24:攻略開始②
ダンジョン攻略のライブ配信によって世界が揺れてることなど知らないミホ達フレイムドラゴン討伐隊一行は、宝箱を見つけた後、数分で2階への階段を見つけた。
結果として最初のフロアを30分ほどで討伐隊は攻略した。
「ドラゴンのダンジョンってこんな簡単に攻略できるの?」
「敵と戦わずにSクラスのアイテムゲットってチート過ぎる!」
チキ動のライブ配信では視聴者の驚愕するコメントが飛び交っていた。
そんな驚きを示す大多数の視聴者達の一方で、あることで熱狂的に盛り上がっている一部の視聴者達がいた。それは魔王達の装備に関しての考察勢だ。魔王達は今回のフレイムドラゴン討伐に備え、万全の状態で取り組んでおり、それぞれ最強の装備状態でダンジョン攻略に臨んでいた。その魔王達が装備しているアイテムが、動画視聴者にとって『幻のお宝アイテム』だったのだ。
防具は魔王達が常につけているので、ダンジョンを探索している状態でも、それぞれの魔王がつけている防具が映り、早々に「何のアイテムなのか」という考察は視聴者の中で結論に達していた。
しかし武器に関しては戦闘が発生していないため、魔王達が身に着けているのがたまにチラチラと映る程度だった。そんなチラリと映る武器の映像を見て、アイテムマニア的な一部視聴者は『魔王達の武器は何なのか』をあれこれと考察することで盛り上がっていたのだ。
実際、魔王達の武器は全てがSSクラスを超える『レジェンドクラス』で、
ドウェイグの武器は大斧で『ラグナロク』
アルクロスの武器はレイピアで『月光のレイピア』
グランダの武器は鞭で『打神鞭』
という名のアイテムだった。
レジェンドクラスのアイテムは文字通り伝説級のアイテムのため、存在の有無自体が考察されているアイテムであった。それゆえ一般の者はアイテム名を聞いたことがある者がいるにせよ、実際に目にしたことがある者などほぼいなかった。それがライブ配信の映像によって、その存在の証明がされていた。それ故、世界中の権威ある学者を含め、アイテム好きな者達はこのライブ配信を熱狂的に視聴し、様々な見解を発して盛り上がっていたのだった。
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そんな魔王達の装備しているアイテムとは反対に、
「ミホって格好があまりにラフすぎないか?」
とミホの装備に関して視聴者の反応が出ていた。
そんな視聴者の反応が出ている中、たまたまグランダが
「ミホ様はフレイムドラゴンと対決する際は、どのような装備をされるのですか?」
と、ミホに質問した。
「装備? んー このままかな……」
「!!? 『このまま』って、正直、何も装備されてないような気がいたしますが?」
そっけなく答えるミホに、グランダが驚いて質問すると、
「そうだよ。装備は重いし息苦しいから私は『何もつけない派』!」
ファッションの好みを答えるかのようにミホは回答した。
「「「ミホの装備はまさかの『ぬののふく』!!」」」
ミホの「装備しばりプレイ」に視聴者達は驚愕した。
「まぁ、ミホはパラメーターの値がカンスト状態だから、防具付けても値が加算されないんだよ〜」
ブリアンがミホの事情をグランダに説明した。
「そっ、そうなのですか…… ち、ちなみになんですけど、武器はどうされるのですか?」
視聴者達と同様に驚愕しているグランダが続けて質問した。
「今回は魔法で倒すつもりだから、武器なんてもたないよ~
ちなみに魔法は『魔法自作』のスキルがあるからその時の気分で何かしようと思ってるんだ~」
ミホは普通なことを話しているような雰囲気で答えた。
「「「えっ……」」」
3人の魔王達は立ち止まり、しばらく呆然として開いた口が閉まらなかった。
「魔法って色々覚えたけど、魔法の名前とか効果って忘れちゃうからね〜」
「最強魔法の名前とか効果ぐらい覚えておけよ~」
「いいんですよブリアン師匠、魔法の名前なんて。その時に必要なイメージがあれば自作できるんですから~」
ミホとブリアンはいつも通りの会話を続けているが、魔王達は立ち止まり口を開けたまま、お互いの目を見あっていた。魔王達同様、ライブ映像の視聴者達にも衝撃が走っていた。
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それ以降のフロアでも討伐隊がモンスターと戦闘になることはなかった。
ダンジョンの壁に、ランタンの形をしているが明らかにモンスター的な雰囲気を醸し出してる『ウィル・オ・ウィスプ』というモンスターがいたのだが、近づいても、どんなに近づいても、さらにはあえてスキを見せても一切動きがなく、とにかくじっとしているため、討伐隊は何もせず進んでいった。
また、『イツアム』というの双頭のイグアナモンスターが、どちらに逃げるべきかお互いの頭が違った方向を向いてしまい、結果逃げ遅れておどおどしてる状況に遭遇した。視聴者たちの
「「「魔王、後ろ! 後ろ!」」」
といったコメントが飛び交う配信状況の中、ドウェイグはイツアムを見て見ぬふりをし、他の討伐隊のパーティーメンバーもあえて何も言わず、そのモンスターを逃がしてやる、という放送事故も発生した。
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もはや討伐というよりは迷路探索な状態が続き、ミホ達は早くも5階へと続く階段を見つけた。5階に上がる前にドウェイグが立ち止まり、
「ミホ様、ドラゴンのダンジョンは5フロアごとにボスがいて、ボスには『気迫』が効かず、必ず戦闘になります」
神妙な面持ちでドウェイグが言った。
「おぉ、ついに戦闘なんだ。どんなボスかな~」
テンションが上がったミホが答えると、
「5フロア毎に現れるボスとは我々魔王が戦闘をしますので、ミホ様はフレイムドラゴンとだけおもいっきり戦ってください!」
ドウェイグが続けて説明した。
「そ、そうなの」
少しがっかりした表情をするミホであったが、それに反してボス戦を前に(正確に言うと「ついに行われる戦闘」の前に)、視聴者は盛り上がりだしていた。
5階につながる階段の上には大きな扉があった。『この扉の先にボスがいる』ことは誰が見ても明らかな状況だった。




