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勇気と光



家を出た私は先生の車に乗って、登校していた。

さすがに遅刻ぎりぎりの時間に歩いている生徒は居ない。少し、ほっとしている自分が居てビックリした。


学校が見えてくるに連れて、心臓が激しく動く。手に汗がにじんできた。一日、たった一日だけだったのにもうこんなに体が拒否反応を示している。

でも、先生に気づかれないように必死に我慢する。



「怖い、ですか?」


「そんなわけ、ありません・・・」



頑張って笑顔を作って先生を見る。しかし、先生は私の目もとを悲しい顔でぬぐった。なんで、と思うといつの間にか目から涙が流れていた事に気がついた。



「あれ、おかしいなぁ?」



止まらない涙を必死にぬぐう。しかし、涙は止まることなく流れ続ける。

気がつけば、先生の腕の中にいた。なんで、と思うが声が出ない。先生に抱きつき、泣く。



「分かってるっ・・・私より辛い人だっているっ、けど、怖いっ!私はそんなに強くない、の」


「分かってます。大丈夫です、助けんですから、きっと大丈夫になるまで一緒です」



何でそんな事をしてくれるのかは、知らない。だけど、嬉しくて、辛かった。


でも、いつかは自分で歩き出さないといけない。それがあたりまえ。



「私、頑張らなきゃ、駄目なんです。だから、なにがあっても見ていぬ振りをしてください」


「努力、します・・・」



震える声で言えた一言。


勇気を出して歩く。それが大切なんだ。覚悟を胸に、先生の車から降りて震える足で大きく踏み出した。


教室まで、手足が震える。でも立ち止まってちゃいけない。そっと、教室のドアに手をかけて少しずつ開ける。



「でさぁー・・・」


「まじでぇ!?ありえなぁい」



私が教室に入るとみんなの会話が止まって、自分に視線が集まるのが分かった。


体が、拒否する。今すぐ教室から出て行きたい。でも、先生に頑張ると言った。逃げてはいけない。



「お、おはよう・・・」



勇気を出して挨拶をする。誰も返事は返してくれないだろうから、ささっと自分の席に向かう。


途中で、手が震えてたためか鞄が手から滑り落ちた。



「あっ・・・」



運悪く、鞄が開いていたらしく、机と机の間で教科書が散らばる。


おまけに筆箱をばら撒かれている。いそいでかだつけなきゃ、何をされるか分からない。



「ご、ごめんなさいっ」


「・・・大丈夫?」



急いで床にしゃがみ込み、教科書を拾っていたら、誰かが目の前の教科書を取って目の前に差し出してくれた。


恐る恐る、顔を上げようとする。親切なフリをして、顔を上げた瞬間に絶望感を与えるつもりなのか。


結局、怖くて顔を上げられず、落ちている教科書を拾った。しばらくすると目の前に差し出された教科書が視界から消えた。


ほら、どうせ元から私に渡すつもりは無かったんだ。まわりで皆が囁いている。



「私、昨日何があったか休んでたらわかんない。でもさぁ、聞いた話じゃ貴方・・・悪く無いじゃん」



急に視界に入って来た顔にビックリして、目を開くと・・・その子が光に見えた気がした。




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