第二十五話:Fly to Survive
どうも井中です。最近、暑かったり、寒かったりして体調がすぐれないことが多いですがこれからも続けていこうと思いますので温かい目で応援していただけると幸いです。また今回も少し長くなってしまったので時間があるときに読んでくださると幸いです。p.s:これまでの話を少し付け足しして長く変更することがあるかもしれませんが引き続き読んでくださると幸いです
食堂での激動な問い詰めから解放されてから数時間後、あたりは夕暮れから夜になりかけていた。そして俺はあるところに向かっていた。
「ここが航空部隊の人たちがいるところか」
航空部隊の基地は俺たちが所属している地上部隊から少し離れたところにある。埋立地に建設されている倉庫にはいくつかの戦闘機や見慣れない飛行機があり、訓練をしているのか飛行している戦闘機なんかが見える。
俺は持っていた地図を使って、目的の場所に向かっていたがなんと今!路頭に迷っていた。(備考:鷹島春久はちゃんとした地図があってもわからない。)
「とりあえず入ってみるか」
目の前の建物に入ったはいいもののよく場所が分かっていないのでとりあえず入り口をふらふらと歩き、人を探し始めた。なんだか以前にも似たようなことをしたことがあった気がしたが今はそんなことを気にしている場合ではない。
なぜ今ここにきているかというとそれはもう単純な理由である。航空部隊がどんなところなのかが気になったからだ!!。・・・・・・まぁ建前上お礼品を差し上げに行くだけなんだけど。
このお礼品は山風指揮官曰く「世話になったのだから一応顔を出してこい。ついでにこれを加賀紫水士官二渡してきてほしい。中身は見るなよ」といい、紙袋を渡してきた。
別に俺はもう子供じゃないので中身は見るわけもあり、すでに道中でどんなものかをこっそり見た。中には見たこともないような高級そうな菓子折りと重要文書と書かれた封筒がありさすがにこっちはよくないと思い見ることはなかった。
そして今に至る。もうあたりが暗くなってきて夜間訓練以外の人たちはもうすでにいなくなってしまったのかというくらい建物の中は静かであった。廊下をてくてくと歩きながら進むと目の前に眠そうな男の人を発見した。そしてそのまま俺は声をかけた。
「あの?すみません。俺、鷹島春久って言うんですけど、とある部隊のところに行こうと思っていて。あ、一応地上部隊に所属しているものです」
見た目こそそれっぽくないが胸に着けてある徽章を俺は見せた。男は振り返るとなんだか面倒くさそうな顔でぶっきら棒に言う。
「なんだね。君は、いま僕は忙しいんだ」
眠そうにしているだけなのに何が忙しいんだ。なんて言いそうになってしまったが俺は言わずに口を噤んだ。眠そうな男は訝しんだ目で俺を見て言う。
「ここは君のような子供が来るところではないんだよ。帰りな」
「そういうわけにはいきません。俺は今から、・・・誰だっけ?。えぇ~と少し待ってください。・・・あっ!思い出した!。加賀士官と言う人のところに行かないといけないんです」
名まえを思い出すのに手間取ったが、脳を絞るようにしてひねり出し、俺は手に持っている紙袋を眼前に差し出した。すると男の人は少し考えこんでから一言言う。
「ついて来い」
それだけ言うと体を翻してそそくさと歩き始めていった。後ろを俺はついて行くと男から質問をされ始めた。
「はぁ。せっかく部屋に戻って寝ようとしたのに目が覚めてしまったではないか。はぁ、ところでえっと鷹島とか言ったか。なんでここにいるんだ」
「?。さっきも言ったけどこれを渡しに来t」
「そうじゃない。どうしてお前のような奴がHPFにいるんだと聞いているんだ」
男は俺のほうを一向に見ないで静かに怒っているような声色で聞いてきた。いやもっと何の話か端的に言ってくれればすぐに理解できたのになんかやばそうな人だと俺は直感した。
「どうしてって。志願したからですが。なんでそんなことを聞いてくるんですか」
「いや。別に。今時子供でもここに入れるんだなって思っただけだ」
「ふ~ん⤵」
なんだか意味ありげに話しているが終始ぶっきら棒なのは変わりなかった。
「じゃあ何のために戦っているんだ」
「それはもちろんこれまで築き上げてきた街と紡がれた人々の命と彼女を守るためだ」
俺は何もふざけたことを言っていないが真面目に答えていないと思われたのかなんだか真面目に答えろという感じの圧を感じた。
「はぁ。そうか。ならもうそれでいい。頑張れよ。着いたからあとは自分で何とかしろ」
男はそういうとそのままどこかに消えていった。なんかずっとため息をついていてとっても疲れている人なんだなぁと思った。そして俺は目の前の扉をノックをした。この扉だけとても重厚な作りになっているのかノックしたときの音が金属のそれであった。
「入れ」
中からとんでもないほどの低い声が響いてきて俺は思わず身震いをした。もう帰りたいという気持ちを抑えて俺は扉を開き、中に入って敬れしながら挨拶をした。
「お初にお目にかかります!。特別殲滅部隊所属の鷹島春久と申します!本日は山風指揮官からの御礼品を贈呈するためにお伺いしました」
初めて見るその顔は鬼軍曹と言う二つ名がふさわしいくらいの強面で目には傷を負ったのか眼帯をしていた。座っていても感じるその圧は威厳と畏怖の念を抱かざる終えなかった。
「ご苦労である。俺の名前は加賀紫水。一応ここの最高士官だ。よろしく頼む。こっちに来て座っててくれ」
そうソファーに手招く加賀士官。なんか一瞬顔が微笑んでいたような気がした。
「あ、ありがとうございます」
俺は敬礼をやめ、案内されたソファーに座り、持ってきた菓子折りを机に置いた。俺は部屋を見渡すと今いるサイバーパンクな部屋とは打って変わって相当昔の日本様式の部屋づくりの部屋があった。なんて言ったけな?
「ふふ。すごかろう。この畳の部屋は!。俺が金品はたいて作った最高の部屋である。今の子供は知っているのかな。畳はいいぞ!。風情を感じる」
俺がずっとそっちの方を眺めていたからなのか加賀士官が説明をしてくれた。と言うか加賀士官がさっきのオーラから一変し、気前のいい優しいおじさんみたいなノリで俺に話しかけてきていた。さっきの圧はどこに行ったんだよ。
「あ、ああすまない。ここに人を入れることがあまりないからな。つい語りたくなった。でだ。さっきも言ってくれていたがここに来た理由は御礼品だったかな」
「あ、はい。そうです」
俺は今も少し戸惑いながらも持ってきたものを手渡すと加賀士官はその場ですぐに袋を開けた。なんだかすごく今じゃない感が否めなかったがまぁ好きにさせようと思った。
「おお。ようやく寄こしたか。東屋の高級茶菓子。山風には感謝だな。鷹島も食べるか?。持ってきてくれたお礼にいくつか分けてやろう」
「え、いいんですか。ではお言葉に甘えていただきます」
俺は遠慮なくいただくことにした。たいていの人は一生に一度食べれるかわからないレベルで高級である東屋の茶菓子。そんなの食べないわけがない。加賀士官はてきぱきと茶菓子の皿と食器を持ってきて向こうの畳の部屋にセットをした。
「鷹島。こっちだ。そこに靴を脱ぐところがあるからそこで靴を脱いで上がってこい」
「はい。わかりました」
俺は言われたとおりにして畳に置いてあるテーブルに向かい正座をした。加賀士官と向かい合って座るとそこにはすでに茶菓子がお茶とともにセットされていた。
「遠慮せずに食べていいぞ」
「ではいただきます」
そう言って俺は用意してあった羊羹を切って食べた。そして俺は食べた瞬間に意識を失いそうになるくらいの衝撃を受けた。うますぎる。さすが東屋の茶菓子。普通の羊羹では味わうことすら不可能ではないかと思うくらいにもっちりとした触感で口いっぱいに広がる甘さが脳を溶かしていくような感覚に変化していく。
「どうだ。うまかろう?」
「はい!。めっちゃうまいです!」
俺が即答すると加賀士官はうなずきながら幸せそうな顔で羊羹を口にしていた。
そのほかにもいろいろなものを食べさせてもらったがどれも一級品と言う感想が出てきたため割愛させていただく。総じてすべて今まで食べてきたものの中で一番であるということを言ってここを締めくくろうと思う
「最高でした。ありがとうございます」
「いいってことよ。またなんかあったときにここに来な。いつでも歓迎するよ」
「ではまた」
俺はそう言い敬礼をしてから帰路についた。
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鷹島が帰った後。俺は茶菓子の食器だのごみなどを片していた。そしてすべてがひと段落した後に再び紙袋の漁り、封筒を取り出した。封筒には「重要文書」と印刷された文字があり、俺は深いため息をついた後中身を確認した。
「どれどれ。・・・第189回。エヴィリソンの調査記録。七月十日から十五日にわたって太平洋全域に及ぶ日米合同調査が行われた、か。で、日本から4000kmほど離れたところでエヴィリソンと思わしき生体反応があり、今のところ動きは見られていないが今後活動を再開する可能性が高いとみられるか。そしてこれが調査をまとめたものか」
俺は票に書かれた推測事項とこれからの対策について一通り目を通したのち紙を机に置き、お茶を飲んだ。この知らせが来たということはもうすぐ大きな戦いがやってくるということだ。
「・・・。また多くの部下が散ってしまうかもしれないのか」
俺はもう今は前線から退いた身。後方から新しいパイロットを育成する立場で安全であるが空を飛ぶものはそうではない。常に死と隣り合わせであることには変わりがない。
俺は深いため息をつきながら席に戻り、目の前の書類の仕事を再開する。
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帰り道俺はさっき来た道とは違うところから帰っていった。せっかく普段来ないところに来たんだからそれはもう探検するしかないだろ。寮に帰らないといけない時間まで俺はいろんなところを探索した。
しかしあまり面白いものはなく建物の構造は基本的に俺たちと一緒であり、あまり面白くなかった。建物の外に出るともう空は完全に暗くなっており倉庫や滑走路がキラキラと点滅しているだけだった。すると上空のほうですごい音が聞こえてきた。そっちの方を見ると戦闘機らしきものが急スピードで着陸してきた。
俺は好奇心に駆られ暗闇に降りてきた戦闘機のほうに近寄ってみたするとコックピットが開いたようであったが暗くて顔がよく見えない。滑走路が照らすわずかな光を頼りにして顔を見るとそこには思わぬ人がいた。
「あれ!。渡良瀬さん!」
「え、えええ!?。ななな、なんでこんなとこに剣士さんが?!。と、とりあえずここ、こはまずいので格納庫に行きましょう」
そう慌てて言いながら俺たちは格納庫に向かって行った。俺は歩いて向かったが渡良瀬さんは戦闘機を操作して収納していた。その時に見えた戦闘機は使い古されたやつなのか暗い中でもわかるくらい汚れていた。
「よし。これでとりあえず、だいじょぶかな。す、すみません。待ちましたか?」
「いや待ってないよ。格納庫から見える夜空を見てたからね」
「ふふ、そうですか。じ、実は私も、ここから見る夜空が好きなんです」
そう言いながら座っている俺の隣にちょこんと座りこんできた。暗くてよく顔が見えてないけどこの状況を見たら凉にまたなんか言われそうだけどごまかさずに言えば許してくれるだろう。
「あれだね。ここから見る夜空って意外ときれいに見えるよね」
「そ、そうですねよ。きれいですよね」
「うん。俺元は北のほうにいたんだけどそっちにも劣らないくらい星が見えるね」
「そうなんですね・・・。」
暖かいような冷たいような風がこちらに吹いてくる。会話が続かない。何を話したらいいのか考えあぐねていると渡良瀬さんから話しかけてきた。
「そ、そういえばど、どうしてここにいるんですか?」
「ああ~。それはちょっと用事で。俺のとこの司令官がお使いで加賀士官にお礼品を私に来たんだ」
「そ、そうなんだね」
俺はあったことをそのまま伝えると渡良瀬さんはなぜか少し悲しそうな返事をした。そしてまた沈黙が二人の間に訪れた。しばらく星空を眺めていると急に横から声を掛けられてきた。俺はびっくりして数えていた星を見失った。
「あ、あのけ、剣士さんは空って好きですか?」
「ん?。もちろん大好きだよ。空を見ているとなんだか自由になれる気がするし」
「!。私もです!。それにそ、空は私を一人にしませんから」
「一人にしない?それってどういうこと?」
「あ、な、なんでもないです。気にしないでくだひゃい」
俺は今の言葉が気になって聞き返そうとすると渡良瀬さんはしどろもどろになりながらはぐらかそうとしてきた。ふと横を見て、ケータイのライトで照らすとその顔には聞いてほしいような聞いてほしくないような、その境くらいの顔をしていた。
「でも俺は気になるな。その一人にしないということ」
「~~~!!。わ、わかりました。だ、誰にも言わないでね」
俺は粘り強く渡良瀬さんの顔を凝視すると渡良瀬さんは顔を赤らめながら返事をして話し始める。
「わ、私、昔からこんなで感じで人と話そうとするとい、いつも話の初めが詰まってしまうんです。そんな姿にクラスメイトや先生。そして親友までわ、私のことを少しずつ避け始めたんです。きっと気持ち悪かったんだと思っています」
「俺はそんな風に思わないよ」
次第に顔が悲しくなっていく渡良瀬さんに俺は擁護するように話しかけた。すると渡良瀬さんは少しぎこちない顔で笑顔を見せてくれた。その表情からは申し訳なさが溢れていた。
「ほんとにそんな風に思ってないからね。渡良瀬さん」
「わ、わかっています。これでもだいぶましになった方なんです。昔は三語言おうとするたびにつっかえてましたから」
はにかみながら夜空を眺めていた。多分ここに来るまで相当な苦労をしてきたのだろう。しかし俺がどんなに思考をめぐらして寄り添おうとしても壁が厚くて近寄れない。いつも思うのだがなぜ人はこうも人を分かりきれないのだろう。そんなことを思っていると渡良瀬さんが話し続ける。
「そしてある日家族でピクニックに行きました。丘を登って空がよく見える草原で食事をしたり、寝っ転がって流れる雲を眺めていたりしてました。けど私がお手洗いに行って帰ってきた後には両親の姿がなかったんです」
「当時その時はお父さんたちもお手洗いに行ったのかなってお、思ってたんです」
次第に渡良瀬さんからはすすり泣きそうな声が聞こえ始めてきた。
「そ、それでね信じられないとお、思うんだけどね。そのまま草原でね、寝っ転がっていたらね。どこからともなくこ、声がき、聞こえてきて、空を、見ると黄色くなって、その、声は私にこ、こうい、言ったの『君を一人にしないよ』って。そしてめ、目の前が暗くなって目をこすったら目の前におお、お父さんとおか、母さんがば、バラバラになってたのぉ~!」
そういうと渡良瀬さんは瞼の防波堤が壊れて泣き出してしまった。わんわんと泣くその女の子が語った内容は不思議な点がいくつかあったが今は泣いている子を慰めることが一番。俺の胸で泣いている渡良瀬さんの頭を安心させるようになでた。
しばらく撫でているとどうやら泣き止んだようで恥ずかしそうにしていた。俺の直垂は撥水性がよすぎるせいなのか全く濡れていなかった。
「ご、ごめんなさい。お見苦しかったですよね」
「そんなことないです。泣くことは大切です。俺なんかもうしばらく泣いてないんじゃないか?」
場を和やかすように言うと渡良瀬さんは軽くフフッと笑った。
「それでどこまで話しましたっけ?」
「ピクニックが終わったところです」
「そ、そうでしたね。はい。そのあとはわ、私は親族間でた、たらいまわしのように扱われて、いつも一人でした。学校でも相変わらず避けられたり、いないものとして扱われてました」
もう聞くだけで胸が痛い。俺も昔小学校の頃は似たようなことがあったからな。そんなことを思い出した。
「ただ依然と一つだけ違ったことがあって、そ、それが。空から声が聞こえるんです。この声はいつも私の話し相手になってくれて、いつしか声の言う通りにしたらいいことがあったんです。」
「そしてその声に私は導かれるようにして今に至るわけです。ず、ずっと空がそばにいたから私はここまでこれたんです。生きてこれたんです。一人にならなかったんです」
「そ、そういうわけだったんですね、ありがとう。なんだかつらい話をしちゃって」
「いえいえ!。き、気にしないでください」
なんだか少しいやな予感がしてきた。最後のほう何か得体のしれないようなものの気配がしていた。俺はそれを察知し話を切り上げて帰ろうとした。生ぬるいねちっこいような風が顔を通り抜けていく。
「そ、それじゃそろそろ俺、帰らないといけないから戻るね。はは、じゃあね」
「ふふふ。はい。わ、わかりました。きおつけて帰ってくださいね。・・・ツギコソカナラズ」
俺はすっと立ち上がってそそくさと帰っていった。去り際に渡良瀬さんは何か言っていたような気がしたが俺には何も聞こえていない。聞こえたくない。最後に振り返ってみたおぞましい形をした異形の化け物が彼女に憑いているソラの正体なのだろう




