第十三話:作戦名ー超合同突撃作戦~警察とHPFは仲良くできるのか?~
「・・・ぼ。・・つぼ!。墨坪!」
誰かがあたしの名前を呼んでいる。ぼやけた目で周りを見ると車内であり、隣には春久君があたしの肩を心配そうに揺すっていた。
「おい、大丈夫か墨坪。寝ているから着くまで起こさないほうがいいかなって思ったけど。なんかすごくうなされていたから。起こしたんだけど。なんかすごいうめき声が聞こえていたんだけど」
「え?。あたしそんなにうなされてたの。ごめん。気づかなかった」
千楽寺隊長たちも心配そうにこちらを見ていた。
「大丈夫ですか。墨坪さん?。やはり外で待っていたほうがいいと思うのですが」
東雲副隊長があたしの身を案じてそんな提案をしてくれた。
「いやもう手遅れだ。研究所に行くことが決まった時点でどこで待とうが結果は変わらない」
・・・いやあたしこれから死ぬみたいなこと言うじゃん。
「それでもその世界線にならないように墨坪を守るのがするのが俺の役目ってわけだな!」
春久が胸を張ってお調子ものっぽく二かっと笑って言った。
その姿はもう見慣れているはずなのに、あたしの目にはまぶしく映ってしまった。
でもいくつか疑問に思った。なんで春久があたしを守ってくれるみたいに言うんだろう?
「というか、どうしてあたしを守るって言っているの。あたしもうそんなに弱くないと思うんですけど」
「?ああ、そっか墨坪は寝ていたから知らなんのか。まぁそれはだな。今までの世界とは明らかに違うのは、相棒の存在なんだ。実を言うと今までで一度も鷹島春久という男に一度も出会ったことがなかったんだ。だから今回は今までとは違った結末になるかなぁ~って思っている」
「そう。つまり俺はちょっとしたイレギュラーな存在らしい」
千楽寺隊長はフラットに言って、春久君はやはりといった感じか、ムフーっといわんばかりに胸を大きく張った。すこしだけ期待しておくね。
「もうすぐ目的地に着きます。着いたら向こうに待機している突撃部隊と合流してくださいね」
「了解致しました。ここまで私たちを運んでくださり大変ありがとうございました」
「ありがとうございます」
運転手さんはフロントミラー越しに笑みを浮かべて軽く会釈をした。
車を降りてから向こうに見える突撃部隊らしい影に向かおうとしたら千楽寺隊長があたしたちを引き留めた。
「ちょっと待ってくれ」
「?どうしたんですか。そんなに切羽詰まったかのように言って」
「何か忘れものでもしたんですか?」
東雲副隊長がそばでほくそ笑んでいた。
「!ああそうなんだよ。確か車の中に飲みかけの珈琲缶を・・・じゃなくてお前たちに一つだけ頼みたいことがある」
「頼みたいことですか?」
「ああ、今からZLKの研究施設に突入するわけだが、そこで奴らが行っている研究データを抜き取ってきてほしい」
千楽寺隊長は少しおちゃらけた返しをした後、いつにもまして真剣な眼差しであたしたちにまるで重大なことのように言った。
「そんなデータってどこにあるんですか?そもそも建物の概要もあまりわかっていないし」
「そうですね。鷹島君の言う通りだと私も思うのですが。あと相手方はこちらの侵入に気づいてデータを持って逃げてしまうかもしれませんよ」
あたしも春久君や東雲副隊長の言う通りだと思った。
「それについて大丈夫だ。ここにいる奴らがデータを消すことも持ち出すこともないだろう。その辺は警察の人たちがやってくれている。だから安心してデータを盗んできてほしい。写真でも紙でも何でもいい。ただ無理だけはするな。これだけは守ってほしい」
「了解しました」
そう言ってあたしたちは了承をして警察の人たちのところへ向かった。
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「ここまでご苦労様です。えっと特製洗濯部隊?の御一行様方!」
こちらが着いたとたん元気で威勢のいい声が聞こえてきた。最後のほうにはとても失礼な言葉も飛んできたような気もしたんですけど。それに対して千楽寺隊長が先陣を切って挨拶をしてくれた。
「こちらこそお待たせしてしまい申し訳ありません。あと私たちは特別殲滅部隊です。私の名前は千楽寺アケツミと言います。こちらにいるのは私の部隊の仲間で右から東雲香熾。鷹島春久。墨坪凉。と言います」
あたしたちは軽く向こうの方たちに向かって会釈をした。するとここの警察の部隊の中で一番立場が偉そうな人がこちらに来て、挨拶をした。
「どうも特別殲滅部隊の皆様方。わざわざこんなところまで来ていただきありがとうございます。私はここで指揮を担っている白浜透治警部と言います」
白浜。そう聞いてあたしは体が震えた。
「僕の名前は保良柳隆斗。今年巡査部長に昇格したんですよ。というかきれいなお姉さんとっても美しいですね。これが終わった後一緒に飲みに行きませんか?」
「結構です」
東雲副隊長は笑顔のまま丁寧に誘いを断っていた。
「そうだぞ。香熾さんは任務が終わったら俺たちと打ち上げをするんだから。そんな下手なナンパはやめていただきたい」
「なんだとこの下っ端が!。微塵も役に立ちそうにないような恰好をしているくせに」
「うるさい。直垂を馬鹿にするな。意外と動きやすいし、これが俺の隊服なんだよ。君こそなんだその変な帽子は。まるでマジシャンみたいだな」
「これは僕の先輩から預かり受けた大切な帽子なんだ。貴様とは重要度合いが違う」
春久君は保良柳さんといがみ合いをしていた。二人ともなんかどうでもいいようなことまで張り合い言い合っていてさすがに千楽寺隊長と白浜警部が止めていた。
「おい。相棒これから合同で突入する仲間なんだぞ。これ以上警察の人たちとの溝を深くしないでくれ」
「保良柳もだぞ。あちらは完全善意でこちらに協力をしてくれているんだ。今後も頼るかもしれない人たちに無礼を働くな」
二人から叱咤を食らい春久君と保良柳さんはしょんぼりしていた。あたしと東雲副隊長は二人をしり目に笑った。
「とりあえず突撃の作戦を立てたいのだがいいかね。HPFの部隊の方々?」
「はい。大丈夫です。こちらとしてはどのようにしてもらっても構いません。たいていのことでは死にませんから」
「千楽寺君?。何勝手なことを言っているのですか?。鷹島君やあなたとは違って私や墨坪さんは普通の女性ですよ??」
「あ、はは。まぁそれなりでしたらなんでもします」
千楽寺隊長は東雲副隊長に圧をかけられて屈していた。
「では千楽寺さんと東雲さんは私たちとともに正面入り口から突入を、鷹島さんと墨坪さんは保良柳巡査部長たちとともに裏口から侵入していくという感じでもよろしいでしょうか?」
「え~~。僕はこんなやつと一緒に突入するのか?いやだな~。足手まといがいて」
「保良柳巡査部長さん。もうすぐ始まるのにそんなわがままを言わないでください」
「そうですよ。噂によると鷹島さんは相当な剣術の使い手らしいですよ」
「そんな人に任せてもらったら私たちは安心できますよ。保良柳巡査部長の能力と比べてね」
彼の部下らしい人がなだめていた。そんな姿を春久はにやにや見ていた。何考えているか何となく読めてしまうあたしは異常なのだろうか?
「わかりましたよ。しょうがないですね。今回だけだからな鷹島春久」
「おう。お互い頑張ろうな。怒られないように」
先ほどの言い合いはどこへ行ってしまったのだろうか。春久君はもう吹っ切れたのか切り替えて任務に向き合う姿勢になった。
「では作戦名は超合同突撃作戦~警察とHPFは仲良くできるのか?~。全員これでいいかね?」
そう合意を聞いてきた白浜警部にあたし、いやここにいるすべての人満場一致で『あ、この人作戦考えるセンスないな』と思ったであろう。それでもあたしたちは「はい!」と合意をした。
作戦開始はもう10分後、各人持ち場につきその時を待っていた。
あたしは不意に近くにあった海を見た。その海は凪いでいたように見えた。
ーーー
ZLKの研究基地内
「リーダー。奴らがそろそろ突入してきます。これで何度目ですかね~」
「ああ。でも油断はするなよ。いつの日だって気が緩んだ奴から消えていくんだからな。じゃ俺は先にずらかっているよ。データとか保存とかして後で俺に送ってくれ。そのあとは全部削除でよろ」
「了解しました。奴らが片付いたらあたしたちも本拠地に帰ります」
「おっけー。捕まっても助けにはいかないから。死なない程度には頑張れ」
リーダーと呼ばれた男は、不敵な笑みを浮かべてその場を去って行った。
「それじゃ私たちも行きましょうか」
「そうだな。上から見た時に懐かしい顔も見えたし、久々にぼこぼこにしに行くか」
「ふふふ、殺してはいけないよ。十分に痛みつけて研究の実験台にするんだからな」
その場にいる複数の男女はこの先のことを思い浮かべてニタニタと笑ってその場を去って行った。




