第19話 賢者
「あの、お知り合いですか?」
「海底神殿に行った時、この人が私を助けてくれたの」
「そうだったのですか――」
目の前に立つ人のようなものをじっと見つめるアリア。
「彼? は一体何者なのですか?」
「知らない」
「知らない……」
アリアは呆れた顔をした。
仕方ないじゃん。いきなり現れて、気づいたらどこかに行っていたんだから。
「で、あなたはここに何をしに来たの?」
「セイジョニシレンヲアタエニキマシタ」
「「聖女?」」
私とアリアは声を揃えて言った。
私……はあり得ないから、アリアだろう。
「よかったね、アリア。聖女だってよ」
「わ、私ですか!? 私なんかが、聖女?」
「エエ、アナタニハソノタメノチカラガアル」
「それに、可愛い」
アリアの顔が赤くなった。
「可愛いは余計です! ――ところで、なぜ私が聖女なのですか?」
「ワタシノヨゲンデス。セイジョデアルアナタト、マオウデアルカノジョガ、イズレ、ヤクサイカラセカイヲマモル。ソウナルタメニ、ケンジャデアルワタシガ、アナタタチニシレンヲアタエルノデス」
「私が聖女で、レイが魔王……」
「あ、魔王って私のことなの?」
「この場にあなた以外誰がいるんですか」
アリアは呆れた顔をした。
いや、まさか私が魔王になるとは思わないじゃん。それに、魔王の幹部的な存在いたし。私のことを魔王って言ったなかったし。
そんなことを思いながら、私は苦笑いをした。
「マオウニカンシテハ、キタルベキトキニチカラガカイカスルジョウタイデス。シカシ、セイジョデアルアナタハ、マダソノイキニタッシテイナイ」
「だから私に試練を?」
「じゃあ、私はあんまり手出ししない方がいいの?」
「エエ、アナタガテヲダスノハ、ホントウニキケンナトキダケデス」
賢者と名乗る人のようなものは、目の前の剣を抜き、アリアに手渡した。
「コノケンハアナタノモノ、――ソシテ、コレハアナタノモノ」
そう言って、賢者は私に剣の柄らしきものを手渡してきた。
見覚えのある色と形。これって……。
「幽鬼? なんであなたが持ってるの?」
「フルキトモヨリユズリウケマシタ。モトカラアナタガモッテイタノハ、ヨソウガイデシタガ。――ソレヲツカエルノハアナタノミ。ヤミノチカラヲテニイレタイマ、ソノケンニハ、アイテノチカラヲサユウスルチカラガヤドリマス」
相手の力を左右する……ゲームでいうデバフかな?
「ところで、今回の試練は?」
今まで静かだったアリアが、口を開いた。
「ココノヌシヲタオスノデス。ソウスレバ、ヒノチカラヲエルコトガデキル」
「ここの主……つまりこのダンジョンを攻略すれば良いのですね!」
「イエ、ソノヒツヨウハアリマセン」
きょとんとした顔つきのアリア。
たしかに、ダンジョンを攻略しないのなら、何をすれば良いのだろう?
突然、賢者が手を上げ、上を指した。
私達は上を向いた。
火口の少し下あたりで、蠢く影がある。全身が燃え上がっている、トカゲのような生き物。しかし、その大きさは、巨大な火口とほぼ同じ大きさ。背中に住もうと思えば、庭付きの家は建てられる。……燃え上がってなければだけど。
「あれを倒すのですか?」
「エエ。デハ、ケントウヲイノリマス」
私達が賢者のいる方を見ると、賢者はまるでそこに居なかったかのように消えていた。




