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おすはぴ!  作者: 美琴
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雛達のある日




☆今回はシス視点ではありません。







 ぴぃ、と生まれたその瞬間が、シスちゃんよりも早かったから、フレーヌはシスちゃんのお姉ちゃん。

 もちろん、その後に生まれたグリシナよりも早いから、フレーヌがこの年の子の一番上のお姉ちゃん。

 それ以外にも、ハーピィは皆が家族。みんながお姉ちゃん、みんながお母さん、ババ様は家族をまとめる一番えらいハーピィ。

 みんな家族でお互いが大事。家族の、群れの纏め役のババ様だけはトクベツだけど、それ以外はみーんないっしょが、フレーヌ達ハーピィの生き方。

 でもでもちょっとだけ、シスちゃんだけは違うの。

 仲間はずれじゃなくって、いいイミで。


 ハーピィ達の羽はみーんな白、でも頭の冠羽だけはそれぞれ別の色。

 そこが同じ白なのは、シスちゃんだけ。違うトコ、いっこめ。

 ハーピィはみーんなメスだけど、シスちゃんだけはオス。

 メスはオスに従うものなんだって。違うトコ、にこめ。

 シスちゃんはとっても頭がいい。しゃべりだすのも、とっても早かった。

 大人のハーピィ達よりも、ずっとずーっとかしこい。違うトコ、さんこめ。


 つまり、シスちゃんはとってもすごい!

 従う、とかフレーヌにもグリシナにもよくわからないけど、シスちゃんが凄くって、とっても頑張ってることはわかる。

 だから、頑張るシスちゃんと一緒に頑張れるように、フレーヌもグリシナも、一生懸命ニンゲンの言葉を覚えるの。


「シスチャ! シスチャ!」

「オニーチャ! オニーチャ!」

「「ギューーーー!!」」

「わ♪ びっくりしたー、もー♪」


 最近、シスちゃんは住処である長老木よりも、作ってる途中の人間達の村に居ることが多い。

 フレーヌやグリシナは、まだ近づいちゃいけません! って凄く皆に言われてるから、そこに居る最中のシスちゃんには近づけないの。

 だから、村から離れた所まで戻ってきたところを待ち伏せて、両脇からぎゅーって抱き着いた。


「シスチャ、オツカレー!」

「あーりがとー♪ でも、別に疲れてなーいよー♪」


 良く知らないけど、たぶん人間達と仲良くする為に色々してるんだと思ってる。

 だって、シスちゃんはハーピィの、一番偉い長だから。

 アーラ達も、私達の未来の為に、一生懸命頑張って下さっているんだ、って言ってたし。

 こんなにちっちゃいのに、シスちゃんはやっぱりすごい。

 人間の言葉も、まだフレーヌ達は上手くお喋りできないのに、シスちゃんだけはとっても綺麗に喋れるの。


「オニーチャ、アソボー?」

「アソボ! アソボ!」

「いーよー♪」


 でも、最近ここに来てばっかりで、フレーヌ達と遊んでくれないのは、ちょっとだけ不満。

 グリシナと飛び回るのも楽しいけど、シスちゃんが居ないと物足りない。

 だって、一緒に生まれた姉妹だもん!


「なーにすーるの?♪」

「オニゴッコ!」

「シスチャ、オニー!」

「はーい♪ それじゃあ、逃げろー♪」

「「ぴゃーーーーーー!!!」」


 まだ飛べない頃は、巣の中で転げまわっていたけれど、今はもう3羽とも自由に飛び回れる。

 フレーヌ達にとって、一番楽しい遊びはやっぱり鬼ごっこ。

 木々を縫って飛ぶことも、相手に気づかれないように羽音を消す練習も、大人になった時にとても重要な事だから、と皆にもいっぱい遊ぶように言われてる。

 本当は、フレーヌ達よりもちいちゃなシスちゃんが一緒に遊ぶには、もしかしたら難しい事なのかもしれないけど……


「ぴゃう♪」

「ぴ?!」


 木の枝を避けてほんの少し上昇したら、その真上の木の葉を突っ切って、シスちゃんが出てきた。

 慌ててくるんと横に回転、少し飛ぶ軌道をずらしてシスちゃんの足から逃げる。

 吃驚したー。

 シスちゃんは体が小さい代わりに、風さんと仲良しでフレーヌ達と同じか、それ以上に早く飛ぶことができる。

 それに、物音を拾って相手の位置も探せるみたい。

 だから、グリシナと二羽だけで遊んでる時と違って、シスちゃんはまっすぐ追いかけてこない。見えないところから、思いもよらないところから、突然出てくる。

 それが、すっごく面白い!!


「フレーヌー、ゲットだぜー♪」

「ぴゃー!!」


 どこから? どこから? ときょろきょろしながら飛んでたら、いつの間にか前方で待ってたシスちゃんの胸に、自分から突っ込んでしまっていた。

 くるくるっと回って勢いを殺して、フレーヌをぎゅうっとしたまま近くの木の枝にとまる。


「ぴゃーーー! マケターー!」

「ふふふ♪ ボクにかとうなんて、まだまだ早い♪」


 むう、フレーヌの方がお姉ちゃんなのに!

 えっへんと胸を張るシスちゃんに、とっても悔しい思いをするけれど、いつかはもっと飛ぶのが上手くなって、逃げきってみせるから!

 ……あ、でもずっと逃げられてても悲しいから、ちゃんと捕まってあげるよ!


「それじゃー、次はグリシナー……」


 言いながらひょいっと顔を上げるシスちゃんは、たぶんグリシナがどこで飛んでるのかを探っているのだと思う。

 けど、その前に、どこからかピーーーーー……という、フレーヌ達ハーピィの呼び声に似た、でもちょっと違う音が聞こえてきた。

 ハーピィは人間よりずっと耳が良くて、たくさんの音が聞こえる。

 広い範囲で活動する仲間と連絡を取り合う為、こういった耳があまりよくない生き物には聞こえない、とても高い声で存在を主張することがある。

 それに似てる、けど、ちょっと違う。

 最近聞こえるようになった音で、フレーヌ達はまだ、それを見に行ってはいけない、ときつく言われてる。


「んー、きんきゅーせいはナイかな♪ かりのかえりのおむかえかしらー♪」


 シスちゃんは、それが何なのか知ってるみたい。

 同じ姉妹なのになー、と口を尖らせるけど、シスちゃんはトクベツで、フレーヌ達はフツーだから仕方ないらしい。

 フツーじゃなくなったら、もっとシスちゃんと頑張れるのかな?






 グリシナの事も捕まえたあと、アーラが呼びに来て、シスちゃんはまた村の方へ行ってしまった。

 二羽並んで枝に止まって、ぷーっと頬を膨らます。


『おにーちゃん、いそがしい!』

『シスちゃん、たいへん!』


 ハーピィ達の為だって言うのは解ってるけど、なんかつまんない。

 構ってくれないのがイヤなんじゃなくて、頑張ってるのがシスちゃんばっかりみたいで、それがイヤ。

 一緒に生まれた姉妹なのに。

 フレーヌは、シスちゃんのお姉ちゃんなのに。


『どうしたら、シスちゃんといっしょにがんばれるかな?』

『オトナになったら?』

『シスちゃんもヒナなのに?』

『おにーちゃんは、オージサマだもん』


 王子様、がどれくらい凄い事なのか、よくわからない。

 勿論、シスちゃんが凄いってことは、解ってるけど。


『フレーヌたち、いつオトナ?』

『わかんなーい』

『アーラたちはオトナ!』

『うんアーラたちはオトナ!』

『オトナは、おっきい?』

『とぶの、はやい!』

『おうた、じょーず!』

『かりもする!』


 小さくても凄いシスちゃんと、普通に小さいフレーヌ達とじゃ、同じになれないのはなんとなく解る。

 じゃあ、シスちゃんと一緒に頑張るためには、せめて大人にならないと。

 でも、大人ってなんだろう??

 グリシナと一緒に、大人が大人だなって思うところをあげていく。

 とりあえず、大人になると体が大きくなる。

 あと、飛ぶのがとっても上手。お歌も上手。

 それから、何よりも狩りをする。毎日のご飯を取ってくる。


『おっきくなるのは、まつしかなーい?』

『いっぱいたべたら、おっきくなるって!』

『じゃあ、いっぱいたべる!』

『ごはん、まだだよー?』

『じゃ、かりする!』

『かりする!?』

『かりする! かりするのは、オトナ!』

『オトナー!』


 そうだ、狩りは大人しか出来ない。まだ、遠巻きに見てるだけで、やらせてもらったことはない。

 シャンテがいうには、いっぱい食べていっぱい寝たら大きくなるって事だし、ご飯を待ってるんじゃなくて、狩りもしちゃえばきっと大人に早くなれる!

 これは名案! とグリシナと一緒に翼を広げてはしゃぎあう。


『かりー!』

『なにかる?』

『わかんない! おねーちゃん、きめて!』

『わかんない! あ、でもおみずがあるトコにはえものがいるって!』

『おみずー!』

『かわにいこー!』


 確か、今までついていった狩りも、水辺で行う事が多かった。

 どんな生き物でも水を飲むから、絶好の狩場なんだ、ってアーラが言ってた。

 なので、グリシナと二羽で近くの川まで飛んでいく。


『グリシナ、しずかーに、だよ!』

『うん!』


 どんなにハーピィが飛ぶのが早くても、獲物との距離が遠かったら、木のうろや洞窟に逃げ込まれてしまう。

 だから、獲物に近づく時は風下から。気配と、匂いを気づかれないように。

 飛ぶときの羽音も、木の葉の音も立てずに近づき、一気にとびかかって、爪でざくっとする!

 アーラが教えてくれた狩りの仕方を、グリシナと確認して、そっと川沿いの木の間に隠れて様子を見る。


『なんかいる?』

『なんかいるっ』


 勿論、声も最小限に、小さく小さく。

 グリシナと寄り添って隠れた木の葉っぱの隙間から、川に何かがいるのが確認できた。ちょっとだけ見える、茶色い毛並み。

 もぞもぞ動いているし、動物。お水を飲んでるのかな?


『かる?』

『うんっ』


 ひそひそっと確認して、こくんと頷く。

 グリシナも、頷きを返して、二羽で体制を低くし、翼を広げる。


『いち』

『にーの』

『『さん!!』』


 とびかかる息をそろえる為に、掛け声を上げて、一気に隠れていた枝から飛び出した。さっき、フレーヌを捕まえようと木の葉をかき分け飛び出してきた、シスちゃんみたいに。

 ざざざざっ! と音がして、葉っぱを抜けると視界が広くなる。

 フレーヌから見て、右から左に流れる川。

 その川べりにうずくまって水面を見ていたらしい獲物は、掛け声と音に驚いて振り返り。


「おお?!」


 喋った。

 人間の言葉。

 というか、人間だった。


『ぴゃーーー!! グリシナ、だめーーー!!』

『ぴゃうーーーー?!!』


 人間は、襲っちゃダメ。

 美味しくないし、危ないし、今は仲良しにしている人間もいるから、もしそれを襲ったら、シスちゃんがとっても怒られちゃう。

 全力でとびかかろうとしていた軌道を無理やりずらす。でも、思いのほかスピードがついてしまっていて、思ったよりは曲がらず、勿論止まれなかった。

 グリシナも同じみたいで、あ、どうしようと悩む間もなく。


 目標にしていた誰かが、目の前からふっと消えた。

 そして、目標がなくなったフレーヌとグリシナは、そのまま川の中へと猛スピードで突っ込むことになった。


『『ぴゃーーーーーーー!!!!!』』

「Σああ悪い! つい!! 待て待て暴れるな、今助けるから!!」


 突然頭から水の中に突入したことで、視界が遮られるし息は苦しいし、二羽揃ってパニックになったところを、さっき狙って、そしてどうやってか避けたらしい誰かが慌てて同じく川に入り、二羽を両脇に抱えて助け出してくれた。

 び、びっくりした……いっぱいびっくりした。

 ざぶざぶと水をかき分け、誰かはフレーヌとグリシナを岸に降ろしてくれた。


「いやあ、ごめんな。襲われたかと思って思わず避け……、襲ってきたか?」

「ぴー、ゴメンナサーイ!」

「ぴー、マチガエター!」

「間違いか……。まあ、今更お前らが俺を襲うとも思えないし、本当に何かと間違えたんだよな」


 濡れた髪を、誰かはよしよし撫でてくれる。

 良かった、怒らないでいてくれるみたい。川から助けてくれたし、いいひと。

 顔を上げたら。その誰かは、知ってる人だった。


「ぴ?」

「ん?」

「シッテル!」

「ぴ? ……ア、シッテル!」

「ネーチャトイッショ!」

「ネーネトキテタ!」

「…………ルストな」

「ルスト!」

「ルスト!」


 そうそう、名前は全く覚えてないというか、知らなかったけど、前にネーチャと一緒に来てた人間だった。

 茶色の髪と、金色の瞳の男の人。

 なんか、動きが面白かった人。


「ルスト、ヒトリー?」

「ルスト、マイゴー?」

「一人だけど、迷子じゃないぞ」

「ナンデ?」

「ナンデ?」

「ふ……これこそが、俺の秘められし特殊能力マテリアル……。俺を導く闇の力が求める物を暴き出す、暗黒の道案内ダーク・ディレクション!」

「「ぴゃーーーー!!」」


 なんかよくわかんないけど、なんかすごいみたい!

 突然立ち上がって、なんかかっこいいポーズを決めるルストに、グリシナと一緒に歓声を上げた。

 すると、なんだかルストが一瞬嬉しそうな照れ臭そうな顔をした。


「……まあ、俺の事は良い。それより、お前達こそ天の迷い鳥ではないのか? 一体、どんな悍ましき怪物と俺を見間違えた?」

「カイブツジャナイヨー、エモノ!」

「カリスルノ! カリスルノ!」

「カリシテ、オトナニナルノ!」

「イッパイタベルノ!」


 今回は、ちょっと間違えちゃったけど……

 次からは、人間じゃないかは、ちゃんと注意して狙わなきゃ。


「大人に……? お前達、幼き日は何よりも代えがたい福音……。往々にして雛鳥は天を舞う竜に憧れる物だが、その時間は二度と帰らぬ……時には、それが癒えぬ傷痕スティグマとして刻まれるものだ」

「ぴー?」

「ルスト、ムズカシー!」

「ムズカシー!」

「ルスト、オトナー?」

「ムズカシーハ、オトナー?」


 ルストの言葉は、難しい言葉がいっぱいあって、よく分からない。

 でも、なんかよくわかんないけど、かっこいい。


「……いや、難しいのが単に大人っつーか、かっこいいからだよな…」

「カッコイイ!」

「ルスト、カッコイイ!」

「え、そうか?」


 よくわかんないけど、ルストの難しい言葉とか、ポーズとか、かっこいい。

 ハーピィの大人とは違うけど、おもしろくってかっこいい!


「ルスト、カッコイイ!」

「ルスト、オトナー!」

「ふ、…ふはははははは!! よもや、このような場所に、我が魂と共鳴せし者達が居たとはな……!!」

「「フハーハハハハー!」」

「良かろう、ならば俺が直々に、お前達を常闇の聖戦を戦い抜く、誇り高き闇の戦士へと鍛え上げてやろうではないか!!」

「ヤミノセンシー?」

「ソレッテ、スゴイ?」

「ああ勿論凄いぞ!! あとかっこいい!!」

「ワーーイ!!」

「ヤミノセンシー!!」


 よくわかんないけど、フレーヌとグリシナの全力突進をよけられるんだもん、ルストってすごいんだよね!

 すごい人から教われば、きっとすごくなれるよね!

 闇の戦士は凄いみたいだし、いつかシスちゃんと一緒に頑張れるようになれるかな!

 一緒に頑張ろうね!! グリシナ!!






 その後、なんだかルスト……ルーにいが、ネーチャにものすっごく叱られているのをシスちゃんが見たみたいなんだけど、どうしたんだろ?

 闇の戦士より、ネーチャの方が強いのかな?







 いけない伝染をした。


 というわけで、約束は守ったよルスト。これでいいね?←

 もとい、例のフレーヌグリシナとルストが仲が良いのお話でした。尚、ルストの回避方法は普通にジャンプです。

 常闇の聖戦に巻き込まれた二羽の運命や如何に。




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