二人の旅路 【月夜譚No.93】
ロボットのように無表情の彼は、どんな気持ちでいるのだろう。その横顔を視界の端で捉えながら推し量ってみるが、その答えは幼い時分から共に過ごしている少年にも判らない。
長い旅路のその途中。道端の大きな木の根元で休憩を取ることにしたのだが、二人の間に会話はなく、少年は困ったように幹に背を預けて空を見上げた。
少し前まで、彼はよく笑う普通の男子だった。綺麗な景色には感動するし、獣に襲われた小動物の死骸を見つければ涙を流すような、そんな優しい心の持ち主だった。
だが先の事件があってから、彼は変わってしまった。何を見せても、何を食べさせても、彼の表情は固まったように動かない。それはまるで、以前故郷にやってきた見世物の一座で見た、機械の人形のようだった。
彼がそうなってから間もなくのことだった。国一の占い師から、彼がこの世界を救う勇者であると告げられたのは。
こんな状態の彼を一人で旅立たせるのは心配だったので、少年もついていくことにした。けれど、以前とは違う彼とどう接したら良いのか、未だによく判らない。少年自身は気まずさのようなものを感じているのだが、彼はどう思っているのだろうか。
相変わらず無表情の彼の顔を横目で見遣って、少年は小さく息を漏らした。




