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ヴァレフォール家の宴 2

「あんたに紹介したいお嬢さんがまだまだいるんだよ。

あのピンク色のドレスのご令嬢。あのこの姉はガミジン家に嫁いでいるんだよ、お姉様が宮廷にいるって。それからあの黄色のドレス。可憐なお嬢さんじゃないか。

さ、どちらから行こうかね。あんたが独り身でふらふらしているなんて、おばあちゃんは死にきれない」


「長生きしてくれればいいんだよ」


「話題をずらそうとしたってだめさ。とりあえず、おばあちゃんの知り合いの娘さん片っ端から紹介するから。そのつもりでいなさいな」


「勘弁してよ」


強めに断ると、祖母のの何か企んでいるような笑顔がすうっと消えた。そしてつらそうにうつむいたままオルランドの手を放した。


「あんたやっぱりオフェリアの事忘れられない?そうだよね。婚約破棄しなかったくらい愛していたのだものね」


「別にそういうことでは」


そうか、そういう風に見られていたのか。オルランドは苦笑した。実は5年も前に婚約破棄の書類は書き終えている。コカトリス卿にお預けしたのだが、神殿に提出なさらなかったため、そのままになっていただけなのだ。オルランドも急かすことはしなかった。コカトリス家にはオルランドの部屋があって数か月滞在することもあった。少年のころからずっと家族同然の付き合いをしていたから、婚約破棄をしてそれを失うのが嫌だったのだ。

どういったものか。オルランドはうまい言葉が見つけられないまま、祖母の話に耳を傾けた。


「いまだからいうけどもさ、私はオフェリアって子をどうしても好きになれなかった。コカトリス伯爵はしっかりしてる人なのに、なんであの子はああだったんだろう。ドレスの流行とかだれかの噂話とか男の気を引く方法とか、そういうくだらないことで頭が一杯。

あんたという立派な婚約者が居ながら、陛下の愛人になって、婚約破棄だのなんだの、あんたを振り回すだけ振り回してさ。まあ、あんたは愛していたのだろうし、悪口は言いたくないんだけれども」


愛?オルランドは思わず首を傾げた。

すくなくとも、オフェリアを愛してはいなかった。

そういえばオフェリアに「あなたと婚約したままなのは素敵なネックレスをお持ちだから」と言われたことがある。母の形見である真珠のネックレスだ。

だが、大したショックは受けなかった。その点はお互い様だとも思っただけだった。


「だから。幸せになって欲しい。信頼できる相手をみつけて幸せになって欲しいんだよ」


「ありがとう。でもね」


「でも、は余計だ。とりあえず今日はあと3人ほど会ってもらうから」


に、逃げられない。

オルランドが観念しかけた、そのとき、突然外で大砲のような轟音が響き渡った。

大広間は一瞬静まり返ったが、一斉に色めき立った


「事件発生。衛兵隊集合」

「時刻確認」

「将軍の馬車を準備」

「馬ひけーい」


なにしろ客の大半が法曹関係者と衛兵隊の士官である。

それぞれが忙しく動き始めた。

どうやらこの場はやり過ごせそうだ。安堵した気分でオルランドは立ち上がった。


「じゃあ、おばあちゃん。またね」

「ああ。気を付けるんだよ」


オルランドが大広間を出て庭に出ると、すでに十数人の客がその場にいて、わいわい話し合っている。南西の方角から火の手があがっているのが見えた。


「あの火事はフォカロル神殿ですかな」


「あの衝撃からすると火薬を使ったようですな」


「物騒なことだ。燃え広がらないといいのですが」



もっと近くから見ようと思い、オルランドはそのまま走って車寄せのところへ行くと、すでにオリアクス将軍と伯父のヴァレフォール伯爵がいて話あっている。


「私だけ現地に向かってみようと思います。馬車は妻が乗って帰るそうで」


「お気をつけて。今、たいまつをご用意させております。うちの若いのに案内させましょう。今マントを取りにいっております」


オルランドは、「私もお供します」と申し出、受け入れられた。


自分もマントをとってこようとオルランドが踵を返したとき、さらに大きい爆発が起きた。地震のように地面が揺れ、天を衝くような火柱が立ち上った。

吹きぬけていった一陣の風は、すさまじい悪臭を伴っていて、まともに顔に食らった一同は思わずその場でえずいた。


「ヴォエエッおいっなんだこりゃあっヴォエエッ」


「新種の火薬ですかな?ゲホゲホ。酷い臭いだ」


風はやんだが、臭いは何となくあたりに残っている。鼻が曲がるとはまさにこのことだ。

一同は鼻をつまんだまま、大広間に引き返した。オルランドは積んであったオレンジを鼻の前にあて、しばらく深呼吸を繰り返した。


出発の準備が整った後にも苦労はまだあった。馬が臭いのもとに向かうのを嫌がって動かなくなるし、臭いの濃いところでは、松明が急に勢いよく燃え出すので危なくて仕方がない。

一行が現場についたのはずいぶん経ってからだった。




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