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13 王子救出大作戦


父は、ありとあらゆる手段を用いったらしくノア様の様子を掴んだらしい。


金にモノを言わせ、監獄に出入りする者から情報を聞き出したのだろう。多分…。


ノアは現在。監獄の中で、ほぼ廃人の様な様子で生きているらしい。小さな声で私の名を呼んだりして現実逃避をしてるのか誰も居ない壁に向かって微笑んだり名を呼んだり、それはもう異常で気が触れたと思われてるらしい。


そりゃ、綺麗な監獄と言っても監獄は監獄だ。

窓も無い薄暗い場所に閉じ込められ、誰か人が来ても誰も話してくれず、たった1人でいつ出れるのかも分からぬまま監禁されてるのだ。気が可笑しくなるだろう。しかも、ノアは罪人でもないのに。

息子が王家を出ない様にと言ったってヤリ過ぎだ。

そこに愛はあるんかっ!と叫びたい。


そんな中で、ノアが私を呼んでると想像するだけで涙が溢れて来てしまう。


同時に、ノアの馬鹿だれっ!とも思う。

私なんかの為に何を頑張ってんだと嬉しい反面、腹ただしくもあった。


さっさと、パパごめんなさいって騒げば出して貰えたはずだ。国王だって、少し脅すつもりだったと思うのだ。けれど、それをしないノアに国王だって引っ込みが付かなくなったのでは無いだろうか?



父が言った。


「オマエの面会許可を貰う。

オマエがノア君を説得すると言う亭でだ。

防音魔法は使えるな?会話は聞かれない様に防音魔法を掛けながら抱き着きながら話せ。

その時にノア君には作戦内容を教えておけ。

良いか。この薬は、一時的に本当に幻覚を見る鑑定魔法でも特定出来ない薬だ。本気で幻覚を見てれば、ノアが本当にイカれたと王も、認めざる終えない。

必死で治療を施すだろう。そして数日後に薬が切れたノアが様子を見つつオマエが居ないと生きて行けないと言い続ければ流石に王妃も息子可愛さに王太子じゃなくてもまともに生きてくれればと思うだろ?」


ドヤ顔で私を見る父に苦笑いになりそうなのを我慢して、満面の笑みを向ける。


「パパって、て〜んさ〜いっ!」


そう言って抱き着けばデレデレと嬉しそうだ。

全く、そんな薬を作ってるって訳?と思うが深く突っ込むのはよそうと考えるのを止めた。


「パパ。直に面会許可は取ってきてくれるのよね?」


ニッコリ微笑み聞けば、その足で王城に向かう父なのであった。



待っててね!ノア。




速攻で面会許可書を貰ってきたパパの顔には《褒めて》と書いてある幻覚が見えそうだった。


とびっきりの笑顔で「パパ大好きっ!」と抱き締めると御満悦である。今回ばかりはホッペにキスをしてあげた。泣きながら喜ぶ父。本気で大丈夫か?と心配になる。


けれど早くノアを助けねば!と私は城に急ぐ。

薬なんて飲まずとも本当に壊れてしまったのではと心配だった。


今回はスムーズに案内される。

門の先で待ってたのはノアの護衛だった。護衛は深々と頭を下げると無言で監獄まで案内してくれる。


監獄は城の裏手に広がる森の中の大きく高い塔の最上階にあった。まさか登るのか?と思ったが転移魔法で最上階まで上がれてホッとする。


ノアが居る監獄の中に入れば柵の向こうに横たわるノアが見えた。寝てるのか起きてるのか分からない。

小さく掠れる声が微かに聞こえて耳を澄ませば「ミリア」と確かに呼んでいる。


私は言葉も出せなかった。その代わりに涙が溢れて止まらない。なんて悲惨な光景なの!?

そこに居るノアに輝きはない。だいぶやせ細ってしまったノアを見れば食事もまともに摂っていないと分かってしまう。


私は護衛にスープを持ってきてと頼んだ。


そして柵の鍵を開けて中に入った。

そして虚ろな目を向けるノアに微笑んで見せた。


「ミリア…。今日は何故泣いてるの?」


本気で壊れたのかと思った。

私はノアを抱き締めると、やせ細ってしまったのを実感して更に涙が止まらなくなる。


「あれ?夢なのかな?

とてももうそうだとは思えない感触だ。」


夢現なのだろう。夢か現実かさえ分からないなんて…。


私は念の為に魔法で私の声をノア以外には聞こえない様にした。するとノアがピクっと微妙に反応した気がした。


私は抱き着きながらノアの耳元で囁くように話をした。


「ノア?本当に壊れちゃったの?

まともなら私の頭を撫でて。」


するとノアは「今日のミリアは甘えん坊だ。」と言いながら頭を撫でた。


偶然なのか分からなくてノアが言いそうもない言葉を言うように指示してみる。


「ミリアなんて要らない」


ノアの口からその言葉を聞き、確信した。

大丈夫だとは言えないがノアは正常だと。


私は、薬の話などをしながらノアの反応で確かめた。

薬は必要無いとノアは言った。確かに、私も壊れたと本気で思ったのだ。薬なんて要らないだろう。


私達は魔法を解除し演技を始める。



護衛がスープを持って立っていた。

騙してごめんなさいと心の中で詫びながら演技を始めた。



「護衛さん。スープを飲ませたいの。

持ってきてくれるかしら?」


護衛は私達の近くまで来てスープを差し出してくれる。私はスープのカップとスプーンを受け取ると、ノアに向かって涙を流しながら微笑み


「私が作ったの。温かい内に飲んで。」


スプーンで掬ったスープを口の前まで持っていく。

するとノアが豹変した。


「オマエは誰なんだ!

俺のミリアが本物のスープなんてっ!くそっくそっ!偽物が、ミリアを返せ!」


取り乱した様に暴れるノア。ノアが傷付かない様に暴れるノアを身体を抑える護衛。


「くそっくそっくそっ!」


少しの沈黙の後、シクシクと子供の様に泣き出すノア。


「ミリア…。助けて…。ミリア…」


そう繰り返しながらシクシク弱々しく泣くノア。

天才役者かっ!と違う意味で驚愕する。


それが、演技では無いからこそ逆に真実味が出る。

護衛は、とても哀しそうに遣る瀬無い様な顔をしている。


暫く哀しそうに泣いてたと思ってたら、急に発狂しだすノア。有り得ない奇声をあげ。


「ミリアに逢えないなら死んでやる。死んでやる。死んでやる!」


そう言って護衛の懐から小さなナイフを奪う。咄嗟に護衛はナイフを奪おうとする。


これは本当に演技なのか!?怖くなって、私は叫ぶ。


「誰かっ!誰かぁ〜!早く来て早くぅ〜!

ノア様が死んじゃう〜〜〜〜〜!」


塔の下の見張りや待機してた騎士たちが一斉に集まって来た。ノア様は取り押さえられた。


私は本気で心配になり


「止めてっ!止めてよ!これ以上、ノアを傷つけないでっ!」


そう叫んでいた。


ノアは一瞬、驚く顔を見せたが微かに微笑んだ気がした。



騎士達に抱えられ連れ出される間もノアは譫言の様にブツブツと呟いている。


「ミリア…。ミリアと逢えないなら死にたい。

ねぇ〜、殺してよ。お願いだから…。」


騎士達も、そんなノアを見て皆、顔を歪める。

皆の知ってるノアは完璧な王子は何処にもいなかった。


私は護衛に連れられ外に出る。

私は周りに人が居ない事を確認すると、護衛に泣き付いてると思わせる体勢で魔法を掛け話し始めた。


「ごめんなさい。でも大丈夫だから。

ノア様は正常よ。だいぶ病んでたけどね。

さっきのは演技だから、心痛めないで。」


護衛は大きな溜息を吐くと小声で「有難う御座いました」と言った。


それから、私は念押しの様に国王に謁見する。


「国王に向かって無礼だと分かっていますが。

あんまりです。輝いてたノア様は、もう何処にも居ません!いくらなんでもヤリ過ぎですわっ!

あんなノア様を見るなんて…。私の目の前で死のうとしたんですよ!?もし誤って本当にナイフが刺さってたらっ…。

取り返しがつかない事になってた可能性だってあるんですよ?

それに、私に向かって偽物って…。シクシク…。

あのまま廃人になったら、私は国王様を許せませんっ!」


そう言い切って大号泣して見せた。


居合わせた使用人や家臣達も、ただ黙って立ったままだった。余程、ショックだったのだろう。

あそこまでとは思っても無かったのかも知れない。

けれど、あそこまで酷くは無いが少し遅れたら本当に壊れてたかも知れない。


演技を忘れてノア様が余りにも不憫で本気で号泣してしまう。いくら泣いても泣き足りない位に。


哀れに思ったのか一人の家臣が私を抱き上げ、静かにその場を離れた。


そして何も言わずただ、馬車まで送ってくれた。

涙が止まらず御礼も出来ずに、お辞儀だけして帰路に付いた。



遣り切ったっ。

そう思ったら急に眠気に襲われ馬車の中で寝てしまったのであった。




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