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第21話 夢、そして現実

 アリアへの試練を終えた私達は、騎士に見つからないように魔法壁を超え、街に戻った。道中、あの賢者は現れなかった。

 

「結局、あの賢者は何者なんでしょうね」

「そもそも賢者かどうかも怪しい」

「ですね……これからどうします?」

「とりあえず、港町に戻ろう」

 

 私達は港に行き、船に乗って港町に向かった。――しかし、移動の途中で事件が起きた。



 突然、辺りの天気が急変した。

 土砂降りの雨。風は吹き荒れ、雷も鳴っている。

 風に煽られ、船が大きく揺れた。


「何が起きたのですか?」

「わからない。でも、危ない状況ではあると思う」

「私の力でなんとか――」


 船よりも遥かに大きな影が船の上を通った。

 再び大きく傾く船。船はそのまま転覆してしまった。



 ――――。



 見覚えのある部屋で、ベッド寝転がる一人の少年。寝息を立てながら、ぐっすりと眠ってる。

 すると、突然一人の少女が部屋に入ってきて、少年を叩き起こした。


「なんだよ。――って、日菜? 何でここに……」

「何でって、今日は一緒に出掛ける約束でしょ」

「……まだ二十分もあるじゃん」

「でも、今起こさないと起きないでしょ。下で待ってるから、準備して」


 そう言って、日菜は部屋を去った。

 私は辺りを見回した。

 ここは――実家? 何でこんなところに? 確か自分は船に乗っていて、その船が転覆して……。もしかして、走馬灯? でも、何で前世――それも、中学生の時?

 私――と言うより俺は、ベッドから起き上がった。

 体は自分の意思で動かせる。これは現実なのだろうか?

 疑問を抱きながらも、俺は出かける準備をした。



 準備が終わったのでリビングに行くと、少女は食事をしていた。

 

「あ、終わった?」

「終わった。何でご飯食べてんの」

「ご馳走してくれるって言うから」

「そ、龍也が来るまで暇だろうから」

 

 久しぶりに聞く母の声。姿は、最後に会ったときより若い。

 俺は椅子に座り、母が作った食事を食べ始めた。――味がする。ますます現実なのか走馬灯なのか分からなくなってきた。


「今日はゲームを買ったら、すぐに帰ってくるのよね?」


 食パンを口にくわえながら、頷く日菜。

 俺は棚の上にあるデジタル時計を見た。七月二十五日。この日に何かあったっけ?



 ご飯を食べ終えた俺達は、近くのショッピングモールに向かった。

 ショッピングモールに着いた途端、日菜は俺の手を引き、ゲーム売り場に向かった。そして、とあるゲームソフトを二つ手に取った。


「はい、龍也の分」


 俺は手渡されたゲームソフトの名前を見た。

 『アナザーワールド』。確か、日菜と協力してクリアしたゲームだ。

 そうだ、この日は日菜と一緒にこのゲームを買いに行った日だ。でも、なんで今この記憶が?

 俺はゲームのパッケージを見ながら、しばらく考え込んだ。


「どうしたの?」

「――ああ、何でもない」


 日菜は不思議そうな目で俺を見つめた。



 ――――ピチャッ。



 突然、目の前が暗くなった。それと同時に、額に冷たい何かが触れた感覚を覚えた。

 俺はゆっくりと目を開けた。

 今度は洞窟の中だ。そこら中に謎の光る石があり、洞窟の中を薄く照らしている。

 俺は、そんな洞窟の少し開けた場所にあるかなり浅い水たまりに寝転がっている。何故?

俺は体を起こした。

 違和感がすごい。何というか、急に成長したような感覚。転生したときと少し似ている。

 水たまりが鏡のようになっていたので、俺は自分の姿を見てみることにした。



 水たまりに映ったのは、レイでもなくアリアでもない。まして、前世の自分でもない。見覚えのない顔だった。

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