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16 学園生活


王立魔法学校。


なかなかヘビーな学園である。

即戦力を育てる場だと言われたらそれまでかも知れないが、とにかく校外学習が多い。


魔物討伐が主な目的だ。

グループに分かれチームになって魔物を狩る。


冒険者のパーティーの様だ。

この世界には冒険者ギルドは無いみたいだが、それに近いものが存在した。


ルカ・グレイソン。彼の家、グレイソン侯爵家は国の軍隊を率いる由緒正しい高位貴族だ。


その中に数か所に分かれた支部がある。

直属になる事以外にもフリーで魔物討伐に参加して日銭を稼ぐ方法もあるらしいのだ。


今のところは必要無いが、いつなんどき何があるか分からないのが人生。最悪それで稼げるという情報は役立つ。



残暑が残るある日。

何故か私とノア、ミラとルカの4人グループで魔物討伐へ向かう事になった。


メンバー的に嫌な予感しかしない。

朝から憂鬱で仕方なかった。


ノアは長い期間、学園を休んでたから完全にノアルートは無くなった訳で、なんとなくルカルートなのかな?と思ってはいる。


あのパーティーの騒ぎ以降、ルカは事あるごとにミラを気に掛けてるし二人が、一緒な場面を良く見掛ける。


だとするとだ、ルカにも婚約者候補が居る。

正式では無いが有力候補だと言われているのだ。


ルカ攻略のシナリオは良く分からないってのが実情だ。だってミリアには関係無いから。


だから安心してたが、巻き込まれ事故はあるかもしれない。気を付けるに越したことは無い。


まぁ〜ノアも居るし大丈夫だとは思うけど。



「なぁ〜。ミリア。

今日は1人1体で良いんだよね?

サッサと終わらせて帰ろう。早く終われば早く帰って良いんだよね?」


ノアは魔物討伐は、あまり好きではないらしい。

何故?と聞くとノアらしいと言えばノアらしい答えが帰ってきた。


「魔物は魔物ってだけで討伐対象。中には何も悪さしない奴も居るかもしれないのに。」


だそうだ。まぁ〜、一理あるって感じだ。


そんな事を言えば賛否両論あるだろう。

食べる為になら良いのか?とか放置して何かあったら責任取れんのか?とか。


私としては、この世で悪と定義されたなら従う他ないだろう。と思ってる。

それ以上でもそれ以下でもない。



「今回は、どうします?1人1体ですし。

皆んなで4体か、個々に1体をなのか。」


私はミラとルカに御伺を立てる。

するとルカは今回は分かれましょうと言ってくる。

きっと2人になりたいのかな?と思って私達は2人と別行動をした。


「さて。競争しようか?」


私が提案するとノアも乗ってきた。


「負けた方が勝った方の御願いを聞く。それで良い?」


私は頷くと「3・2・1・GO!」


二人同時に森を駆け抜ける。

魔力探知の魔法で魔物の元へ急ぐ。

森の中では炎系魔法は御法度だ。水系魔法で魔力を弓に具現化する。そして魔物に向かって撃ち込む。


最近は慣れたもので命中率は高い方だ。

魔物は仕留めると瘴気の霧になり消える。

そして魔物の核となる魔晶石だけが残る。


魔晶石を拾うと私は上空に向けて天高く水魔法を打ち込んだ。終わりのサインだ。


けれど、ノアも仕留めてる頃だろうにサインが出ない。心配になり魔力感知で辺りを探る。


ノアの魔力を感知したが様子がおかしい。

一つの場所から動かないのだ。

私は、ノアの元へ急いだ。嫌な予感しかしない。


ノアの元へも辿り着くと、ノアの意識が無いのだ。

息はあるし傷も見当たらない。寝てる?


私は保護魔法で自分を覆う。

辺りに感知出来る魔力は無い。


私はノアと学園へ転移した。

そして教員に知らせて二人の無事を確認してくれと頼むとジェットを呼んだ。


ノアの状態を確認できる教員は今はいない。

王城に、いきなり転移は不味い。


ジェットにノアの護衛に知らせろと指示しノアの脈を取る。正常に脈打つのを感じて安心する。

ただ眠らされてるなら良いのだけどと思うが、ちゃんと鑑定して貰わないと安心するには早い気がして不安が募る。


慌ただしくジェットが戻ってきて、護衛は一度、城に転移して鑑定士を連れて来るそうだ。

下手に動かない方が良い時もあるから護衛の判断は正しいのだろう。


素早い対応で鑑定士が来てくれた。

ノアを見せると、睡眠系の薬品を嗅がされたと思われるとの事だった。寝れるだけで良かったと安心した。


ノアを護衛に託し私は二人の無事を祈りながら教員の報告を待った。


しかし、あの森の周辺に二人は居なかったらしい。

二人の行方は引き続き捜索するから君は家に帰りなさいと言われてしまった。


コレは、ルカとのイベントかなにかなのだろうか?

私は、一生懸命に前世の記憶を手繰り寄せる。

けれどルカとヒロインの事は何も思い出せなかった。




次の日。学園へ行くとノアは元気な笑顔を見せてくれた。昨日の事は曖昧らしい。

魔物の居場所まで行ったら急に魔物の気配が消えて、辺りを警戒してたら急に意識が途切れたんだと言っていた。


二人の姿は現れなかった。

きっと、見付からないのだろう。


大変な事にならなきゃ良いけど…。


それに何かが変だった。2人が行方不明だと言うのに学園は慌てた様子も無い。

生徒達にも、これと言った説明も無いのだ。

学園の対応を見れば、コレは家の問題なのかもしれないと思った。


侯爵家が関わっているのかもしれない。

ミラは大丈夫なのだろうか?


きっと何も知らないなら私が心配したり気に掛ける事もない話だ。他の家の問題や他人の事など私には関係無いからだ。


しかし、小説の中の話を知る私としては複雑なのだ。

関係無いと思う一方で気になってしまう。



そもそもヒロインであるミラと仲良くも無いのに。

ただのクラスメート。それ以上でもそれ以下でもない。



その日の学園生活は何事もなく無難に終わった。


放課後、店に向かってる馬車の中。

一緒に来ると言うノアが話し掛けてくる。


「なぁ〜、あの二人はどうしたんだろうな。

昨日、目覚めてから事情を聞かれた位で簡単に終わったんだ。普通なら王族が危険な目にあったかも知れない事件に発展するだろ?あまりにもアッサリし過ぎなんだよなぁ。ミリアも可笑しいと思わない?」


ノアも違和感が拭えなかった様だ。


「確かにねぇ〜。

きっと、グレイソン侯爵家の問題なんじゃないの?

魔物討伐とかってグレイソン侯爵家の管轄じゃん?

学園の落ち着きようを見ればグレイソン家が関わってるとしか思えないもの。

可笑しいと思って首を突っ込んでも面倒くさい事になるだけでしょ?

それとも、二人が心配なの?」


私が意味深に聞くとノアは首を傾げて「なんで俺が?」と聞いてくる。


「だって、他にノアが今回の件で気になる理由ある?」


「えっ?あるでしょ?だって俺、倒れてたんだよ?

それで終わりって思うじゃん?

俺を眠らせた奴とか探さないのか?って思うじゃん。」



あれ以来ノアは、素が出て子供っぽく構ってちゃんキャラだ。私が年相応の感性なら、頼りない男だと嫌になるかもしれないが、前世の記憶がある私は、そんなノアも可愛いと思えてしまう。イケメンの構ってちゃんは子供やペットと同じ様に可愛いのだ。



「あっ、そっちね。

眠らせて周りの魔物を排除した後に放置したんだから害する意図は無かったって事じゃない。

相手はノアを巻き込みたくなかったと考えるのが妥当だと思うけど。」


「冷たいなぁ〜。ミリアは俺の事を思って怒ってくれると思ったのにぃ〜。」


「女々しいわねっ。男なら普通、不覚にもむざむざと眠らされたってプライド傷つけられて怒るとか、もっと強くなろうとかって考えるでしょ?」


私が呆れた顔で言えば、ノアは頬を膨らませてプンプンしてる。


「ミリアのアホっ」



「ハイハイ」と私は適当にあしらうのだった。




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