第12話 未知の攻略(前編)
海底神殿攻略のために、私達は宿を後にし、海岸に向かった。
海岸の近くにはいくつかテントが建っていた。私達はその中でも特に大きなテントに入った。中ではアルティアと、他数名が会議をしていた。
「ちょうど良かった。君たちに頼みたいことがあるんだ」
私達に気づいたアルティアが、こちらに歩み寄ってきながら言った。
私とアリアはそろって首をかしげた。
「頼みって何ですか?」
「君たちが倒した魔物なんだけど、倒し方が分からない上に、倒しても次々現れてきりが無いんだ。そこで、僕たちが地上で戦っているうちに、君たちに遺跡の調査をしてもらいたい。僕たちが行くより、一度行ったことがある君たちが行った方が手っ取り早いからね。頼む!」
「……どうする?」
私はアリアの方を向いた。
アリアはしばらく悩んだ後、口を開いた。
「分かりました、行きます。レイもそれでいいですよね?」
「いいよ。どうせ、嫌っていっても連れてく行くでしょ」
「分かってるじゃないですか」
アリアは満面の笑みだった。
私に拒否権は無いのか――。守るって約束したからには仕方がないが。
私達は準備をした後、奴らに見つからないように遠回りしてダンジョンに向かった。
ダンジョンの中は相変わらず静だ。たが、所々、建物の壁や床に大きな穴が空いている。
「どうします?」
「奥に行こう。こういう時はだいたい奥に原因があるから」
アリアは軽く頷き、私達はそのまま奥に向かった。
そして再び、大きな扉の前に来た。前回は諦めたが、今回は魔法がある――使えるか分からないけど。
水の中だからなのか、手が震えているのがいつも以上にわかる。
「レイ、頑張れ」
珍しくアリアが明るい笑顔で応援してきた。それに釣られて私も笑った。
そして、私は扉に手を伸ばし、頭の中で大きな槍をイメージした。
すると、ネックレスの宝石から黒い液体のようなものが溢れ、頭上で扉の二分の一ぐらいの大きさの槍になり、扉を貫いた。
扉には私達が一度に通れるほどの穴が空いた。
私達はそこから中に入った。
中は車が二台入るぐらいの広さの部屋。部屋の真ん中では、淡く光る青い宝石があった。
「あれ、魔石じゃないですか?」
「多分あれが原因だろうね。だとするとここは――」
突然、部屋の壁が崩れた。瓦礫の位置を見るに、外からではなく中から壊されているように見える。
――何かがいる。
見えないということは、この前戦った奴らと同じ。でも、ここに来るまでこいつは動かなかった。他の奴と何か違うのだろうか。
そんな事を考えていると、辺りの水が青色に濁り始めた。
私達はすぐさまその場を離れた。それと同時に、ダンジョンが崩れはじめた。
私達はダンジョンを出た。そして、そのまま皆と合流しようとした。――が、ダンジョンの周りを、先程と同じ青色の水に囲まれていた。
「逃がさないって事ですかね」
「だろうね。水中だとかなり動きづらいから、どうにかしないと……」
ここから出ることは難しそうだし、まるごと水上まで動かすか、青い水の内側を魔法で囲んで中の水を抜くか。
しばらく悩んでいると、瓦礫の中から魔石が出てきた。魔石の周りには青い水がまとわりついている。
青い水はだんだんと増え、私達を飲み込んでしまいそうなほどの大きさの球体になった。
そして、その球体からいくつか触手のようなものがこちらに、ものすごい勢いで伸びてきた。
私達はそれをギリギリで避けた。
「レイ! 私は役立たずです。どうにかしてください!」
「いや、一人でこれは無理だよ!」
「なら、せめてこの状況をどうにかしてください!」
どうにかって――――やるだけやってみるか。
私は手を伸ばした。すると、手のひらに黒い球体が現れ、そのまま広がり、球体ごと私達を呑み込んだ。