表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/15

03 私は夢を見ても良いのですか?

 結局、タマモは女神イスカリアに押し切られる形でスキルの付与を受け入れた。しかし必要最小限の構成でだ。

 聞くとステータスのあるレベル制の世界だそうで、参考までに表示方法も教えて貰った。

 以下がタマモのステータスとスキルだ。



name TAMAMO

age 274

Lv error

HP E9999. overflow

MP E9999. overflow


STR E999. overflow

VIT E999. overflow

DEX E999. overflow

AGI E999. overflow

INT E999. overflow

LUK error


skill

・言語理解(惑星上全言語)

・世界常識(惑星全域)

・生活魔法


title

・個人事業主(運送業)

・みくりや丸船主

・ダッキの主

・紅白狐、他


 このエラー表示が、まるで電卓である。


「ステータスが年齢以外にマトモな表示が一個も無い件。そしてtitleは称号の事かな? って、なんで二つ名が表示されてるんよ!」


―私もこの様なステータスは初めて見ました。タマモさんが異世界の機械知性体? でしたか、それである影響かと―


「ねえ、称号の件は? なんでこんなんなの? ねえってば」


 取り敢えず、タマモは魔法は要らないと言ったのだが、生活魔法は使えないと怪しまれると言う事で取得と相成った。

 称号については、まあ頑張れ。


―ダッキさんの人化が上手く行かなかったら、亜空間収納も取得ですね―


 何故な嬉しそうな女神イスカリアなタマモは胡乱な目をする。


「なんか、色々と押し付けようとしてません?」


―そんな事はありません―


「まあ良いですけど……」


 そんな時にダッキからデザイン完了の声がかかる。


『デザイン出来ましたよ。操舵室の大型スクリーンに映しますから、タマモも見て下さい』


「おー、見る見る! どんな感じにしたのかな?」


 そこに表示されたのは、ふさふさの金色に輝く尻尾。ピンと立った尻尾と同じ色の毛に覆われた狐耳。髪は緩くウエーブしたロングで腰までありそうである。

 そして、切れ長で少し吊り目気味の目に蒼の瞳。鼻筋は通り、その下に蠱惑的で艶やかな形の良い唇が並ぶ。全体的に整った妖艶な美女である。

 その顔の下には豊かな、推定Gカップ以上は有りそうな形の良い女性の象徴である乳房がたわわに実り、その先端には桜色の蕾が自己主張をしている。

 細く括れたウエストに、形の良い少し縦長の臍が見える。ウエストのラインから張りの良い腰を通って太ももに続く優美でなだらかな曲線。足首はキュッと締まっていて脚線美を引き立てる。

 画像上でダッキの身体が横に回転すると背中から臀部にかけてのライン見え、更には形良く丸みを帯びたキュッと上がったセクシーな臀部が現れた。

 そして更に回転するとゲフンゲフン。ポーズがダ・ヴィンチの『ウィトルウィウス的人体図』なもんだから色々と丸見えである。

 そう、表示されたのは一糸纏わぬ裸体であったのだ。


「ダッキさん! ちょっ、なんでそんな大事な秘密で微妙なとこまで詳細にデザインしてんのよ!」


『人化するのですから、人に見られても良い様にと細部までデザインしました。一応は使えますよ?』


「いやまあ、そう言われればそうなんだけどさ。それで何が何に使えるのかなー。って、これって私がイメージしてた妖狐の妲己じゃん」


『ダダ漏れしてたタマモの妄想を参考にしましたからね。ほら狐耳と尻尾も有るからタマモとお揃いですよ』


 女神イスカリアは表情は変わらないが驚いている様だ。


―この船、いいえ、ダッキさんはこの様な事も出来るのですね―


「そりゃもう、私の自慢の相棒ですからね。あれ? イスカリア様、イスカリア様達が管理してる宇宙って、星間文明とか、いや、科学技術文明とかって無いんですか?」


―残念ながら―


『お話の途中ですが、相談があります』


 タマモと女神イスカリアの話が脇道に転がって行きそうになったところにダッキから声がかかった。


「ダッキさん、どうしたの?」


『運動・動作のシミュレーションをしたのですが、人体の基本動作のデータが無く、自然な動作が出来ません。あと表情もですね。感覚系も上手くインターフェースが噛み合いませんし』


「ああ……。義体だと、その辺はメーカーから提供されるからねぇ。どうしよう?」


『暫く観察とシミュレーション、実動作を繰り返してフィードバックするしかありませんね。あとはタマモの思考リンクからの学習ですか』


 腕を組んで考えるタマモ。スクリーンの中のダッキも、そのポーズを真似している。裸で。

 物理演算もしっかりされているので、たわわがたわわになって大変たわわである。


―それでした、マキナ・ドール(機械人形)ホムンクルス(人造人間)いう魔物が持つスキルで、良いのがあります―


 この惑星(せかい)では、機械人形や人造人間は魔物扱いである。魔法使いや錬金術師が作成に成功すると何故かスキルが付く法則があるのだ。


『それ、何ですか?』


―人体基本動作、人体基本五感と疑似感情表現です。お使いになりますか?―


『それ下さい!』


「ダッキさん……。食い付くねぇ」


 そして再び祈りのポーズをする女神イスカリアと光る操舵室全体。


―付与出来ました―


『また不明なデータがありますね。解析してボディに紐付けして反映してみます』


 今度は人化スキルを付与された時よりも時間がかからなかった。早速、スクリーンの中のダッキが動き始める。


「おおー、良い感じだよ。でも表情は、ぎこちないね」


『こればかりはタマモに協力して貰わないと自然に出来ないかも知れませんね』


―いえ、付与したばかりで、ここまで自然なのは普通はあり得ません。しかし人化する前に色々と確認出来るなんて驚きです。さて、それではダッキさんにもタマモさんに付与したスキルを授けますね―


 その結果、ダッキのステータスは以下の様になった。なお、ダッキはタマモの眷属扱いらしく、ダッキのステータスをタマモは確認する事が出来る。



name DAKKI(Mikuriya-MARU)

age 217

Lv error

HP E9999. overflow

MP E9999. overflow


STR E999. overflow

VIT E999. overflow

DEX E999. overflow

AGI E999. overflow

INT E999. overflow

LUK error


skill

・人化

・言語理解(惑星上全言語)

・世界常識(惑星全域)

・生活魔法

・人体基本動作

・人体基本五感

・疑似感情表現


title

・超高性能人工知性体

・タマモの所有物

・タマモの眷属

・ペーパーモフリスト



「ぉぅ……。予想はしてたけど、ステータスが私とほぼ一緒だよ。そしてスキルの数が私の倍だよ。そして称号の最後、何も言えん……」


―ダッキさんの方が年下だったのですね―


「注目するとこ、そこ?」


『人化を試してみたいのですが、このままタマモが乗船したままでも大丈夫なのですか?』


―はい。船の内部空間には影響は無いはずです―


「ホントですか? 不思議ですねー」


―スキルとはそう言うモノですから―


「でも、人化する様子も見てみたいし、外に出ても大丈夫ですかねぇ」


―一応は召喚途中の生き物が生存出来る環境に合わせる様にはなっています―


「私達、厳密な意味で生き物じゃないんですけど。宇宙空間移動してたし、出たら真空でしたとか。まぁ真空でも平気なんですけどね」


―一度、外に出てみますか?―


「そうですね。ダッキさん、メインデッキのエアロックから、ちょっと外の様子見してくるね。大丈夫そうならそのまま外に出るから」


『思考リンクの確認が出来なかったら戻ってきて下さいね』


「ほーい、んじゃ行ってきます」


 タマモはそう言うとエアロックへと向かう。メインデッキのエアロックは操舵室から船尾寄りにあり、船底からは、かなりの高さがある。

 タマモはエアロックの前室で愛用のバーニア・ユニットを背負って、エアロックへと入室した。


『ダッキさん、エアロック入室。前室と内部ドアは閉塞したから、取り敢えず外部との気圧調整出来るかの確認が出来次第、外部アクセスドアを開けて』


『了解。思考リンクはまだ大丈夫みたいですね。はい、エアロック内気圧、外部との気圧差ありません。外部アクセスドア、開放します』


 エアロック外部アクセスドアが、一度、エアロック内側に引き込まれる形で後退すると、斜めに天井方向へスライドして行き、開放部が広がり外が見えて来た。


「(……真っ白だ)」


 見渡す限り広がる白。現実感が無い景色である。エアロックから下を覗き込んだタマモが呟く。


「(船体に影が出て無い。光源設定しないテクスチャだけのCG見てる感じだわ)」


 暫くは呆然と外の景色を見ていたタマモだが、気を取り直してバーニア・ユニットで下に降りる事を試みようとした。


―そのまま踏み出しても大丈夫です。落ちる事はありませんから―


「うわっ! ビックリさせないで下さいよー。あら、声は出せるんだ」


 女神イスカリアが突然タマモの横に現れたのだ。

 彼女の言う事には、この空間は彼女の支配下にあるらしく、存在する者の意思により自在に見えない足場が現れるようになっているとの事だ。


「ほー、これはこれは」


 タマモは見えない足場を使い、ピョンピョンと空中を跳ね回っていた。

 おい、ダッキの人化のテストを忘れてないか? 全く、この齢三百近い銀狐娘は。


『タマモ? まだですか?』


『あ、ごめんね、ダッキさん。ちょっと楽しくて』


『タマモ。貴女、ハイリスク・ハイリターンの仕事をしなくなってから徐々に幼児化してません?』


『ソ、ソンナコトナイヨー』


 異常な状況の筈なのに呑気なものである。これはタマモとダッキには生物にある生存本能的な何かが欠如している為かも知れない。

 ただ、タマモに関しては海賊相手にステゴロのやり過ぎで麻痺してしまっているとの話もあるが。


『離れましたね? では人化プロセスを実行します』


『はいよー』


 みくりや丸を見上げながら、手を振りながらタマモが返事をすると、船体が金色の光に包まれて行く。


―どうやら無事にスキルが発動したみたいですね―


 光に包まれた、みくりや丸が見る見るうちに縮んで行く。

 人の形になりつつ、更に縮んで百七十センチくらいになると、手足の輪郭等がはっきりしてきた。

 そして一際(ひときわ)眩しく金色に輝くと、人化が完了する。

 そこには、スクリーンで確認した姿のままのダッキが立っていた。裸で。


「あー、何か着るもの用意しとけば良かったか……」


 頭を抱えるタマモに、まだ何処かぎこちない笑顔で人化したダッキが歩み寄って来る。たゆんたゆんのぷりんぷりんで大変眼福である。この場に居るのは女子だけだが。


「タマモ!」


 タマモに近付き、思わず抱き付くダッキ。彼女の身長は狐耳を除くと百七十センチを少し超えた位、タマモの身長が狐耳を除いて百五十センチと少し。結果、タマモの顔がダッキの胸に埋まる。


もがががむ(ダッキさん)! もごがごがごー(おちついてよー)


「ああ、タマモ、タマモ」


 タマモは思考リンクでも話かけながら、ダッキの腕や背中をタップして離せと訴えるが、余計に強く抱き締められた。


「(聞いちゃいねー。そりゃ嬉しいのは分かるけどさー。あ、でもダッキさん信じられないくらい柔らかいわ)」


 ダッキに抱き締められ、されるがままに、かいぐりかいぐりされるタマモ。

 タマモの髪は特に手入れをしなくてもサラサラなのだが、撫でくり回されているので今はグシャグシャである。

 顔は胸に埋もれたままなので、普通の人間なら窒息死案件だが、タマモは呼吸を必要としないので特に問題は無い。

 しかし、このままでは埒が明かないと、タマモは脱出を試みる。

 ダッキと自分の身体の間に腕を差し込み、外に広げようとするが、タマモの怪力でもビクともしない。

 それはそうだ。人化しているとは言え、ダッキの本性は、いや本体は、みくりや丸である。秘めているパワーが違う。


「(かくなる上は! 通用するかどうかは賭けだけど、ダッキさん、ゴメン!)」


 タマモは手を下に伸ばしてダッキのデリケートゾーンへと指先でアタックかけた!


「ひゃん!?」


 通用した! 攻撃成功! 効果は覿面だ!

 思わぬ攻撃に腕を緩めたダッキの胸からタマモは無事に脱出したのであった。


「ダッキさん! 嬉しいのは分かるけど自重! これから恥じらいを覚えてよね!」


「はい……」


 しょんぼりとするダッキ。感情表現のスキルがキチンと仕事をしている様である。


「それよりも何か違和感、というかインターフェースに支障は無い?」


「はい、整合性は取れてますね。反射や情動も先程ので確認が出来ました」


「……自己診断とかしないでよね」


「自己診断なら定期的にサブフレームから実行していますが?」


 首を傾げるダッキを見ながら、知らなくて良い事は、世の中には沢山あるのだよ。とタマモは思考リンクに漏れない様に、心の奥で思ったのだった。


 そんな事も有りながら、ダッキは身体各部の確認を行っている。裸で。


「ダッキさん、チェックも良いけどさ、そろそろ服を着ようよ。みくりや丸の姿に戻ってエアロック開けて貰えれば、取り敢えずフリーサイズの船外作業服でも持ってくるから」


「それには及びませんよ、タマモ。ほら」


 ダッキがそう言うと、彼女の横に見慣れたエアロックの外部アクセスドアが現れる。


「え? なんで? 人化してても船内へアクセス出来るの?」


―スキルとはそう言うモノです―


「つかぬ事を伺いますが、もし、服を着たまま人化解除したりすると、着用してた服は破れますよね? 確実に破れてボロボロですよね?」


―大丈夫ですよ。破れませんし、再人化した時は、解除前の服を着て人化しますから―


「便利と言えば便利だけど、不思議ですねー」


 そう言って遠い目をしたタマモに女神イスカリアは、身も蓋もなく返す。


―スキルとはそう言うモノです―


「うん、考えるの止めます。理不尽だけど」


―そうして下さい―


 疲れた顔でタマモはエアロックから船内へと入って行くと、ダッキも付いて来た。


「ダッキさん、人化した身体で乗船出来るんだ……」


「出来ましたね。不思議ですね」


「深く考えるの止めよう……」


 ファンタジーの理不尽に、色々と諦めたタマモであった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ