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第6話 魔王軍幹部

 海のように広い平原を、地図も無しに歩き始めて2日が経った。

 幸いにも食料はすぐに見つかり、魔物も今まで遭遇していない。アリアはいると言っているが、本当にいるのだろうか?

 そんな疑問を抱きながら移動していると、平原にポツンとたたずむ村を見つけた。


「レイ、あの村に行きましょう。歩き疲れました。」

「そうだね。そろそろベッドが恋しくなってきた。」



 村に近づくにつれ、村の全体が見えてきた。

 その村は――建物はほとんどが崩れ、畑が荒れ果ているうえに家畜もほとんどいない。一言で言えば壊滅寸前の状態だった。

 しかし、その状態になったのは割と最近らしく。村人は皆、健康そうな見た目をしていた。


「あの。何かあったんですか?」

「おやおや、旅の方。こんな状況で大したおもてなしもできませんが。ゆっくり休んでいってください。」

「いえいえ。むしろ私達に何か手伝わせてください。できることならなんでもします。」


 しばらく村人達は顔を見合わせ。何かを決心したように頷くと、ゆっくりと語り出した。


「この村はこの跡からも分かるように、かなり栄えた村でした。魔物もスライムなどの基本的に無害なものばかり。なのに突然、ここより遥か南東にいるはずのブレストウルフが現れたのです。私達は太刀打ちできずに、このような有様に。」

「アリア、ブレストウルフって?」


 私はアリアに耳打ちした。

 それに対し、アリアも私に耳打ちしてきた。


「ここより南東にある『常気流(じょうきりゅう)降雨地域(こううちいき)』と呼ばれる、常に嵐のような天気の危険地帯に住む低ランクモンスターです。低ランクといっても、この辺りじゃ中ランクか高ランクのちょっと下ぐらいの危険度です。めったに縄張りは変えないと言われているのですが。これは南東で何かあったかもですね。」

「だろうね。――とりあえず、壁で村を囲んどくか。」


 そう言って剣を突き立てる。その瞬間、村の周りをドーム状の透明な壁が覆った。


「……レイ。前々から気になっていたのですが。一体どれほどの魔力を持っているのですか?」

「さあ? 多分――アリア5人ぐらい?」

「平均の十倍ですか……。一応聞きますけど、私と同じ十五歳ですよね?」

「そだよ~」


 呆れたような顔をするアリア。

 確かに、平均の十倍という単語から、自分がかなりやばい存在なのは確かだ。まぁ、耐久面は他と比べれば紙だけどね。


「これで様子を見よう。」

「ありがとうございます、我々のために。」

「いえいえ、当然のことをしただけです。」


 

 それから夜まで村の復興作業の手伝いをした。その間は特に襲撃はなく、見かける魔物もスライムくらいだった。小さくてかわいかった。――横腹を突かれたときは、しばらく立てなかった。

夜も更けて、月がちょうど真上に来た頃。どこからか遠吠えが聞こえてきた。


「おそらく、例の狼たちでしょう。」

「見に行くか。いくら攻撃しても壊れることは――。」


 壁の一部に大きなひびが入った。地面も少し揺れている。おそらく別の何かの攻撃。


「割れかけてますけど。」

「いや、直るから。それよりも、最悪なパターンの移動だよ、これ。」

「最悪なパターン?」

「良かったパターンが、南東で何かあって逃げてきた。」

「では、最悪なパターンは?」

「――狼以上の実力者の統率による襲撃。」


 二度目の揺れ。

 どうやら、ゆっくりと話をしている暇はないようだ。私達はすぐさまその場に向かった。

 


 現場にいたのは角の生えた人と大量の狼。


「この壁は貴様のか?」

「そうだよ。私の魔力が尽きない限り、無限に再生する。」

「そうか。」


 そう言って壁を思いっきり殴った。壁には穴が空いてしまいそうなほどのヒビが入った。やはり、只者ではない。


「あんたは誰? 一体ここに何の用事?」

「俺は魔王軍幹部の一人、スレイヤー。ここには暇潰しに来た。」

「へぇ。暇潰ねぇ。」


 私は剣を強く握った。

 それを見て何かを察したのか、アリアは苦笑いをしながら相手の方を見た。


「えっと……お気の毒に。」

「は? 何言ってんだっ!?」


 奴の腕がひとりでに切れた。


「……貴様か。一体何をした!」

「何って、腕を切った。こんな風に」


 そう言って剣で空を斬る。すると今度は片足が切れた。

 敵は訳が分からず焦っている。

 アリアは気の毒そうに見ている。


「冥土の土産に、仕組みを教えてあげようか?」

「俺が貴様なんかにっ」


 スレイヤーの身体は砂のように崩れ、そのまま跡形もなく消えた。魔物は倒れるとこうなるのか。

 狼達にも頭脳はあるらしく。その状況に狼は動揺している。


「アリア。この子達どうする?」

「――え? あっ、はい。放っておけば勝手に帰ると思います。はい」

「どうしたの? なんか変だよ?」

「え? いや、なんか。レイ、楽しそうだなぁって思って。」


 明らかに様子がおかしい。でも、身体の異常は無さそうだ。

 なんか――なぜか腑に落ちない。


 その後、原因が消えたことを知った村人達は感謝の印として、アリアの武器や食料など色々くれた。

 そのお返しとして村の復興をしばらく手伝い、私達はその村を去った。

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