第二話:羽田基地は半壊です
「中に入ってからどのくらい経ったか?。さすがに人を見かけないのは不自然な気がするんだけど」
「そうね。20分くらい歩いているけど、ここの建物意外と入り組んでいてわかりにくいのよ。さっき見た建物のマップを写真で撮ったから、一度見てみようよ」
「そうだな・・・。今いるのがこの西側の第三施設だと思う。このさきは…ん?誰かいるぞ」
一度地図から目を離してあたりを確認すると前方に人の影が見えた。
「あ!ほんとだ。人がいる!おーい!すいませ~ん」
「お、おい。勝手に走っていくな」
墨坪が大声で呼んでいるおかげで向こうの人が気が付いたようだった。正直ここで誰かに会えるのはうれしい。墨坪は「あたしにまかせて!」とか言っていたから任せていたけど極度の方向音痴であった。なのでとても助かった。
「あら?。あなたたちどこから入ってきたの?ここは関係者以外は立ち入り禁止ですよ。」
「?あたしたちはここに新しく配属されてきたんだけど。知らされてないの?」
墨坪と同じ服を着ている隊員は、はっとした表情で何かを思い出したように
「申し訳ありません!すっかり忘れていました。本来ならあなたたちのことを歓迎するはずだったんですけど、以前起こった大規模地震のせいでここが半壊してしまい、隊員、隊長、全員総出で復旧作業していたんです。とりあえずあなたたちを指令室にお連れ致します。」
焦っている様子の隊員は俺らを連れて歩いていると、向こうから別の隊員らしき人がやってきた。
「東雲副隊長!。お疲れ様です」
「お疲れ様です。ん?そちらの方たちは、どちらさまですか?」
「こちらは本日付で配属された方たちです」
「初めまして。あたしの名前は墨坪凉といいます。」
「おれh…じゃなくて僕は鷹島春久といいます」
「ふふ、大丈夫ですよ。そんなにかしこまらなくても。私の名前は東雲香熾といいます。この後にも指揮官から言われると思うけど、あなたたちはこれから私たちの部隊に配属されるからよろしくね。」
東雲副隊長はそう言ってどこかへ行ってしまった。俺はふと疑問に思った。墨坪は能力があり、有用であるだろう。しかしどうして何の特徴もないような俺まで一緒の部隊なのだろうか。そんな疑問は、すぐに吹き飛ばされた。
「指揮官。新隊員をお連れ…しました?」
そういわれて開かれた指令室は閑散としていた。
「あの誰もいないようなのですが。ほんとにここに指揮官がいるのですか?」
「はい。確かにさっきまではここにいたのですが。あれおかしいですね。指揮官は普段この指令室から出てこないはずなんですけどね」
何だと!指揮官はそんなニートみたいな生活をしていたのか。なんだか以前の俺みたいだな。なんて思っていると墨坪があることに気が付いた。
「あそこの角にだれかいない?。なんか座っているような手錠をかけられているような。部屋がうす暗くて見えにくいな。」
「ああ。あの人は先ほどの東雲副隊長のところの隊長です。」
「ええ~!。あそこにいる死にかけの人がですか?」
角で縮こまっているひとは隊長であるらしい。こんな感じでご対面するとは思わなかった。静かに座っているその男は、こちらの視線に気づいたのか。その場を動こうしたが案の定手錠のせいでうまく動けず、その場でもがいていた。その男に近づくと
「なぁそこにいる人たち。ちょっと助けてくれないか?この手錠のせいで動けないんだよ」
「千楽寺隊長。今日も東雲副隊長に縛られているんですね。毎度のことなんでもう驚きはしませんが。」
「え。これ毎度のことなんですか。どうしてそんなことになってるんですか。あ、私は墨坪凉といいます。」
「自己紹介はいい。知ってるから。いや少し能力を使おうとしたら、捕まったんだよ。俺だってがれきとかかたずけて少しでも手伝おうとしただけなのに…」
何かぶつくさ言っているようだがあまり気にしないでおこう。ただこの人からは何か異様な雰囲気を感じてしまう。
「あの千楽寺隊長。指揮官はどこに行かれたかご存じですか?先ほどはここにいた気がするのですが」
「ああ、指揮官ならもうすぐ帰ってくると思うよ。さっき忘れ物とか言って出ていったから帰ってくると思う。」
ニートの指揮官が部屋を出るだと?違和感があるな。なんて思っているとすぐに扉が開き、とてもすらっとした女性が勢いよく入ってきた。
「ああ、少し遅かったか。私の新しい配下の人たちが来る前に用意しようと思ってたんだけどな」
ワハハと笑いながらずんずんと入ってくる指揮官と思われし人物は、一本の刀を持っていた。
「よく来たな。新しい隊員たちよ。私は山風日向。この羽田基地の指揮官をしている。最近、隊員の死傷者数が多くなってきて人手不足気味だったから、ちょうどよかった。ありがとう。私たちは君たちを歓迎する。」
「はい!。ありがとうございます。これからいっぱい頑張ります。」
「はい。俺も精一杯尽力します。」
そう言ってこの後この基地にいる人達を集めてそれぞれ自己紹介したり雑談をして、一日が過ぎていった。
この基地には戦闘をする隊員だけではなく、事態の状況を見て指示を出す隊員、戦いのサポートをしてくれる隊員など多種多様であった。
「そうだ。鷹島、お前にあげるものがある。能力を持たないお前がアイツラに対抗することのできるものを授けよう。うまく使いこなせるかは君にかかってるけどな」
指揮官はそう言ってさっき持っていた刀を俺に託してきた。
「あの正直刀なんて持ったことも実物を見たことも一度もなかったのにどうして託してくれるのですか?」
「それは、君はこの隊で使っている銃を扱えると思ってないからな」
「あはは、そうですか」
この指揮官さりげなく貶してきたな。だがそういった銃火器類はすべて新生物に対処するために元からHPFに志願した人たちにしか扱えないからしょうがないな。
しばらく、わいわい話してコミュニケーションをとっていると墨坪が気になることを言った。
「そういえば、指揮官さん。私たちの家となるところはどこにあるんですか?」
「ああ、言ってなかったな。HPFの規則で専用の寮にこれから過ごしてもらう。基本的には男性寮と女性寮に分かれているから、そこは心配しないでくれ。生活品なんかが不足してなくなったときは、こちらにひとこといってくれれば、外に買いに行ってもいいからな」
「了解しました!。なんか大学生になったような気分ですね。」
そういえば墨坪は本当なら高校2年生であるらしいから、俺と同学年であるんだったな。そんな風に思っていると、
「鷹島さんはそういえば北のほうからいらしていましたね。ご家族とかは大丈夫なんですか。」
向こうから心優しき東雲副隊長が話してきた。少し心が跳ねるような気がした。
「あ、そんなに堅苦しくしなくても大丈夫です。俺のほうが後輩ですし。両親はすでに亡くなっています。家や家にある仏壇などは俺に親切して下さった、おっちゃんたちに任せているので大丈夫です」
「!!ごめんなさい。無神経だったわ。私のことは香熾でいいわよ。あとため口でもいいわ」
「わかった。ありがとう。これからよろしくな」
そういうと香熾さんはほかの隊員たちのところに行ってしまった。指令室は和気藹々とした雰囲気でこのなんちゃって歓迎会は終わりを迎えた。
・・・
「俺の部屋は333号室だな」
そういって見つけた部屋を開けると
「やぁ。調子はどうだい、鷹島春久よ。夜分に申し訳ないね。同じ部隊に配属される同士、唯一の男同士仲よくしような」
そういって人の部屋に不法侵入していたのはうちのたいちょうであった。
「え、どうやってこの部屋に侵入してきたんですか?ここは今から俺の神域になるはずやのに」
「まぁまぁ、そう殺気立たないでくれ。別に何もしようとしてないよ。ただ君に自己紹介をしておこうと思ってな」
そういってこの男はにやりと笑っていた。
「俺の名前は千楽寺アケツミ。今日ここに来た理由は俺の能力を話しておこうと思う。あ、あと俺にはため口でいい」
少し落ち着きのあるようなしゃべり方する隊長は備え付けてある椅子に座ってくつろいでいた。
「じゃあそういうなら。それはそれとしてこの話は明日の説明の時でもいいんじゃないか。今日はもう遅いし、風呂入ってないから俺臭いんだけど」
「明日じゃちょっと都合が悪い。なんせ女子たちがいるからな。別にいても悪くはないんだけど、明日衝撃を受け過ぎない様にするためだな」
「…でどんな能力なんですか?」
「俺には事象改変という能力があって基本的にはなんでもできるんだ」
「何でもできるのか。じゃあこの世界の新生物を撲滅することだってできるのでは?」
何でもできるとはそういうことであるだろう。そんなことができるのならなぜそう言った使い方をしないのだろう
「実はそうしたいのはやまやまなんだが、実は能力者の中には能力を使うと、自身の体に良くないことが起こるんだ。特に世界に対して影響力の高いものほどにね」
「じゃあ、できないということか?」
「出力を落とせば、あるいはほかの能力者に手助けしてもらって直してもらうなら可能ではあるな」
どうやらこの話はうまくはできてはいないようだ。確かに制限がなければ、この世は無法者であふれかえってしまうからな。ただ疑問は残っている。
「どうして今話そうと思ったんだよ。本当は俺とただ仲良くなりたかっただけなんだろ」
本当の目的がこれならおもろいやつなのかもしれん。まぁそんあわけn
「はは、なんだよ。お見通しってわけなのか。そうだよ。さっきのは方便だ。恥ずかしくてさっきはさせいそびれたから今言うぜ。一緒にふろに行こうぜ相棒!」
そ ん な わ け が あ っ た
こうして俺はおもしろ隊長(相棒)と男二人湯を満喫した。




