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魔術で性別が反転した俺、美少女になる。~中途半端な魔術師はいらないと追放された結果、何かとうまくいきました~  作者: 柚月由貴
本編

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22 メルスピリウスとの戦い

最初は三人称視点です。

場面転換後、カノン視点となります。

 カノンに足止めを任せた後、カリストは撤退する騎士団と合流した。


「隊長。あの少女は大丈夫なのですか?」

「分からん。だが、今は信じるしかない」


 周りから少女を心配する声があがる。

 騎士団が本来守るべき国民、それもまだ幼い少女に、魔族の相手を任せている。

 その事実に誰もが暗い表情を見せていた。


「しかし、それでは……。やはり今から何人かだけでも戻って――」

「ならん。私達では手も足も出なかったことを忘れたか!」


 少女を助けようと進言した部下は、カリストの迫力に負け、最後まで発言することができなかった。カリスト自身もまた断腸の思いで決意していることが分かったからだ。

 無力な状況に、誰もが歯噛みする。それを見て、カリストが続けた。


「いいか! 私達は可及的速やかに、学園生達を安全な所に連れていき、その後魔術師達を連れて彼女の援護に向かう!」

「「「はっ!」」」


 カリストの言葉に皆が力強く頷く。

 それぞれが持ち場につくのを見ながら、カリストは今もなお戦っているであろう少女の無事を願った。





「ははっ。楽しいさね!」


 メルスピリウスが笑いながら、魔術を放つ。合計三発、全てファイアーボール。

 動きながら短く詠唱し、障壁を張る。初め二発を躱した後、避けられなかった一発が障壁に当たり霧散する。


 メルスピリウスとの距離を詰める。短刀と鉄扇が交錯する。数合打ち合い、また距離が離れる。

 離れながら、今度は俺が詠唱破棄して魔術を放つ。雷属性の初級魔術、ライトニングを一発。これをメルスピリウスは鉄扇を展開し、面の部分で受け流す。


 さて、どう攻めたものか。


 魔術の撃ち合いと近接戦を繰り返しながら、お互い今はまだ様子見という状況だ。

 その中で、見えてきたこともある。

 まず、メルスピリウスが多用する魔術は火属性だ。火属性は威力の高い魔術が多い。絶対に当たらないよう、警戒がいる。


 次に近接戦。奴の戦い方は騎士団のような洗練されたものではなく、冒険者達のような我流剣術に近いものがある。武器だけでなく、足技、手技、何でも使ってくる。どこから攻撃が来るか読めないため、これも警戒が必要。


 そして、一番厄介なのが魔術の発動時間だ。メルスピリウスは全ての魔術を無詠唱で放ってくる。上級魔術も少しの溜めが入るものの、やはり無詠唱だ。つまり、メルスピリウスに時間を与えると容赦なく上級魔術が飛んでくる。

 流石に上級魔術を防げるだけの障壁を、即座に展開するのは無理だ。今の所は何とか躱せているが、できれば撃たせたくない。


 となると、やっぱり接近戦か。接近戦でも隙あらば魔術を放ってくるのは騎士団との戦いで見ているので、そこに注意しながら挑もう。


 方針を決めると。俺は『重複化』を使って、二つの魔術を放った。ライトニングとファイアーボールを二発ずつ。同時に、俺も距離を詰める。

 ライトニングとファイアーボール、どちらも初級魔術。違うのは弾速。ライトニングが先行し、後からファイアーボールがメルスピリウスへと迫る。しかし、メルスピリウスは全てに対応する。ライトニングを鉄扇で逸らすと、次に自身もファイアーボールを放ち、相殺する。


 ファイアーボール同士がぶつかり合い、炎が広がる。視界が塞がれるが、気にせずそのまま突っ込む。肌を焼く熱さは一瞬。息を止めて炎の幕を抜ける。その先のメルスピリウスへと短刀を――いない!


 気配を感じ、咄嗟に障壁を張る。衝撃は直ぐその後。俺の体が宙に浮き、勢いに押されるまま吹っ飛ぶ。片手を地面につき何とか体勢を整えると、メルスピリウスへと目を向ける。

 奴は笑っていた。


「魔術の同時詠唱、なかなか厄介だし」

「どうも。あんたの魔術程じゃないけどね」

「当然さね。固有スキルで魔族が人間に劣ることはありえんし」


 やはり、俺が固有スキルを使っていることは気づかれているか。

 戦うことしか考えていないような馬鹿でも無い。最後の一撃も、俺が接近戦を狙ったのを見透かした上で、計算したものなのだろう。本当に厄介だ。


 しかし、やるしかない。俺がやられたら、この後狙われるのはアイリス様達だ。絶対に負けられない。


 大きく息を吸い、そして吐く。再び俺はメルスピリウスへと突進した。


 魔術の牽制を挟みながら、接近戦を試みる。それをメルスピリウスが躱し、距離を空ける。隙あらば上級魔術を放とうとするので、また魔術で牽制する。

 お互いの技量が拮抗してるが故に、均衡が保たれる。


 このままじゃ、先にスタミナぎれを起こすのは間違いなく俺だ。どこかで勝負に行かないと行けない。  


 賭に出るために、タイミングを計る。

 だが、戦いの均衡を崩したのは俺でもメルスピリウスでも無かった。


「カノン嬢、助太刀に戻ったぞ」


 野太い声が響く。ちらりと見ると、騎士団と魔術師団の面々がこちらに向かってきていた。

 同時に魔術師団による魔術の弾幕がメルスピリウスへと降り注ぐ。


「ちっ。雑魚共が邪魔すんなし」

「っ! させない!」


 メルスピリウスは障壁の魔術を展開し、弾幕をやり過ごすと。魔力を溜める仕草を取った。上級魔術を放つつもりだと認識し、即座にライトニングを放って邪魔をする。

 妨害されたメルスピリウスは忌々しげな表情で溜めを中断すると、鉄扇でライトニングを払った。


 これは好機だ。

 俺は再び、メルスピリウスとの距離を詰める。援護に来てくれた魔術師達が狙われないように、注意をこちらに引きつける。


「カノン嬢!」


 再び聞こえた声を合図に。俺は自身に身体強化の魔術を重ね掛けした。

 一段速くなった動きでもって、メルスピリウスの懐に潜り込むと。短刀を下から振り上げ、鉄扇を弾く。

 そのまま低い態勢から、メルスピリウスを上空へと蹴り上げた。


 蹴り足には、やはり障壁の感触。ダメージは与えられていない、が。

 メルスピリウスの体が(わず)かに宙に浮く。

 そこに、蹴った勢いのままに体を回転させ、蹴りをもう一発。さらに、一発。

 (きし)む体を無理やり動かし、連撃を食らわせる。


 メルスピリウスの体が完全に宙に浮いた。


 そのタイミングで、俺は一足飛びでその場を離れた。

 待っていたかのように、炎がメルスピリウスを襲った。


 激しい炎がメルスピリウスを包む。その熱さから逃れるために、俺は更に距離を置いた。

 

 十分に距離を取ったところで、油断なく様子を(うかが)う。


 良かった、うまくいった。 

 魔術師達が来てくれたことで、対魔族のセオリーが使えるようになった。俺が前衛を担い、時間を稼ぐことで、魔術師達が強烈な一撃を放ってくれた。これは火の上級魔術、『フレイムストーム』だな。皆が一斉に魔術を放ったことで、威力が増大している。俺がメルスピリウスから離れたタイミングにちゃんと合わせたことといい。流石は、魔術師団の人達だ。


 燃えさかる炎を見ていると、身体強化の魔術が切れた。

 同時に襲ってくる、途轍もない疲労感。体が重くなり、たまらず片膝を地面についた。

 

 これで倒せていないと不味いな。

 

 騎士達では前衛の役割はこなせない。俺も、無理をした反動でほとんど動けない。

 もし、メルスピリウスを倒せていなかったら。こちらが圧倒的に不利になる。


 ようやく、収まってきた炎を見つめながら、魔族が死んでいることを願う。

 炎がどんどん衰えていく中、そこに佇む影を見つけ舌打ちした。


 倒しきれなかった。


 炎の中から出てきたメルスピリウスは酷い状態だった。右腕は焼けただれ、力なく垂れ下がり。右腕以外も、至る所が大なり小なり火傷(やけど)していた。

 かなり消耗している。が、死んではいない。

 

 生きている以上、距離を詰めないと、また上級魔術を撃たれる。

 何とか体を動かそうとしたとき、メルスピリウスが忌々しげに呟いた。

 

「……雑魚にやられるなんて、あたしもまだまださね」


 そのまま、俺を睨み付けてくる。


「魔術師カノン。勝負は預けるし。次は邪魔の入らない状態でやるさね。あたしとやり合うまで、死ぬんじゃないよ」


 メルスピリウスは一方的に宣言すると身を翻し森の中へと逃げていった。

 暫く逃げていった先を見つめる。戻ってくる気配は無い。どうやら本当に逃げたようだ。


 助かった。

 どうやら、メルスピリウスもこれ以上は戦えない状態だったようだ。


 勝てなかった。けど、何とか追い払うことができた。

 そのことに安心し、気を抜いたところで。

 突然視界が揺れた。


 地面が迫る。遠くで声が聞こえた気がした。

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