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第十七話:焔に手をかざして

今回で警察との合同作戦編は終わりです。次回はその後日談。また、長くなってしまっているので時間があるときにゆっくりと読んでいただけると嬉しいです。

「いったいなー。もう怪我でもしたらどうすんだよ」


「マジで女の子を叩くとかありえないんですけど」


ぶつかった衝撃で人が入っているカプセルにひびが入っていたが、吹っ飛ばされた女二人は意外にもしぶとくまだ元気そうだった。もっと本気で打ってほしかった。


「はぁ、ほんと男って嫌いだわ。見境なしに人を叩くから。あーもういいや。お前も燃やしてやるよ」


そう一人の女が意気込んでいた。春久君はそんな言葉に意にも返さずあたしを励ましていた。


「とりあえずなるべく俺のそばから離れるな!。一瞬で片付ける。ちなみにあれはお前の知り合いなのか。そうであるなら五体満足で生かしておくけど」


今までにないほどかっこいい声とどすの利いた声が同時に聞こえた。


「い、一応知っている人、だよ」


「そうか。わかった。お灸をすえる程度にボコしてくる」


腕を軽く振り、体をほぐすように腰を回して準備運動をしていた。


「ねぇ。モカ、じゃなくてサーティーツー。このままここ全体を燃やしてあたしたちだけ逃げるってどう?。ここでつかまったら()()()にとって不利になってしまわないかな」


「ああん。ここで後ろの()()逃がすわけにもいかないだろ。逃げるにしてもこいつも一緒でないと怒られるだろ。それに私は今、猛烈に目の前の男と墨坪を燃やしたい気分なんだよ」


そう言ってサーティーツーと呼ばれた女は手のひらで炎を出したり消したりしていた。その女の目にはあたしを冷徹に突き刺すようににらみつけていた。


しかしあたしはそんなことはどうでもよくて、聞こえた名前のほうに驚いていた。まさかそんなことはないだろうって思っていたが、カプセルの中がよく見えていないから人違いだろうって思っていたが・・・。


「おい!。墨坪!。どうした。いきなりそんなに過呼吸になって!。いったん落ち着け」


周りが陽炎のせいか揺れて回って見える。春久君が3人に見えるなぁ。


「・・・」


「わかったわ。じゃあさっさと終わらせましょう。香美ではなくて、エイティー!!」


もう一人の女がまたよくわからないナンバーを言うと、一瞬で女の体は消えて見えなくなった。


「!!?。なんだ!。どこに行ったんだ!」


春久君はあたしをかばうように片手を広げてあたりを見渡してくれていた。その様子を、サーティーツーは嘲るようにして見て言う。


「ふふ、くふふ。あは、あっはははっ!。ほんとお前たちは馬鹿だね。ここにいるのは二人だけだと思ったの?そんなわけないじゃん。もう一人、別のところで待機していてもらったんだよっ!」


馬鹿にした言い方をして、思いっきり踏み込みこちらに走ってきた。その手にはナイフが握られており、春久君を完全に刺しに来ているようであった。その瞬間あたしは思考が固まった頭が霧散するかのように冴え春久君に迫っている危険を伝えた。


「春久っ!危ない!」


「!わかっている!」


まさかナイフで突っ込んでくるとは思っていなかったのか、とっさの出来事で春久君は横によけ、刀を抜き、腕をそのまま切り落としていった。


「!!。すまん!」


「え?。ぁ!!」


ドチャ。落とされた腕は床に落ち血が滴っていた。切り落とされた痛みがあとからやってきたのか腕を抑えてもがいていた。春久君も不意の出来事でとっさに謝っていた。


「!。捕まえたぞ。もう逃げられないからな」


「!」


落ちた腕に気を取られていたあたしは背後から現れたさっきの女に固い縄に締め上げれれてしまった。


「ぐっ!。外れないっ!!」


「そう簡単にはずれないよ。精々足掻いてな」


何とかその場でもがいてみたが縄はびくともしなかった。状況を確認するために急いで周りを見るとそこにはもう一人見知った顔がそこには立っていた。


しかしなんだか不安げというかあまり乗り気ではないのかおどおどして黙っていた。そしてあたしと目が合うとすぐに目をそらした。なんだか昔と違うような気がする。


多分エイティーと呼ばれているであろう女は血の池を見ると、ふらっと立ち眩みをしていたが、あたしを捕まえた女はその光景を気にしていないのか、普通に話しかけるように言う。


「ちょっと、サーティーツー?。早く腕を拾って繋げなよ。こっちは作戦通りに捕まえたんだから」


「っ!。わか、っているわよ。でもめっちゃ痛いんだよ。・・・よしこれでちゃんとくっついたな」


サーティーツーは残っている方の腕で落ちた腕を持ち上げて炎を細くして縫合するかのように腕を接合した。そして春久君をにらみつけて言う。


「ふう。よくもやってくれたね。もう燃やしてやる。結局お前の大切なお仲間も捕まっちゃったし。お前は誰も守ることができないんだよ。ふっ、くらいな!」


サーティーツーは長年の恨みを晴らすかのように怒り、そのまま春久君を自らの出した炎で包んだ。その炎は見たあたしは体から異常なほどの汗が出て、かすかに喘ぐことしかできなかった。


「・・・・」



「熱くて声も出ないってかw」


「これじゃあつまんないから、私が炎を強化してもいい?。そしたらもっと面白くなると思うんだよね」


サーティーツーは「いいねそれ!」と言い、女は能力を使ってか炎を大きく青白くさせた。二人は嗤っていたがもう一人の子は笑わず、顔を背けていた。


炎は勢いを増しこちらまで熱が届くようであの時と同じ、あたしはただ眺めることしかできなかった。


なんでいつもあたしはこんな悲惨な目に合うのだろう。どうしてあたしばかり・・・


「なんで、どうしてなの・・」


頬を伝う液体は熱くなり、乾いてしまっていた。


「・・・なんかぼそぼそしゃべっているけど。まぁいいや。じゃあお待ちかねの時間がやってきました!」


見える景色はもはやキャンプファイヤーと見間違えるほどきれいな炎と異常な女二人と寡黙な女一人。あたりは崩落しかけている部屋と親友が入っているであろうカプセル。そして倒れている警察の方々?


テンションの高い女はかつていたような動きであたしに手をかざしてきた。


~~~


燃やされている俺はふと昔の光景が脳裏に出てきた。


=====


「いい?。春久。もし困っている人や助けたい人がいるなら、どんなことがあっても迷わず助けに行くのよ!」


「?どうして?」


「どうしてって。ふふ、それはね。助けてもらったうれしいからよ」


「お母さんも助けてもらったらうれしい?」


「もちろんよ」


「悪い人も助けるの?」


「そうよ。悪い人も心の奥底では助けてほしいって思っているわ。だからね春久、どんな人でも助けるってことを心に刻んでおくのよ」


             【心の星を光らしてね】


=====


そうだった。なんで忘れていたんだろう。確かに目の前にいる奴はまごうことなき悪人だろう。まわりをもやすし、ZLKとかいうメンバーに加担している時点でな。それでもどんな悪人もあの時助けるって決めたじゃないか。それならもう俺のすることはたった一つだな。


「あはっ!。懐かしいな墨坪よ~。前にもこんなことがあったな。あの時は本っ当にお前のことがうざくて、なんでもそつなくこなして周りから好かれていたお前が憎かった」


女は続けて言う


「人望もある墨坪を痛みつけて、ぼろぼろにしたらみんなは私を見てくれると思ってた。だからあんなことしたのに誰もついてきてくれなかった!。私もちやほやされたかったの」


言いたいことを言いきったのか息は切れていた。そして


「でもそんな原因は今から消すからいい。エイティーフォー準備しておけ。それでは墨坪焼却処刑まで5,4,3,2,1・・・・・」


そうカウントがされ、0になる前に俺は瞬時に刀を構え、墨坪の縄を断ち切り、そのまま抱えてその場を切り抜けた。


「え」


目の前で起こったことに驚いているのか目を見開いて、口を押えていた。


~~~


青い炎を纏って出てきた春久君はあたしに手を伸ばし言う。


「ほら。立って。・・アイツは墨坪に対してなんかすごく恨んでいるように見える。お前の存在が気にくわないみたいだけど。俺はそんなことない思っていない」


あたしは手をつかみ立ち上がった。するといきなり春久君がハグしてきた。びっくりしてあたしは変な声が出てしまった。


「むしろありがたいって思っている。俺はお前がいるから、お前とあそこで出会えたからここまで頑張ってこれた。そして多くの人たちを守りたいって思ったんだ」


「・・・」


「お前の過去はこの先も消えることなない炎のように焼き付いているかもしれない。そしてそれは俺にも消すことができない」


「」


「でもともに火の中を進んでいくことはできる。それが苦難の道でも俺は迷わず飛び込んで助けに行く。」


もう枯れ切ってしまった涙があふれていく。


「だからさ。これからは一緒に業火の中を歩んでくれないか」


なんてひどいんだろう。散々苦しい思いをしてきたのに、まだ苦しめっていうの。見損、なった、わ。


「本当になんでこんな気持ちになってしまうの。こんなおかしいことを言っているのに・・・。いいよ。一緒に歩いてあげるよ。その代わりしっかりとエスコートをしてよね」


溢れる涙は春久君を燃やしていた炎を消火していた。


「何二人っきりの空間を作っているのよ!。あんたたちはまとめてここで消してやるんだから。サポート!」


そう言うと二人の女の手から勢いよくこちらに火の玉が飛んできた。


「墨坪!」


「わかってる!」


あたしは涙をぬぐい去り、飛んでくる玉をあたしたちは左右によけた。


「ちょこまかと動くな!。おい!!エイティー。どこに行ったアイツ!!!エイティーフォー!。」


「わかっているわ。まずは墨坪のほうからっ!」


「当たらないよ!。そのまま固まってな」


あたしは飛んできた火の波を飛び越え、手を構えて相手を捕捉して動きを封じた。


「春久君!」


「ああ」


「っ!。しまっt。ぅ」


春久君は急接近してみぞのあたりを殴って気絶をさせた。今のあたしたちはまさに阿吽の呼吸かのように動き、敵を翻弄していた。


「クソッ!なんで!なんでなんでなんで!!!!どうしてこんなことになるんだよ!!!!もういい。すべて燃やしてやる」


何もうまくいかないことにいら立ちを感じて、自暴自棄のようになっているように見える。そうして腕を上げて大きな火球を作り出した。さすがにまずいと思い、あたしは手を構えて動きを封じようとしたその瞬間、目の前に人影が出てきた。


「もうやめようよ!。モカちゃん!!。もうそれ以上したらうちたちはもう後には引けなくなちゃうよ!!」


「うるさいっ!全部消し飛んじゃえ」


苦虫をかんだような顔をして腕を振り下ろした。落ちてくる巨大な火球をあたしたちは見ることしかできなかった。


「!」


「くっ!間に合わない!」


するとその瞬間に落ちてきた火球がいきなり消え去ってしまった。


「もうやめよって言ったじゃん!。なんでここまでするの!もう無理だようちたちはもう頑張った。・・そこの剣士の人お願いあの子を止めて」


春久君はそういわれると戸惑いながらも先ほどと同様に距離を詰めてみぞに一発叩き込んで気絶をさせた。


「・・・若橋さん。どうして助けてくれたんですか」


あたしは疑問に思い、そう尋ねてみると「うちにできる償いよ」と言い残し、そのまま倒れてしまった。


「ふう・・。終わったのかな」


「いやまだだ。早くここから脱出しなければ」


そうであった。しかしあたりを見渡すともう出口は見当たらなかった。


「とりあえずカプセル内の人質を救出する。墨坪は周りに出れそうなところがないか見てきてくれ」


そう言われあたしは少し周囲を見渡しに行った。


~~~


俺は急いでカプセルに近づき、人に当たらないように刀で破壊をした。


中から出てきたのは一糸まとわぬ可憐な美女であったが今はそんなことを悠長に考えている時間ではない。俺は着ていた直垂を羽織らせて背負い、墨坪のことを見ようとしたら・・・


「あれ?。さっきまでたくさんいたはずなんだけど?」


見渡すとそこにはもう誰もいなくなっていた。さっきまで戦っていた女もいなくなっていたし、当然墨坪の姿もそこにはなくなっていた。あれここそんなに遠くなかったはずなんだけどな。


すると向こうから声が聞こえてきた。本当に必要な時に聞こえてくる安心する声が聞こえてきた。


「大丈夫か。相棒!。助けに来たぞ」


幻覚でも見え始めたかのようにそこには人が立っていた。千楽寺隊長は満身創痍でぼろぼろで吠え掛かっている隊服を身にまとっていた。そして今回も目から血が溢れてきていた。


「どうしてここにいるんですか。さっき見た時からそんなに時間が経っていないのにぼろぼろにもなって」


「助けたいって思ったからだよ。それ以外ない。じゃあすぐに脱出するぞ」


クールな感じで言うとあたりはまばゆい光に包まれ、気づいたら俺たちは地上に出ていた。


「二人とも大丈夫ですか!?」


心配そうに香熾さんが声をかけてきた。その声を皮切りに周りにいたすでに脱出済みの人たちから労いの言葉をかけてもらった。


「友里!!」


すると向こうから白浜警部がこちらに飛んできた。俺はゆっくり地面に下ろし、最後の人質の身柄を白浜警部に託した。白浜警部は近くにいた警察の皆様に慰めてもらいながら声を抑えながら泣いていた。


「ここは白浜警部と警察の皆様に任せて、俺たちは墨坪のほうに行こう」


相棒は俺たち二人にいい、墨坪がいるほうに案内してもらった。


「こちらのテントのほうで休んでもらっています。それでは」


案内人の人はそういうと立ち去り、俺たちはテントに入った。そしてそこにはすでに元気そうにしている墨坪がいた。


「あ、春久君。よかった~。無事だったんだね」


「よかった。お前も助けてもらってたんだな」


そして俺は涙を流していた。周りにいた人たちもいきなりどうしたんだといわんばかりに慰めてくる。


「お、おいなんで泣いているんだよ!?」


「すみません。でも俺はちゃんと墨坪を守ることができたんだなって思ったら、なんか涙がとまらなくえ」


ああ、今の俺はすごく情けない顔をしているのに特別殲滅部隊の三人は優しく慰めていてくれた。


そして俺はそのまま暖かい空気に身を包まれて眠ってしまった。












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