五話 勝手に出発
五話 勝手に出発
朝だ。夏休み四日目の早朝だ。とはいえ、現役漁師の皆さんはもう漁に出ている時間だが。
「カイリ、おじさん二日酔いで頭が痛いんだってさ。」
「それで…?…いや、何で?」
「…やけ酒。あの後飲みなおして、またのまれたとさ。それより、海に出ようよ!最後の小学校の夏休みに!宿題はもう終わったから!」
「ああ、僕がみっちり教えてあげたからね。でも、捜索願でも出されたら、迷惑がかかるよ。」
「大丈夫。書置きをしていから。『少しの間、海に出てきます。おじさんに責任はあります…じゃなくて、おじさんに責任はありません。おじさんを責めないでください。可愛い子に旅をさせてください。(__)』って。」
「相変わらずアドリブすげえな。そんなこと書いても責任問題は変わらないと思うし、本心が覗いていたことは、突っ込まないでおくか。GPSの使える端末でももっていこう。」
「いや、今思いっきり突っ込んだろ。」
「…えーと、じゃ、じゃあ行くか!」
「わーい、わーい!」
「はうっ!?」
十分後、カイリはクーラーボックスを持ち、シンカはポケットをぱんぱんにして、二人ともリュックを背負って船の前に立っていた。