第三十四話:海の底から這い上がれ
どうも井中です。いつも読んでくださっているみなさま!ありがとうございます!。皆様のおかげで累計PVが1000を突破しました!。一週間ぶりの本編ですね。最近はやけに気温が熱くなってきているので外には出たくない一心で生きています。今回はいつもより長くなってしまっていますがこれからこのくらいかこれより長い量を書いていこうかと思っていますので、時間があるときにゆっくりと読んでいただけると幸いです!。
追記:題名を書くのを忘れてました!。ごめんなさい!
沈没した船に足を踏み入れるとそこは人ではない何かが巣食っているような気配がした。空気は充満しており、ほんのりと光っているライトを頼りに俺たち(相棒と鷹島のみ)は甲板から捜索を開始する。
「なんかこの辺、不気味すぎませんか。人っ子一人いない感じがすごいんですけど」
俺は周囲を見ながら近くの砲台らしきものを触ってみた。かなり冷たくて今の季節的に欲しくなるよな冷房器具のようであった。
「まぁ、俺もそんな感じはしているが、墨坪も多分ここにきているはずだし、一人はいるな。」
「・・・俺たちの船には二人ってますよ。香熾さんと朱鷺さんがね。そんなことより、見てくださいよ。この砲台。昔の写真とかでしか見たことないような大きな銃があるんですけど。持って帰れないですか?」
「無理だ。そんなもんあったってしょうがないだろ。第一、この船に取り付けられている機関銃だから取り外すのに手間がかかるだろうし、取ったら俺が捕まるだろ」
「いや、複製してくれたらいいじゃないですか」
「帰れなくなるだろ。もういったんこいつのことは忘れろ。とりあえず中に入ってみるぞ。部屋とかで何とかやり過ごしているかもしれんからな」
中身がないような話を繰り広げながら俺たちは船の中に足を進めていこうとしたが、なぜか船の中へと続く扉は中から鍵がかかっていた。どうにかしてこじ開けようと試みたが扉はびくともしないでそこに立っていた。
「なんでカギがかかっているんですかここ。普通開けとくだろ!。もう壊しちゃってもいいよな」
「だな。仕方ないな。なんで鍵がかかっているのか知らんが破壊してくれ」
「わかった」
相模からの許可を得たので刀を抜刀してドアの開閉部分を一刀両断し、そのままドアを蹴り破った。意外にもたやすく切れたので少し拍子抜けではあったものの、中へと通ずる道が開けたのでよしとした。
蹴り破かれたドアはばたんという音と共に通路の空気を一斉に放出してきた。その空気は鼻腔を溶かしてくるような酸鼻の匂いとまとわりつくような腐敗臭がした。嗅いでしまってたまらず後ずさりして相棒のほうを見ると、苦笑いを浮かべてその場に立ち尽くしていた。
「うぅ!。何ですかこの臭い。普通に吐きそう。相棒は大丈夫か」
「・・・!。いやぁ。ヤバいわ。いろいろと手遅れだな。仕方ない。一度暁に戻るぞ」
「へぃ」
相棒は俺のことを担ぎ上げながら急いで船に戻った。
ーーーーー
「あら。お二人とも早いですね。何かありましたでしょうか?」
「ああ、問題しかない。人が多分三人くらいはもう・・・。それに入ろうとするとかなりの臭いがすごくてなドアを破壊してきたからいずれこっちまで流れてくるかも。すまんな」
「!。っそうですか。状況はわかりました。ひとまず香純のほうはかなり回復してきましたので何かありましたらすぐにそちらに向かわせる準備をしておきますね」
「何勝手に答えているのよ。私を人柱にでもする気かしら」
「うふふ。いいではないですか。香純の能力であれば何とか出来るかもしれないですしね」
「あなたって人は。私さっきまで横になってた人よ。・・・まぁでも秋くんたちのお役に立てるのならいいわよ」
帰ってきてそうそう三人で話し合っていた。俺は先ほどの臭いで参ってしまっていたのでしばらくつぶれておこうと思った矢先、相棒はこっちを見て言ってくる。
「じゃあ、ちょっとすみ。春棒を十分前の状態に直してくれ。そしたらもう一度行くぞ」
「わかったわ。頑張ってね。鷹島君」
俺には二人が悪魔に見えてきていた。ああ、香熾さんが何とも慈悲深いようなまなざしでこちらを見てくれている。心の中で思っているとみるみるとあの強烈で鮮烈で激烈な臭いが消えていった。
そして俺は再びあの戦場に送られることになった。
ーーーーー
「すまんな。まさかあんなに臭いがするなんて思ってなかった。はいこれ。ガスマスクだ。これ着けとけ。ちゃんと臭い漏れしてないだろ」
「はい。ありがとございます。・・・また行くんですか」
「当たり前だろ。早くいかんことには解決にはならんからな。行くぞ」
相棒はヘルメットしなくてもいいのか普通にしているし、何なら先にすたすたと中へ入っていった。続いて行くように中に入るとそこはあの真・暁とは少し違っているような内部構造であったが特段気にするようなことでもなかったので気にしないでいた。
「誰かいませんかー。いたら返事を下さいー」
「誰もいねーな。部屋に籠っているんじゃないですか」
「そうだな。片っ端から部屋開けて確認するか。はいまず一つ目」
相棒が目先の部屋を開けてみたが残念ながら誰もいなかった。部屋の中に入ってみるとここは船員の部屋だったのか生活していました感がしみじみと漂ってくる。
「残念。ここではなかったみたいだな。次行くぞ」
「そうですね」
そうして次の部屋、その次の部屋と見ていったが特に何もなかった。いずれも同じような部屋の作りであり、ここは生活スペースであることが分かった。
「・・・個々の部屋には鍵とかかかってないんだな。プライバシーの問題とか以前よりこうやって何かあったときにすぐに脱出できるようになっているはずだからな。さっきの入り口は何だったんだろうな」
「いや、知らないですよ。そんなこと聞かれても。考えても仕方ないんですから今はやることをやろう」
「・・・最近、思ったんだが敬語が抜けてきているよな春棒よ」
何のことやらと言う感じにニコニコした顔を向けると相棒は「まぁいいか」みたいなかんじになった。
「それより、ここの部屋まだ見てないですよね。確認しますか?」
「いや、まぁ、そうだな、そこは後ででもいいんじゃないか。どうせこの辺りは同じ感じなんだからさ」
「なんかぼかされた気がするんですけど。いや、俺はこの部屋が怪しいって思っているんで勝手に開けますね」
「おい!。ちょっ!待てよ!」
相棒の制止を振り切っていざドアを開けてみると目の前にはいくつかの物体がそこに置いてあった。ふと足元を照らすとそこには何か赤い液体と透明な液体が流れてきていた。するとすぐに相棒が俺をその場から引きはがして代わりに中に入っていった。状況を飲み込んでいる数秒で相棒は部屋から出てきて中から一冊の本みたいなのを持っていた。
「え、、、。その本なんですか」
「はぁ。それより先に俺の言うことをなぜ聞かなかった!。」
「!。すいません!。とても好奇心に駆られて思わず開きました!」
「春棒のそういった思い切った行動はとても評価しているがあまり自分勝手なことはするな。この隊の隊長は俺だからな。わかったか」
「はい。申し訳ありませんでした」
唐突に相棒は俺のことを叱ってきたが言われて俺は頭の中がふと冷静になり、すべてを理解した。さっき見た光景は多分アレだと思った。
「反省しているならいい。俺は威厳がないからこうやって舐められることがあるけど、ちゃんと叱るからな。んでだ。これはさっきの部屋から見つけた誰かの書記だと思う。ひとまずこれを香熾たちに渡してくるから先に探索しておいてくれ。すぐに戻ってくる」
そう言い残すと相棒は先ほど来た道を引き返していった。俺は相棒の言葉を心に刻み込んでそのままお隣の部屋を開いた。
「誰かいますか?。・・・誰もいないか。と言うかこのガスマスク、全く声が籠らないんだな。まぁなんだっていいけどな。はは!」
「あ、あのそこに誰かいるんですか?」
ふと独り言をつぶやいているといつもの聞きなれた声が聞こえてきた。暗い部屋から俺は振り返ってみるとそこには数時間ぶりに再会する彼女の姿がそこに立っていた。ちょっとライトの逆光のせいかななんだかよく姿が見えにくくなっていた。俺は懐かしむ感じに声をかける。
「おお~!。凉じゃん!。元気だったか。心配したんだからなこんなとこにいて大丈夫だったか?」
心弾むようで内心穏やかではなかったけど帰ってきた返事は思っていないものであった。
「えっと。すみません。あたしたちを救助しに来てくれた人ですよね?。こっちにまだ人がいるのでそのままあたしがそこまで案内しますね。あと、いきなりあたしの名前は呼ばないでください。少し、気持ちが悪いです。」
「え?」
思考が止まる。何を言っているのだろうか。俺のことを忘れてしまっているのか。聞きなれているはずの声なのに脳が考えることを拒んでいる。
「か、からかっているだけだよな。ちょっと寂しかったからって、もう一杯食わされたからさ!」
「えっと、ごめんなさい。早く来てください。あたしたちだってもうここで過ごすのも限界なんです」
「あ、はい。・・・ちょっと待ってくださいね」
早くしてくださいねと言わんばかりの鋭いまなざしを受けて眼からなんか熱いものが流れてきていた。それを腕でぬぐいつつ、相棒に一報だけ残してついて行った。
「あの、大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫だ・・・。そんなことより生存者はどこにいるんだ」
「今向かっているから。ちゃんとついてきてよ」
会話が続くことなく目的の場所に到着した。そこには数名の手で数えると、片手で数えられる人しかいなかった。
「みんな!。救助の人がやってきたよ。」
「おお、ついにか。ついにここから出て行けるのだね。いや~。長かったな。ああ自己紹介がまだだったな。私の名前は・・・」
「あ、いいです。とりあえず。皆さんここから脱出していきますよ。ここにいる人で全員ですか?」
「いや。まだ一人帰ってきていないのでその人だけ、探してきてもらってもいいですか?。あの人すぐにどこか行ってしまうのでいっつも迷惑しているんですよね。ね。凉ちゃん」
「も、もう何言っているのよ。それよりも君。付いてきてくれる?」
女性船員の一人が凉にそう話しかけるとなんだか顔を赤くしながら照れていた。そのまま残りの一人がいないということなのでついて行くことにした。
「・・・ではほかの皆さんはそのまま甲板に向かってもらってもいいですかそちらに代わりの船があるので、向かっている途中で皆さんのことを探している俺の仲間の人がいるのでその人とも一緒に向かってもらってもいいですか」
「了解した。ひとまず助けに来てくれてありがとう。感謝する。」
軽く敬礼を交わした後に中にいた四人の人は甲板へと向かって行った。俺は凉と一緒にそのまま人を探索することになった。そして人を探し始めて数分したくらいに凉が話しかけてくる。
「そういえばあなたの名前を聞いていなかったんだけど。」
「そっか。言ってなかったな。俺の名前はジェディ・ウィルソン。日本と彼女が好きなオタクだ」
「あはは!。なにいっているのよ。どう見たって日本人みたいな見た目なのにおかしな人!。で、ほんとの名前は?」
「すいません。ふざけました。本当の名まえは鷹島春久だ。」
「そうなんだ!。春久君って結構面白い人だね」
凉は満面な笑みを浮かべながら笑ってくれていて俺もどこか安心感を感じた。やっぱり凉は笑ってくれていたほうがいいなとほんとに心の底から思った。凉はこちらを向きながらそのまま話をかけてくれた。
「春久君って、腰に刀が差してあるけどもしかして本当は海上部隊じゃないんじゃないの?」
「!。よくわかったな。そうだよ。俺は地上部隊の特別殲滅部隊って言う特殊に作られた新生物殲滅特化の部隊にいるんだ」
「へぇ~あたし知らないわ~。地上の部隊ってそんなのができたんだね。いいな~あたしもそっちに行ってみたいな~」
「・・・」
そう凉は自分が特別殲滅部隊にいる想像をしているのか暗い中でキラキラした目で思いを馳せていた。そして今の会話を聞いて俺は確信した。記憶がどうやら無くなっている。どうしてそんなことになったかはわからない。と言うか今考えるとさっき会った人たちも俺がまるで初めて救助に来た人みたいに接していたが、まず凉がここにきているので初めてではないはず。
そんなことを頭の中で考えているとふと凉が声を出して飛び出していった。
「あ!。エイトくん!。もう、どこにいってたの。救助の人が来たから早く脱出しよう!」
「まぁまぁ待て待て。とりあえず探しに来てくれてありがとうね。そこの君が救助しに来てくれた一人かい?」
「ああ。そうだ」
今とても不愛想な返事となってしまったのは目の前の光景が信じられなかったからだ。エイトとかいう男に凉が抱き着いているのが信じられなく、俺は今どんな顔をしているのだろうか。
「ちょっと君顔が怖いよ。なんかすごみと言うかとりあえず外まで連れて行ってもらってもいいかな」
「ああ、その前に貴様。その持っているかばんはなんだ。」
「これかい?これはこの第10偵察部隊が今まで記録してきた記録書ですね。どうかしましたか」
「それ。ここに置いていくか。俺に渡してくれないか」
「いきなりなんでそんなことを言えるのかな。これは大事な資料なんだ。いくら救世主とはいえ君にはこれは渡せないよ。」
「そうか。ならもう一つ聞く」
刀に手を添えながらそのまま続けて言う。
「ここの人に何をした!」
そう俺が叫ぶと男は不気味な顔をしながら高笑いをし、話す。
「ふふふ、ふふ、あは!。あはははは!。はぁ。君は鋭いね。どうしてわかったんだい。こんな会ってすぐの男を見てさぁ!」
「俺は違和感にはすぐに気が付くんだよ。どうせ能力でなんかしたんだろ!」
「そうなのか。話に聞いていたけど。犬みたいだね。でも気づいたからなんだって言うんだね」
「は?」
「凉。お願い。そこのそいつの動きを止めておいて」
「え、どうしてよ。春久君は助けに来てくれた人だよ?。そんなことできないよ」
男は凉にそう指示してが、凉は困惑しているのか状況をよく呑み込めていないようであったが男は大きな怒鳴り声を出して指示をする。
「いいから!!!。早くやれ!」
「うん!。わかったから怒らないでよ」
「まずい!。くそっ!。っざけるな!」
男に怒られ、泣きそうな顔になっている凉を見て我慢を抑えきれなかった。俺は凉に動きを止められる前に男をひれ伏せさせようと思いっきり飛び掛かった。しかし男に届く前に体が針で固定されるように体がピクリとも動かなくなってしまった。
「クソ。動けない!」
「ふぅ。危なかった。助かったよ。凉ちゃん。あとでいっぱい褒めてあげるからね」
「う、うん。ありがと」
「それじゃあ、このまま外に脱出しようか」
男は凉の頭をなでながら肩を抱いて俺の横を素通りしていった。動こうともがいてみてもちっとも動くことが無く沈没した船の廊下で一人取り残されてしまった。
「ああ~!。クソが!。ふざけるな。あのままにしておけるか。いつになったら動けるんだこれ。さすが凉だけどクソ。くそぉ、。」
動けない体で戯言をほざいていても次第に虚しくなって、再び眼から涙が出てきていた。暗いってこんなに寂しいのかと心細くなっているからだろうか、余計に悲しみが増幅されている感じがした。そして大きな轟音が船内を駆け巡ってきた。
「次は何だよぉ」
音が後ろの方からやってきていたのに首が回らなくて様子を確認できなかったが足にひんやりとしたものが流れてきた。そして瞬時に理解し、頭がパニックになった。
「これって、もしかして海水なんじゃ!。おい!。誰かいないのか!!」
叫んでも誰も返事をしてくれない。絶望だけがそこで笑って返事をしていた。すでに体の半分が沈み、この船を覆っていた空気の壁が壊されたのを実感してきた。
「はぁ。終わったわ。すまん」
『何を言っているんじゃ、小僧。まだ終わっておらんぞ。最後まで足掻くのだ』
テツテツが脳内で話しかけてきていたが今の俺は冷静を書いていたので何を言っているのか全く分からず、情けないことを言う。
「テツテツ。もう無理だよ。さすがに」
『でも小僧。お主、普通に水の中で話せておるぞ』
「え?。あれほんとだ。さっきの効果が残っているのかも。相棒さすがだわ。と言うかなんで相棒は俺がいなくなっていることになんも疑問持ってないんだよ」
いつの間にか海水に浸かりこんでいたが魚になったかのように全くつらくなかった。一瞬何とかなりそうだと思い心が軽くなった。
『そんなこと考えているのならはよ、ここから出てくれんか。わしに海水がついてしまうじゃろ』
「いやそれ言うなら、海水すらつかんだろ。ほらよ。刀ごとコーティングされてっから平気よ」
テツテツがいつもになく不安そうになっていたので俺は何となく思ったことを伝えるとまさしくその通りであったのか少し黙ってしまっていた。もしテツテツに表情があったら、きっと赤っ恥を書いているだろうと内心からかっていたが気づいた時にはもうすでに遅かった。
『・・・。聞こえておるぞ。はぁさっさと船に戻るぞ』
「ああ!」
テツテツの合図とともに体もすっかり動くようになっていた。ブーストはもうないのでバタ足で上がっていこうとし、船の外に出ると真・暁はもうそこにはなかった。
「船ないじゃん。おわりんごやん」
『いやあそこを見ろ。ロープが垂れておる。それに捕まって上に上がれそうじゃ』
「ナイスだ。テツテツ。帰ったらあいつをとりあえず叩きのめす」
そう心に誓って俺は海底に垂れている一本のロープにしがみついた。あたりの海水がロープから引きはがそうとしてくるが俺は無我夢中でロープをつかみ昇っていった。その姿はさながら絶望のどん底から這い上がろうと昇っていく主人公であった。




