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おすはぴ!  作者: 美琴
36/64

春の逃走劇




 今年の卵の生育状態は順調。

 5つ全てが途中で冷たくなることなく、そろそろ耳をくっつけると鼓動の音のようなものも聞こえてくるようになった。

 この森に来てから、こんなに沢山の卵が孵化しそうなのは初めての事。

 ハーピィ達みんな、代わりばんこで温めながら、とても嬉しそうにしている。

 最初の一年は、大して僕らに見返りがあった訳じゃないから、割とハーピィ達は『僕に言われたから』みたいな感じでどっか人間さん達にツンケンしてたんだけど、目に見えた成果が出たからか、態度がかなり軟化したみたい。

 ……ちなみにマッチョさんは数日後に会った時は既に復活してたみたいだけど、あの冒険者さん二人はハーピィになんだかよく声をかけるようになった。

 あの大工のお兄さんはどうしたのかな……。僕はあれから姿を見ない。

 あと、先生はまだアーラの顔を見れないらしい。

 複雑な男心があるんでしょうけど、アーラはしてやったり顔をしていて満足げなので、ほっとくことにした。


『おにいちゃーん』

『シスちゃーん』

『ぴ? どうしたの、フレーヌ、グリシナ?』


 朝の日向ぼっこをしていたら、フレーヌ達が飛んできた。

 ……そういえば、長より高い場所に長居しないルールは、僕が長になったから今はあんまり機能してないみたいだ。

 まだ小さいから、皆と一緒に寝てるし。


『あそびに行こー!』

『追いかけっこしてるの!』

『楽しそうだったー!』

『あそびに行こー!』


 きゃっきゃ、と無邪気な二羽は僕を遊びに誘う。

 僕はまだ雛レベルの大きさだけど、二羽はすっかり大きくなり、今年の春から本格的に呪歌や狩りを習い始めた。もう若鳥扱いだ。

 でも、まだちょっと思考が幼い。

 この間、夜にこっそり出かけて行ったことへお説教したんだけど、ちゃんと反省してくれたのかどうか……

 どうも僕の直接の姉妹だからか、ハーピィ達は二羽に甘い。いや、僕も充分甘いのは自覚してる。


『追いかけっこ? してたって、だれがー?』

『人間さんだよ!』

『森の中で、追いかけっこしてるの!』

『……え、人間同士で?』

『『うん!!』』


 笑顔で頷く二羽だけど、僕はそれに違和感を感じた。

 危険な森の生き物に追われている、なら解る。

 でも、人間同士で、この森で追いかけっこ……まさか本当に遊んでいる訳はないから、誰かが誰かを追いかけている。

 二羽にとってこの森は住処だし、遊びとして同族で追いかけっこをするわけだから、彼女たちには遊んでいるように見えただけだと思う。

 なんだろう。気になるな。

 危険に合っているなら笛を吹いて助けを求めるだろうし。

 てことは、認可を貰ってない冒険者さんか、…あるいは犯罪者でも、ここまで追いかけて来た騎士さんとかか……?


『それは、あそんでるんじゃないと思う、けど』

『そーなのー?』

『でも、見に行ってみよっか』

『うん!』


 二羽だけで混ぜて混ぜて、と突っ込んでいかなかっただけ、良い事だ。

 なんせルストさんとすっかり遊び友達になったせいか、人間への警戒心がちょっと減ってるみたいだからなあ……

 さておいて、やっぱり気になる。3羽で長老木から飛び立ち、フレーヌ達が追いかけっこを見たという辺りまで案内してもらう。

 ……かなり、森の奥の方まで入り込んでるみたいだ。追いかけっこは多分、一日で終わってはいないんだろう。


『どこいったかな?』

『あっち?』

『こっち?』


 空中でホバリングしながら、フレーヌとグリシナがきょろきょろと森を見回す。

 僕も木々の隙間から、誰かが居ないかと視線をめぐらすけれど、二羽が行って帰ってする時間が過ぎているから、なかなか見つけるのは大変そう。

 風の魔法で音は拾えるけど、対象が確定しておらず、範囲を限定できないとなかなか難しいのです。


『あ、いたよ、シスちゃん、グリシナ!』


 フレーヌがどうやら発見したらしく、あっちあっち、と視線で教えてくれる。

 そちらを見ると、確かに木々の隙間、明らかに野生の動物ではない何かが複数、走っているらしいのが分った。


『フレーヌ、グリシナ。あぶないヒトかもだから、ボクの前に出ちゃだめだよ?』

『『はーい』』


 突っ込んでいかないように、と注意してから、二羽を伴ってそちらへ飛ぶ。

 なかなかの速度で走っているようだけど、ハーピィの速度に比べたらなんてことはない。

 ……どうも、先頭に一人、後方に4人ほどの人間がいるみたいだ。

 一人の人を、4人で追いかけている、ってこと。

 距離は10mも開いていない。かなり追い詰められている。

 直に、逃げている誰かは少し開けた場所に出てしまった。

 逃げているのに、視界が通るのは都合が悪い。逃亡者は一旦足を止め、その広場を突っ切るか90度方向転換するか、迷ったようだった。

 そこへ、何かが物凄い速さで飛来する。追手が放った、矢のようだ。

 直前で気付き、回避行動をとったけれど、どうも掠めたか何かしたらしい。

 左腕を抑え、やはり目隠しは必要だと右に曲がって走り出し……

 ……そこから、100mも走らないうちに逃走速度が急激に落ちて、最終的には倒れてしまった。

 矢に、毒でも塗ってあったんだろうか?


「ああくそ、手こずらせやがって……」


 どたどたと足音を立てて、悪態をつきながら追手が近づいてくる。

 そして、倒れた逃亡者の意識がない事を確認すると、近づこうと一歩踏み出して。


「おじさんたーち♪ 何をなさっておいでです?♪」

「!!」


 ばさばさ、とわざと羽音を立てて、彼らの頭上の枝にとまった。フレーヌとグリシナは、僕の一つ上の枝に。

 上空を旋回していた僕らには、逃亡劇を繰り広げていた彼らは気づかなかったらしい。驚いた顔で、僕ら三羽を見上げる、追手の4人は全員男性。

 きちんと武装をしているあたり、たぶん冒険者さん。

 そして、先ほどまで逃亡していて、今意識を失い倒れている人は……

 ……顔が見えないからよく解らないけど。綺麗な真っ白の髪をしていて、線が細いからたぶん女性なんじゃないかな?

 その人も部分的に革の防具をつけているから、冒険者なのかも。


「お、おい、もうハーピィに見つかったぞ…?」

「慌てるな、まだ子供だ。動揺を見せるなよ、打ち合わせ通りにやれ」


 ……というのを、ひっそりこそこそ話してるんだけど、残念筒抜けですよ。

 なんか企んでるのがバレバレだよ。

 前にやってきた騎士さん達は、決して僕らの前では内緒話をしなかった。綿密に打ち合わせて、その場でボロを出しはしなかった。訓練と統率って大事だね。


「ハーピィは、どうぞく同士であらそいません♪ なかまをおそうのは、重いつみです♪ ニンゲンさんはそうではありませーんか?♪」

「いやいや、誤解しないでくれ。仲間を襲っていた訳じゃないんだ」


 どうやらリーダーらしい、ヒゲのおじさんは一歩進み出て、苦笑しながら僕を見上げる。

 一見、人の良さそうな感じに見えるけど、まあ見た目で人は解らないしなー。


「俺達は、次の入れ替えで森に来ることになってた、冒険者なんだ」

「……ふうん?」

「あの外の村で、許可証を貰って、予定の日を待ってたんだがな。あろう事か、この女がそれを盗みやがったんだよ」


 確かに、春の終盤ごろにまた人員入れ替えが予定されている。

 今回は鉱脈採掘がほとんどなかったから、春の薬草や資材の持ち出しくらいで、目的のメインは人員入れ替えだけとなる。

 それを、早めに手続きをして村に滞在して待っている人が居ても、別に不思議ではない。


「ほら、これが証拠だ。俺達の分の許可証なんだよ」


 倒れている……やっぱりお姉さんらしいね、が首から下げていたペンダント。白い翼が彫られた笛を取って、片手で掲げ僕に見せてくれる。

 なるほど、確かに見覚えがある笛です。

 現在魔法の付与はされていないから、交代時に渡される用の予備のやつなのでしょう。数の増減があるし破損もありうるから、余分に用意してあるとは聞いてる。


「なるほど♪ それがほんらいは、あなたたちのふえでしたーか♪」

「ああ。予定日より早くなっちまったが、ここからなら森の外の村より、中の集落の方が近いだろう? 悪いが、案内して貰えないか?」


 なるほどなるほど。

 言い分はよく解った。

 笛を掲げて頼んでくるおじさんに、僕はにっこり微笑んだ。


「おことわりします♪ うそつきさん♪」

「……え?」

「ウソツキ! ウソツキ!」

「ワルイヒト! ワルイヒト!」


 きっぱり断る僕に、フレーヌとグリシナも理解したのか、若干楽し気な様子でおじさん達を批難する。

 その反応が予想外だったんだろうか。おじさんも、後ろの仲間たちも、唖然とした様子で目を見開いた。


「どうやら、カタラクタのギルドから正式にきょかをもらった、ぼーけんしゃさんではないようですね♪ どちらの手のかたですか♪」

「いや、何を言ってるんだ? 証拠はちゃんと……」

「そのふえが、『あなたたちぜんいんの』きょかしょうなのでしょ♪ そんなことはありえません、きょかしょうは、一人につき一つのはず♪」


 森に入る人間、全てに笛は配布される。

 もしも何らかの理由で、はぐれて迷った時の対策であると共に、僕が普く不届き者を探知する為だ。

 それを知らないって事は、カタラクタから正式に許可された冒険者じゃない。

 もしかしたら国内の誰かが、少しでも費用を浮かせたくて許可申請のお金さえ渋って、なんて……いや流石にないか。彼らを雇うお金だって必要だろう。

 となれば、彼ら自身がこの森の利益を求めて、けれど許可が下りなかったあまり質の良くない冒険者か。

 あるいは、他国の工作員か何かとして、送り込まれたか……?

 どっちにしたって、調べが足りないねえ。それとも、詳しい事は伏せられてるのかな? おかげでこんなに簡単に嘘が暴けるのだから、僕としては助かる。


「ワルイヒト! キョカガナイヒト!」

「カッテイイ? タベテイイ?」

「だめでーすよ♪」


 僕が許可した人間は決して襲ってはいけないと言いつけてあるけど、そうじゃないならハーピィにとって守ってあげる義理は無い。

 どうも未だに食欲と興味が強いフレーヌ達。あるいは若鳥として狩りの訓練を受け、成果を試したいところもあるんだろうか?

 でもやめておきなさい、人間さんは食べても美味しくないそうだよ。


「まあでも、しゅーらくには来ていただきましょうね♪ わるいコトは、ちゃんとはくじょーしてもらわなければ♪」

「っ、ゾイマー!」


 既に警戒をあらわにはしていたおじさんだったけど、リーダーのおひげさんが鋭く声をあげると、後ろに居た別の人が即座に弓を構え、僕に向かって矢を放った。

 その動きがとても迅速だったから、実力がない訳じゃないんだろうな。

 まあ勿論、弓を出して構えて矢を放つ、なんてアクションをしている間に、僕らは飛び立ち矢は木に突き立つだけなのだけど。


『もりのこもれび、おだやかなかぜ♪ はるのひざし、やわらかなおふとん♪ ははのむねにだかれるように、やさしいねむりをあなたにあげる♪ おやすみ、おやすみ、よいゆめを♪』


 彼らの頭上を飛びながら、眠りの呪歌を降り注がせる。

 とたんに二人が膝をつき、地に伏したけど、リーダーさんともう一人、軽装のおじさんが耳をふさいだまま、この場から逃げようと動きを見せる。

 むう。僕の呪歌に抵抗するとは、生意気な。


『フレーヌ、グリシナ。いっしょに歌って?』

『いいよー!』

『おっまかせー!』


 もう、二羽も呪歌を習っている。眠りの呪歌は、そんなに難易度は高くない。

 歌詞を乗せないそれは、僕の物に比べて効果は低いけど、伴奏するように声を重ねてくれると僕の物の効果が増す。

 揃えて歌うと、効果が倍になるのが呪歌の特徴。ハーピィの数が多ければ多いほど、一緒に歌えば歌うほど、どんどん倍加する。

 完全に音を遮断する結界でもなければ、シオンさんの魔法陣でも防ぎきれなくなるかもしれない、数によってはね。

 ……ほとんど間も置かず、今度こそ4人全員が眠りに落ち、その場に倒れた。


『んー、ボクらだけじゃはこべないね。アーラたちよぼっか』

『そうだね、重そうだもん』

『おにーちゃん、一人食べちゃだめー?』

『だーめ!』


 どうしてそんなに食べたがるの。見るからに美味しくなさそうだよ、おじさんなんて。

 あっちのお姉さんなら柔らかそうだけど、……って何考えてるの僕は。

 別に食べたいと思った事はないよ、無いからね!







 おじさん4人と、お姉さん1人をハーピィ達に集落まで運んで貰う。

 付き添って事情を話すと、ティリノ先生はとても険しい顔をして、4人組を拘束して事情聴取の準備をするように、とラティオさんに指示していた。


「悪いな、シス。助かった」

「いいえー♪ ぼーけんしゃさんにも、色々いらっしゃるのでーすね♪」

「ああ。…いや、まあ、基本冒険者同士は協力し合うのが暗黙の了解だが、依頼者によっては敵対する事だってある。……時には殺し合う事だってな」

「……ぼーけんしゃギルドって、つながってるんじゃなかったでーす?♪」

「繋がってるさ、ギルドを通せばそんな危険な依頼は弾かれる。……ただ、冒険者に直接依頼をする事は禁じられていない。紹介料が差っ引かれないだけ、冒険者にとっても依頼人にとっても、都合が良いしな」


 なるほど、ギルドだって運営費用がいる訳だから、そこを通せば依頼者的には余計にお金がかかるし、冒険者的には報酬が差し引かれる。

 仲介業者を通さず直接依頼すれば、早いし安い。道理だね。

 代わりに、危険や無茶ぶりをされる可能性がある。納得。


「おねーさんの方は、ちゃんときょかされてる方でーすか?♪」

「どうだろうな、まあ先ずは治療をしてやって、こっちも事情聴取だな。森に入る予定の冒険者のリストと照らし合わせないと、なんとも言えん」


 まだ魔法の付与をする前の笛を持っていたようだから、たぶん予定者ではあるんだろうけど、身元が分からない。

 冒険者の身分証明のカードなんかもあるらしいんだけど、彼女はそれを所持していなかった。落としたんだろうか?

 もしかしたら、あのおじさん達と共謀した狂言である、なんて高度なたくらみをしている可能性だってあるのだから、油断出来ないんだろうな。


「お待たせ、ティリノ君。怪我人が居るって?」

「ああ、悪いなセロ。シオンも、忙しいところすまない」

「いいわよー、毒矢で倒れたんでしょ? もしセロで解毒できない時は、私がお薬作らなきゃ」


 魔女の薬とは!!

 なんかとてつもなく興味が惹かれる。そういえば魔道具も作れるんだもんね、お薬とかも作れるんだ! 見たい! とても見たい!!

 大釜とか使うの? こう、ぐーるぐるってしたりするの??

 今日ダメなら、今度見せて貰おうっと!

 先生に案内されて、この間新しくできた、怪我人や病人用の小屋へ。

 安静にしたり、隔離したりする時があるかもしれないからね。お医者さんはまだ居ないから、治療担当はセロさんやシオンさんだけど。

 他にも治癒魔法を使える神官さんは居るそうだけど、大概昼間は森の中に狩りに行ったりしてるし、二人は大抵集落に常駐してるからね。適材適所。

 扉を開けて入ってく3人と、僕はくるっと回って開いている窓へと飛び上がる。

 丁度、あのお姉さんが寝かされているベッドの、近くの窓だった。

 うーん、顔色が悪いな。やっぱり、あれは毒矢で間違いないんだろう。明らかに不自然に倒れたしなあ……


「この人だよね? ええと、怪我の場所は……」

「……トリィ?!」


 え?

 セロさんが治療の為に怪我を確認しようとすると、シオンさんが突然驚きの声を上げた。

 見れば、本当に心底驚きの表情を浮かべたシオンさんが、口元を抑えている。

 そしてバタバタと駆け寄ると、セロさんの代わりに毒矢がかすめた左腕を改め、数秒考えてセロさんを振り返る。


「だいじょぶ、セロで解毒できる類のヤツだと思う。ので早く!」

「あのシオン、その人……」

「いいから、あくしなさい!!」

「はいっ!!」


 珍しい、シオンさんがセロさんを上回っている。

 たいがい取り乱したシオンさんを(時に物理でもって)止めるのがセロさんなので、割と見ない光景です。

 慌てて、治癒魔法なのか解毒魔法なのか、祈りをささげるポーズをとりお姉さん……トリィさん? に魔法をかけるセロさんと、心底心配そうな瞳でそれを見ているシオンさん。

 ティリノ先生も首を傾げてるけど、僕も首を傾げる。


「シオンさーん♪ そのおねえさん、おしりあいでーす?♪」

「ああ、うん。…あたしの妹」

「いも……う…?」


 妹とは……?

 シオンさんは、(実年齢はさておいて)見た目はだいたい15歳とかそのくらいなんだけど、このお姉さんはどう見ても20歳程度の大人である。

 シオンさんの姉妹なら当然魔女だろうし、それなら見た目はもっと低くなるはずで、姉なら解るけど妹とは……??


「いや、実のじゃないわよ? ちょっと複雑な事情があって……なんというか、要するに義理の姉妹かな。昔うちで引き取った、こう…親戚みたいな」

「という事は、魔女の血筋ではあるのか」

「うんまあね。ただ、ちょっと突然変異というか、魔力はあるんだけど上手く魔法として使えない体質で、それで面倒な事になって、うちに引き取られたの。うちの親、かなりおおらかだからさ」

「まあお前の親ならそうだろうが」

「でしょう」


 あ、そこでひと悶着ないんだ。

 シオンさんのお母さんも、なんというかおおらかな人なんだねえ……

 そして、一言で魔女と言っても、色んなパターンがあるというか、そういう突然変異的なのがあるんだね。

 まあ、言っちゃえば僕もハーピィの突然変異みたいなもんだし、そう考えればあっても不思議な事じゃないかー。


「……それで、何で妹なんだ」

「あたしが先に家にいるんだもん、あたしが姉なのは当然でしょう」

「そういうものか……?」


 ちょっとよく解らないです。

 魔女の中には、年齢をあまり考えないという文化でもあるのかもしれない。そしてなんか、実際ありそうな気がする。


「そうか、シオンの妹か……。…姉として、どういう妹だ?」

「え、めっちゃいい子。すっごい真面目で、正義感が強くて、なんていうか物凄い男前」

「男前……?」

「魂のイケメンEXを持ってる」

「意味が解らん、もっとわかりやすく」

「すっごい良い子」

「解ったもういい」


 とりあえず、シオンさんから見て、信頼のおける良い人だって事は解った。

 相変わらずのシオンさんの意味不明言語に先生は頭痛を感じている様子。

 実際、すっごく心配してるようだし、シオンさんにとって大切な家族である事に間違いはないのだと思う。

 経験豊富で高位の冒険者であるシオンさんは、それに適した人の見る目を持っていて然るべきだし。

 たまにその目にフィルターかかるけど。


「……まあ、身元の保証人がいるのなら、身分証の再発行もモメはしないか」

「えっ、トリィ冒険者証失くしたの?」

「あるいは、奪われたのか、携帯していない時に襲われたのか……」

「ていうか襲われたの?!」

「他に何故毒矢で倒れたと思えるんだ」


 この森に、そんなものを使う知恵を持った魔物居ないです。

 心配が疑問に勝ってたらしく、今やっとその辺りに思い至ったらしい。

 そしてその瞬間。

 シオンさんは、般若の顔になった。


「うちの妹に何してくれやがるのかしら、ブっ殺ーーーー!!!!」

「ちょ、待てシオン?!」

「シオンさーん!」


 一気に最高沸点まで達したらしく、いつも背負ってる杖を迅速に右手で握り、そのまま全速力で走っていく。

 怒るのは解るけど、怪我人がいる部屋でその絶叫どうなのですか。まだ治療中のセロさんが、眉間に皺寄せてますよ?


「ゼっ殺ーーーーーーー!!!!!!」

「シス、ちょっとあのバカ追ってくれるか! 聴取前に縊り殺されては困る!!」

「はぁーい!」


 それは僕も困ります。そしてシオンさん、やりかねない。

 先生も追いかけるけど、僕の方が早いし、そもそも先生が追い付いてもシオンさんを止められるとは思えない。

 というわけで、ぴゅっと僕が飛んでシオンさんの制止を試みる。

 ……ちなみに、顔面に抱き着いてでこちゅーしたら、止まってくれました。







 正月にフライング登場した、あのお姉さんです。


 やったね美琴さん! ちゃんとヒロインが出て来たよ!!(←

 執事さんの方、未だに出てきませんからね……なんでや……

 まあ、ヒロイン=彼女立ち位置、って訳じゃないならいいのか……





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― 新着の感想 ―
[気になる点] >「だいじょぶ、セロで解毒できる類のヤツだと思う。ので早く!」 >「あのシオン、その人……」 >「いいから、あくしなさい!!」 このシオンさんの台詞、「はやくしなさい!」の誤字ですかね…
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