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ショートショートアンソロジー(怪奇・ホラー編)

ハンバーグのブランド

どこにでもよくあるお話。

「駅はここです、多分すぐにはきませんけれど」

「大丈夫です。ここで待ちます」


送ってもらった地元のタクシーから降りると駅と呼ぶには何もない駅に向かった


「さて・・・」


最寄の駅は無人駅であたりを見回しても田んぼと野原、そして壊れかけた数脚の椅子だけしかない


「電車は、っと・・・」


汚れて見づらい時刻表をこすって眺めるとどうやら3時間ぐらいは来ないらしい


「予想はしていたが、さて、困ったな」

(グー・・・)

お腹の虫がうるさい


そういえば昨晩から何もお腹に入れていない

何か腹を満たしたいところではあるが、何せ食事をしようにもコンビニ一つないど田舎だ


食事処なんて・・・どこからかいい匂いがしてきた

どこから?

どうやら駅裏のこじんまりした母屋からのようだ

ぱっと見は普通の民家にしか見えないのだが、よく近づいて見ると定食屋らしい


「こんな店、きた時にあったか?」


怪訝に思いながらも腹の虫には勝てる気がしない

とりあえず、店頭に立てかけてある緑色の黒板に書かれているメニューらしきものを見ることにした


「ブランドの・・・ハンバーグ?」

ブランド?神戸牛とかのハンバーグ?

お店のメニューには有名ブランドハンバーグと書いてある

値段は・・・・書いてない


(まさか、とんでもないぼったくりじゃないだろうな・・・

他に店もないようだし時間もあるしここで食事するか・・・)


さすがに店内には値段が書いてあるだろう

もし値段が時価なら店を出ればいい


そう思いながら、引扉をガラガラとあけ店内に入った


「いらっしゃいませ」


お店には先客がいた

ハンバーグを食べている

どうやら、その客は有名ブランドハンバーグを頼んだのだろうか


まずは値段だ


店主に勇気を出して聞いてみると「そんな大層なハンバーグじゃないですよ」という

確かにメニューの値段も手頃だ

なら話は早い

自分も試しに頼んでみることにした


「今から焼きますのでお時間いただきますがよろしいですか」

「はい」

「どのブランドにしますか?」

「どのブランド?」

「えぇ、ブノシとシツアとミケアがありますが」

(なんだその名前は・・・)

「マスターのオススメはどちらで?」

「今ならミケアですかね」

「じゃそれで」


店主はにこやかに微笑みながら軽く頷くと奥の厨房に消えていった


(ミケアねぇ・・・)


静かな店内の唯一の騒音、そんなテレビに目を向けるとお昼のワイドショーが流れていた

最近話題の連続殺人犯の続報だ

どうやらまだ捕まっていないらしい


(物騒な世の中だよな・・・ん?)


監視カメラから犯人が割れたらしい

テレビには一部判明した被害者の名前と一緒に犯人の顔写真が公開されている


「一人の被害者の名前は、那須野アケミさん、他は以前不明です・・」


(あの犯人、どこかで見た気が・・・いやいや・・・え?)

あぁ、なぜこの店に入ってしまったのか

体から嫌な汗が流れてピリピリする

あれだ、これはまずいと感覚が訴えていくる、あの感覚だ


「お待たせしました」


振り向くと店主がまんべんの笑みを浮かべてハンバーグを持っている


「あ・・・、あ、はい」

「如何しましたか・・・?」

(・・そうか、ミケアって、そういうことか・・)

「テレビが気になります・・・か?」

「い、いえ・・・美味しそうなハンバーグですね!」


とっさにまんべんの笑みを返して、店主の笑顔に合わせる

私の口元が引きつっていないことを祈るしかない


電車が着くまであと3時間の辛抱だ

さっさと共犯者になって店をでることとしよう


最近のコンビニ鶏肉も何の肉なのかわからない肉ばかりですよね。

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