バレンタインofチョコレートmelt
少し昔の話をしよう。
僕の家は両親の仕事の都合上引っ越すことが多かったんだ。
これは引っ越した先の保育園のことだったかな…。
僕がまだ保育園に通っていた頃かな、僕には一人の幼馴染がいたんだ。
名前はアイリっていってね、
彼女は明るく活発でとても可愛らしい女の子だった。
彼女は引っ越してきたばかりの僕のことをよく気にかけてくれてね、
よく一緒に遊んでくれたんだ。
そんな彼女だけどね、一つおっちょこちょいな点があったんだ。
彼女物を忘れちゃう人でね、靴下を履き忘れることなんかは
しょっちゅうあったよ。
まぁそれも彼女の可愛さの一つだったんだろうね。
僕はそんな彼女の朗らかさに引っ越して間もない頃に
抱えていた不安や心配を溶かされたんだ。
さて君はバレンタインにチョコ貰ったことあるかな…?
僕…?僕は無いよ…。
いや、2回だけあったかな…。
二回だけ貰ったことがあるんだ。チョコレートをね。
最初にもらったのはまだ保育園の時さ、幼馴染の彼女
から
貰ったものでね、味は何とも言えないただ甘い味だったね。
工夫を凝らしてデコレーションしてくれてたみたいだけど
当時の僕はそんなことまで気は回らなかったんじゃないかな、
生憎味の感想しか記憶にないや。
ただ、初めてもらったチョコレートだからね、とても嬉しかったことはおぼえてるよ。
二回目にもらったのはいつだっけな…?
あれは中学二年生の頃だったかな…。
中学二年生の頃僕はね一時期学校行ってなかったんだ。
いわゆる不登校ってやつだね
あっ別に引き籠ってたわけじゃないよ?
単純に学校に通ってなかっただけで外には出てたさ、偶に。
不登校になった理由は何だっけかな…?
たぶん取り留めもないことだよ。学校での友人関係や
部活動での顧問の教員との相性、そんなことだったかな。
最初は少し体調を崩して休んだことがきっかけだったんだけどね、
そのまま少しずつずるずると引き延ばすように休むようになっていったんだね
両親は僕にそれほど興味がないみたいだからね、休むことには何も言ってこなかった。
まぁそれもあいまって僕は不登校になったんだ。
不登校になって最初の頃は家に教員から電話が来たり
SNSメッセージなんかで心配する声もあったんだけどね、一月、二月もすれば
次第となくなっていったよ。
僕としても学校に行かなきゃとは漠然と思っていたんだけどね、
どうにもタイミングは掴めず行けずじまいだったんだ。
今となって思えばあの時きっと僕は誰かに引っ張ってほしかったんだ。
でもそんな相手はいない、きっとそう思っていたんだろうね。
そんな状況を変えてくれたのがバレンタインだったんだ。
その日も僕は学校に行かずいつもどうりの無気力な生活を送っていたんだ。
世間的にバレンタインだってことはしってたんだけどね、
もうどうにも自分とは縁遠いことだと認識していたから別に何の感情も湧かなかったんだ。
その時だった、不意に家の呼び鈴が鳴らされたんだ。
驚いたよ、なんせその日は宅急便等も届く予定はなかったからね、
でもその驚きは別の意味で裏切られることになったよ。
玄関を開けるとそこには幼馴染の彼女が立っていたんだ
彼女は僕にぶっきらぼうにリボンに包まれた四角い箱を渡すとそのまま帰ってしまった。
突然のことに僕は固まってしばらく立ち尽くしてたね、
なんで彼女がここに来たのかさっぱりわからなかったんだ。
部屋に戻った僕は渡された箱を開けてみると
そこには一枚のメモ書きとチョコレートが入っていた。
チョコレートを食べながらメモを開いてみたら
メモには一言
『頑張りすぎるなよ』
とかかれていた。
気づくと視界が滲んでいてね、知らず知らずのうちに泣いていたんだ。
自分でもなんで泣いていたのかはわからないんだけどね、ひどく無性に涙が止まらなかったんだ
きっと自分の悩みが分かってもらえたような気がしたのかもしれない。
とにかくそういう気分だったんだ…。
あぁそうか…今になって分かったよ、
僕は君にそうやって溶かしてもらったんね
悩みや不安、自分の情けなさを。
次の日の朝、僕は久しぶりな制服と共に家を後にした。
「ふぅ、やっと書き終えた…こう見ると我ながらダサいな…。」
パソコンを前にした僕はそう呟く。
「何かいてたのー?」
後ろから声が聞こえる。
「秘密だよ、」
そう答え僕は声の主の方へ振り向く。
「さて、今日の晩御飯は何かな?“アイリ”」




