第一話:さらば日常、ハロー非日常
どうも井中です。時間があるときに気楽に読んでいただけると幸いです。
第一話:さらば日常、ハロー非日常
カーテン越しに煌々と光り輝くような日光を背に鷹島春久は布団から起き上がった。憂鬱でけだるげな気分も今日は全く気にならなかった。
「おはよう。お父さん、お母さん。今日から俺、念願のHPFに入隊する日だよ。前に起きた大規模作戦で隊員が多く殉職して人手不足らしいけど、めげずに頑張るね」
俺は仏壇にむかって、挨拶をした。両親は2年前にラナントロス襲撃事件という体長2mくらいのカエルが狂暴化したような生物が大量に襲撃してきたときに亡くなってしまった。そして優しい両親がいなくなってからこの家には基本的にはもう俺以外はいなかった。まぁ猫はいるけど。それに近所のおじさんたちもいるけど。
でもその襲撃時、俺はHPFという人類防護部隊(Human Protection Force)に保護され、俺はそこで初めて作戦に参加している人たちの懸命さを目の当たりにした。HPFという存在はテレビやネットなんかの記事で見たことはあったが実際に見た戦っている人たちは、様々な人がいた。能力を駆使して敵を倒したり、仲間と連携していたり、銃火器を使い抵抗していたり、市民の避難誘導をしていたりしていた。そんな一丸となって制圧しようと動いている光景が俺の目には焼き付いて離れなかった。
血だらけで隊服がぼろぼろになろうとも市民を優先する隊員はその場で見ていた人たちからすると英雄にも見え、俺を助けたお兄さんも決死の姿でいた。
「そんな俺も今日からHPUの一員なんだな。この日のために、今までしてこなかった勉強や体力づくりを頑張ってきたんだもんなぁ」
誰もいない部屋で感傷に浸りながら、事前に支給された隊服に着替え家を出る。
俺は家族を失ってから気を紛らわすつもりで今日という日まで鍛錬をし続けた。生半可な努力ではなれないなんてことはわかっていたがそれでもひたすらにただがむしゃらに鍛錬をしてきた。その甲斐があったのか俺はこうして晴れてHPFに入隊することが決まった。
俺が所属することになっている基地に移動しながら歩いているとふと周りの視線がこちらに向いているのに気付いた。すれ違う人は俺から離れていき、所々で会話が聞こえてくる。
「なんかあの子の着ている服がおかしくない?」
「そうよね。今時あんな武士みたいな服してるなんて」
お綺麗なおばさまたちはクスクスと笑っている。
「武士のコスプレしている人がいるw面白いから写メして友達に見せよw」
「だねwでも顔がちょっとかっこいいかもw」
「うちの彼氏よりかっこいいわw。恰好は痛い人だけどw」
JK3人組はこらえ笑いしながら、こちらを見ていた。
・・・いや確かに服装は漫画や小説で見るような武士の格好であるがそれは仕方がない。隊服として送られてきたんだからいいだろそんなもん。直垂はかっこいいだろ!なんて思って顔を引きつりながらニコニコして目的の場所に向かって行った。
そう先に言っておこう。別にこの直垂は自分で身につけたかったから特注したわけではない。向こうが勝手に送ってきたものなのだ。同封された手紙には「隊服です」と簡素に書かれていて何とも気持ちが籠ってないような気がした。
そんな人からの視線を集めながら歩いて、電車に乗り、飛行機乗って、約3時間。北の村から上京してきた俺はかなり疲労が溜まっていた。住んでいる村から人がいて交通がしっかりと整備されているところまでバスを使い、人生初飛行機は恐怖で体がこわばり死ぬんじゃないかと思い、都会の電車はあわただしく動くアリのようでみんなが俺に注目してきて困ったりして。期待を胸にやっとの思いで着いた俺の新しい職場は・・・
「なんだこの半壊した建物は…」
煌きらびやかな建物を想像していたがなんか壊れかけでした。建物の一部分ががれきと化してぼろぼろであったけど俺にもまだ一縷の希望はまだ残っていた。
「あなたも今日からここに配属された隊員なの?」
元気な声で話しかけてきた青髪セミロング美少女は、にこやかな笑顔を向けて写真を撮ってきた。
ファーストインプレッションはとても重要であることは重々理解しているつもりだ。俺は胸を張り堂々と名乗った。
「ああ、そうだ。俺の名前はジェディ・ウィルソン。日本大好きオタクだ」
「?日本人みたいな顔立ちで武士みたいな服装しているのに?。でもやっぱり最近は見た目で人を判断しちゃだめだし・・・」
「すみません。嘘です。生粋の日本人です。本当の名前は鷹島春久です」
「あっ、そうだよね。冗談だよね。よかった。あたしこれから英語勉強しなくちゃいけないかと思ったわ。」
あたふたしていた姿にいたたまれなくなり俺が本当の名前を自白すると少女は安堵した様子で笑っていた。そんな様子が俺にはまぶしかった。本当に心の底からごめんなさい。ふざけないほうがよかったかもしれないと心の中で俺は猛省をした。
少し笑いながら美少女は笑顔で挨拶をする。
「あたしの名前は墨坪凉。写真を撮るのが趣味だよ。あとね、あたしは手で作ったカメラで相手を見ると動きを止めることができるんだけど、ちょっと見てて」
墨坪と言った美少女は手で枠を作るとそのまま俺のことを見てきた。
「え、本当だ。動けない」
必死に動かそうとしても体がちっともいうことを聞かないのが分かる。なんかその場に固定されている感じである。
「でしょ。ちなみにやろうと思えば会話すらできなくすることが出来るけど、今はそんなことしている暇ないからまた今度見せてあげるね。でそういう鷹島君は何の能力があるの?」
「俺にはそういった能力はないんだ。多少運動神経がいいくらいでな。俺の友達にもそういった能力持ちの人は全然いなかったな」
墨坪凉と名乗った少女から出たその能力というものは俺にはなかったので素直にないと言ったら、墨坪は少し首をかしげて不思議そうな顔をした。
「へぇ~そうなんだ。あたしの高校ではいろんな能力持ちの人たちがいたからそれが普通かとおもったなぁ」
「ああ、そうなんだね…」
俺の住んでいた町は森や林が多く生えているところだったから必然と人と会いにくかったからな。仕方ない。それにしてもなんかとても明るい子だな。とってもかわいいし学校とかでもすごくもてていそうである。
「とりあえず建物の中に行ってみようよ。あたしかれこれ2時間くらいここにいてさすがに写真で撮るものがないよ」
「そうだな。中にだれかいるかもしれないしな」
墨坪がそう元気よく言うので俺も軽く言葉を返してから、墨坪の後ろをついて行った。遠くから吹いてきた風はまだ少し冬の名残を残したような冷たさがあった。
(1)誤字を直しました。少し加筆しました。




