第十九話:鷹島、デートの服がない。
デート回です。長くなりましたが時間があるときにゆっくりと読んでください。
デート当日。鷹島は目が覚めてから焦っていた。
「どうしよう。テツテツ。俺今日着ていく服がないんだけど。直垂で行ったら引かれるかな」
「小僧。なぜそんなことをわしに聞く。頼りになるわけがないだろう」
「そうだよな」
とりあえずこんな時には相棒に連絡をしよう。相談とかしても困らないだろうし。
「相棒。これから俺、墨坪と出かけに行くことになったんですが服がないんです。使わないようなやつがあれば貸していくれないか?」
すると数秒後に連絡が帰ってきた。
「俺の小さくなったやつを今から送る。それを着て墨坪といいデートをして来いよ!」
デートなんて言っていないのにデートと決めつけた相棒はどうやら服を送ってくるようであった。どうやって送ってくるのか考えているといきなり部屋の真ん中が光りだし、消えたかと思ったらそこに一着の服が置いてあった。
「ん?。ああ、送るってそういうことかよ。古のファックスみたいだな」
送られてきた無地の黒い服と白い動きやすそうなズボンに半袖のジャンパーらしきものが送られてきた。俺はそれを着て墨坪と待ち合わせているところに時間通りやってきた。しかし墨坪はまだ来ていないようであった。入り口で待ち合わせているから見失ってるなんてことないと思うんだけど。すると建物から聞きなれた声が聞こえてきた。
「おーい。春久君!。まっ待ったかな?」
息が切れながらそう言う墨坪はどこからそんなものがあったのかというくらいとてもきれいな洋服に身を纏っていた。いつもは見ないような髪形にまとめていて俺は内心ドキドキであった。
「あ、いや、俺もいま来たとこだよ」
「そうなんだね。・・・私服珍しいね。似合っているよ。」
「あ、ありがとう。墨坪もとても似合っててかわいいよ」
俺は相棒からもらったということを伏せて墨坪の服装を褒めた。隊服以外の格好は始めた合ったぶりでったから見慣れてなかったので俺はすごくきょどっていたかもしれない。
「それで今日はどこに行くの?。せっかくのお休みをもらっているから、ゆっくり羽が伸ばせるところに行くのか?」
「ううん。今日はみなとみらいのほうにいって少し散策してから近くにある遊園地に行こうと思うよ」
「分かった」
そういうと俺たちは移動し始めたが何を話せばいいのかわからず、気まずい無言の時間が流れていた。ただ墨坪はなんだかまんざらでもないような顔をしていた。俺はさすがに気まずすぎたので自分の持っている会話デッキを使用することにした。
「なぁ墨坪。今日なんでいきなり俺と出かけようと思ったんだ?。別に俺じゃなくてもほかの休暇のある人たちと行けばよかったのに」
そう話題を振ると墨坪はボソッと言っていたが俺は聞き逃さなかった。
「春久君だけよ」
俺だけ?。え、なぜなんだ。相棒や香熾さんもいるのに俺だけ。意味が分かり俺はいま情けないような顔をしているだろう。にやけが止まらくなっている。相も変わらず墨坪は話してこないし、やっぱり墨坪は俺のことが・・・
「でもあれだからね。今日はこの間助けてくれたお礼もしなくちゃいけないと思っていたからよ」
・・・好きなんてことはないんだろう。でもいい。この先も一緒に地獄を歩んでいくと誓ったから俺はその約束を反故にだけしないようにするだけだ。そんなことを思っていると目的の地にたどり着いたようだ。
「最初はここでいろんなものを見ながらおいしそうな奴があったら買って景色のいいとこに行ってそれを食べようと思う。いいかな?」
俺は異論はなく墨坪の横を歩くような感じで中華街を歩き始めた。平日ということもあって人の数は幾分かは少なく快適な道のりであった。
「あ!。この店おいしそう!。ねぇねぇ。どうこのお店は!」
しばらく歩いていると墨坪は何かを見つけたようで目を輝かして言ってきた。そのお店は大きな唐揚げが売っているお店で出てくる食べ物は顔と同じくらいのやつだった。
「へぇ~。確かにおいしそうだけど。墨坪、お前ひとりでこれを食いきれるのか?」
「そ、そんなわけないでしょ。一緒に食べるの。一個買ってあたしたちでシェアして食べるの。そしたらちょうどいいくらいになるでしょ」
「まぁそういうことならそうするか」
俺がそういうと、墨坪はうれしそうな笑顔を向けて感謝してきた。そして実際に買ってみると、本当に大きかった。いつも食堂で食べたり、乃々葉が作ってくれる量の半分くらいはあった。
「じゃあ先に墨坪が食べていいよ。半分くらいになったら俺にくれ」
「!わかった」
そういうと墨坪は小さな口で大きな唐揚げを食べ始めた。横から見ている俺は墨坪がとても幸せそうな顔をしているのを眺めていた。そしてふと食べていて気付いた。初めに二つに分けてないから半分に行ったら、そのままこれが俺のところに来るわけで墨坪が食べた部分が俺の口に入るってことだよな。あれ、それって間接キスなのでは・・・ソレって 間 接 キ ス な の で わ。
俺は気づいてしまった事実にたじろいでいると墨坪は半分食べたみたいでこちらに手渡してきた。
「・・・。はい。これ。どうじょ。」
顔が赤い。あ、これ墨坪も気づいているな。というかここに来る時点でいろいろと分かっていたな。しかも手渡すときに噛んでいるし。俺は墨坪から受け取ったものを見るとしっかりと半分無くなっており、墨坪の口の歯形の噛み後がくっきり残っていた。
「ありがとう」
俺は意を決して食べることに。食べる瞬間墨坪のほうを見ると、顔がすごく火照っていた。そして一口くってみると、この唐揚げはとてもおいしかった。サクサクの衣と中にジューシーな肉があり、味付けにつけられていた調味料のアクセントがとてもマッチしていておいしかった。
「どう、かな。おいしい?」
墨坪が心配そうに尋ねてきたので俺は親指を上げてサムズアップした。すると墨坪は満足そうな笑顔を見せた。
食べ終わった俺たちは再び歩き始めた。ここでは省略させてもらうがいろんなものをシェアしあって、食べたししていたが、意外にも墨坪の胃は大きいようでまだまだ食べれるって感じであった。
数十分後、俺たちは大方いろんなものを食べてきてお腹が膨れたのでこのまま遊園地のほうに向かおうとして駅に向かって歩いている最中に道の路肩から俺たちを呼んでいる声が聞こえてきた。
「そこのお二人さん。ちょっといいかね。占い。していかないかな」
そういわれ、横を見るとそこには少し見た目が怪しい感じのおばあさんが占いのお店をやっていた。
「うらないかぁ。俺はあまり信じてないほうだけど。どうする墨坪」
「時間もあるからやっていこうよ!」
俺は昔から占いは信じてないほうであったが墨坪はとても乗り気であった。
「じゃあお願いしますね」
俺たちは椅子に座っておばあさんの指示を待った。おばあさんは水晶をあれやこれやしていた。初めのほうはうまくいっているようであったが次第に顔がこわばっていった。
「あんたたちは、HPFのひとたちなのかい?」
「はい?。なんでわかったんですか」
おばあさんは墨坪の疑問には答えなかった。
「よぉし、占いの結果が出たよ。勝手にいろんなことを占ったけど、どれから聞きたいかい?明日の運勢かい?それとも二人の相性かい?」
強張っていた顔をもとの怪しい笑みに変えて言ってきた。墨坪はすかさず相性からって言うとおばあさんはにやりとして言った。
「ひひひっ。お二人の相性はねぇ、最高にばっちりだよぉ。何をしてもうまくいく、そんな感じだよぉ。ひひ、もしかしてお二人は付き合っているのかい?」
「!!。い、いえ。付き合ってはないです」
おばあさんから発せられた言葉に墨坪は顔を赤くして動揺を隠せてない様子だった。
「そうかい。そっちのお兄さんはなんか知りたいことはないのかい?」
おばあさんは俺のほうに向いてきて、尋ねてきたので俺は言う。
「そうですね。この先の俺の運勢はどんな感じなんですか」
占いを信じていない身としてはあまり気にはしてないが一応聞くだけ聞こうと思った。するとおばあさんは俺が思っていた反応とは違った雰囲気で話し始めた。
「お主のこの先の運勢ははっきり言って最悪だよ。わーしの水晶では先の未来が見えるがそこでお主は自暴自棄になってしまうのが見えた。それも近い未来な」
先ほどとは打って変わって印象が変わったかのように話すおばあさんは俺に忠告をしてきた。
「未来を変えるには自分を信じ、持っている意志を貫き続けることじゃな。さすれば必ず手を伸ばし救ってくれる人は現れる」
そういうとおばあさんは「では料金はざっと3000円じゃ」と言ってきて墨坪は詐欺よ!と怒っていた。しぶしぶ俺が払い、その場を後にすると墨坪は愚痴を言っていた。
「何よ。あそこのおばさんは!。もっといろんなことを聞きたかったのに~。あたしの運命の人とかこの先のうれしいこととか・・・」
「まぁまぁ。占いなんて当たらないことのほうが多いんだし気にすんなや」
俺たち駅にまでこうしてしゃべっていた。時間もいつの間にか正午過ぎあたりにすでになっていて、太陽が身を焦がしてくるように照らしてきていた。
電車から降りて遊園地に向かって俺たちは歩き出した。
「そういえば墨坪。俺遊園地なんて行ったことが無かったんだけど何をするところなんだ?」
田舎育ちで近くにそんなものはなかったので俺にとっては当然の疑問であったが墨坪は笑顔で言った。
「楽しいとこだよ。ネタバレはしないでおくよ」
そして実際に遊園地に着くと俺はその壮大でにぎやかな雰囲気に気圧されていた。
「おお~。ここが遊園地なのか。なんかすごそうだね」
「じゃあ、まずはあれから乗ってみようよ!」
そういって俺の手を引いてジェットコースターのある所に墨坪は連れて行った。
乗り終わった後の話。俺は初めて乗ったジェットコースターはぞっとした。乗ったときに締め付けられるような安全レバーは外れたらどうしようと思っていた。動き出した後にガタガタと昇っていくあれも恐怖をあおっているようで怖かった。落ちているときも魂が抜けてしまうんじゃないかっていうくらい体がぞわぞわした。
そんなことを墨坪に話したら普通に笑われた。でも墨坪は俺の反応も見て楽しんでいる様子だったからまぁよしということで。
「次はあっちのジェットコースターにのろうよ!」
ぇ?。墨坪は目を輝かしたようにまた俺の手を引いて連れて行った。そして乗り、終わると、また別のジェットコースターに連れて行った。
「うう。お昼に食べたものが全部でそう。」
目まぐるしい体験をして俺は動けなくなっていた。そんな俺を見て墨坪は言う。
「あはは…。ごめんね。ちょっとはしゃぎすぎちゃったかな。ちょっと休憩しようか。なにか飲み物買ってくるね」
墨坪はそういうと、そそくさと姿を消していった。
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あたしはいま化粧室に来て、ちょっと崩れてしまった化粧を直して飲み物を買うつもりだ。
春久君は遊園地は初めてだけど、あたしが連れまわしたせいでかなり疲れているようであった。
「はぁ」
あたしはため息をついて考えていた。この後、もう少しすると夜になって観覧車がライトアップされる。そこであたしは春久くんにこの思いを伝えようと思っている。けど今のあたしは不安が頭の中にいっぱいで失敗したらどうしようとか、なんとも思ってなかったらどうしようってネガティブな思考ばかりが頭の中を駆け巡っていた。
「いやでもあの時手を差し伸べてくれている時点で、いやでもそれって仲間として・・・。でも普通にソレって・・・。」
考えすぎてもどうにもならないので私はとりあえずその辺のところで飲み物(水)を買って戻った。
春久君はベンチに座りながらぼーっとしていて私は思わずカメラを取り出して写真を撮っていた。するとシャッター音で気づいたのかこちらを向いてきた。
「だいぶ遠いとこまで言ってきてくれたんだな。そろそろ暗くなってきたし、帰るか?」
あたしが手渡した水を飲みそんな提案をしてくる。
「ううん。まだ目玉の観覧車に乗ってないよ。もう少しでライトアップするからそうなったら乗りたい!」
あたしはちょっと子供じみたようにおねだりをすると春久君は快く承諾してくれた。
「でもまだ日が落ち切ってないくらいでライトアップもされてないけど。その間に何をするんだ?」
「まだ行ってないアトラクションを回ってみようと思うよ。いいよね?」
春久君は「いいよ。墨坪の行きたいとこを言ってくれ」と言ってくれたのであたしはお化け屋敷と先ほど言ったジェットコースターに連れて行った。そして案の定春久君はげっそりしていた。
あたりは暗くなり夜って感じがしてくて観覧車も煌びやかに光り始めた。
「じゃあ、そろそろ乗りに行きますか」
春久君はそういうとあたしの手を差し伸べてくれあたしはそれを取った。
そして観覧車にあたしたちは乗り込んだ。静かに上がっていき、聞こえるのは金属がかすかに擦れる音だけ。あたしにはもう無言の時間がずっと続いているように感じた。横に座っている春久君の顔が近くまであってドキドキする。
もうてっぺんまでもう少しというときに春久君が話してきた。
「今日、誘ってくれてありがとうな。俺こういう感じのところに来たことが無かったから、墨坪のことをエスコートはできなかったけど楽しかったよ」
「そんなことないよ!。あたしが誘ったんだから知らない春久君に色々教えるのは当然だよ」
あたしはあはは、と軽く笑う。その間春久君はあたしの顔を見ているのが分かる。きっと赤くなっているんだろうなぁ。
「今日一日中墨坪といていろんな一面を知ることができたよ。明るい性格は知ってるけど、意外にも大食いなところとか、駅で困っている子供を優しくなだめていたりとか。そしてきっと俺のことが好きなところとか」
そう言われあたしははっとした。
「いい、いつから気づいてたの!?」
「いろいろあるけど、確信は俺の手を引いて楽しそうにしてたとこ。普通の男の友達だったらそんなことはしないだろ。しかも顔も赤かったし」
図星であった。そろそろてっぺんに到達しそうであった。
「そっかぁ~。ばれてたか。うん。そうだよ。春久君・・・」
あたしは破裂しそうな胸を押さえて、
「あたしは・・・」
赤くなっている笑顔を向けて、
「あなたのことが・・・」
精一杯の気持ちを伝える。
「大好きです!。あたしと付き合ってください!」
頂上に達し、告白をした。あたしは目をつぶっているから春久君がいまどんな顔をしているかわかんない。戸惑っているかな、気持ち悪いかな。こんな時まで変な気持ちが渦巻いていた。
「・・・」
すると突然口に何かが触れてくるような感じに襲われた。目を見開くとそこにはZERO距離の春久君の顔があった。
「これが俺の答えだよ。よろしくお願いします」
離れた春久君の顔はとても赤くなっていてあたしは目から涙があふれていた。それを春久君はそっと抱きしめて背中をなでていてくれた。
一周し終わった観覧車から降りたあたしたちはほかの人の眼もくれずに手を握って軍の寮に帰っていった。




