第十二話:陽炎
ここに出てくる学校法人はフィクションです。
長くなっていますが、時間があるときにゆっっくりと読んでいただけると幸いです。
一日早いクリスマスプレゼントです。
これはあたしがHPFに入る前。もっと言えばあたしがまだ学生だった頃の過去の話
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「凉ちゃん!!すごいね!!あの富坂に受かったんだってね!!。おめでとう!」
富坂中学校:言わずと知れた特殊能力者たちの中でもエリートしか入れない中高一貫の学校。
「ありがとう!千代ちゃん。あそこに受かるなんてあたしも思ってもなかったよ。」
小野千代:あたしの数少ない友達。物体を少し動かすことのできる能力者。
「すごいなぁ。私も行きたかったなぁ~」
「ふふっ。先に高校で待ってるよ」
佐賀華:あたしの数少ない友達。水を生成できる能力者。
「ねぇこの後、ガミ先のところに言って色紙書いてもらおうよ」
「いいね。行こう行こう!」
あたしの小学生の頃は数は少ないけど友達もいたし、受験にも受かったし、充実した生活をしていた。
・・・・・
そして中学校の入学式。この中学校は学年が上がってもクラス替えがなく、卒業までずっと同じである。あたしは周りには同じ能力者しかいないクラスで初めのほうは多くの友達ができた。このもとからあったコミュ強のおかげでもあるんだけどね。そしてあたしはクラスの中心的な子になっていた。
「凉~。今度の小テストの対策してる~?。よかったら教えて~」
「うん。いいよ~」
時にはテストの勉強を見たり、
「墨坪さん。今日空いてる?。この後私たちカフェに行くんだけど一緒に行く?。最近この辺に新しくできたからさ」
「いいね~。いこういこう!」
時にはクラスのこと出かけたり、
「墨坪。ちょっとこれを教室まで運んでほしいんだけど」
「わかりました。なんか量が多い気がしますが・・・」
時には先生の手伝いをしたりした。
墨坪、凉ちゃん、凉、・・・・・・・・・・
何度も呼ばれてきたあたしは中学生になってからとても人に頼りにされてきた。初めのほうはうれしくてなんでも答えてきた。しかし時間が進むにつれて、
「墨坪。今回の期末のテスト、少しと点数が下がったな。もっと頑張ったらどうだい?」
「すみません。ちょっと忙しくて」
学校の勉強に少しつまずいて少し点数が落ちてしまったり、
「凉~。最近一緒にカフェとか行って無くない?。付き合いが少なくなっているような気がするんですけど」
「ごめ~ん!。家で家事の手伝いとかもしなくちゃいけないから。また今度ね」
父のいないあたしの家族は母のいない日などは家事のしないといけなかったり、
「墨坪さん。提出物の提出が遅れていますよ。早めに出してくださいね」
「わかりました。いま出しだします!。遅れてすみません」
提出物の期限が間に合わない日もあったり。
今までの生活とはかけ離れすぎていたのかだんだん疲れが出てきた。小学生だったころと比べるといろんなことがうまくいかなくなりこの時から少しずつ変化していった。
そして中学一年の秋ごろ。
あたしはここで人生の分岐点だと思える出来事が起こった。
・・・
「墨坪さん?あなたしっかりと私たちの文化祭の衣装は仕立ててありますの?」
「そうですよ。あなたが早く準備してくてくれないと衣装をそろえて練習ができませんよ」
「ほんとほんと。少しクラスのみんなからちやほやされていたからって、自分の仕事は放り出さないでよね。」
そう言ってあざ笑うように言ってきたのはクラスでもあたしを敵視していた連中だった。
矢部モカ:カス。あたしを目の敵にしている。思い出したくもない人。
若橋香美:カス。あたしを目の敵にしている。思い出したくもない人。
野山絵美里:カス。あたしを目の敵にしている。思い出したくもない人。
なぜこんなことになってしまったのかというと今は文化祭の準備期間であった。この学校の中学校の文化祭は演劇しかない。役割としては舞台に立って演劇をする人、裏方で音響を操作する人、台本を作る人、衣装を作るなどなど。
あたしは自分で言うのもなんだが顔がいい。だからなのか主役を決めるとき、初めにあたしの名前が挙がった。あたしとしても『別にやってもいいかなぁ~』ほどにはやって見たさがあった。けど・・・
「こういうのは~自ら立候補した人が~やるべきだと思います」
「わたしもこの意見に同意~」
「そうだよね。私たちが舞台に上がれば、最優秀賞は確実だと思います」
空気も読まずにずけずけとこの三人は自己主張を始めた。クラスの実行委員も担任の先生もクラスの人たちの困惑していたが、三人が何度も何度も言ってくるもんだから、クラス中がもうそれでいいよ。みたいな雰囲気が出てしまった。
さらに三人はそれに飽き足らずこんなことも言ってきた。
「墨坪さんは衣装係でいいと思いま~す」
「そうですね。家庭科の成績も悪くないし、墨坪さん一人でもできるよね?」
「だよね。きっと素晴らしいものを作ってくれるに違いないよね~」
さすがにこの発言にはクラスの人たちも「それは何でもひどいんじゃないかな」「墨坪さんの意見とかも聞きなよ」と言ってくれたけど、あの三人はまた騒ぎ立ててきたのであたしはしぶしぶ仕方なく引き受けた。クラスの人の何人かは手伝ってくれていたけど、それでも舞台に立つ人たち全員の分は多かった。
その間もアイツラはねちっこく何度も催促したり、時には陰であたしの作った衣装をはさみで切ったりして、あたしにいやがらせを何度もしてきた。
「ねぇ。もうそろそろ文化祭本番なんですけど。まだ衣装ができていないの?」
「結局リハーサルの時も私たちの衣装だけなかったし、すごく辱められたんですけど」
「‥‥」
この時にはすでに体力と気力の限界に達していて、言い返すのすらできなかった。
それでもせっかくクラスのみんなでやる行事ごとだから最後まで衣装は夜遅くまで調節をして作っていた。
けど結果は残酷であった。
演劇のセリフ、動作、照明は完璧であったが、あたしの作った衣装は最後まで完成はしなかった。
いや、ほとんど完成はしていたがあの三人の衣装は所々ほつれや、待ち針のついた状態だったりしていた。
もちろん大半のクラスの人たちは仕方ないみたいな風に励ましてくれていたけど、あの三人は違っていた。
終わってクラスが解散したときにあたしは校舎裏に呼ばれたっけな。
そしてぼこぼこにされた。何度も殴られ、何度も蹴られ、寒い冬のなか制服を引き裂かれた。
「やめて!!。痛いよ!!」
強く懇願してもアイツラは許してくれなかった。口々に「お前が最後まで作らなかったせいだ!」とか「あんたが衣装を壊したりしていたからだ!!!」とか心無い暴言がずっと鼓膜を震わせてきた。
「あんたなんかいなくてもいいのよ。かわいい顔しているからって調子に乗んなよ。屑が」
そう言って矢部は能力を使って、あたしを火だるまにした。
「熱い!熱いっ!痛いよ!!やめてよ!」
泣いて必死に懇願してもやはりアイツラはめえている私を見て、あざ笑ってやめなかった。
しばらくして夕暮れになった。助けは来ず。無情にもカラスが鳴いていた。
「もう日が暮れてきたし、そろそろ疲れたから帰ろうよ。こんなやつ放っておいてさ」
「いいねぇ。それ。そうだ。墨坪。お前今日のこと誰かに言ったら次はねぇからな」
そう言って帰って行った。地獄のような時間が過ぎ、ぼろぼろになった制服を抱えて、誰にも見つからないように帰路へと着いた。
「ただいま」
家についても誰もいなくあたしはそのまま風呂場に行った。特に焼かれたお腹や背中の部分は瘢痕となってもうお嫁にいけないような火傷の跡ができてしまった。幸運なことに顔には何もなかったが、変わり果ててしまった自分の体を見てあたしは静かに泣いた。
そして次の日からはあたしの生活は変わってしまった。
本人のいるところでこそこそ陰口を言ったり、教科書をゴミ箱に入れたりしていた。
お金を要求されることもあったなぁ。そのたびにいつもあたしのお財布の中は代わりに変な紙が入ってた。
クラスの人や担任の先生は当然のように見て見ぬふりをしていた。こちらを見て、目が合うとそらしてあまり話しかけても来なくなった。・・・今思えば巻き込まれたくないから真っ当な判断だと思う。
それでもあたしと話してくれる友達がいました。
・・・
「凉。あなたしっかり寝ているの?。目のクマとかすごいけど‥。またアイツラがなんかやったの?」
「あはは、、大丈夫だよ。あたしは元気よ。特に病気とかないよ」
「そういうことではないんだが」
白浜友里:中学校生活が終わるまでいてくれたあたしの親友(だと思っている)。なんの能力を持っているか今も不明。
「心配してくれるのはうれしいよ。・・・ねぇこの後カフェに行かない?」
「‥‥いいよ」
そっけなく返事をしているけどほんとは顔が赤くなっていたのは知っているんだよ。
「ふふふ。やったぁ~」
そう言ってこの後あたしたちはカフェに行って、ミルククルクルティを飲んだ。
このことの時間が唯一と言っていいほどに幸せな時間だった。
・・・
中学一年生が終わりごろにはこの地獄のような生活にも慣れてきていた。中学二年生の時ももう変わらないような生活が続いてしまっていた。そのたびに友里に心配をかけていた。でもなんとか耐えて耐えて耐え抜いていた反撃したい気持ちを抑えて。
そして中学三年の夏、再び転機が訪れた。
さらなる地獄のね。
・・・
どこから聞いたのかあたしの母はあたしがいじめを受けているのを知ってしまった。
「凉。お話があります」
「なに?。お母さん?どうしたの?」
この時、母の顔は俯いていてよくわからなかったが、声色がとても低かったのを覚えている。
「あなた最近の学校はどうなの」
「と、特に何もないよ。最近は成績もいいし、このままだったら高校に余裕で上がれるよ。」
母は何かを探っているかのように聞いてきた。いつも温和であたしに優しい母がここまで恐ろしく見えたことはなかった。
「そう。成績に関しては別に心配はしてないのよ。あなたはとてもお父さんに似てもともと頭はいいほうですし。そうじゃないの。あなたの周りの人たちとの関係よ」
この言葉があたしには鋭く突き刺さった感じがした。もうすでにせなかには冷や汗が大量にあふれていた。
「動揺しているね。やっぱりあなたクラスの子にいじめられてるんだね」
その言葉を聞いてあたしは不意に泣いてしまった。母の顔は涙でよく見えなかったが、悲しそうな顔をしていたと思う。そこからは観念してこれまでのことを全部話したっけな。制服を破かれたこと。体に焼けた跡が残っていること。教科書がぼろぼろのこと。担任の先生たちは見て見ぬふりをしていること。あたしはこれまでのことを覚えている限りを話したと思う。
「そんなことがあったなんてごめんね気づけなくて」
気づけば母も泣いていた。何度もあたしに謝ってきた。そこからは早かった。すぐに学校へこのことについて連絡をしてくれた。その後は四者面談をした。あたしと母と担任と校長先生。こんなことは今までなかったそうですぐに学校中で噂になってしまった。
そしてこの面談でわかったことはあまりにも無慈悲なものであった。あの三人の親は政治家の家系であり、この学校に多くに寄付をしているからおおぴらにこのことを言うことができないらしい。だから担任の先生も強くは出られなかったんだって。あたしに何度も「申し訳なかった」と言ってきた。
面談が終わり、帰宅しながらお話をした。
「もうあたしはどうすることもできないのかな。このまま泣き寝入りするしかないのかな?」
「そんなことはないよ。お母さんが絶対に何とかしてあげる。今の時代週刊文集にちょこっと告げ口したら一発なんだから」
母はあたしを元気着けようとしたのか、陽気なそれでいて空元気なように言った。あたしは少し励まされたような気持ちになった。
「今日は帰ったらチャーハンにしましょうか!。いい卵とか食材を買いに行かなきゃね。」
「え~いいよ。お母さん。うちにお金ないんだから。無理しなくていいの。うちにあるものでいいじゃん」
「いやね。今日は絶対にチャーハンにするのよ。涼の大好きなチャーハンにね」
そう言ってあたしたちは買い物をした後に家で一緒にチャーハンを作った。お父さんの残した一軒家には暖かなぬくもりが立ちこもっていた。
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「え。うそでしょ。」
次の日学校から帰ってきたあたしの目の前に広がっていたのは、業火に焼かれてしまっていたあたしの家だった。この辺のご近所さんたちも何事かという感じて家の周りで立ち尽くしていた。
夢ならばどれほどよかったか。
「お母さん!!」
あたしは無我夢中で燃えている家の中に入ろうとした。『今日はお休みだから一日中家にいるよ』と言っていたから絶対にまだ中にいる!。助けないといけないのに進むにつれて体から力が抜けていくようだった。
「お母さん!!お母さん!!」
あたしはただ泣き叫ぶしかなかった。叫んで叫んで叫び続けたせいか。だんだん疲れていった。消えゆく意識の中、最後に見た景色は陽炎のように揺らめいている燃え盛った我が家だった。




