれまで通りに投稿できるように頑張ります。いつもご愛読して下さってありがとうございます。これからも読んでくださると幸いです。
追記:過不足分を付け足したました。読んでくださるとうれしいです。
はらはらとひれだったものが舞い降りてきては塵になって消えてゆく。大きな陽の影となってあたしたちの前に颯爽と現れた春久君は振り向き、笑顔で話す。
「大丈夫だったか?。そんな眼に涙を浮かべて。そんなに俺と再会したのが嬉しいのか?」
ハハハとおおらかに笑う姿がとても印象的であった。
「とりあえずそこの建物に入るぞ。立てそうか?」
伸ばしてくる手をあたしは取り立ち上がる。その足は少し震えていた。春久君はそのまま早波さんの手を引っ張り立たせてあげていた。
「大丈夫ですか?。えっとお名前を聞いてもいいですか?」
「ありがとうございます。私は早波ユリカと言います。ごめんなさいこんなお姿を見せてしまって」
「俺は全然気にしていないので泣けるときに泣いていいと思いますよ」
「!。ふふ。あなたはなんだか変な人ですね。」
「そうですかね。・・・とりあえずいったん建物内に避難しましょう」
春久君は一度振り向き、巨大なマルシーズの様子を見てからあたしたちと一緒に基地の中に再び入りこんだ。
避難してから一息ついたころ。あたしたちはここまでのことを思い返して、事の顛末を春久君に軽く話した。
「・・・て事があって、今あたしたちはここにいるってわけ」
「なるほどね。・・・ああ、そういうことか。ははは」
長々と話を聞きながら、何か自分の中で納得がいったのか笑みを浮かべながら自己解決していた。早波さんは何がなんやらわからない様子で春久君に質問をする。
「えっと。すみません。何かわかったのですか?。」
「あ、いや。大した事ではないんですが、その俺はこっちに来るときにとある人の能力で瞬間移動をしてここまで飛んできたんですけど。そのワープの仕組みが、最初に頭の中で思いついた人のとこにワープする仕組みだったから。」
「ああ~なるほどね。鷹島君は初めに墨坪さんが思いついたわけなんだね。」
「自分でも無意識だったみたいで。少し恥ずかしいですね」
早波さんはにやにやした顔を向けながら、春久君は顔を赤らめながら照れくさそうに言っていた。そんな顔を見ていると早波さんはあたしの方にも顔を向けて一言言った。
「墨坪さんのことを想ってここまで来たんだって」
意地悪そうな顔で早波さんが言う。あたしもさすがに意味は分かり、頭の中でどんな感じでここまで来たのかイメージをすると思いのほか少し気恥ずかしくなり、顔が熱くなるのを感じた。前に付き合っていたらしいからね。
「ま、まぁもういいんです。とりあえずやられそうなところを助けられたのでそれでいいです。それよりこの後ですよ。さっき見た感じあの大きな体で水上にいるとなると俺は手出ししにくいです。なんかいい方法とかありますか」
恥ずかしさが限界に達した春久君は話の話題をそらすために別の話題をかぶせてくる。ついでにあたしも乗り気で首を縦に振った。
「確かにこのままここにいてはいずれやられてしまいますからね。それに巨大なマルシーズがもう一体いたことを知らせないといけませんから。ひとまず私は上に報告してきます」
そそくさと懐からケータイを取り出して急いで連絡を掛けようとしていた。
「ありがとう…ございます。俺たちは報告を待っている間に偵察するぞ」
「うん。早波さん。よろしくお願いしますね」
あたしはそう言い残して春久君について行った。
ーーーーー
呉基地の屋上にてあたしたちは双眼鏡片手にマルシーズを確認していた。
「何か変化はあったか?」
「いや何も変化はなさそ。でもさっきからあたりを見渡してきょろきょろしている感じ。春久君に切られたとこも直っていないようだし」
「オッケー。了解した。あ、そういえば相棒とか香熾さんとか今どこにいるんだ?」
「千楽寺隊長は四国の方で戦っていて、東雲副隊長は詳しくはわからないけどもう一体の方で戦っていると思うよ。いきなりどうしてそんなことを聞いてくるの?」
「いや。俺がいなくて寂しいとか思ってくれてないかなぁーって」
「え、ちょっときもいんですけど」
「は?。おい。きもいってなんだよ!。べ、別にそんな風に考えてもいいだろ。しばらく会えなくて俺は少し寂しかったし」
「へぇ~。意外とハートがよわよわなんだねw」
「悪かったな。ほら集中してみていろ」
春久君は怪訝そうな顔をあたしに見せた後、双眼鏡に眼をやる。あたしはそれを横目で見ながら少し笑い声が漏れる。なぜだろうか。春久君と他愛もない話をしているとなんだか久しぶりに心が少し軽くなるような感覚があたしの内側から溢れてきていた。
「おい。何ぼーっとしているんだよ。ちょっと聞いているのか?」
え、あはい。ごめん。ちょっと考え事してた」
「まったく。そういうとこは変わんないな」
春久君はそう言って不意にあたしの頭をなでてきていた。それになんだか撫で方が少し手馴れていてついイラっと来てしまい、春久君に小言を言った。
「ちょっと。いきなり何するのよ。髪がぐしゃぐしゃになるでしょ」
あたしはそう言いつつも崩れてない髪を整える。すると春久君はちょっと驚いた後にほんのり悲しそうな顔で謝った。
「それで、俺今から下に行って小さいやつを片付けてくるから」
「え、小さいやつ?」
「そうだよ。さっきお前がぼーっとしてる間に送り込まれてきていたからその一掃だよ。それじゃ行ってくる」
「あ、ちょっと…」
あたしが言いかけるときにはすでにそこに姿はなく、ただもっていかなかった双眼鏡だけが残されていた。
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墨坪たちが呉基地に着く数時間前。
東雲香熾は目には焦りが出てきていた。巨大なマルシーズに対して封印を使いながら応戦をしていたが今までの個体とは明らかにスペックが異なり多種多様な技に翻弄をされていた。そして彼女自身も戦いながら悟っていた。今の能力の限界が近いことを。
「東雲さん!。ブレスが飛んできます。こちらに」
「えっ!」
そのまま差し出された手を取ると強く引っ張られ、戦車の後ろの陰に身を隠す。ほかの隊員も同様に隠れ、飛んできたブレスの攻撃にじっと忍び耐えていた。
「あ、あつい…」
ブレスの攻撃は断熱装甲すらも凌駕するほどの熱量であり、冷たかった装甲が今やアツアツの砂漠にいるかの如く熱くなっていた。
「大丈夫ですか?」
「ええ。この攻撃が終わりましたら能力で封印を試みます」
その顔に見合わないブレスは体感数分続き、断熱の装甲が溶け始めていたが息切れを起こしたのか口からブレスが途切れた。私はその瞬間まで耐え忍び戦車から飛び出し、腕を掲げ能力の準備をした。そして口ずさむ。
「シーリングっ!」
いつも通りにそう唱えると指の先から強烈な痛みが全身を通う。まるで雷に当たったかのような激痛が眼から体中に伝播していく。
「東雲さん!」
視界がぐらつき、私はその場に崩れ落ちそうになったが近くにいた隊員がとっさに私のことを抱え込む。首を動かす余裕すらなく、ぼやける視界の中その青年には似つかわない声が響いてくる。
「お前ら!。援護をしろ!。この場から注意をそらせ」
声に反応した散らばっている隊員は了解という合図とともに戦車乗りの人たちは道に沿って左右に分散し、マルシーズを包囲するように動き、私を背負う隊員はそのまま前線から去るように後ろに後退した。
前線から一度離れ、その人は建物の物陰に私をおろしておもむろに医療キットを取り出して手当てをしようと中から謎の小さな瓶と注射器を手際よく準備をして私の腕に迷いなく差し込んだ。そのひっしそうな顔を眺めることしかできない私は少し不甲斐ないと感じた。
「うっ!」
差し込まれたところから血管を通って液体が流れている。差し込まれた瞬間、痛みが走ったが全身にいきわたるころには先ほどまでぐらついていた視界が元に戻ってきた。
「今特殊の鎮痛剤を撃ちました。能力痛に効くやつです」
「ありがとうございます。かなり良くなりました。あのはじめて聞いたのですが能力痛とは何ですか」
私はその聞きなれない言葉を頭の中で反芻し何となく予想建てしながら隊員に聞くと案の定な答えが早々と帰ってきた。少し驚いた表情で。
「え、東雲さん知らないのですか!。あの東雲さんが!?。では僕が教えましょう。能力痛とは能力者が能力を酷使しすぎて身体の筋肉が限界を超えて痛み出してしまう症状です。治療法は今のような鎮痛剤を投与するか、自然と収まるのを待つか治癒の能力者に頼むかの三択しか今はありません。」
「なるほど、そうでしたのね。お恥ずかしながら私そこまで能力を使ってきませんでしたので、そのような症状があることを知りませんでした」
概ね予想通りの回答に知らなかったと答えた私は少し意地悪なのだろうか。そんなことを心の中で思いながら答えた。
「勉強になったのでしたらうれしいです」
まぶしいような笑みを見せつけられながらそう答える。ちょっと離れたところから轟音と悲鳴が聞こえてきていた。私はその音に反応をし再び向こう落としていると隊員がさっと私を抱きとめるように制止する。
「ちょっと待ってください!。待ってくださいって。そんな音に反応するような猫みたいなことをしないでください。」
「なんですか。行かなければ皆さんが……」
「ほんとに待ってください。落ち着いて僕の聞いてください」
「ですが…」
「いいですか。気づいていますか。あのマルシーズの弱点を。あれを攻撃しなければ絶対に倒せないんです」
「え?。どういうことなんですか」
戸惑いながらそう聞くと簡素な答えが返ってきた。
「単純です。足を切ればいいんです」
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『足を切ればいいんです』
さっき聞いたことが頭の四隅で残り続けていた。私の中で一つの方法がちらついていたがその解決法はあまりにも望み薄でなかったことにした。
そして私は先ほど聞いた一つの連絡からただいま一つの作戦を確かめるために再びマルシーズに立ち向かっていた。
「いいですか。皆さん。今から絶対に脚だけ狙わないでください」
すべての人に伝えるように私はそう無線を使って伝えた。頭の中で想像している仮説が正しければきっとうまくいく。そう思えてちょっと不敵に笑みがこぼれる。そして私は頼れる大切な人に電話を掛ける。
冷たい風が吹き荒れる中、熱い砲撃の熱のせいで私の顔には汗が流れていた。
「聞こえてますか。千楽寺さん。いえ、秋君」




