第十話:え、担当外の仕事もするんですか?
相棒の様子を見に行ってから4日後。すっかり調子を取り戻した俺は、今
「おい!。刀を振ったときに重心がぶれているぞ。力みすぎるな!。腕に変な力を加えすぎだぞ。」
「はい!。直しますから。そんなに怒ったような口調で言わなくても~」
我が隊長である千楽寺アケツミ(秋)に剣術指導でしばかれていた。なぜこんなことになってしまったのかというと事の発端は昨夜の出来事であった。
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「鷹島春久様
すまんのう。春久君よ。わし、こないだ歩いていた時に思わず転んでしまってな。膝を骨折してしもうたんや。それでついでだからこのまま君の剣術指導員を降りようと思っておる。もちろん代わりの指導員は見つかっておるから心配はせんでいい。案ずるより産むが易し。春久君、この先つらいことが待っているかもしれないがこのお国のために君のできる限りでよい。精一杯任務をやり遂げるんだぞ。ただ忘れるではない。わしが教えてきたことを。その意味を。その意思を。その技術を。力を入れすぎないほどに。だが決死の覚悟で戦いに挑むんだぞ。それと・・・・」
この手紙は俺の剣術指導員であった天音飛呂彦師範から送られてきたものであり、山風指揮官から直々に承った。長いので要約すると、
”師範やめます。代わりを用意しました。お国のために決死の覚悟で立ち向かえ。”
とのことであった。まだここの基地に配属されて三か月であるが、とてもお世話になった方で少し名残惜しさがあった。今度お見舞いに行こう。俺が読み終わった後、山風指揮官が少し含みのあるような笑みを浮かべて言った。
「まぁ、読んで字のごとく。鷹島専用の剣術師範は、ここでやめてしまう。・・・私も天音教官にはお世話になったことがある。少し寂しくなるな」
「そうですね。天音師範からはたくさんの恩義があります。刀の使い方すらまともにわかっていない俺をここまで育ててくれましたし・・・」
俺は少し強がりながら言ったが、内心はとても寂しく感じている。早くに両親を亡くした俺に対して親のような愛情を注いでくれていたから、大切にされていると実感ができていた。
「ちなみに天音師範の後任の指導員は誰なんですか??」
「ああ、それは千楽寺に任せることになっている。よかったな!千楽寺自らが名乗り出たんだぞ。大変気に入られているんだな」
にやにやして嬉しそうな表情をしている山風教官とは裏腹に俺は先ほどまで出かかっていた涙が急速に引いていく感覚に陥った。え、相棒が俺の師範になるのか?そもそも刀とか扱えるのか?そんなことを考えていると、山風指揮官が内心を読んだかのように聞いてきた。
「なんだ鷹島。千楽寺が刀を扱えないとでも思っていそうな顔をして。アイツは普通に刀は扱えるぞ。何なら天音教官よりも強いかもしれないぞ。」
「え、そうなんですか。というかなんで俺の考えてることが分かったんですか?そっちのほうが俺、気になります。」
そう言うと山風指揮官は高らかに笑い、「顔を見ればわかる」と言って、誰からか連絡がきたのか去って行った。
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そんな出来事があり、今のような状態になってしまった。はっきり言って辛いです。逃げたいです。こんなにしごかれるとは思っていませんでした。
「よし。いったん休憩にするか。相棒は筋はいいんだが、まだまだ素人の域だな」
「すみません。・・・でもこの年になるまで刀なんか振ったこと、ましてや見たことすらなかったんですから」
ようやく休憩に入り、ひと段落して相棒と話していると、
「そうだ。あとでまた召集の令が出されると思うんだけど、先に言っておこうと思う。次の任務の話なんだが・・」
「次の任務の話が何ですか?」
相棒は少し言いにくそうに続けた。
「俺たちは基本的には新生物の殲滅を主な任務としているんだが、次の任務が警察との共同作戦で立てこもり犯をおびき出すための突撃隊になってほしいというものなんだよ」
「別になんてことないと思うんですが?」
「そういうことではないんだよ。俺たちの部隊の人数は四人で、とても少数である。またうすうす気づいているかもしれんが、能力が足止めや動きを制限するようなものばかりでこの間のあの作戦で少しだけ知名度が上がったことで警察に噂をされているんだよ」
「??」
ちょっと何が言いたいのかいまいちピンとこない。
「『何言っているんだこの人は。』みたいな顔でこっちを見るな。わかりやすく言うと、死んでしまう可能性があるってことだ。まだ俺も正式な情報を聞かされていないが、能力者のテロリストたちが関わっているそうだ」
そう言われて俺は納得した。だがなおさらなぜ俺たちの部隊がその作戦に出向く必要があるのだろうか?やはりそこだけはよくわからなかった。というかもうこれ担当外の仕事じゃねぇかと俺は思った。
「もうそろそろ指揮官から作戦室に来るように言われるだろ。その前に、ちゃっちゃと先に向かっていようぜ」
「了解」
もうこの先の展開を知っているかのように動いている相棒の背中を俺は見逃さなかった。そこには一抹の不安があったように俺は見えた。




