1:目覚め
「何じゃここは〜!」
少女が目を開けると、大自然の中に立っていた。
遠くを見ると様々な動物ーー、いや魔物が生息しているのが分かった。
ポ◯モン アル◯ウスのような景色の中に、この物語の主人公である15歳の少女『ミホ』は1人立っていた。ミホが周りの景色をうかがってしばらくすると、目の前にウインドウが現れた。
「hello! ここは来世であなたの強さを決めるゲームの世界です!」
「…… あっ、ゲームかぁ〜 そんなら、最短攻略するしかないでしょ〜 ゲーム好きなら!」
そう叫びながらミホはジャンプした。
「うわ! 思っただけで自由に体が動く! スゴ!」
ミホはそう言って今度は草原をかけだした。もっと警戒したり、考えるべき点があるはずなのだが、この状況を彼女は全く疑いもせず受け入れているようだ。
▷▷ ▷▷ ▶▶ ▶▶
いつの間にか説明らしき文字がたくさん書いてある小さなウインドウが出ていた。
「説明は最短攻略には、いらないよね〜」
ミホは「閉じる」ボタンを押した。一文字も読まれず説明画面は消えた。
そう、ミホは重大なミスを犯した。後で後悔することになるのだが、この説明文は世界神からのメッセージだった。
「よーし、とりあえずここにいる魔物でも討伐しよう!」
と言って魔物がいそうな森に向かおうとすると
ヴォン!
という警告音のような音と共にウインドウが表示された。
「何じゃい! …… 何だ〜 また説明か。ビックリした。
…… っていうか変な言葉が出ちゃった」
そんな独り言を言って、ミホは現れたウインドウを確認する。
「何々、従魔選択!? ふむふむ、つまり、鼠、牛、虎、兎、龍、蛇、馬、羊、猿、酉、犬、猪、の中から従魔を選ぶんだ。って、十二支じゃん! うーんどれにしよっかな〜」
従魔選択は画像が無く、文字のみで選択しなければならないためか、ミホは相当の時間をかけて悩んでいた。
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「あっ! 牛を選べばいざという時は、一度食べてみたかったシャトーブリアンが食べられる! よし、牛に決めた!」
ポチッ!
ようやく決断できたようで、ミホは牛を選択した。
「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン!」
そう言って外見は全く普通の乳牛が現れた! ミホは口をポカーンと空けている。
「ってそこウケるとこ! これだから人間は! っていうか、俺を選んだ理由がシャトーブリアンを食べてみたかったからって、有り得ないだろ! このイ・ケ・メ・ン・様を!」
よくしゃべる牛だ。しかも口調からどうやらオスの牛らしい。
「これが私の牛! 美味しそう…… よだれが止まらない。食べて良い? 食べて良いよね! いただ」
従魔の選択に時間をかけすぎたのか、ミホはすっかり空腹になっていた。
「ちょっと待てぃ! 俺は、食いもんじゃねーって言っているだろ! このザツ頭が!」
牛はすごく慌てた顔でミホを止めた。そしてミホは、従魔である牛に『ザツ頭』と言われてものすごくキレている。
「なっ! 何だってぃ〜! ザツ頭じゃありまっせ〜ん! ミホです
ケロchu!」
そう言って腰と首を傾け、両手を頭につけてダブルピースをしたポージングでミホは停止した。
「なんだそれ! 流行ってんのか?」
牛はポージングして止まってるミホをジッと見た後、冷静に質問した。
「わかってないな〜」
と口を尖らせ、ミホは姿勢を戻した。
「ミホ! 腹減ってんなら、これでも食べるか? えい!」
牛がそう言うと、蒸しパン、チーズ、牛乳が現れた!
「わぁー! ありがとう、いっただき!
って、あのー、この食べ物ってぼったくり料金では!?」
とミホはかぶりつく直前に止まって、牛を横目で見ながら聞いた!
「かっ、金なんてとんねーし!」
親切心をうたぐられて牛はイラついた。
「そっ! じゃあ、あらためて、いっただきまーす!」
ッガブ! ムシャ、ムシャ、ゴクゴク!
「ん、うっま〜い」
(この牛、いいとこあるじゃん)
と思いつつ、ミホはあっという間に出してもらったもの全てを食べきった。空腹を満たして落ち着いたミホが
「あっ、そうそうさっき従魔に名前を付けられるって書いてあったよね!
うーん、どうしようかな……
あっ! 『ブリアン』はどう? シャトーブリアンのブリアンから取ったんだけど」
「名前のつけかたも雑だな! やっぱザツ頭だな! でも、まぁ、良いよそれで」
従魔の名前は『ブリアン』に決まった。
(ブリアンって、ちょっとうるさいなぁ〜。でもシャトーブリアンを食べるまで、ガマン、ガマン!)
と思いながらミホは、
「ねぇ、ブリアン、私このゲーム最短攻略したいから説明とかあるなら早めにしてくれない?」
と質問すると、ブリアンはニヤリと笑みを浮かべ、ドヤ顔で語りだした。
「分かったよ。ったく……
魔物を倒すかクエスト達成で経験値が得られる。経験値がたまるとレベルが上がる。クエストは難易度が高い程、取得する経験値が上がる。まっ、頑張るしかないって事だよ。
それからここ重要! 俺は、ミホにいろんな事を教えてやるから、『ブリアン師匠』と呼べよ!」
(んウーん、偉そうに言ってるけど、ゲームの説明が当たり前すぎて、情報量少な!
とはいっても、この牛、面倒くさいけどいろんな事を知ってはいそうだし、食べ物くれるしなぁ〜
よしっ! ここは素直に師匠と呼ぼう!)
「分かりました、ブリアン師匠!」
ミホはブリアンを師匠と呼ぶことに同意した。
「そんなよだれを垂らして見られながら『師匠』って言われてもなぁ〜 まぁ良い、ちゃんと言う事を聞くんだぞ!」
そう言いつつもブリアンは師匠と呼ばれることに満足気だった。
そんな会話をしていると、ボヨンボヨンと跳ねる水色の物体がやってきた。
「おっ、早速魔物が来たぜ。って運良く最初は、スライムだな。殴るだけでも倒せるからやってみろ!」
「スライムって、イャッフゥ!来た〜 ヤッターヤッター!」
(ウソ〜 ゲームの最初に必ずいるスライムだよ! 興奮せずにはいられない! 最初は、どんどんスライムを倒していく方が良いかな? イヤイヤ、まずは目の前のスライムを倒すことに集中しよう!)
「テイャ〜」
武器の無いミホはパンチやキックで攻撃した。スライムに攻撃は当たるがボヨンボヨンして、効いているのか分からない。それでもミホは攻撃を続けた。しばらくするとスライムが消えた!
(ゼェ、ゼェ、ョッ、ヨッシャア! 倒せた!?)
息を切らせながらミホは消えたスライムの場所を観察した。
(うん? 何か落ちている、何だろう?)
消えたスライムの場所に青色の石が落ちていた。
「あぁ〜 それはスライムのドロップ品だ。Fクラスだがちゃんとした素材アイテムだぞ。素材は売ることもできるんだ」
(初めての戦い! 初めてのドロップ品! クラスは低いみたいだけど、感動!)
ミホは青色の石を拾って、マジマジと眺めた。
「ブリアン師匠、私、頑張ります!」
「おお、そうか! 素直は大事なことだ! 今の感動を忘れずに、精進に励めよ!」
こうしてミホの冒険が始まった。
序章は数年前に作った作品を今回の公開用に修正したものです。
本日、序章の全7エピソードと1章の1エピソードを10分間隔で一気に公開します!
ミホの異世界転生先での冒険ファンタジーを楽しんで読んでもらえたらうれしいです。