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18 世界は広く複雑だ


ミラとルカは何事も無かった様に学園へ来るようになった。そして二人の距離は確実に近くなった気がする。


きっと二人の愛を育むイベントだったのだろう。

だからなのか、令嬢達のミラへと向けられる嫉妬や憎悪の様な視線や態度は傍から見てて怖い。


だから私は出来るだけ外野で居ようと思う。

幸いにもノアと私はお似合いのカップルと認識されて居るためか平和だ。

そりゃ王子と公爵令嬢カップルだ。邪魔などしたら命取りだと思われてるに違いない。



私は思うのだ。ヒロインというのは大物にしかなれないのだと。私だったらヒロインなんて御免だ。

あんな敵意を向けられてまで愛を貫き通すなど出来ないからだ。嫌がらせや命の危機等に耐えてまで1人の男を愛し抜くより、平凡で良いから最低限の幸せを探すだろうと思ってしまうからだ。


いくら男が助けてくれるとはいえ、それは最低限の助けだ。変わりに虐められてくれる訳でもなく俺の為に御免ねと愛を囁くだけな訳で、そんな男の為に命さえ捧げられるものなのか?と思うのだ。



「何食わぬ顔で登園してきたな。

やっぱり侯爵家だけの問題だったんだな。」


「だろうね。まぁ〜私達には関係無いけど。」


「だな。俺に少しは謝れって気もするけどね。」



ノアは少し根に持ってるのかと笑ってしまう。



この学園では1年生は幅広く学び。2年生になると自分が選択した科目を集中的に学ぶ事になる。

将来を見据えて自分で選択するのだが、特例として1年生の間に定められた成績に達していれば2年生と同じく自分が学びたいものだけ学べるのだ。


私とノアは入学迄には、その学びを終えている。

ただ、テストなどの試験で証明出来て居なかっただけだ。数回の試験で良い成績を収めているので、学びたいものだけ学んで良いと言うことになる。


最近、ノアと二人で魔導を学ぼうと決めた所だった。

商売をしていく上で魔導具などの知識や作ることが出来るのはプラスになるからだ。


ノアが父に弟子入りすると話したところ、父にも魔導を極めてこいと言われたのである。


父もノアを育てるのは乗る気だし楽しそうだ。

自分が持ついくつかの爵位で侯爵の爵位をノアに譲渡すると言っていた。トレントの分家として考えてるみたいだった。


今日は魔導師の先生の所で学ぶ予定だった。

二人だけでと思ってたのに、何故かルカとミラまで一緒で困惑する。


「ルカがなんで魔導を学ぶんだよ?

オマエの家だったら剣術とか魔法だろ?」


ノアも疑問に思って質問すればルカが込み入った話をしてくる。


簡単に話を纏めるとこうだ。

ルカはミラを婚約者に据えたくて、その為の実績を作る必要があるのだと言う。ルカの父親がミラを他の家に文句を言われない位の何かが無ければ許さないと試されてるのだとの事だ。


で、なんで魔導なのか?って話になるのだが。

この世界の、この国がある大陸には3つの国がある。


魔王と呼ばれる王がいる国は、魔族の血を引く民族だと言われてる国なのだが、我が家の持つ鉱山がある山脈を越えた隣の国だ。


他に精霊の森と呼ばれる森を越えた先にある国がある。精霊に愛された国と言われ、住人は精霊の加護を受けて魔法を使うと聞いている。


この国は、太古の昔に魔族が居た頃の話、勇者と聖女が創った国だと言われているのだ。


その為、神聖力をその身に宿す子供が生まれるのだと語り継がれて居るのだ。勿論、ヒロインであるミラは神聖力を宿す者だ。



ルカが考えた事はこうだ。

ミラの神聖力は未熟故に聖女と呼べる程ではなく余す所なく扱える迄には時間が掛かる。

そこで精霊の加護も手に入れられないかと考えたらしい。魔導の学びは、それには直接的に関係無いが違いを知る為と言った。


この国での魔法は、属性などではなく。魔力があれば、どんな魔法も扱えた。

基本的に魔力を出したり込めたりの時に出る魔力に属性が無いのだ。無いからこそ威力が足りない。無属性の様なものなのかもしれない。

それを補うのが魔法陣だったり魔道具だ。属性を加える補助的な役割なのだ。


一方、精霊の加護で魔法を使うと言うのは、精霊と契約する遣り方なので精霊の属性の魔法しか使えない。


なので上位精霊の加護があれば災害級の力を行使できると聞いた事がある。



「なるほどですわ。色んな方法を模索中って事ですわね?一つ提案宜しくて?ミラが認められるには聖女になるのが一番でなくて?

魔法の力など、珍しい訳ではありませんもの。

誰もが納得すると言う事は、それだけ珍しくなくてはいけませんわ。違いますか?

神聖力が未熟だというなら鍛え上げれば良いのではありませんこと?本で読んだことがありますわ。

聖女の力は、想いの強さだって。小さな子でも知ってますわ。絵本にそう書いてありますわよ?」


そう、この国の成り立ちの絵本があるのだ。

勇者の命の危機が訪れた時に聖女の真なる力が目覚めるのだと描かれている。


それに乙女ゲームの世界が元ネタな世界観なのだ。

真実の愛が聖女の誕生になるのがセオリーだろう。



二人は私の話に驚くと顔を合わせた。


「ミリア様。そうですよね。有難う御座います。

私っ、頑張りますねっ。」


ミラがヒロインスマイルで御礼を言ってくる。

きっとコイツらのシナリオには、これからルカに危機が迫る事があるに違いないがミラが救うのだから大丈夫だろう。


無事にミラは聖女になるはずだ。

だって、そういう運命の人なのだから。


まっ私には関係無い話だし。




それより他国の成り立ちの話は興味深いと思った。

ますます、他国への憧れのような興味が沸く。


魔法の使い方も違うとは初めて聞いた。

私の今までの人生は、ノアと愛とか恋とかしか無かったから知ろうとも興味も無かったのだから仕方ない。


魔導の学びも楽しめそうだし、毎日が楽しい。

なんて幸せなんだ!と改めて思うのだった。


ニコニコしながら魔導の学びをしているとノアが笑顔で話し掛けてくる。



「楽しそうだね。ミリア。

そんな時のミリアは輝いてて好きだよ。

それにしても、二人がそんな仲だとは知らなかったよ。いつの間にそうなったの?ミリアは知ってた?

それに精霊の森とか、あちらの国に行くつもりなのかな?フリッツ王国ってさ、精霊を神の様に崇める国でもあるんだ。精霊の森は神聖な森とも言われていて、あの中に入る時やフリッツ王国に入る時に通る時だって許可書が必要なんだよね。

商人なんかは専用の許可証を発行してもらわなければ行けないみたいだしね。」


流石は王子だ。その辺の事に詳しいのである。


「いつからって、入学の時のパーティーの騒ぎからに決まってるでしょ?ノアって鈍感なの?

自分のピンチを助けてくれた男と助けたいと思わせた女が惹かれ合うとかベタでしょうよ。そういう小説とか読んだことないの?」


「読んだことない。読んで勉強した方がいい?

その方が、ミリアが喜びそうな事が出来るかな?」


「いや、別に読まなくて良いわ…。

それと、二人の事は二人で勝手にさせたら?

ルカも侯爵家の人間だし馬鹿な事しないと思うしね。

それに人の恋路に首を突っ込むと碌なこと無いのよ。」


「それもそうだね。ルカって俺はクールで女なんて興味無いみたいに思ってたからさ。ちょっと興味深いなって思っただけだし。俺達には関係無いもんな。」


まぁ〜ノアの考えは間違いではない。

キャラ的にクールで冷酷な設定だと認識してるし。

けれど、そこは攻略対象なんだから心から冷酷な訳も無く。ヒロインによって閉ざされた心が開く訳ですよ。どんな心の闇があったか知らんが。


そんな事よりだ。


「ノアが王子だって、すっかり忘れてたんだけど。

流石は王子ね。他国の事とか良く知ってるわね。

じゃ〜グレイン王国は、どんな魔法なの?」


「忘れてたの?まぁ〜もう王子としての価値は無いけどさ。グレイン王国の魔法はね。属性とかないかな?あまり魔力を使わないって聞いてるよ。

瘴気を操り力に変えてるって言われてる。とても驚異的な力だと認識してるけど、その原理は良く理解してないよ。他国には知られたくないのだと思うよ。

三国の中で一番の破壊力を持つ魔法と言われてるからか、あの国の軍隊は武器を使わない。魔法と体が武器って感じなの。殴り合いだと勝てないかもね。

それほど身体自体が強いって感じだよ。

だからグレイン王国とは争いたくないってのが本音って感じなんだ。」


グレイン王国を怒らせたら終わるって感じかな?とか思ってみる。


トレント公爵家の影響力が強いのはグレイン王国との繋がりの橋渡し役を務めてるからなのかもしれないと思った。あの山脈は二国の国境だ。国に隣接する側はトレント公爵家のモノだが反対側はグレイン王国のモノだ。その為に昔からトレント公爵家はグレイン王国との交流を積極的にしている。


父も、しょっちゅう行き来している。

商会の事もあるが、外交目的でもあるのだろう。


私の知らない事は多い。

これからは、その辺も学ばなくてはと思うのだった。






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