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3.世界は違えど傷ついた者同士

 途方に暮れているアヤナの背に、タロウの声が飛ぶ。


「おい、護衛の女!お前はここに残れ!城の電撃使いだったのならさぞかし強いんだろ?お前の、その荒んだ目は見所がある」


 その言葉でアヤナは右に左に惑ったが、ラウルの背中が遠ざかるのに耐えられず、咄嗟に叫んだ。


「ラウルを置いといてくれるなら、ここに残ってあげてもいいよ!」


 彼女自身すら想定していない言葉が出たらしく、驚き固まっている。ラウルは足を止め、目を見開き、ゆっくりとアヤナを振り返った。


「うん?ああ、そうか、そうなのか……なかなか忠実なしもべだな」


 タロウの方も、感心しながらアナヤをまじまじと見つめている。


「交換条件というわけか。この電撃使いの女にそこまで言わせるとは、やはりあの男は本当にラウル王なのか……?」


 アヤナは腕組みをし、体を傾けてうーんと唸った。


「だからさぁ、その電撃使いって何なん?」


 アヤナの問いを理解出来ないでいるタロウを見て、ラウルは慌てて叫ぶ。


「彼女は女だてらに優秀な電撃使いだ。私が保障しよう」


 は?とアヤナが更に混乱した調子でラウルに問う。彼は眉間にしわを寄せ、シッと息を吐く。


 アヤナは言われた通りに黙した。タロウは二人に疑惑の目を向けながらも、手下を呼び彼らに何事か言いつけている。



 二人には別室が与えられた。ようやく大人二人が寝られる程度の狭い小屋だった。外には見張りが二人置かれている。アヤナは布団に潜り込むと、辺りをはばかり小声で王に問うた。


「ね、だから電撃使いって何なの?」


 ラウルも隣の布団に潜り込むと小声で問い返した。


「アヤナ。電撃は出せるか?」

「出せるわけないよ!ピカチューじゃあるまいし」

「そうか。全く出ないとは珍しい奴だ。この世界の人間は、大なり小なり電撃を発することが出来る。恐らくあのタロウも出せるはずだ。大なりが兵士や支配層となり、小なりが民衆となる。ここはそういう、電撃能力で階層化された社会なのだ」


 アヤナには到底理解出来ないが、生き延びるために、兎にも角にも理解することにした。


「なるほど。ってことは、ラウルも?」

「私は電撃を出せない」

「王って支配層じゃん!」


 言ってから、アヤナははたと気がついた。


「ん?もしかしてそれが、ラウルが落ちぶれた原因なわけ?」


 ラウルは頷いた。


「勘のいい奴だ。そう、私はこの世界の人間には珍しく、全く電撃を使えない。足も片方ない。民からすれば、不完全過ぎて王に適任とは思えないだろうな」

「へーえ。じゃあラウルは王族の落ちこぼれ的な?」

「そう思ってくれて結構だ。だが残念なことに、もう王の直系は私しかいなかったのだ。近年流行り病が猛威を振るい、父、母、兄上、皆死んでしまって」

「それでお鉢が回って来ちゃったんだね。はぁ~」

「そうだ。それまで私はないものとして存在すら公表されず、幽閉されていたからな。余計に民は私の登場に戸惑い、抵抗感を持ったことだろう」


 思いがけず飛び出たラウルの茨の歴史に、アヤナは言葉を失った。しかし同時に彼女の中に、ふつふつと別の思いが湧き上がって来る。


「私もだよ、ラウル!」


 ラウルは意表を突かれたように、アヤナの顔に見入った。


「私も子供の頃、じーちゃんに助け出されるまで、両親に物置小屋に閉じ込められてたんだぁ」


 初めて見るアヤナの真摯な表情に、ラウルは何も言えないでいる。


「何も悪いことはしてないはずなんだけど、ネグレクトっていうの?つまり虐待されててさぁ。それを見っけて、じーちゃんが引き取ってくれて、高校まで行けたんだ」

「……いい祖父を持ったな」

「でしょ?あー、やっぱ地元帰りたいな」

「……帰してやるさ。私も協力しよう」

「ホント?じゃあ私もラウルを城の王に戻してあげるよ」


 それを聞いてラウルは嬉しそうだが、どこか小馬鹿にするような笑みを漏らした。


「出来るのか?電撃使いでもないお前ごときに」


 するとアヤナは胸を張ってこう言った。


「だって、そういうゲームなんでしょ?コレ」

「──は?」


 ラウルは言葉の真意が解らず口を開けて呆けている。


「最近のゲームは良く出来てるね!謎解き脱出ゲームか何かでしょ?これ」

「──??」

「いやー、入場料も払ってないのにアトラクション盛りだくさん!クリア後にいくら請求来るんだろ?ひやひやするぅ!」


 アヤナの呑気すぎる発言に、ラウルはくっくと笑う。アヤナは頬を膨らませた。


「私、そんな笑うようなこと言った?」

「いや……少し気が抜けただけだ」

「私の腕を信じてよ。ゼルダをクリアしたことあるから謎解き系なら大丈夫だって!」

「……?そうか。なら大丈夫かもしれんな……」


 ラウルは笑いながらかつらを脱ぐと、そっと枕元に置いた。アヤナは改めてまじまじと、隣にいる不具の王の横顔を眺める。


「何だ?そんなに見て。私の顔に穴が開くぞ」

「ラウルさぁ、あの白髪カール被んのやめなよ。せっかくの男前が台なしだよ?そっちの、ひっつめの方が格好いいよ」


 ラウルは耳を赤くしながら困った顔になる。


「そう言われても、このかつらが王の正装で……」

「あれじゃルネッサーンス!だもん。脱いだ今の方がエグザイル!って感じだから絶対イイって!」

「?良く分からないが……アヤナがいいと言うなら、脱ぐか」


 若き不具の王はかつらを枕元に置くとそのまま横になり、すとんと眠りに落ちてしまった。アヤナはその寝顔をまじまじと眺めてから、どことなく満足げな顔で布団に入り、眠りについた。

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