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第四十三話:瀬戸内決戦①

どうも井中です。本当にすみません。うまくまとまるようにして書こうとしていたら時間が結構かかってしまいました。また修正すべきとこがあれば教えていただけると幸いです。今回は少し長めですので時間があるときに読んでいただけると幸いです。

・・・あたしが手をかざして巨大なマルシーズに対して能力を発動したが案の定といったところかやはりといったところか、そのすべての身体が入りきるわけがなく残念ながら胸の一部しか入りきらなかった。


「うう、だめです。やってみたんですけどうまく体が全部入り切りません」


「何!?。このまま奴の周りを動けるだけ動くからもっと角度を変えて狙ってみてくれ」


「ごめんなさい。お手数ですがよろしくお願いします」


戦トラはゴウンゴウンと豪快に音を出しながら旋回して別地点へ向かう。あたしは感謝をしつつ先ほどの胸のあたりを見た。能力を食らったはずの奴は普通に目からビームを出したり、足払いしていて微塵も能力が利いている様子はなかった。


「あの、やっぱりこのサイズを足止めするのは厳しいような気がします。もう少し後ろに下がることが出来ますか?」


「う~ん。そうだな。これ以上下がるとあのマルシーズは視認できなくなるぞ。たしか墨坪さんの能力は視認しないと発動しないんだったよね」


「そうですね。でもできるだけ…ううん全力でやれるだけやってみます!」


そう息巻いてあたしは再び手をかざして準備する。動く左の腕を枠内に収める。


「うまくいけばそのまま動かなくなると思うのですが…今度は腕辺りをやってみます。」


「わかった。動かなくなったら俺も主砲から撃って援護をするから頼むぞ」


名まえもまだ知らないが主砲から安心する声が聞こえ、その声に背中を押され能力を発動する。今度は先ほどの不発の時とは違い、能力を使ったときに起こる体中の細胞が震えがあった。その後すぐ腕に目をやると動きが止まったのが見え、横から轟音と共に砲弾が放たれる音が聞こえた。


その後止まっている間に立て続けに多方向から腕に向かって砲弾が当たっていくのが見えた。ちゃんと効果があるのはわかったが他の部位は当然のように動いており、固定されている腕をかばうようにもう片方の腕で振り払ったり、その場で身をよじっていた。


あたしの能力を初めて見た戦トラの人たちは中から驚いたような声を出していた。砲手の人も随分と驚いたのかびっくりしてあたしに話しかけてきた。


「初めて見た能力だがいい能力だな」


「あ、ありがとうございます」


「もう片方の腕も行けるか?」


「えっとそれは少し厳しいかもしれないです。能力で止めることが出来るのは手で作った枠組みの中だけで、別のものに対して能力を使うと、前のものが動き出してしまうので厳しいです」


「そうなんか」


あたしは自分の能力の限界を伝えると砲手はあたしに向かって無茶なことを言ってきた。


「でもそんなのはやってみないとわかんないだろ。確かに能力というのは鍛えたらより浮かく使えるようになると聞いたことはあるが、物は試しだ。せっかくならやってみてくれよ」


「え、でも…」


少し困惑しながらうろたえていると姿は見えていないはずなのになぜか主砲の座席の部分からキラキラした眼差しを向けられているような気配を感じつつ、あたしは逆の腕のほうに向かって手で枠組みを作る。そして能力を発動させる。


「・・・」


「やっぱりだめかぁ…。」


しかし案の定といったところか止まっていた右腕は急に動き、直接攻撃しに航空部隊の人たちが一斉に薙ぎ払われていきそのまま海の中に落とされた。


そして今度は左手があたしの能力によって振りかぶっていた動作で止められる。動いていた最中だったからなのかこちらの方にものすごい風圧が飛んできて荷台にしがみつかなきゃ飛ばされてしまうほどに戦トラが揺れた。


「うわぁ!。飛ばされそう!」


「大丈夫か!。しっかり捕まっておけ」


揺れが収まり、目線を空に向けると目の前に広がっていた光景に目を見張った。あたしはマルシーズは単にヒト型で腕に模したひれではたくだけだと思っていたがそれだけではないようであった。それは昼間にしては煌々と光り輝く夥しいほどの針の雨であった。その光景を見たあたしはとっさに叫ぶ。


「早く走って!!。」


「!!!。了解した!」


声が聞こえるとともに車体が急発進をして先ほどまでいたところには土埃と軽いクレーターが針と共に突き刺さってできていた。突き刺さった針を見ると刺さったところから次第に白い煙が上がって溶けだしているのが見えた。


「アレに当たったらひとたまりもないよ。体どころか車までぼろぼろになっちゃう」


「ありがとう。墨坪さんの声が無かったら私たちは死んでいたわ。感謝する」


運転手が少し震えた声で感謝を伝え、上のハッチから主砲の砲手が出てきて後ろの様子を見るとおぞましい光景にえらく引いた声で言う。


「うわぁ。マジかよ。あんなのが降ってきたのか。この距離からでもなんか臭ってくるな。毒かもしれないからあまり近寄らないほうがいいな」


「そうですね。でもこれで後ろに戻れなくなっちゃいましたね」


「まぁそれは迂回してからでもいいし、何より今この瞬間にもマルシーズはほかの部隊を攻撃しているから俺らはその援護をするぞ」


「わかりました」


「あ、あとまた同じような攻撃が来そうだったら今みたいに言ってくれると助かる。それじゃ」


そう言い残すと砲手はハッチの中にせかせかと帰っていき、そのまま主砲でマルシーズの横腹を撃っていった。


再び戦トラは動きだし角度をつけて援護を開始した。どうやら巨大なマルシーズもかなりの時間、砲撃や爆撃を食らっているのか次第に暴れ方に疲れが見えてきた。腕はまだ固まったままみたいであり、あたしは少し安堵をする。


「そういえばあたしたちの前を行っていた戦車はどこにいったんだろう?。ここに来るまでは前にいたと思うんだけど」


どこにいったのだろうと来た道を振り返ると向こうの場所に戦車が見える。動いて砲撃している戦車もあれば、大破して炎上している戦車も見え、どれがどれだかわからなかった。もう長い時間闘っているからなのかボケてきていたがよく周りに目を凝らすと街並みは壊されている建物や炎上しているところも多々あり、悲惨さが伝わってくる。


燃えている戦車を眺めているといきなり風が吹いてきてつい眼を閉じる。


髪が舞い上がるのを感じつつ、潮風が肌に付く。風が吹き終わるのを待ち、ゆっくりと眼を開いた。そしてあたしは目を見張る光景を目の当たりにした。


「おい!。腕が動き始めたぞ!。もう少し止まっているんじゃなかったのか!。もう一度能力を使ってくれ!」


砲手がハッチから出てきて指をさして大声で叫んでいた。あたしは()()を認識したとき心臓が急にバクバクしてきた。眼の前の光景に信じられず瞳孔が開き、声が漏れる。


「え、嘘?。そんな…」


「そんなことしていないで早く!。っ!。まずい。こっちに来るぞ!。早波(はやなみ)、早く戦車動かせ!」


「わ、わかったわ!」


そう聞こえた時にはすでに手遅れであった。上を見上げるとそこには空を覆い隠すほど大きなひれが叩き潰そうと迫っていた。


「間に合わない!」


そう思ったときには遅く荷台に伏せたが上から強い圧力がかかり、背骨が歪んでしまったかと思えるほどに猛烈な強い痛みがあたしを襲ってきた。そしてかわいくない喘ぎ声も出てしまった。


『うう、背中がめっちゃ痛い…。でもあたしより、他の人たちは、どうなったの』


空から光が降り注ぎ、覆いかぶさっていたものが消え、あたしは痛いのをこらえながら荷台を這い、ハッチを登る。力を振り絞りながらハッチを開けようとするが扉は重く開く気配がなかった。


「大丈夫ですか!。意識があったら返事をしてください!」


ハッチを叩きながら声をかけ返事を待つ。なかなか返事が返ってこなく、あたしは中で最悪な状況を起こっているのでないかと思った。再びハッチを開けようと腕に力をいっぱい貯めて引っ張る。


「おっ。少し開いた。もう少し…。大丈夫ですか」


少し開き、開いたところから声をかける。すると中から苦しそうな返事が返ってきた。


「そ…そこに…いるのは…墨坪か。だい…じょうぶ…か」


「はい。あたしは少し背中が痛いくらいで大丈夫です。それより砲手さんたちは大丈夫ですか」


「俺は…まだ平気…。けど早波が…」


「わかりました。いまからそっちに行きます」


砲手の人はかなり苦しいのか辛い声であり、隙間に手を入れてすぐにあたしは力を込めてハッチを開けようと踏ん張った。今までに出したことが無いほど力を振り絞ったかいがあったのかあたしが入れるくらいの隙間ができそこから内部に入った。


戦トラの中はかなりぼろぼろになっており、いたるところの部品が破損して全体的に狭くなっており、砲手の人は頭から血が流れ、肩を抑えて座っており、早波と呼ばれた運転手の人は操縦桿を握って気絶をしていた。


「ありがとう…。俺は後ででいいから。この応急処置用のキットをもって早波を外で手当てしてくれ」


「あなたは、どうするんですか」


あたしは心配になり聞いてみると平気を装った声で返事が返ってくる。


「おれは後で出る。先に出て行って安全なとこまで行ってくれ。早くするんだ」


「わかりました」


狭い内部を通り、早波さんを引きずり出して医療キットと共に外に出る。出る瞬間砲手の人のほうに振り返ってみると辛そうな笑顔を向けていたがあたしにはその時どういうことかわからなかった。


外に出てみると巨大なマルシーズとの攻防戦はまだ続いておりマルシーズは見たことのない光線を眼から出してあたり一面を破壊していた。あたしは気づかれないようにつぶれた戦トラの陰に隠れながら治療を開始した。しかし治療しようと思って服を脱がそうとしたが違和感を感じた。


「あれ、怪我してない?。あそこにいたなら足の骨が折れててもおかしくないのに…」


すると早波さんは意識を取り戻したのかうめき声と共にいきなり飛び起きてきた。周りの状況を見て少し驚いた顔をしてあたしに話しかけてきた。


「はっ!。私、気絶して。ここは?」


「戦トラの外です」


「戦トラ?。まぁとりあえず外に私を連れ出してくださったのですね。先ほどと言いありがとうございます。・・・それで一色(いっしき)くんはどうなったの!?」


あたしの方をつかんで揺らしてくる。よほど心配であったのだろうが安心させるようにあたしは語り掛けた。


「大丈夫です。戦トラの中にまだいますが・・・」


あたしが言いかけようとすると彼女はいきなり立ち上がってハッチの中に入っていった。その慌て具合にあたしは驚き動けないでいると中から大きな悲鳴がこちらの方に聞こえてきた。


「ああああああああぁぁぁああああぁ!」


「どうしたんですか!」


あたしがハッチに戻ると早波さんが砲手の人を抱きかかえて泣いていた。


「どうして私なんかのために…」


早波さんは動かなくなった砲手の人を強く抱きしめて問いかけてきたが帰ってくるのは反響したすすり泣く声が聞こえてくるだけであった。あたしはどうしていいかわからずにその場で立ち尽くすことしかできなかった。


声をかけたのは早波さんが落ち着きを取り戻してからであった。


「ごめんなさい。いきなりでびっくりしたよね。こんな姿見せちゃって。アハハ…」


「いいえ、大丈夫です。・・・ちゃんとお別れできましたか」


「ええ……。辛いですけどここで倒れては一色くんも悲しんでしまいます。とりあえず今後の作戦を立てましょう」


そう言ってハッチから外の様子を確認する早波さんの後姿を見る。先ほどとは打って変わって心を切り替えているように見えた。


「墨坪さん」


「はい。何ですか」


「こちらに来て一緒に外を見てくれるかな」


一色さんが呼ぶので一緒にハッチから外を見る。そしてそのまま一色さんが指をさして言い続ける。


「能力ってまだ使えるかな?」


「はい。使えると思いますが、さっきいきなり動き始めていたからまたそんなことになっちゃうかもしれないです」


「大丈夫。心配しないで。あなたなら絶対にできるわ」


「わかりました。でもそのあとは…」


「そのあと私たちはその止まっている間にいったんに呉の基地まで行きます。このままでは私たちはお役どころか足手まといです。なので呉基地にある武器を取って戻ってこようと思います」


「了解です。ではやってみます」


「はい。頼みますよ」


大きく返事をしてあたしは狭い隙間から手をかざした。今回は運のいいことに巨大なマルシーズの上半身がうまく入っていた。そして能力を発動する。


「あたしの能力は決め台詞もなければ音もない。映れば必中の技。きれいに映っていてね」


そう口ずさむとうまくいったようで動きが完全に止まった。それに気づいた他の隊員はこの機を逃すまいと砲弾の嵐を浴びせ、あたしたちはそれをバックにハッチから飛び出した。


「こっちです!」


そう呼び声が響きそちらの方に目を向けるとどこから出したのかわからないバイクが用意してあった。あたしはそれを見てぎょっとして尋ねると思ってもいない予想外な返事が返ってきた。


「えっ!。何ですかそのバイクはどこから持ってきたんですか」


「このバイクはですね。そこにあったバイクです。さぁ乗ってください」


早波さんは何事もない様にバイクのハンドルを回したり、タイヤの状態を確認したりとめちゃくちゃ確認していて先ほどまでのお清楚みたいな感じから頼れる姉貴分みたいな様子にあたしは戸惑いを隠せていなかった。


「どうしたのですか」


「あ、いや。その何でもないです」


あたしはおろおろとしながらバイクの後ろの方に乗るとすぐにエンジンがかかり、その場から離れていった。当然あたしは内心何が起こっているのかよくわかっていなかったので聞いてみる。


「あの、なんでいきなりバイクが動くんですか?。というか本当にどこから取ってきたんですか」


「このバイクは本当にその辺にあったものよ。そして今何で動いているのかと言いますとこれが私の能力なんです。」


「え、つまりバイクを動かす能力ですか?」


「ちょっと違います。私はどんな乗り物でも動かすことが出来る能力です。ですからエンジンがかかっていなくても動かすことが出来たんです。・・・パッとしないですよね」


かなりのスピードが出ており、風が勢いよく当たる。早波さんの最後の言葉を聞いたあたしはそれを否定して言い返す。


「そんなことないです。どんな能力でも必ず必要とする人がいます。あたしの能力も日常ではあまり使えないですがここに来てから結構活躍しているんですよ。ですから早波さんも必ず誰かの役に立ってますよ」


「っ!。ありがとうございます。そうですよね。ふふふ」


あたしは自分が思っていることをただ伝えただけなのに少し笑われてしまい少し不機嫌になったが早波さんはどこか嬉しそうであった。


ーーーーー

そんなこんなで早数分であたしたちは呉基地に到着した。外は誰もいなく、がらんとしており、案の定中にも誰もいなかった。


「誰もいませんね。皆さんどこにいってしまったのですか」


「この基地の人たちは皆さん全隊員で市民の安全を確保したり、戦うために出払っています」


「そうなんですね」


「あ、武器庫はこっちです。ちょっと暗くて見えずらいですね。ライトとかってありますか?」


ライトと言われあたしはすぐさまケータイのライトを出した。あまり先は見えずらかったが先ほどよりはましとなりそのまま武器庫まで問題なく着いた。


あたしはすぐにスナイパーライフルのとこに行き、一丁取り近くにあった弾薬で動作を確認した。


「っ。・・・よし大丈夫そう」


「墨坪さん。すごくて慣れていますね」


「え?。そうですかね」


あたしは確かに手慣れた手つきで確認作業をしていて自分でも驚いた。あのビルで持った時とは比べものにならないくらいの安心感があった。ポカンとしているあたしを見て、早波さんも同じくポカンとしていた。


「そうですよ。私も同じライフルを扱いますが、全然ですよ。あの大友さんと同じくらいに見えました」


「え、大友大三さんですか」


「あら、ご存じでしたか。そうですよ。大友さんはこの基地でとても優秀な方でその方もライフルを扱うのですがその確認作業がまさしく同じでした」


ここでもまた大友大三さんが出てきて、あたしは心の中で思った。


『本当に大友大三さんって尊敬されているんだなぁ。あんな酒飲みなのに』


しかしその大友大三さんと同じと言われ少しあたしは照れくさくなった。照れくさくなりあたしは話題をそらすように話す。


「あ、あのそれまでにしてください。それよりもあたしたちはこのままどうするんですか。戻りますか?」


「あ、そうですよ。このままとんぼ返りします」


早波さんは食気を取り戻したのか素の状態になってその足取りでバイクが置いてあるとこに向かった。


向かっているとバイクが見えてくる。そう先ほどと何も変わらずそこにある。そう思っていたのに…そこにはあったのはつぶれた鉄くずであった。


「え、バ、バイクは?」


早波さんも何が起こっているのかわかっていないのかよろよろと近寄っていった。それを見たあたしはものすごくいやな予感がし、早波さんに向かって走り出した。


早波さんはバイクがあったとこに着き、つぶれた鉄くずをただ見下ろしているだけでその影が暗くなっていることに気付いていなかった。


「早波さん!。危ない!」


あたしはとっさに飛び込み早波さんを抱えて影の外に抜け出した。するとその陰にあったとこはとても見覚えのある大きなひれが見えた。


「!!!!?」


あたしたちは多分同じ光景がフラッシュバックしているだろう。その大きなひれで空を覆い隠され大事な人を奪われたその光景が。


「ぅぅ。あ、足がすくんで…うあく立てない」


早波さんはそう言いながら逃げるように足を引きずって下がっていく。あたしも恐怖から足が動かなくなっていた。振り下ろされた腕を戻す動作を見続けるとそこには確かにあたしが止めていたはずの巨大な奴がいた。


「ああぁ」


マルシーズはそんなあたしたちを何とも思っていないような顔で再び大きな平で押しつぶそうとしていた。


『ああ、もうだめか』


あたしはその場でどうしようもないことを悟り、目をつぶった。全力でやり遂げるということを放棄して。


「・・・・・。あれ?」


しかしいつまで待っても振り下ろされたひれが落ちてくることが無かった。不思議に思いながらもあたしを強くつぶっていた眼を開ける。


するとそこには見覚えもないはずなのに何度も見てきたかのような背中があった。そしてその人は振り向き言葉を紡ぐ。



「大丈夫か。凉。もう安心しろ」


「俺が救いにきた」


かっこつけながら鞘に刀を納める姿は透明で歪んで見えていた。

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