蛇ヶ見
蛇ヶ見、睨み、蛇睨み。鳥居の中心は川が流れる。鳥居の中心を川が歩いている。不可侵の領域を川が歩いている。
蛇は飲んでも飲まれない。日々は噛み付いて離れない、日々に噛み付いても留まらない。蛇ヶ身、うねり、締め付ける。人は逃れる術を知らないし、知っていても意味など無い。
ハレの領域ケの涸れる領域。非現実は身近にあっても見えないものだ。蛇ヶ見、睨み、蛇睨み。まるで川に流される蛙のようだ。蛇は愛おしそうに見つめるが、それは、蛙が抵抗なんて出来ないことの証明なのかもしれない。
晴れの御山。気駆れる天空。そこから流れる蛇は地上しか見えていない。地にしか向わない。愛おしそうに命を見守り地へと連れて行くのだ。蛙は無抵抗に蛇に食われるのだ。
蛇はその身を千切られても、憂いを帯びた目で見つめられるだけなのだ。その身体は如何なる時も流れ続ける。何れ、千切った者も流れに任せ、風化し消えていく定めなのだ。
その身を震わせる、それだけでも流れは変わってしまう。それは多くのものを洗い流し、絶望と混乱と多くの悲劇を生み出すだろう。それを地にしか向けない蛇は見続けているのだ。憂いを帯びた目で、愛おしそうに。
鳥居の中心、不可侵の領域を歩いている川。そこを歩く事など許されない。代わりに歩くものなど居るはずもない。つまり、そういうこと。そういうことなのだ。
遣り残したんなら、殺してしまえよ。さぁ、悪魔の退治だ。