11:専用コンシェルジュ③
マーレリングで働くことをメイナードが了承したことに快くしたヴィーノとディアンが大声で笑いあっている中、
「それではメイナード様、これよりあなたが仕分け能力があるか『テスト』をさせていただきます」
アシュメが冷静に言った。
「「えっ!? テスト!?」」
笑いを止めて、ヴィーノとディアンは焦りだした。
「ご存じの通り、この屋敷の中には非常に高価なアイテムが多々ございます。仕分け、つまりアイテム鑑定の能力が十分でないと、こちら側も安心してお任せできません」
アシュメがごもっともな説明した。
「そ、それはそうですね……」
ヴィーノはつぶやくように言った。
「クッ、クッ、クッ」
アシュメは笑って、メイナードの前に両手を差し出し手を広げた。
アシュメの両方の手にはそれぞれアイテムが1つあった。
「この2つのアイテムを鑑定してください」
アシュメが言った。
いきなりの採用テストが始まり、ギルドマスターのヴィーノと部門長のディアンはごくりとつばを飲んだ。メイナードのアイテム鑑定が失敗すると、この大儲け話が泡と消えてしまうからだ。
メイナードは目の前に出されたアイテム2つを見て、集中しだしていた。テストなど関係なく、この2つのアイテムにメイナードは興味が沸いていた。そして『鑑定眼』スキルを使用した。
「右手のアイテムは、『琥珀色のミスリル原石』というアイテムです。このアイテムのクラスはSですね」
ためらうことなく即答するメイナードを見て
「もっと考えた方がいいんじゃないか?」
ギルドマスターのヴィーノは冷や汗を流しながら言った。
「正解です!」
アシュメが答えた。
「「おっしゃー! やったー!」」
ヴィーノとディアンは手を握って喜び合った。
上司のそんな状況など眼中になく、メイナードは左手のアイテムを鑑定した。しかし、先ほどの即答とは違い、メイナードは黙って考え込んでいた。
「左のアイテムはいかがですか?」
アシュメが回答をせかすと
「左のアイテムを鑑定した所、『海燕の巣』でCクラスと表示されてるのですけど……
!?
いや、ちょっと待ってください! これは呪いがかけられてます!
Cクラスの『海燕の巣』に見せかける呪いのようです。
呪い解除を行います……
!?
これって、SSクラスの『霊獣の巣』ではないでしょうか!?」
メイナードは興奮しながらアシュメを見て言った。
アシュメはにっこり笑って
「正解です」
と言った。
「さすがメイナード! ウォー!」
「そなたにはボーナスを支給しよう!」
ヴィーノとディアンは抱き合って涙を流しながら喜びの声をあげた。
「メイナード様は本物の審美眼をお持ちのようです。あなた様でしたらギルド協会様のお給金の倍以上で当国でお雇いさせていただきますが、いかがですか!」
アシュメがメイナードに言うと、抱き合って喜んでいたヴィーノとディアンは
「「アッ、アシュメ様、ご、ご冗談を……」」
慌てふためいて応えた。
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メイナードがミホ専属担当となり、お宝屋敷でアイテムを整理をすることが決まった。
「この屋敷の中にあるAクラス以下のアイテムはすべて処分していただいて構わないと考えております」
改めてアシュメが冒険者ギルド一行に伝えた。
その言葉を聞いたヴィーノとディアンは頭の中で計算し、冒険者ギルドにもたらされる利益がバク大である計算結果をはじき出した。そしてその日一日、にやけてほころんだ顔が戻せなくなった。
マーレリングで住み込み生活となるメイナードは、祝勝会を冒険者ギルドの二人とマーレリングで過ごした後、一度彼女の国に戻る休暇が与えられた。その休暇中にマーレリングで生活をする準備をした後、マーレリングに再度来訪することになった。
また、メイナードの住居は最もセキュリティが高いグランダの王城内に用意されること、
マーレリングの城下町に冒険者ギルドの支部用に倉庫を貸し出すこと、
支部に務める者が決まるまでその倉庫の管理をマーレリング側が行うこと、
等の契約的な条件が速やかに取り決めれれた。




