2:ゲームの世界
「ブリアン師匠、私、頑張ります!」
「おお、そうか! 素直は大事なことだ! 今の感動を忘れずに、精進に励めよ!」
「………… なんて言われてずっとやってきたけど、次は何するんですか? ブリアン師匠」
お人好しなミホは文句を言いながらも、ブリアンの言うことにしたがってすでに数々の魔物を倒し、多くのクエストを達成していた。
ブリアンはミホには言わなかったが、何度か達成済のクエストもするようミホに指示していた。
(ミホのヤツ、気付いてない、やっぱりザツ頭だな! お前がしてるのは『最短攻略』じゃなく『カンスト攻略』だー! 俺様を食べようなんて考えるからこんな目にあうんだ)
こんな調子でミホとブリアンはゲームをやりこんでいた。そして、やることがもう無くなってぶらぶらと道を歩いていると、突如目の前が眩しくなった。
(何だろう? 何だか前もあったような? …… あっ! 最初にこの世界に来た時だ! じゃあ、転生するだけか。)
そう、たしかに転生するのだが。ミホは楽観的に考えすぎていた。
▷▷ ▷▷ ▶▶ ▶▶
「よく来たのう」
その声でミホの意識はもどり、目を開けると一面真っ白な世界にいた。そして目の前に見知らぬ優しそうなお爺さんがいた。
「儂のことは、知っておるじゃろう?」
「え!?」
困ったことにミホは目の前にいる人物に全く心当たりがなかった。
「もしかして、其方まさか知ら……」
「え〜っと、ブリアン師匠のオーナーさん?」
ミホは精一杯ひねり出して言ってみた。
「違う! 儂は、世界神ルーファスだと説明に書いてあったろう?」
「!?」
ミホは一文字も読まず、「閉じる」ボタンを押したことをハッキリと思い出した。
「…… やはりそなた読んでおらぬのじゃな! じゃあ、何故あのゲームの世界があるのかのも知らないんじゃな!?」
ルーファスはミホに問い続けた。
「すみません、最短攻略しようと思って、説明をとばしてしまいました」
ミホは正直に答えた。
「なんと!
………… 仕方ない。では、これから説明するからよく聞いておれ。
人の来世を決める儂は、仕事が多くてのぉ、とても大変だったんじゃ。どんどん面倒に…… コホン! 限界になってきたんじゃ。だから、試しに1人くらいは自分で決めさせるのも良いと思ったんじゃ」
(口ではそう言っているけど、つまりサボったということでしょ!?)
「それで何で私が選ばれたのですか?」
ミホにはなぜか、大人の事情の核心を感じとる力があった。
「!! えーっとそれはじゃな…… ル、ルーレットでじゃ…… でも、それしか思いつかなかったからじゃよ!」
ルーファスは、ミホから目を逸らした。ミホは疑いの目を自称『世界神』と言うルーファスについ向けてしまう。
「でも良かったじゃろう? 其方はゲーム好きだからのう。
さて、話を元に戻すぞ。其方は、ゲームをどんどん進めよった。ありえないほどにの。なので今はレベルMAX、最強になっておる。これは来世でもレベルMAX、最強になるということなんじゃ。まっ、良かったのう」
ルーファスはミホを見てニタっと笑った。
「そんなバナナ〜!」
(私、いつの間に最強になっていたの!?)
「安心しろ、儂にも責任はあると思っておる。だから、ブリアンも其方と一緒に転生場所に飛ばそうと思っておる。どうじゃ? 良いと思わぬか?」
ブリアン師匠と一緒に転生? 確かにブリアン師匠は、賢いし、魔法に詳しい。それに…… 何といってもいざとなったらシャトーブリアンを食べれるし!
「分かりました! ブリアン師匠と一緒に転生場所にとばして下さい!」
そう答えるミホに迷いは感じられない。
「ウム。分かった。一応ブリアンにも聞いておいたんじゃが、
『ザツ頭は、危なっかしいからな! 俺がついていないとダメだ、しょうがないな!』
と言っておったぞ。
それでは、来世を楽しんでくるが良い! ではな!」
そう言うとルーファスの姿が徐々に消え出した。
(其方達の驚いた顔が楽しみじゃのー)
ルーファスはミホの顔を最後にもう一度見てニヤリとし、そして姿を消した。
(ブリアン師匠! 私、子供じゃないのに子供扱いしてー!)
完全に自分の世界に入っているミホは、ルーファスが邪悪な笑みを浮かべたことに気づかなかった。
ウィーン!
目の前に「来世のステータス」と書かれたウインドウが現れた。
名前…… ミホ
種族…… 転生者
レベル…… 99 <MAX>
属性…… <全属性>
スキル…… 不老長寿(ユニーク)、魔法自作 (ユニーク)、<多数>
最新称号…… 最強、<獲得称号一覧へ>
性別…… ♀
本当にレベルMAX、最強じゃん! ていうか「スキル欄」、量が多すぎて省略してるじゃん!
女性ロボットみたいな声が聞こえる。
「転生開始まで、3、2、1……」
カァー!
眩しい光に覆われ全てがみえなくなった。
ミホの転生が始まった。