第十五話:嵐の子
かなり長くなりました。時間があるときにゆっくり読んでいただけると幸いです。
階段を上り二階へとやってきた。結局階段を上ることにしたけど、何十名かは廊下のほうを進んでいくそうだ。
「階段を上ってきましたが、なんか明るいですね」
「そうだな。さっきの道が暗すぎただけだ。それにしてもなんだか固そうな扉がいっぱいあるな」
「ここは何かを閉じ込めておくような部屋に見えるね。僕の感がそういっているから違いないよ」
”キラッ”みたいなエフェクトを振りまいて決めポーズをしてくる保良柳をあたしたちは無視して部屋を開けてみた。先ほど春久君が東雲副隊長からメッセージで人質がいること、三人救助したことと、残りの人質を探してほしいなどが送られてきた。
「・・・ここの部屋には誰もいないよ。中はなんか誰かいた痕跡はあるけど」
「こっちの部屋にも誰もいないな。なんだか無機質な部屋だな。」
その後も部屋を見て回ったが見た部屋すべてはもぬけの殻であった。人がいたような痕跡はあれど何もなかったことに疑問を感じていた。
「というか警備の人やさっきの武装した奴らもいない。不気味だな」
「だね。しかも意外とこの施設でかいからたくさん部屋があったら探すのに日が暮れちゃうよ」
春久君も同意するかのようにうなずいていた。警察の人たちも怪しんではいたが、結局この二階の部屋には何もなく収穫ZEROに終わった。
そして三階に行こうとしたとき保良柳さんが待ったをかけて言った。
「ちょっと待ってくれ。さっき一回に残った部隊から連絡があって、どうやら地下に進める階段があったらしい。もしかしたら人質はこっちのほうに囚われているのではないか?」
「確かにその線もありそうだな・・・」
「そうですよ。そうに違いありませんよ。なので僕は地下に下って行くほうがいいと思うな」
何か勝ち誇ったような顔であたしたちに提案をしてくる。顔がうざい。
「ただなぁ、三階にはなんかあるような気がするんだよなぁ。俺の感がすごくいけって言ってるんだよなぁ」
「それなら地下に行った後でまた戻ってくればいいじゃないか。」
「それでも・・」なんて言って春久君はとても渋っていた。ここは気遣いできるアピールをしておこう。
「ん~。わかった。じゃあ先にあたしと保良柳さんたちが地下に行っているよ。で~春久君と数名の護衛を付けて三階を見に行ってみてくれる?」
「え、そしたら・・・墨坪が・・」
こんな時まであたしのことを心配してくれているのだろう。でもあたしはそんなに弱くはない。
「大丈夫だよ。あたしも強くなったし、今はたくさんの味方がいるしあたしは死なないよ」
「そうか・・・・・・。じゃあ任せるよ」
春久君はしぶしぶ納得してくれたようで、そのまますぐに三階のほうへ行ってしまった。
「では何人かはアイツの後について行ってくれ。行かないものは僕たちについてきてくれ」
そう言うと五、六名ほど上へあがっていき、あたしを含めた残りの人たちで地下に向かって行った。
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「ここのフロアは随分と厳重な警備がされていますね。さきほど鷹島君たちのほうから二階は何もなかったといっていましたし、三階に来てみましたが・・・」
「ああ、そうだな。ものすごい向こうのほうで銃声音が聞こえてくるな」
私たちはただいま三階にとらえられている人質を救出しに来ていました。
「向こうでは誰かが戦っているかもしれません。私たちも加勢に行きましょうか。ここにいる何名かは扉の中を見て回り、人質並びに重要そうな手がかりを詮索するように。千楽寺さんたちは私と一緒に来てくれますか」
「もちろんです。俺たちはもともと戦って殲滅するのが仕事ですから」
私も同意してそのまま銃声の聞こえるほうへ向かって行った。
「?向こうからも敵が来たぞ!!手が空いているやつ今すぐ向かい打て!!」
どうやらこちら向かっていることが気づかれてしまったようだ。冷静さを欠かないように落ち着いて私は一度深呼吸をした。
「盾持ちは前衛で防御をしてくれ。それ以外の者は催眠弾入りの拳銃で相手を無力化してほしい」
「「「了解しました」」」
その場の各員は白浜警部の指示で瞬時に行動し、敵を制圧していった。私や千楽寺君も同じように拳銃を握り敵を制圧していった。
「千楽寺君。この拳銃、催眠効果強すぎませんか?かすっただけで寝てしまっているのですが・・?」
「ん?。なんて言っているか聞こえないんですが」
銃声音が大きすぎてどうやら聞こえていないようであった。あとでまた聞いてみましょうか。
しばらくすると銃撃戦が激化して、相手もこちらも互いに負傷者が出てしまってきた。周りを見ていたその瞬間敵の弾丸が顔をかすめて行った。
「っ!!」
「おい!。大丈夫か。今手当てする。弾が顔をかすっただけでよかった。もしお前に何かあったら・・・」
心配そうに声をかけてくる秋君。こうして顔の傷を治してもらっているのは二度目。どこか懐かしさがこみあげてくる。
「よし。時間を巻き戻して直しておいた。あまり無茶はするな」
「ありがとう。千楽寺君。ほかの人たちもこのまま治療してもらえるかな。けがが悪化してしまう前に。お願いできますか?」
私がそういうと了承したようにうなずいて、他の人のところへ行った。その後ろ姿を見ながら私は昔のことを思い出した。
=====
千楽寺秋との出会いは幼き日のことであった。
「すみません。先日隣に引っ越してきた千楽寺と言うものです。ご挨拶にやってきました」
私の家はとても裕福で立派なお屋敷が立っています。今考えると秋君のお母さんはとても勇敢だったかもしれません。私がその立場であれば怖くて行かなかったかもしれないです。
当時の私はインターホンのカメラ越しに彼らのことを見ていて、家の執事やメイドが玄関に向かって行くのが見えたので私はついて行きました。
玄関が開くとそこには手に菓子折りを持った女性と静かそうな男の子がいました。
「改めて自己紹介させていただきます。先日隣に引っ越してきた千楽寺嵐の妻、千楽寺春奈と申します。こちらは息子の千楽寺秋と言います。ほら、挨拶をしなさい」
お母さんは優しく言うとその子は小さな声でしゃべりました。
「初め、まして」
声を聴いたときとても怯えているのが何となくわかってしまった。今となってしまえばなぜあの時怯えていたかわかるが、当時の私には知る由もなかった。ただ少しかわいそうだなと思って私は声をかけていました。
「ねぇ。秋君って言っていたかしら。よかったら今から一緒に遊ばない?。執事さんいいですわよね」
私がそういうと執事は焦ったかのような反応をしていたがしぶしぶ了承し、秋君も小さくうなずいて一緒に庭で遊びました。兄が使っていたボールや追いかけっこをしてとても楽しい時間を過ごしていました。
その後も私は何度も家を抜け出して隣の家に遊びに行き、秋君と一緒に過ごしていました。過ごしていくうちに次第と秋君は心を許してくれたのかとても親密な関係になっていきました。
しかしだんだんと執事やメイドさんたちが私を止めるようになっていきました。理由を聞いてもいつもはぐらかして話をそらし、別のことで気を紛らわそうとしてきました。
頼りにならないと思い、思い切ってお父様に理由を尋ねました。するとお父様は淡々と冷たく言いました。
「あの家族とは関わってはいけない。もし関わりを持ち続けるといずれ災厄が我が一族にも降りかかるだろう」
この時はどういうことかはよくわかっていませんでした。子供ながら理解しようと思っていましたが結論は出ず、考えるのをいつの日か諦めました。
そして別のある日、いつものように隣に行こうとしてこっそり門を抜けようとしました。すると突如後ろから何かが押し倒してきました。
「よし。今すぐこいつを縛って車に運べ。見つかる前にずらかるぞ」
「了解しました!。ぐへへ、こいつを人質にすればガッツリ金がもらえるぞ」
その声が聞こえた瞬間、誘拐されるんだなと思いました。私は顔を地面に押さえつけられた衝撃で鼻を強打し、ほほがすりむき、目からは知らぬ間に涙が流れていました。
車に押し込められ、抗うことも許されなかった私はずっと泣きながら心の中で誰かに助けを乞いていました。しばらくすると車はどこかもわからない廃工場に着き、私を乱暴に下ろし、中へ連れて行きました。
そこは暗く誰にも声が届かないような暗い場所のように感じました。聞こえるのは誘拐した人たちの話声だけでした。
身代金はどのくらいにするのか。うまくいった後どうするのか。私の体を使うとか。臓器を売りさばくとか。聞いているだけでも体の震えが収まらないような会話が続いていました。
外が暗くなりました。
もう私はこの時には助からないと悟り、お父様の言ったことが分かったような気がしました。
あの時家をこっそり抜け出さなければ、秋君と遊ぶことなんてしなければ、千楽寺家が隣に引っ越してこなければ。そんな風に考えが浮かび、絶望していました。
すると一人の誘拐犯が深刻そうな表情をして、仲間に話していました。
「やばいです!!。お頭。門の前で見張りをしていたやつらがいなくなっていました!。どこに行ったのか探したんですけど、どこにもいませんでした!」
「何をふざけたことを言っているんだ!。そんなことあるわけがないだろ。サツも来ている様子はないし、お前の見間違えだろ。おい、手の空いているやつはいるか!。急いで門の警備を・・・」
そう言いかけた瞬間、工場の外で人とは思えないほど恐ろしい悲鳴が聞こえてきました。
「お、おい。何だ今の声は。誰か外を見てこい」
あまりの急な出来事に私を含めたその場にいた人たち全員が、とんでもない恐怖が全身を巡っていました。すると外から帰ってきた人がおびえ泣きながら、伝えました。
「侵入者です。たった一人の子供しかいませんが、俺以外、全員その場で消されました」
伝え終わると糸が切れたようにうなだれました。
「おい!どうした。・・意識がなくなっている。」
お頭と呼ばれた人は、その場にいる仲間を全員呼び、入り口で侵入者をハチの巣にしようとしていました。そして月明かりが差し込み、その人影が中に入ってくると同時に手に持っていた銃を乱射し始めました。ロケットランチャーや手榴弾も放たれ、入り口は大量の煙で覆われていました。
「やったか!」
攻撃をやめ、全員が確認をしようとしたその瞬間、何かが通り過ぎ誘拐犯は全員その場に倒れた。
「大丈夫だったか?。もう心配ないよ」
優しく告げられた言葉が私の心をほだしていくように感じ、同時に意識を失った。
目が覚めると私は病院のベッドで寝ていた。隣で座っていたメイドさんは起きた私に優しく抱擁して、なでていました。
「よかったです。お嬢様。お怪我はないようですね」
「え?。あれ私は顔をけがしていたはずでは?」
「何を言っておられるのですか。どこもけがはしていませんよ」
不思議に思い、私は別のことを聞いた。
「私はどうしてここにいるんですか?。誰が連れてきたのですか?」
「・・・。お隣に住んでいる千楽寺さんの息子さんです」
何か言いにくそうに言い残して、その場を後にしていきました。
退院し、家に帰るとお父様が私のことを書斎へ呼んでいた。どんなことを話すのだろうかと思っていると、そこには一人の子供がいた。
「あ、秋君」
「香熾。元気になったのだな」
どこかよそよそしい感じで話してくる姿に私はなんて声をかければよいかわからなかった。そんな中お父様が沈黙を破った。
「千楽寺秋。昨日の件は・・すまなかった。勝手におぬしを悪者にしてしまい。娘を助けていただき本当に感謝している」
「いえ。とんでもございません。俺にできることをしただけです」
お父様は十にも満たない子供に頭を下げていた。私がどうしてこのようなことをしているのかを聞くと、お父様はゆっくりを話した。
「お前がいつもこっそり千楽寺家に遊びに行っていたのは知っていた。ただいつも帰ってくる時間になっても帰ってこなくて、外に出てみると千楽寺秋が何かを探しているようにうろうろしていた。私はきっとこいつが悪いことをしたと思い込み、問いただしたんだ。けど違っていた。千楽寺秋も香熾のことを探していたのだ」
「香熾も助けてもらったときに気づいただろう。千楽寺秋には特殊な能力があることを。だから私は願い縋ったのだ。どうか娘を助けてほしいと」
私はこの時に初めて特殊能力というものを知った。そこからは私も体験したことだった。
秋君曰く、私の居場所を突き止め、神速で移動し、門の見張りを一時的に亜空間というところに誘い、空間を振動させ恐怖を引き立たせ、誘拐犯の筋肉と意識を限界まで強張らせて解放し、その反動で意識を刈り取ったそうです。私が意識を失ったのも同じ原理で、そのまま私の顔のけがを直したということらしい。
「ほんとに感謝してもしきれないよ。千楽寺秋君。君さえよければ香熾とこれからも仲良くしてもらいたい」
そうお父様が言うと秋君は嬉しそうに言った。
「はい。喜んで。今度妹もこっちのほうに来るんで一緒でもいいですか?」
「ああ、いいともうちにいらっしゃい。・・・すまない。私はこの後仕事でね。先に失礼する。では」
そう言って和やかな雰囲気のまま話は終わった。取り残された私たちの間には少し気まずい空気が流れた。その空気を断ち切るように秋君は話した。
「まぁ、そういうことだ。何事もなくてよかったよ。これからも俺が君のことを守っていくよ」
半ば告白みたいなことを言われ、私は胸が”ドクン”と高鳴り顔が火照ってしまった。そのひたむきにまっすぐな顔は今でも鮮明に思い出すことができる。
そして私はそのまままた意識を失ってしまっていた。
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「なにぼーっとしているんだ。香熾。全員けがは直しておいたぞ」
「ああ、ごめんなさい。少し昔のことを思い出していました」
「大丈夫ですかな。東雲さん」
少しぼーっとしすぎていたのか周りの人たちが心配そうにこちらを見てきました。そして知らぬ間に結構敵を制圧していました。おいて行かれないようにしなければ。
すると何やら向こうのほうから聞きなじみのある声が聞こえてきました。
「だいぶ数が減ってきたな。大丈夫か、親衛隊二号、三号、五号」
「ええ、大丈夫です。一号が傷口を直してくれますし。」
「ですね。それよりも敵もこの辺は一掃しましたね」
「そうだな。・・・少し待て角に誰かいるぞ」
向こうもこちらに気づいたようです。私たちも脅かさずにゆっくりと顔を見せました。
「!?。あれ香熾さん。それに相棒も」
「白浜警部まで!。どうしてここにいるのですか?」
「やはり、君たちでしたか。よく敵を制圧できましたね」
白浜警部が心配そうに部下に声をかけていました。それに部下もとい親衛隊四号と呼ばれる警官は言う。
「俺たちは春久隊長の親衛隊。このくらいの傷は何ともありません」
「そうです。私たちは春久隊長の感を信じてここまで来たんです」
やいのやいのと話す親衛隊の人たち。白浜警部も少し困り顔で対応に困っていた。千楽寺君もなんだか気にしていないように見えますね。
「アケツミ隊長!。多分このフロアには人質がいる気がするのですが・・」
「ああ、ここにいるはず。さっき透芯眼で見た時にこっちにいるように見えたんだけど。そっちのほうにはいたか?」
「いやまだ見つかっていませんね」
すると白浜警部のところに一本の連絡がきた。
「人質の方を見つけました。大至急こちらに来てもらえますか?」
その連絡を受け、私たちは少し安堵しました。そして連絡を受けたところへすぐに向かいましたがそこには誰もいませんでした。
「ん??。誰もいませんな。」
するといきなり私たちのいるところの床がいきなりなくなりました。みんな真っ逆さまに落ちていき、暗い場所にたどり着きました。
「警戒を怠るなよ。親衛隊!」
「各員戦闘の準備を!!」
周りにはたくさんのZLKのメンバーと思われる人々と得体のしれない新生物と思われる生物が囲っていました。その中に指揮を執っていそうな人が前に出てきました。
「ようこそ。警察各員。こんなにもあっさりと罠に引っ掛かるなんて、大したことが無いんだな。・・まぁいい。今日が君たちの命日だっ!!」
そう言い終わると、その姿が消え周りにいたやつが襲ってきた。吹き抜けた天井の明かりが私たちを煌々と照らしていた。
こんにちは。井中です。今回初めてまともな過去回想っぽいものを書きました。何か変なところや誤字脱字がありましたらご報告していただけると幸いです。




