ギルド立てこもり事件 その3
僕たちは獣族の兵士に緊急対策本部であるテントに案内されると、そこにいたロットワイラーの兵士達は突然やってきた最強の魔法使いである夢に群がった。
「す、凄い!本物だ!」「握手してもらってっもいいですか⁉」「サインください‼」
夢は完全に兵士達に怯え僕の後ろに隠れる。
「お前らいい加減にしろ!今は緊急事態なんだぞ!」
浮足立っている兵士達に僕は注意しようとしたが、先にこのロットワイラー第七部隊のリーダーである金髪ロングのとても大人びた女性の兵士のレストレードさんがそう怒った。
相当怖がられているみたいで兵士達は全員すぐさま「失礼しました!」と敬礼する。
そんな様子を見て僕はレストレードさんに言う。
「お久しぶりですねレストレードさん」
「ええお久しぶりです。ノゾムさん、ユメさん」
レストレードは笑顔でそう返した。
レストレードさんとは以前、この国の王様の娘、つまりお姫様が誘拐された事件が起こった時に知り合った。その時はただの兵隊でしかなかったが、どうやら事件を解決したことで分隊長に昇格したらしかった。
「レストレードちゃん、なんか雰囲気が変わったね。みんなのリーダーみたい」
「そうでしょうか」
夢にそう言われてレストレードさんは少し照れた。
もしかしたら自分でも自覚があるかもしれない。最初にあった時、物凄い性格をした人だったからなレストレードさん。そう思うとレストレードさんは随分、成長した。
「もし私が変わったとするなら、それもこれもあなたおかげです。女王様が誘拐された時もあなたたちの協力がなければ解決することができませんでした」
「それはお互い様ですよ」
確かに僕たちはあの事件に協力したが、しかしレストレードさんが僕たちに力を貸してくれなかったら女王様を救うことはできなかっただろう。
と過去のことを思い出しているとレストレードさんは真面目な顔で言う。
「そして今回も私たちに協力していただきありがとうございます」
「いいえ、僕たちは別に構いませんよ」
「本当ならシャーロックに頼みたかったんですけど、、どこにいるのかわからなくって、もしかしたらギルドの魔導図書室にまだいるかもしれません」
「それはありえますね」
「うん、ありえるね」
僕達は同意する。あまり考えたくはないが、今もあの人は実験をしてるかもしれない。
まあ、ここいない人のことを考えてもしょうがない。僕はレストレードさんに話を聞く。
「それで犯人からの要求は何かあったんですか?」
「一億ウールを用意しろという要求がありましたが……」
するとレストレードさんは考え込む。
「何か気になることがあるんですか?」
「いえ、まだ犯人たちの素性もわからないままですし、それに何か目的があるような気がして……」
「刑事の勘ていう奴ですか」
「刑事の勘?なんですかそれ?」
「いえ、何でもありませんよ。とりあえず今は犯人の目的よりも人質を解放することを優先した方がいいじゃないですか?」
「そうですね……」
しかしそれでも犯人の目的が気になる様子だったが人質を救うためにも気持ちを切り替えレストレードさんは夢に聞く。
「ユメさん、あなたの魔法で私たち全員を移動させることは可能ですか?」
「もちろん、できるけど……レストレードちゃんは全員で行くつもりなの?」
「そのつもりでしたが……なにかいけませんでしたか?」
「うーん、そう言うわけじゃないんだけどねレストレードちゃん」
夢は渋る。そんな夢を見てなにが言いたいのか理解した。
「夢が気にしているのは全員で行くと犯人にバレてしまうことを気にしているんだと思います。行くとすれば最低二人がいいでしょう」
「なるほど……」
感心するレストレードさん。そんなレストレードさんを見て騙しているみたいで申し訳なくなる。でもこうするしかないのだ。
僕は言う。
「だから僕と夢が建物の中に乗り込んで人質を全員救います」