第三十二話:助けられれば、それでいい。
どうも井中です。一週間ぶりで少しなまったかもしれません。温かい目で見てください。また時間があるときに読んでくださると幸いです!。
深海で謎の生物と相対してから数分。俺と相棒は甲板から早々に移動して現在魚雷ハッチにいた。乗り込む予定の魚雷は漆黒の塗装が施されていて触るとひんやりと冷たい。
「じゃあ、扇動は任せたぞ。春棒!。これは普通の魚雷ではなく途中、海中分解される魚雷だから切り離されたらそのまま奴の様子を見つつ、対処してくれ」
「はいはい。了解です。もうこういうのはなんか慣れてきたので大丈夫ですよ。あ、一応もう一度聞いておこうと思うのですが水圧でつぶれないようになっているんですよね?」
「もちろん。それに空気のほうも地上の時と同じ感じで呼吸できるし、水中内の動きも両足に着けたブースターを使ったら自由に動ける」
「オッケーです」
俺は最後の説明を聞き、魚雷に乗り込もうとすると船が大きく揺れた。揺れのせいか電灯がちかちかとした。
「・・・あの魚もしびれを切らしているのか、攻撃してきましたね」
「だな。船内のほうで俺たちがサポートするから全力で資料となりそうなものを取って来いよ」
「はい!。では行ってきます!」
その場で俺は敬礼し魚雷に乗り込んだ。
魚雷の中は狭く閉鎖的であったが中に貼ってあった一枚の紙が俺の背中を後押しした。相棒はこういうことが本当に好きなんだなと思った。
『魚雷を目標に向かって発射する。カウント。五、四、三、二、一。零。』
そして零の合図とともに打ち出され、臓物が浮く感覚が襲ってきた。潜望鏡を覗き、標的に向かって操縦した。
「確か打ち出されてから30秒ほどで分解されるって言っていたな。それまで奴の動きを見ておくか」
鈍い操縦桿を動かし、旋回しつつ様子をうかがっていた。大きな魚は俺の存在に気付いていないのか真・暁に攻撃をしていた。噛みついていたり、背中の鱗からミサイルのような物体を出してバリアを破壊しようとしていた。
「うわぁ。なんだかすごいな。あんなのが地球にいるなんて」
潜望鏡から見える景色は暗黒からの脅威を凌いでいる最終防衛ラインのようであったが、甲板に見える香熾さんと朱鷺さんは余裕そうにしているのがわかる。
そしてそろそろ分解される時間になってきているのを知らせるように魚雷内でアラートがなった。
『覚悟をしろよ。小僧。』
『わかっている。テツテツだって折れないでくれよ』
持ち込んだ刀を手に持ち、戦闘の準備をする。そしてほどなくしてから魚雷の装甲がパージされ、身を深海が包み込んできた。相棒がかけてくれた暗視の能力で視界は思ったほど悪くない。体を押してくる水圧もそこまで感じない。
すぐさま両足をそろえて足に着けてあるブースターを発動させ、俺は大きな魚に向かって刀を抜いた。
「天音太刀抜刀術が一つ:漣!」
勢いよく抜刀し、斬撃が魚の背中を直撃したが、威力が弱かったのか浅傷がつく程度の傷しかできなかった。そして今の攻撃でこちらの存在に気付いたようで背びれを伸ばして串刺しにしてきた。
「!!。全然効いてない。皮膚が硬すぎるのか!」
迫りくるとげとげした背びれの猛攻を刀でいなしながら回り込んで再び攻撃の機会をうかがっているといきなり耳から声が聞こえてきた。
「おい、大丈夫だったか。こちらで援護射撃を行うから真・暁のほうにおびき寄せてくれ」
「え”っ!」
「千楽寺君。ちょっと厳しいのではないのでは?。鷹島君だっていま避けるだけで精一杯のように見えますが」
「そうね。」
相棒たちが向こうのほうで何かを話していたが爆発音とかでよく聞こえてこなかった。唯一聞き取れたのが援護射撃だけだったのでそれを待ちながら俺は攻撃をし続けることにした。
攻撃は背びれで枝分かれしてきた以外にも普通に俺のことを喰って来ようとしたり、普通にミサイルを飛ばして来たりしていた。しかし一向に援護射撃が切る気配がなかった。
「ねぇ!。今どんな感じなの!早く援護射撃してくれ!。死んでまう!」
「いや。そうしたいのはやまやまなんだが春棒がそこにいると巻き添えになってしまうぞ。早くこっちにこい」
「爆発音が大きくて聞こえないです!。」
『これなら聞こえるか。聞こえたらそいつをこっちまでおびき寄せてくれ』
漸く俺の声が聞こえてないことが分かったのか脳内に直接語り掛けてきた。初めからそうしてくれなんて思ったが今はさっさとしなくてはいけない。俺はそのまま船のほうに向かおうとしたその瞬間にお腹に何か刺さったような気がした。
「え?」
「あっ!」
「春棒っ」
刺さったものはなんだかヌメヌメしていて目の先では体を突き抜けた時の。そしてそのまま魚の口の中に引き込まれていった。
~~~
「どうしよう。鷹島君が食われてしまってますが。秋君」
「ああ、想定外だ。これ以上能力使うとバリアが維持するのが難しいのだが・・・。香熾ちょっといいか。作戦少し変更だ」
「どうしたんですか?」
「すまん。あと5%能力を開放してくれ。急いでくれ!」
「わかりました!」
秋君が設置した5インチ砲の席から出てきた香熾さんは切羽詰まっているのを察知したのかすぐに能力を開放していた。
「よし、これであと少し能力が使える。香純今から口の中に転移させるから春棒を何とかしておいてくれ」
「え、はい。わかりました。」
私は半ば反射的に返事をするとすぐに体が光り出し、消えたと思ったら生暖かい空気に包まれた。辺りはもう赤い壁まみれであり足元を見るとそこには半分死にかけている鷹島君がいました。
「あれ・・・。朱鷺さんが見える・・・。俺はここで死ぬんか」
「っ!。何を言っているのですか。今助けますからね。仰向けにしますよ」
鷹島君の容態は腹部に大穴が空いてしまっていて驚いてしまったが、平然を装いながらいつも通りの仕事を行った。
「かなり痛いかもしれませんが我慢してくださいね」
「ぇ、ぃたいんですか?」
「ふふ、冗談ですよ」
少し意地悪で言うと鷹島君は泣きそうな顔になっていたが冗談と分かった瞬間に安堵した顔になった。そのまま私はそばに座り込んで空いたお腹に両手を添えて能力を使った。
「時よ。万象の理を覆そうとする私を見逃して」
聞こえないくらいに小さな声でつぶやく時が呼応するように手に力が集まってきた。そしてそのまま私は力を駆使して鷹島君の時間を巻き戻した。するとめきめきと貫かれた部分が元に戻ってきた。
完全に治ると鷹島君は元気を取り戻してすぐに立ち上がった。
「ありがとうございます。本物なんですね」
「当然です。ちゃんと飛ばされてきました」
少しはにかみながらそんなことを言うと鷹島君も同じようにはにかんでいた。その笑顔はなんだか木々に差す陽光のように明るかった。
「よし、移動しましょう」
「そうしたいのだけれど。ごめんなさい。少し待ってもらえるかな」
「え、いいですけど。どうしてですか?」
「まぁ能力の代償よ。今回は運が悪くて両足とも今動かないわ」
私は自分の手で足を動かして見せたが一向に力がはいらないのが分かる。
「それなら俺が担いでいきますよ。さっき、口のほうから大きな音がしたのできっと水が流れてきます。そうなる前に行きますよ」
「え、きゃっ!」
鷹島君はそういうと私をお姫様抱っこをして担ぎ上げ、私はつい変な声が出てしまった。そしてそのすぐに奥の方から大量に水が流れてきた。鷹島君は流れてきた水の方向に向かってそのまま歩き、そのまま誰かと話しているようだった。
「相棒?。聞こえてる?。・・・はい。そうですね。こっちからはちょっと厳しいかもしれません。・・・・・俺は相棒の能力で、はい。なので朱鷺さんだけ。・・・え、わかりました。それで行きましょう。と言うことで朱鷺さん」
どうやら話は終わったのかこっちに向かって話しかける。
「はい。何がと言うことなのもわかりませんが何でしょうか」
「ああ、すいません。相棒と話したんですがくちあたりまで行けば転移してくれるそうなので向かいます」
そう言いながら再び口のほうへ向かって行った。その間鷹島君は私が暇にならないようにするためかずっとたわいのない話をしてくれていた。
ーーーーー
そして何分か経った後、ようやく口のところまでたどり着いた。何度も入ってくる海水に押しつぶされそうになったがそのたび鷹島君は刀を突き立てて踏ん張っていた。
「よし。相棒見えますか?。はい。わかりました。向こうで朱鷺さんを回収する用意はできたそうです」
「え、鷹島君は一緒じゃないんですか」
「はい。俺はこのままこの魚の体内に残って資料を持ち帰ります」
「そう。わかったわ。じゃあ最後におまじないだけかけるね」
私はまた能力を暗唱して鷹島君に向かって能力の一部を付与した。するとその瞬間から視界が一面黒くなってしまい、鷹島君の顔が見えなくなってしまった。
「ありがとうございます。」
感謝の言葉を言う鷹島君がどんな顔をしているのかわからないが私は笑顔で答える。
「ええ」
そしてそのすぐに体が浮くような感じに襲われた瞬間に固い地面に落ちた。
「!。いてっ!」
「だ、大丈夫ですか?」
「ど、どうやらうまく、行ったみたい、だな」
甲板に帰ってきたのが二人の声からわかる。香熾さんはとても心配そうに、秋君はすごく疲れている感じに声をかけてきた。残念なことに今二人の顔が見えないのが運の尽きのようであった。私は痛む腰のあたりをさすりながら今の状態を言う。
「ありがとう。二人ともごめんなさい。今私は能力の影響で眼が見えずに歩くことが出来ないので鷹島君がどうなっているのか教えてもらってもいいですか」
「ああ、ちゃんと伝える。まぁ未来視でどうなるのか、もう見えている。ちゃんと三枚おろしになってるよ」
「・・・そうですか。ちゃんと私は役に立てたみたいですね」
私はそうつぶやき見えない視界を瞼でさらに暗くした。
~~~
朱鷺さんと別れてからほどなくして眼に異常を感じていた。
「???何なんだこれは」
別に先の未来が視えるわけでも、魚眼レンズのように視野が広角になったわけでもなく、けどなぜか視界が青みを帯びていた。
そんなことを考えていると口内から複数の棘が生えてきて俺をめがけて差してきた。
「視界のことは後でだ!。数が多い!。くっ!」
何度切っても無数とも感じられる棘が俺を差してきた。腕や脚にはすでに棘が刺さっていきそこからさらに枝分かれし、筋肉がちぎれるのが分かる。今にも意識が飛びそうになった瞬間に視界一面が青くなった。
「?。なんだ?。あれ、棘が無くなってるし傷もない。まさかおまじないって・・・」
気付いた時には何にもけがはなく元のままであった。視界も変わらず少し青みがかかっているだけである。
「はぁ。やって見るかぁ」
最後にかけて行ったおまじないが何なのか何となくわかったが確証が得られないので実験をしてみることにした。
再び俺にめがけて飛んできて棘を俺は避けもしないで全部突き刺さってみた。
「!?!?」
棘は容赦なく前進を突き刺し痛みが体中を巡るがその瞬間にまた視界が青くなった。そして視界が元に戻ると体には傷がついてなく無傷であった。
「そういうことか。時間が元に戻っているのか。しかも俺だけ」
二度食らって天を仰ぎみた。口の中だけど。しかしこれでよくわかった。朱鷺さんは俺がここで苦戦することを見越してこの能力を授けていったのだと思った。
「そうか。じゃあ遠慮なく使わしてもらうぜ!」
そうして初めに口内から資料を集めに行った。飛んでくる無数の棘は刀で切り倒しながら、突き刺さっても気にしないで俺は魚の歯を一つ切り取った。
「歯はもろいんだな。相棒」
相棒に声をかけると切り取った歯は目の前から消えた。突き刺さっている棘も能力が時間を戻してなかったことにしてくれる。今の俺はうぬぼれでもなく無敵であると思った。
「次は腹辺りに行くか」
体内を下って腹辺りに行き、刀で一部分だけ切り取った。そしてまた相棒に転移してもらう。その繰り返しを何度か繰り返して数分後。
『相棒。もういいか』
『ああ、十分だ。ど派手にやっていいぞ』
『了解!』
許可を相棒から得た俺は今までも痛みを八つ当たりするかのように刀を血がにじみ出るほど握った。なんだか自然と口角が上がっている。
「天音太刀剣術が一つ:円凱弐撃!」
今までにないほどの速さで刀を下から円を描くようにしそのまま弐回、体を三枚におろすように切り刻むと内側はもろかったのか切ったところから形容しがたい色の液体と海水が流れ込んできた。
「あ。そうだ。鱗とか持って帰らないと」
俺は思い出して刀を鞘に納め、外に出てから鱗をはぎ取った。そして真・暁で手を振っている二人に手を振るとそのまま俺は甲板に転移した。
「おつかれ。よくやってくれたな。いろんな意味で」
「そうですね。あの魚は死んでしまっていますがたくさん資料が取れたのでいいです。」
「その鱗もよくとってくれた。ほら、後ろ見てみろ。もう残骸はなくなっているぞ」
そいう割れて振り返ってみるとそこには先ほどまでいた魚は消えていなかった。そして相棒のほうを振り返っていると甲板の上で天井を見ている人がいた。
「朱鷺さん。帰ってきましたよ。」
「はい。よく帰ってきましたね。上出来ですね。」
朱鷺さんは褒めてくれているのはわかっているが俺がいない方向に話していた。
「もうしばらくしたらおまじないは効果が切れます。役に立ちましたね?」
「はい。それはもう。あれが無かったらもう冗談抜きで五十回死んでますね。ははっ!」
「ふふっ」
互いに笑いあっていた俺たちの顔は今回は向かい合っていた。
ーーーーー
そして海底に着き、目的の場所に着いた。あの闘った位置から少し離れたところに位置していた。
「さぁ。乗り込むぞ。」
そういう相棒の合図とともに俺たちは沈んだ船に乗り込んだ。足を踏み入れるとそこはさっきまでいた真・暁とは違った重苦しい空気が鼻腔を征服していった。




