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5:魔王討伐へ

魔王討伐に向かうミホのスピードは凄まじく、飛行機雲を作っていた。ミホのバイブスらしきものがアゲアゲ状態で、自作の鼻歌を歌いながら飛んでいた。

「シャトー、シャトー、シャトーブリアン♪

シャトー、シャトー、シャトーブリアン♪」


すると、ブリアンがものすごい勢いでミホに追いついてきた。

「…… ザツ頭お、お前、まさか……う、歌まで、お、音痴おんち! 何が、

シャトー、シャトー、シャトーブリアン♪

シャトー、シャトー、シャトーブリアン♪

っだよ! 音痴おんちすぎんだろ! カッカッカッカー、プププププー!」


ブリアンは心底バカにしたように笑った。


それを見たミホは、すごく恥ずかしくなり、怒った。

「フンヌゥ〜! 音痴おんちじゃないやい! そういうブリアン師匠の方が音痴おんちなんじゃないんですか!? 歌ってみて下さいよ!」


ブリアンは、ものすごく困った顔で、

「…… 歌いたくはないんだが、かといって音痴おんちと言われ続けるのも嫌だな。よし、歌うぞ! 歌詞作んの面倒だから、『ラー』で良いか。


ラーラララー、ラーラララー、ラーラララー♪」


ブリアンはオペラみたいな声で歌い続ける。その歌声に勇気づけられるような力をミホは感じた。事実、ブリアンの歌は、仲間の魔力を3倍にする力を持っていた。


…… う、上手さがスゴい! ブリアン師匠、歌、歌えたんだ。


ミホはブリアンの歌唱力に圧倒されながらも

「ま、まぁ普通だね」

と精一杯強がり発言で返した。


「ん? そうか? まっ、音痴おんちじゃないと認めてくれただけでも良かった」

予想外にブリアンの素直な返答。


…… ブリアン師匠って、自分が歌がすごく上手いって知らないの? 


▷▷ ▷▷ ▶▶ ▶▶


ミホとブリアンが話しているうちにターネル国についた。


「おっ、着いたぜ。王は、凄く遠いって言っていたが、15分で着いたな」

ブリアンが笑いながら言った。


「はい。ていうか魔王なのに魔力少なくない? 周り全体の魔力合わせても私やブリアン師匠に負けてない? 本当にここであってるの?」

ミホは少し混乱していた。


「あのな〜 俺達が異常なだけだから」

ブリアンはまたミホに呆れてるようだが、魔王達を恐れてはいないようだ。


「そうなんだぁ。魔王達と話せたらいいなぁー。戦わなくてもいいなら良いんだけど。…… 正直に言うと、戦いは好きじゃないんだよねー」

そう言って、一番魔力を感じる建物に向かってミホは降りていった。


「あのー、魔王さん達出て来て下さーい…… 出ないとファイアボール撃っちゃいますよー!」


ブリアンは大きなため息を吐く。

「幼児のケンカの売り方か!」


ミホとブリアンがそんなこと言って歩いていると


「どこのどいつだ? 我らを魔王と知ってのことかー!」

紫色の髪をした巨人の男の魔王が現れた。


「あらあらそんなに怒らなくても良いじゃないの、ドウェイグ。子供のイタズラなんじゃない?」

今度はピンク髪の女の魔王が出てきた。


「グランダの言う通りたぞ、ドウェイグ」

そう言って金髪のエルフの男の魔王が現れた。


…… よし、出て来た。ここらで飛び抜けて強い魔力。この3人が魔王だ。一応鑑定しておこう! ミホは魔王達を鑑定してみた。


名前…… ドウェイグ

種族…… ドワーフ

レベル…… 58

属性…… 火、土

スキル…… 錬成

最新称号…… レジェンド錬成 <獲得称号一覧へ>

性別…… ♂



名前…… グランダ

種族…… オーガ

レベル…… 51

属性…… 水、毒

スキル…… 魅了みりょう

最新称号…… 富国王 <獲得称号一覧へ>

性別…… ♀




名前…… アルクロス

種族……  エルフ

レベル…… 48

属性…… 風、木

スキル…… 野外調理人 (ユニーク)、作曲

最新称号…… 過疎配信者 <獲得称号一覧へ>

性別…… ♂


おぉ〜 うん。弱い! これなら私1人でも楽勝じゃん!


ミホがそんなことを考えていると、魔王アルクロスがミホとブリアンを鑑定しだした。

「!? おい、ドウェイグ、グランダ。あいつ達のレベル、我ら3人合わせたレベルより高いぞ! し、しかも人間の方はレベルMaxだぞ!?」


グランダは呆れた顔で、

「もー、冗談言わないのー、アルクロス。そんなわ…… えっ! ほ、本当よ! っていうか、この子、転生者よ!」

そう言いつつ、水属性を持つ魔王グランダはフリーズした。


「ほ、本当なのか~」

そう言ったドウェイグもミホを鑑定してボー然とした。


魔王3人といっても簡単に倒せそうだけど、一応声掛けてみよう! ゴブリンみたいに不意打ちはさすがによくないよねー。


「私、フリーデン王に頼まれて、魔王さん達を倒しにきました。名前はミホです。ケロchu!」


魔王たちの反応はない。完全にフリーズしている。


「あ、魔王さん達の自己紹介は鑑定済みなので大丈夫でーす」


(魔王さん達、全然しゃべらなくなったなー、どうしたんだろ…… それに何て険しい顔してるんだろー? 


まさか! 『もはや戦うしかない』ってこと? だったらとりあえず威嚇いかくのファイアボール撃っちゃおーっと。なめられないように魔力を解放しとかないとね……)

ミホは的外れな思考をしていた。


「テイヤァー!」

と気合いの入った言葉をミホが発すると、とてつもなく大きく、超高温度のファイアボールが出現し、魔王達のいる方へ放たれた!


このファイアボールは、ブリアンの歌で強化されていることを知らないミホが魔力を解放して放ったため、ゴブリンの森を焼き払ったファイアボールの10倍はある『天災級』の威力となっていた。


その火の玉が放たれた先は爆音をあげ大地を削り、地下深くに眠るマグマを噴出させた。


…… いゃ〜あ、我ながら恐ろしい。なんちゃって! これで魔王さん達が降参してくれるといいなぁ〜


ミホが楽観的にそんなことを考えてる一方で、


「! え!? 俺達まだ何も言っていないのに。ひ、ひどい」

エルフの魔王アルクロスは腰を抜かし泡を吹いた。後の2人の魔王も、いきなり起こった惨劇さんげきの前に、思考回路がショートし呆然ぼうぜんとしている。


「おい! ザツ頭、何やってるんだ! 魔王達、驚いているじゃねーか! そういうのが争いを一層大きくするんだろ!」

ブリアンがせわしく羽ばたかせて言った。


「あ、そうなんだ。あのー魔王さん達いきなりごめんなさい。燃やしてしまったので、いまからアクアアローで、火を消しまーす。…… よし、さっきより強く」

ミホは目をつぶり集中しだす。


「えっ!? さっきより強くって??」

ブリアンは全く逆の行動をするミホを目の前にして、精神的ダメージを受けた。

(この子、やっぱり難しい!!)


一方で、目をつぶり続けるミホの集中は高まっていった!


「「「「ちょっと待ったー!」」」」

ブリアンと魔王達3人の、慌てた様にミホを止める声が聞こえた。


「「「ミホ様どうかなにとぞご勘弁かんべんをー!」」」

ミホが目を開けると、魔王達3人はひれふして、ミホにどげ座をしている。


……? え? 何で、火を消して助けようとしているのに、私を止めるの?


よし、ここは誤解を解くしかない!


「いえ、心配しなくて大丈夫ですよ。ちゃんと火を消すように次の水魔法はさっきより威力を上げますので、安心して下さい。もう少しでいけそうです」

ミホの言葉を聞いて魔王達は、余計に青ざめた。


ド天然なミホは大人に精神的ダメージを与える力があった。これがスキルなのかは未だ定かではない。


(これが「転生者」なるものか…… 俺たち魔王よりも怖すぎる…… なにより会話が全くなりたたない!)

ドウェイグはがっくりと肩を落とし無力さを痛感していた。


(「火」「火」って言ってるけど、マグマですから! それに「水」って言ってるけど、あの遠くに見える水平線、間違いなく大津波デスヨネー!)

グランダはミホに突っ込みを入れたかったが、さらに事態が悪くなる予感がして黙って震えていた。


(魔王といってもあっけないもんだな…… コツコツ頑張って、長い年月をかけてようやくここまできたというのに…… 最後はこんな雑な扱いを受けて消えるのか……)

エルフの魔王アルクロスは長年の地道な努力で積み上げてきたものが一瞬で砕け散る不条理を感じていた。


この状況に魔王達はもはや諦めたようだった、全てを。


「何でだよー?」

ブリアンが必死に羽ばたきしながら叫んでいる。ミホが周りをみると一面、暴風が吹き荒れていた。ブリアンも吹き飛ばされないように必死のようだ。


「ザツ頭、よく考えろよ。さっきのファイアボールであの威力だぞ。そして今、お前が撃とうとしているアクアアローは、火を消すためにさっきより威力が増すんだろ? 火を消すどころか……」


「…… ここにある物全部壊しちゃう!?」

ようやくミホも自分が何をしでかそうとしているか理解して、驚いた顔をして答えた。


「そ、そうだ!」

ブリアンがゆっくりと大きく頷く。


(ここでミホの説得が失敗するとゴブリンの森以上の災害が起きちまう。ミホを落ち着かせなければ! あと少しで成功しそうだが……  とにかくこの説得だけは絶対に失敗できない!!)


ブリアンはミホの説得に危機感を感じ全集中していた。そのかいあってミホは貯めた魔力を引き込めた! すると暴風もやみ、だんだんと青空が戻ってきた。迫ってきた津波も姿を消した。


「やれやれだぜ……」

ブリアンはそう言って、ミホの説得に使った今日一の集中を解いてぐったりした。


魔王達は事態が一歩改善したこの機会を逃してはいけないと3人力を合わせ

「「「ミホ様ー! どうか我々魔族をミホ様の配下にして下さい」」」

ミホの心に響くよう、うったえた!


……ん? もしかして仲間にしたら、戦わなくていいんじゃない? だったら、仲間にしちゃおー!


楽観的なミホはよく考えず、

「良いよ!」


その言葉は魔王3人にとって天使のささやきのように響いた。


(((た、助かったー!)))

「「「ありがとうございます! これより我々魔王国のべ30万はミホ様の配下とさせて頂きます」」」


「30万!」

ミホは想定外の数字に状況を理解しようとあたふたした。


ブリアンは、ミホの説得に集中力を使いすぎてぐったりしたままだ。一方、魔王3人はとてもいい笑顔をしている。


『勝負に勝って試合に負けたとはこのことか……』

これが、後の世に人族と魔族で語り継がれるミホの伝説の題目だいもく『ミホと3魔王の戦い!』。それは長きにわたる人族と魔族の戦いの終結でもあった!


なお、語り継ぐものは知らないし、想像すらできないであろう…… ミホと3魔王の戦いは、実際にミホと魔王が出会ってから10分も経たずに終わってしまう超短期決戦だったことを。


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