第8話 ダンジョン
宿で一泊した後、町から歩いて2時間近くにある海岸に来た。
海に来れるのは嬉しいが、2時間歩くことになるとは思わなかった。車や電車が恋しい。
海岸には、水着姿のフィアナさんがいた。
「……何で水着なんです?」
「せっかく海に来たんだし、遊んで行こうかなって。」
「別に後からで良くないですか?」
「レイ」
「何?」
「私も水着持って来た方がよかったのでしょうか?」
「知らないよ」
「大丈夫。用意してるわ」
「何であるんだよ」
「今回行くダンジョンが海の中だからよ」
「海の中?」
私達は声を揃えて言った。
海の中って、いきなり高難易度すぎない? ゲームでは、大体中盤辺りのダンジョンだし。私達に攻略できるだろうか……。
「不安そうね。大丈夫。あなた達は強いし、私もいるから。」
「確かにレイは強いですけど……私は……。」
アリアの声が段々と小さくなっていく。
「私は、そうは思わないよ。」
「え?」
アリアの表情が一変した。
「まあ、剣術はまだまだけど。魔力の扱いについては結構上手だよ。かなり上位のエンチャントが使えてるし」
「え、あれそんなに難しいんですか!?」
「知らないでやってたの!? ………てっきり知ってると思ってた。――えっとね、普通の人がやるエンチャントって、武器に魔力流すぐらいだけど。今アリアがやってるのは、さらに魔力を圧縮して武器や防具の性能を格段にあげるエンチャント。つまりは、普通のやつの応用版」
「それを、基礎である普通のエンチャントを教えずに教えていたと?」
アリアが軽くにらむ。
普段ならそこまで痛くないのに、今回は針で刺されているように痛い。
「……基礎知識ぐらいならあると思ってました……すみません」
私は深く頭を下げた。
アリアは大きくため息をついた。
「まぁ、いいです。結果的に自分を自分で守れるぐらい強くなれればいいので。」
「ありがとうございます。――ところで、フィアナさん。ダンジョンって海の中なんだよね?」
「はい」
「じゃあさ、剣使えなくない?」
「……」
フィアナの顔から血の気が引いてくのが分かる。
「まさか――考えてなかった?」
「……」
彼女は機械のようなぎこちない動きで、深々と土下座をした。
「すみません。無策でした。許してください」
「剣姫が土下座してる」
「あの、顔を上げてください。対策はこれからみんなで考えましょう。ね?」
「アリアちゃんは本当に優しいわね。――そうね。今から考えましょう!」
「まず。水中での活動については、この装備を着てれば大丈夫。」
「へー。この水着そんなにすごいんですね。」
「で、問題は水中での戦闘。水の中じゃ動きにくいから、剣どころか近接戦闘は分が悪い」
「はい。なので、魔法を使おうと思っているのですが……この中で使える人はいますか?」
誰一人、手を上げることはなかった。
「……諦める?」
「いや、他に方法があるはずです!――多分!」
他の方法――ゲームで水中戦闘する時どうしていたっけ? ――そもそも戦闘したこと無いな。
「――逃げるしか無いか」
「ですね。魔法を使える人がいないので、それ以外の方法だとそれぐらいです」
「よし。行きましょう!」
私達は水着に着替えた。なぜかサイズがぴったりなのは、気にしないでおこう。
その他の準備も終え、そのまま例のダンジョンに向かった。
ダンジョンはかなり深い場所にあり、普通なら入ることはできないだろう。
そのせいかは分からないが。周りに生き物はおらず、すんなりと入ることができた。
ダンジョンの中も異様なほど静かで、トラップらしきものも全て壊されており、ただの廃墟のように思える。
――ダンジョン――
遙か昔に作られた人工物で、その形や規模は作られた時期や作った人物による。一国が金庫として作ったものあれば、魔術師が自分の遺産を誰かに渡すための試練として作られるものもある。中には趣味で作られたものもあるんだとか。
しかし、今見つかっているものは少なく。どこにあるのか未だ分かっていないものも多い。――というか、むしろそっちの方が多いらしい。
だから、大体はモンスターが住み着いていることが多い。
――という、アリアからの受け売りの情報。
「こういうのって珍しいの?」
「私の聞いた場所だけでも十個中二個ぐらいですね」
「こういうのは大抵、何かしらの結界があるのか、強いモンスターが居るかのどちらかね。私あっち見てくる」
そう言ってフィアナさんは上の道を、私達は正面の道を進んだ。




