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魔術で性別が反転した俺、美少女になる。~中途半端な魔術師はいらないと追放された結果、何かとうまくいきました~  作者: 柚月由貴
本編

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33 告白

「嘘……でしょ……」


 俺の前で、ミレーユが驚愕の表情を浮かべている。ベッドに並んで座っているので、その表情はよく見えた。ここまで動揺している彼女を見るのは、初めてかもしれない。


「本当なんだ。私が……俺がエルヴェなんだ」


 ミレーユには全て話した。反転の魔術を受けたこと。その後、気づいたらベッドの上に居たこと。皆の元に帰ろうとしたらルノアールに出会ったこと。ルノアールが、俺を追放したこと。


 反転の魔術なんて、簡単には信じて貰えないことは分かっているので、俺達しか知らないことも合わせて話す。パーティで挑んだ依頼。共に過ごした中で起こった、笑い話。そして、ミレーユと話した様々なこと。


 それら全てを話し終え、ミレーユの反応を待つ。

 彼女は、今聞いた事実を飲み込むことで必死な様子だった。無理も無い。死んだと思っていたら、実は生きてました。なんて衝撃が強すぎる。しかも、見た目が全然変わっているのだ。


 顔を俯かせて、考え込んでいる彼女を黙って待っていると。

 ミレーユが、手を握りしめた状態で俺を叩いてきた。

 痛くは、無かった。


「何で……会いに……来なかった」

「……ごめん」

「あんたがいなくて……どれだけ……大変……」

「……ごめん」


 ミレーユの声は震えていた。俺を責めながら、何度も叩いてくる。

 やがて、ミレーユが叩くのやめた。俺の肩に顔をうずめ、俺の服をきつく握る。


「……生きてて……良かった」

「……ありがとう」


 すすり泣く声。俺はその場で、ミレーユが落ち着くまで、ただじっと彼女を受け入れていた。





 ミレーユが泣き止んだ後、俺たちはルクソードさんの部屋へ向かった。泣いたことが、恥ずかしかったのか。あるいは目が赤くなっているのが恥ずかしいのか。帽子を深く被り、顔を見せないようにしているミレーユの手を引っ張り、連れて行く。

 帽子を深く被っても、今は俺の方が身長が低いので、覗きこめてしまうのだが。そこは自重して見ないようにした。


 ルクソードさんの部屋に着き、扉をノックする。中からの返事を待って入ると。師匠とイグルスさん、ルクソードさんに加え、もう一人知らない女性がいた。


「あぁ、カノン君。よく来てくれた。歓迎するよ」


 ルクソードさんに促され、奥まで進む。現在、ここで近衛師団の作戦会議が行われているとの説明を受けた。


「私達、ここに居て良いんですか?」

「構わない。むしろ、手を貸して欲しいと思っている。我々は人手が足りないからね」

「私も、いいの?」

「ミリアムから聞いている。ミレーユといえば、勇者パーティに所属している魔術師だろう? 何故ここにいるかは知らんが、同じく手を貸して欲しい」


 そんな大事な場に居ても良いのか尋ねると、居てほしいと言われた。よっぽど人手が足りないのだろうか。手伝うこと自体は構わなかったので、そのまま話を聞くことにする。

 ミレーユのことも既に知られていた。ただ、勇者パーティを抜けたことまでは、流石に知らないようだ。ミレーユも言う気は無いようなので、俺も黙っておく。

 ルクソードさんはミレーユと初対面なので、彼女へと名乗り。その後、この中で俺が唯一知らない女性も続けて名乗った。女性の名前はソフィアというらしい。


「話は聞いてましたが……随分と幼いのですね」


 俺たちも挨拶をした後、ソフィアさんが口を開いた。長い茶髪を頭の後ろで結い上げている。師匠と同じくローブ姿なので、魔術師なのだろう。

 この女性が話題にしたのは、間違いなく俺のことだろう。視線を俺に向けて、驚いた表情をしている。


「幼いが、ミリアムが認める実力者だ。問題ないさ」

「は、いえ。別にミリィのことを疑っているわけではありません」


 ただ、純粋に驚いただけだとソフィアさんは言った。


 この部屋に居たのは四人だけだ。作戦会議が行われているにしては、随分人数が少ないので、尋ねると。今、王都にいる近衛師団の人はこの場の四人だけだと言われた。

 王都に居るのが四人――。王都以外の場所にもいるのだろうが、それでも。師団、と呼べる程の人数では決して無い。少数精鋭だとしても少なすぎる。近衛師団は、相当な人手不足のようだ。


 あまりの人数の少なさに驚きはしたが。ひとまず、話は落ち着いたので、ここから本題に入ることになった。


「さて。王都の中に、魔物が現れるという謎の現象だが――」


 作戦会議はルクソードさんが話の流れを作り、そこに皆が意見を述べる形で進んでいった。

 俺とミレーユも街中で見た、黒い(もや)の話をする。皆、それを興味深そうに聞いていた。


「――となると。これは、魔族によるものと考えるのが妥当ですか」

「そうなるな。魔物を召喚しているのか、あるいは別な場所との空間を繋いでいるのか。どんな魔術かは分からんが、魔族の仕業だろう。

 騎士団、魔術師団の一部が調査隊として派遣されて、王都が手薄になった所を狙われたわけだ」


 ソフィアさんの言葉の後に、ルクソードさんが続ける。


 原因については魔族によるものという意見で一致した。

 そして、肝心の目的だが。こちらについては、情報が無さ過ぎるとのことで、結論には至らなかった。


「ふむ。現時点では魔物による陽動の可能性が捨てきれんな。やはり、我々は王城から動くべきではないだろう」


 結果、近衛師団の面々は王城に待機という形になった。

 街中に現れた魔物が、王城の守りを引き離す、陽動である可能性を警戒してのことだ。


「では、魔物は騎士団と魔術師団に任せるということですか?」

「魔物だけならそれで良いんだけどね。黒い(もや)を魔族が出しているなら、その対処をしなければいけない」


 ルクソードさんはそう言うと、俺へと顔を向けた。


「そこで、君だ。単独で魔族と引き分けた力を見込んで、協力してくれないか? ミレーユ君も。勇者パーティで活躍している、その力を貸して欲しい」

「微力ですが、私で良ければ」

「構わない。大した力じゃないけど」

「ありがとう。騎士団達は、どこから現れるかも分からない、魔物の対処に手一杯なはずだ。だから、君達で黒い(もや)を生み出す魔族を見つけ出して、倒してほしい」


 ルクソードさんからの頼みを聞き入れた結果、俺たちは魔族探しを行うことになった。

 これで、その場の方針が決まり、会議が終わる。


 俺とミレーユが早速、部屋を出ようとした時、師匠に声をかけられた。


「カノン。武器、持ってないでしょ? これを持って行きなさい。……気をつけてね」


 そう言って、手渡してくれたのは、シンプルな意匠の短刀だった。


「ありがとうございます。ちゃんと役目を果たしてくるので、安心して待っていてください」


 俺はお礼を言うと、今度こそミレーユと共に街へ向かった。

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