表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/29

第1話 転生

 夜でも昼のように車の行き交っている交差点。そこに疲れ切った表情向かう自分。



 俺の名前は華賀木龍也かがきりゅうや、23歳の社会人。最近入ってきた新人の教育係に任命されて、いつもより仕事が多くなり、疲れきっている日が多い。唯一の楽しみであるゲームも最近はあまりできていない。夜遅くまでゲームしていたあの頃が懐かしい――。

 そこまで昔ではない記憶に思いを馳せながら、ゆっくりとした足取りで交差点に向かう。

 この時間帯、車は多いが、電車はかなり空いている。つまり電車の移動時間は、唯一ゆっくりと休むことのできる時間だ。この交差点を抜ければ駅はすぐそこ。

 交差点で信号が緑になるのを待つ自分。すると突然、横から何かが飛び出した。

 ……人だ。

 誰かは分からない。けど、今飛び出せば車と衝突することは目に見えている。


「おい、危な――」

 

 ――ドゴン――。


 気づけば、体が勝手に動いていた。自分の事なんて、考えていなかった。

 全身が痛い。――冬だからなのか、雪の中に寝そべっている時のように寒い。意識を保つのが難しい。周りの声も聞き取りにくい。もう、何も感じられない。

 あの人は無事かな、誰かは分からなかったけど。



「無事ですよ。あなたのおかげで怪我も一切しませんでした」


 そうなんだ、良かった。


「ちなみに、助けたのは見ず知らずの他人です。でも、見ず知らずの人を助けたという事実は、あなたの人生で最も誇るべきことだと思いますよ。実際、私もあの行動には心を打たれました。感動です!」

「ありがとうございます。――あれ? しゃべれる……というかあなたは?」

「私ですか? 私は神様です。あなたが死んだので、天国か地獄か、あるいは転生か。判断するために来ました」

「そう……なんですね」


 突然現れ、自分は神様だと名乗る謎の女性。今居る場所が、ゲームでよくある、神殿の中のような場所でなければ、完全に痛い人だ。それに、見た目のせいで、全くそうには見えない。もっと真っ白いもの来てるイメージだったけど。ファッション雑誌に載っていそうな服を着ている。

 突然、神と名乗る女性はポケットから手帳のようなものを取り出し、じっくりと見ている。あれに俺の人生のことでも載っているのかな?

 しばらくしてから、彼女は口を開いた。


「あなたはいかなる時も他人のことを思って行動していますね。それはとても良いことですが……そのせいで、自分にいいことがあまり回ってきていないようです。――というわけで。転生か天国か、どっちがいいですか?」

 つまりは自分のまま楽して生きるか、新たな自分となって、新しい人生を送るかの2択ということか。

 それなら――。


「――転生で」

「分かりました。転生体はどうしますか? やはり、自分のゲームキャラですか?」

「え……」


 驚きのあまり、声を漏らした。何故分かったのだろう――やっぱ神様だから?


「ふふふ、そのようですね。転生場所はどうしますか? 特に希望はなさそうですが……」

「とりあえず、自由にのびのびとしていられる場所であれば、何処でもいいです」

「分かりました。――準備が整ったので、転生させますね。第2の人生、楽しんでください」


 その言葉を聞いた途端、目の前が太陽か、それ以上にまぶしい光に包まれた。光に耐えきれず、目を閉じた。



 ――しばらくすると、体に違和感を覚え、俺は目を開けた。

 辺りは一面木で覆われている。おそらく森の中なのだろう。体の違和感の原因を知るために、自分の体に視線を落とす。

 そこにあったのは、何度も画面越しに見たゲームキャラの体。

 肩にかかるぐらいの黒髪、小さな手足。違和感があったのは、自分が男なのに対して、この体は女。それも、以前よりも遥かに幼い――中学生ぐらいの体だからだろ。

 決して、少女が好きだからとかいう理由はない。何度もリセットした結果、この体が一番自分の戦い方に合っていたからだ。


「装備まである、ありがたい。まさか、これを自分の手で握ることになるとは」


 そう言って俺――というか私は、剣の柄のようなものを取った。

 ゲームで何度もお世話になった愛刀、幻灯(げんとう)幽鬼(ゆうき)」。普段は、刃のないただの柄だが、持ち主が柄に魔力を流すことで刃ができる。魔力量で長さや堅さが変わるから、できる限り長くて硬質なものにするために、魔力を中心にステータスを振ってたっけ。

 愛刀と共に勝ち抜いた数々の戦闘に思いを馳せているうちに、私は1つの疑問に至った。

 この世界に魔力はあるのだろうか?

 もしあれば、まだまだ活躍できる。しかし、魔力が無ければ――刃ができるまで、本当の意味でただの柄となる。魔力の流し方は、なんとなく体に刻まれている。後は魔力があることを願うのみ。

 不安を胸に抱きながら、体の感覚を頼りに魔力で刃を作る。

 結果は――成功。いつも見ていた、半透明の刃ができた。これで愛刀はこれからも活躍できるし、この世界に魔力があることも分かった。


「とりあえずは、ここがどこだか調べないと。」


 そう言って私は当りを見回した。

 ふと、木の陰から山のようなものが見えた。ある程度高さもあるようだから、あそこに行くのが一番良いだろう。そう思い、早速移動を始めた。

 前よりも体が小さい上に、魔力以外にも俊敏さや体力、筋力にもステータスを振っていたから。移動がとても楽だ。けれども――。


「ぐっ。――痛った」


 あまりの痛さに目から涙がこぼれる。

 そう、その4つにステータスを振っているせいで、体があまり頑丈ではない。少しは振っているから、普通の人よりは――少し――頑丈だ。それでも、木にぶつかるのは思いっきり顔面にバレーボールが当たるのと同じくらい痛い。

 早く自分の足の速さに慣れないと……。



 数時間も経たないうちに、目的の場所に着いた。普通なら数時間かかりそうな道を、たった30分くらいで……自分が恐ろしい。

 そんな事を思いながら、山頂から辺りを見回す。辺りは一面の森だったが、かなり先の方に城のようなものが見える。かなり距離はあるが、行けない距離では無い。

 ――木の上移動するか。

 私は木の上を、アニメに出てくる忍者のように移動した。

 今度はぶつからないように注意なければ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ