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おすはぴ!  作者: 美琴
26/64

外伝・シスデレラ




・新年、あけましておめでとうございます!!

・今年は酉年、シスの年!!

・そんなわけで、今年もよろしくお願いいたします!!


※あてんしょん!※

・今回は番外編です。本編とはかかわりがありません。

・ギャグです。

・コメディです。

・ふざけてます。

・ネタとメタが大満載です。

・めんどくさいので言語共通状態となっております。

・本編にまだ影も形も出てきてないヒロインがフライング登場しています。

・どうして私はメインヒロインを遅く登場させるのか。







 むかしむかし、どこかの国のとある街に、一人の少女、いや少年がおりました。

 生まれた時からお父さんとお母さんが誰なのか分からない、大きなお屋敷で義理の母や姉達と一緒に住む彼女、いや彼は、灰かぶり(シンデレラ)と呼ばれ、家事に追われ、姉たちにいぢめられる毎日を送っておりました。


「ほんと、室内の何がイヤって、毎日おそーじしなきゃなトコですよねー♪ 木の上の巣だったら、取り換えればすむお話でーすのにー♪」

「王子ーーー!! そんな、雑巾がけなど私達が致しますので!!」

「王子の羽が汚れでもしたら、私達は、私達は……!」

「もー、僕に働かせるのがイヤなら、自分で考えてさっさとお仕事してくださーいなー♪ あと今回僕は王子じゃなーいでーす♪」

「そ、そんな、王子を王子と呼んではいけないのですか?!」

「王子別に居るはずでーすから♪ まぎらわしーので、シスと呼んでくーださーいー♪」

「そ、そそそそのような! 王子を名で呼ぶなどと……!」

「じゃ、シスデレラで」

「かしこまりました! シスデレラ様!!」


 ・・・・・・・・・・・・


 申し訳ありません。しょっぱなっからアレですが、もう冒頭部分からのやり直しを要求します。許可してください。しましたね? はい、やり直します。




 むかしむかし、どこかの国のとある街に、一人の少年がおりました。

 シスデレラと呼ばれる少年は、お父さんとお母さんこそ誰なのかよく分かんないですがそれはそれとして、血が繋がってるんだか繋がってないんだかよく解らない沢山の姉だか母だか使用人だか最早わかんない人たちと、平和に楽しく暮らしておりました。

 これでいいですかシスデレラ。


「ナレーションまで僕に是非を問わないでくーださい♪」


 あっはい、すいません。

 なんかもう、出だしからシンデレラ分が0キログラムなぐだぐだ展開ですが、残念ですがこのまま進行します。ナレーションもうすでに軽く疲れました。


「ダメでーすよ、お仕事がいつまでもそこにあると思っちゃだーめーです♪ 僕に働かせたくないのでしたら、自分で考えて行動しましょーう♪」

「はい、王子!」

「うんー? もうさっきのお話、忘れまーしたかー♪」

「Σ申し訳ございません、シスデレラ様!」

「よろしい♪」

「シスデレラ様! 窓拭きが終わりました! いかがでしょうか!」

「うふふ、アーラはいつも物覚えと行動が早くていい子でーすね♪ あとでアメちゃんあげましょーね♪」

「ありがたき幸せ……!!」


 ぅゎ このショタ っょぃ。

 恐ろしいまでのカリスマ性と調教能力を発揮しやがる銀の髪のショタと、もう本当にうれしそうに彼に使われるお姉さまたちと言う光景がこちらになります。

 もうちょっと、真面目にシンデレラする気はありませんか。ありませんね。語感だけでシンデレラ選んだ当方の落ち度ですね。認めます。


「というかー、サブタイをご覧になった皆様が期待してたのはー、かわいー僕が継母にいぢめられて、それでも僕は今日もお父さん(ファーティ)頑張っているよ☆ みたいな展開だったと思うのでーすけどー♪ これ、いいのでーすかねー♪」

「そんな、たとえ演技だとしても、王子ああいえシスデレラ様を虐めるなどと!」

「あと、私達は一応、義姉ポジションらしいですし」


 ところで、義姉何人居るんですかね。数えるのも面倒なんで、正確な数は描写しませんけど、さっきアメちゃん貰ったお姉さん以外にも沢山いますからネ。

 そんなキャッキャとお姉さま達が行きかい楽し気に家事をしている、シンデレラにあるまじき光景が展開される中。

 バタン、と大きな音を立てて広間の大きな扉が開きました。


「しっかり働いているかい、お前達」

「「バ……お母さま!!」」


 そこはちゃんと設定受け入れるのかよ。

 一斉に振り返り、ぴしぃと背筋を伸ばして整列する娘たちに、黒い姿のお母さまは満足げに頷きます。

 なお、お年を召していらして歩けないので、お母さまは車いす使用です。


「家事もその辺にしておいで。今日が何の日か、忘れた訳じゃあるまいね?」

「はい、お母さま! 今日はあの王子が国中の女性を招いて、妻となる女性を探すパーティを開く日、ですね!」

「そうだよ。この日の為に、お前達を育てて来たと言っても、過言じゃない」


 ピン、と張り詰める場の空気。

 真剣な瞳を向けるお母さまに、娘たち(数はギリ一桁)はごくりと唾を飲み込みます。ちなみに、シスデレラはいつの間にかお母さまのお膝に乗ってます。


「解っているね? ……どんな手を使ってでも、王子の正妻・側室・愛妾、全ての座をお前達で独占しておいで! この国を将来牛耳るのは、私達だよ!!」


 激しい国家乗っ取り計画を見た!

 堂々と宣言するお母さまに、娘さん達もきゃーー……というか、ぴゃーーー! と声を上げます。やる気満々です。

 いやまあ、ごく一部やる気なさそうに口元ひきつらせてるのもいますが。


「うふふふ、皆やる気満々でーすねー♪」

「それはもう、ババ……いえお母さまのご命令とあらば!」

「それに、これで卵……じゃなかった、子供を産むのにも困らなくなりますし!」

「シスデレラ様ぁ、王子の傍から溢れてしまったら、近くの他の男性に流れるのって、アリですかー?」

「アリです☆ あ、でも第一優先は王子様でーすよ! 特に正妻の座は確実にゲットしてくーださい♪ ちゃーんと気に入られるんでーすよー♪」


 ちょ、シスデレラ的にも推奨計画なんですかこれ。

 激しい肉食系女子の群れにこれから襲われる、王子の安否やいかに。


「ささ、みーんな飛び切りおめかしして、キレイにしましょー♪ うふふ、楽しみでーすねー♪」

「…ん? ああ、シスデレラは私と留守番だよ」

「えっ」


 えってあんた、これシンデレラなんだって何度言わすんですか。

 お母さまに留守番指示をされたシスデレラは、普通にびっくりした顔でお母さまを見上げました。

 別に意地悪を言っている顔ではなく、ぽんぽんと頭を撫でます。


「万一シスデレラを王子が気に入ってしまったら、子供出来ないだろう」

「それもそうでーすね、僕可愛いですからー……」


 その理由で納得すんのかよ。そして納得の方法もそれどうなんだよ。

 全編通して突っ込みどころを用意してくれやがるこの一族、どうしてくれよう。

 ……こほん。

 お母さま及びシスデレラシスターズの目的は、王子様の周囲をこの一味で固めて将来この国をいい感じに牛耳る事のようなので、そこで飛び切り可愛くても残念ながらオスなシスデレラが一番に収まっては困る、という事のようで。

 言われてみれば確かにそうです。正妻命な王族もいらっしゃるでしょうし。


「仕方ないでーすねー…。僕が居なくても、ちゃーんとお役目果たすんですよ♪」

「「勿論です、シスデレラ様!!」」

「後ろでこっそりバックれようとしてるアーラも、ちゃんとですよー♪」

「Σまっ、まさかそのような、事は、しませんとも!」


 嘘つくのヘタかよ。

 ツンデレ属性増し増しなシスターズ筆頭さんですが、敬愛するシスデレラから釘を刺されたとあらば、逃げ出すわけにはいきません。

 どもりながらも決意を表明するお姉さんに、シスデレラも満足げに頷くのでした。って、だからシンデレラってそういう関係性じゃねーから。







「でも、ちょーっとだけ行きたかったのでーすよねー♪」


 夜になり、お姉さん達は皆舞踏会へと出陣、いえ出発していった後。

 継母さんの夜は早く、すでにお休みになられているので、シスデレラは一人でお留守番状態です。

 目的上、別にシスデレラが赴く必要は無いっちゃーないのですが、そこは彼も好奇心旺盛なお年頃。

 お城での舞踏会とかー、綺麗に着飾った人たちとかー、あと主に提供されるんじゃないかと思われるお御馳走だとかー、興味は尽きないのです。

 あと、なんだかんだお姉ちゃんたちがやっぱり心配。


「うーん、こっそり覗きに行くのは、許容範囲でしょうかー」


 年より大人びた、かしこい男の子ではありますが、まあそこは子供ですから。

 そわそわするのは、仕方がないと言えましょう。

 そしてそんなシスデレラの元に、奇跡が訪れるのです。


「ふっ、俺を呼んだな!! 闇の力の化身たる、この俺を!!」


 あっ、ごめんこれダメなやつ。

 お庭で遠くに見えるお城を見上げていたシスデレラの後方に、ザっ!! と足音を全く隠さず姿を現した、一人の男性がおりました。

 振り返ったシスデレラの目に映った、人んちの庭に仁王立ち、というか微妙に腰にひねりを入れて、顔の真ん中に右手を目も鼻も口も隠さない絶妙の位置に置いた、その人は。

 シスデレラの視界に収まった次の瞬間、右方向からの強烈な殴打により、視界からログアウトしていきました。


「はいジャマ! そこあたしのポジション!!」

「ぐえふっ」


 結構ヤバい音と声が聞こえたのは、多分気のせいじゃありません。

 気を取り直して、シスデレラが振り返ると、そこに立っていたのは一人の魔法少女でした。


「待て! 気を取り直しちゃうのか?! 話を進めるのか?! 俺の出番は?!」


 いえ、ぶっちゃけあなたのセリフを準備するだけで、これ一本書けちゃいそうなくらい疲れるので、できればログアウトしていてください。

 代わりに、今度あなたの出番マシマシの番外編書きますから。


「ひでェ。後半の話本当だな! 待ってるからな?!」

「はいはい、いーからログアウトおし」


 ええ、ちゃんと書きますよ(書くとは言っていない)。

 今の一連のあれそれは置いといて、シスデレラの前に姿を現した魔法少女は、ピンクと白を基調としたふりふりミニスカートと、とんがり帽子を標準装備したそれはもう王道な魔法少女でした。


「というわけでシスちゃん、シンデレラの魔法使いだよ!!」

「ほぼほぼ予想通りのキャスティングで、僕も安心でーす♪」


 シスデレラからも、1分ほど前のやり取りは記憶から抹消されたようです。

 ぱちぱち拍手で出迎えられて、満足そうな美少女魔法使いさんじゅうななさい。


「年の話はすんな!!」

「それで、何してくれるでーすか? かぼちゃの馬車ですー?♪」

「え、それでもいいけど、真正面から舞踏会入りする展開になっちゃわない?」

「あ、そうでーすね」

「いやー、あたしとしてはそのまま王子様とフォーリンラブ展開になっても、あたしそういうの嫌いじゃないけど」

「僕にそういう趣味は別にないでーす♪」


 魔法使いさん的には別にその展開OKのようですが、残念ながらシスデレラ的にアウトのようです。そりゃそうだ。


「シスちゃんは、舞踏会に遊びに行きたい?」

「うーん、出席して変な展開になるのは困るので、ちょっと様子を見に行きたい、くらいを希望しまーす♪」

「OK聞き届けた! であれば正面からではなく、むしろ上から見て覗くくらいでどうだろう!」

「上からくるぞー、気を付けろー♪」

「つまりそれ! ではいきましょう、どきどきマジック☆ ぽわわわわん♪」


 尚、効果音は魔法使いさんの口頭です。

 それは口頭ですが、魔法使いさんが杖を振ると、きらきらな照明効果がシスデレラをくるりと囲みます。

 この人の場合、こういうパロディじゃなくても割と普通に出来そうな不思議。

 そして光が収まると、シスデレラに大きな翼が生えていたではありませんか!!


「まあ、元から翼は持ってるんですけーどね♪」


 やかましかっ!!

 ここまでハーピィとかそういう存在設定を消した方が展開楽だと思ってやってんだから、柔軟に反応してほしいところです。


「さあ、この翼でぱたぱたーっとお城まで行って、様子を見ておいで!」

「わーい♪ ありがとうございます、魔法使いさーん♪」

「ちなみに、ガラスの靴もあるけど、これ要る?」

「履けません♪」

「ですよね」


 せやな。

 体重制限上、シスデレラなら履けそうですが、別の危険というか、そもそも入らないという物理的問題が存在していますから。







 さてさて、心優しい魔法使いさんのお陰で、長距離移動を可能としたシスデレラさんは、魔法の翼(言い張る)でおうちからお城までひとっとび。

 一応目立たないように注意しながら、舞踏会の開かれている大広間。その大きな窓の枠に止まり、さかさまになって中を覗いてみました。


「まあ王子様! ご機嫌麗しゅう!」

「王子様、この果物大変美味ですわ、ささどうぞ、あーん♪」

「王子様、私のことも構ってくださいませ!」

「王子様、この日の為にダンスの練習をしましたの。ぜひお相手下さいな」


 ※シスデレラは窓の向こうから見ているので、会話は聞こえていません。

 ともあれ、見る限りではシスデレラのシスターズ(ギリ一桁の人数)が麗しの王子様に群がっ……取り囲んで、他の女性をドン引き……いえ、他の女性の接近を許さぬ完璧な布陣を布いているようです。

 その光景に、シスデレラはよし、と一つ頷きました。いいんかい。


「ちょ、解った、解ったから一気に来るな! せめてバラけろ?!」

「そんな事仰らないで、王子様!」

「私達は、皆同列かつ同じ気持ちの姉妹ですもの!」

「こんな時までその序列真っ平らを適用するな!!」


 あ、ちなみに今回は別に王子様をないがしろにする選択肢が発生していませんので、王子様はいつもの王子様です。ご安心ください。

 多分王子様自身はご安心出来てないと思いますが。


「ほらー、アーラも頑張って! アピールしないと!」

「王子様に選んで頂けるまでが勝負なんだからね!」


 この肉食系シスターズの中、一人引け腰のお姉さまその1だけが、この布陣の若干外に居ました。

 だからといって姉妹たちが彼女をそっちのけにする気はなく(だってシスデレラにちゃんとやれよって言われてたから)、ほれほれと呼び、引っ張り、王子様の前に押し出す始末。

 怒りか照れか、唸りそうな表情で顔を赤くするお姉さまその1。

 しばしして、彼女はキっ! と王子をにらみつけ。


「べ、別にあんたが私を選んだとしても、元気な子供を産むくらいの事しかしてやらないんだからね?!」

「もしそれをツンデレのセリフとして適用されると思ってるなら、俺はお前を認めないぞ」

「Σ思ってないし、メスに他に何を求めるって言うのよ?!」


 ご覧いただけただろうか。これが種族間の意識の誤差である。

 たぶんなんですが、彼女的にはかなり前向きなアピールだったんだと思います。が、いかんせん種族の壁は険しい。

 ―――というやり取りを、別に窓の外にいるシスデレラは聞こえてないんですけど、見ているだけでだいたい想像はつくというものです。


「んー、頑張ってはいますけーど、王子様ゲット大丈夫でーすかねー?♪」


 そこに一抹の不安を感じる程度の常識を持って頂いているようで何よりです。

 窓枠の上から覗き込んでる状態なので、頭が徐々にくらんくらんしてきていますが、それより姉妹たちの戦果の方が気になります。

 応援の気持ちを目いっぱいこめて、更に身を乗り出したその瞬間。


「おい、君。そこで何をしているんだ」

「ぴゃっ?!」


 まさかの、後方というか窓枠より更に上部からの声がしました。

 びっくりして顔をあげようとしますが、今の今まで頭に血が上る体制で続けて、そこからさらに頭を上げたら?

 当たり前ですが、ぐるっと目が回り、そのまま窓枠から転げ落ちました。


「ぴーーーーー!!」


 くるくる目を回しながら落っこちるシスデレラに、魔法の翼(言い張る)を広げて着地する余裕はありません。

 どれだけ下に地面があるかも分かりませんが、ただ悲鳴を上げる意識の端っこで聞こえていたのは、とん、とんと何度か届いた足音のような音。

 そして、硬い地面に叩きつけられる筈だった小さな体は、ふわりと優しく受け止められて、また軽くとん、と着地の音が聞こえました。


「……全く。あんな所に居たら危ないぞ。子供が危険な事をするものじゃない」

「ぴ……?」


 呆れと安堵の混じる言葉に、回っていた目を戻す為、ぱちぱちと瞬きを繰り返してから、顔を上げます。

 シスデレラを姫抱っこしていたのは、どうやら先ほど声をかけた人のようです。

 さらさらと流れる、絹のような真っ白の髪。きりりとした印象ながら、心配を浮かべる深い青の瞳。

 星空に浮かぶ青白い月を背景にしたその人は、まるで―――


「……王子様?」


 シスデレラがそんな言葉を口にすると、途端にその白い人は、困ったような微妙そうな表情をしました。


「いや、私は王子ではなく、一介の兵士だし、何より性別は女性なんだ」

「ぴ! それは失礼しまーした♪」


 確かに、吃驚するほどの美人さんですが、男性というよりは女性方向の美人さんです。口調が男性的なので、ちょっとそう見えましたが声も綺麗ですし。

 ただ、ヒロイン(?)の救助とか登場時の描写とかが、王子様よりも王子様。


「それで、君はどうしてあんな所に居たんだ」

「んっと……舞踏会を、覗いてまーした♪」

「? 入りたいなら、そう言えば良いだろう? 今日は女性であれば、だれでも参加出来る筈だ」

「残念ながら、僕は女性ではあーりーません♪」

「……。…そうか、それはこちらこそ、失礼した」


 ここは性別が混乱したインターネットですね?

 いえまあ、白い人は女性にちゃんと見えますが、シスデレラは控えめに見ても美少女なので、一発性別看破出来たらそれは何かの特殊能力者です。

 とはいえ、驚くでもなくごく普通に受け入れ謝罪する白いお姉さん、クール。


「おねーさんは、舞踏会に参加しないでーすか?♪」

「私は今日はこのあたりの警備担当だ。それに、どうもああいうのは……苦手というか、似合わないしな」

「ぴい? おねーさん、とってもキレイですのーに?」

「ありがとう。ともかく、性に合わないんだ。ああいう肌を露出したドレスとか、特にダメだ」


 口調は男性的ですが、見た目は綺麗な女性ですので、きっと似合うのになーとか思うシスデレラの問いに、お姉さんは無理無理と右手を振ります。

 当人のご趣味ではないようですが、絶対似合うのになー、王子様もイチコロレベルの美人さんなのになー……と。

 想像して、なんとなくムっとした気分になりました。


「いけません、王子様は僕の姉妹たちが狙い撃ちーです♪」

「うん?」


 あ、そっちか。

 となれば、強力なライバルが参加しなかったということ。万々歳です。


「君の姉妹は参加しているのか」

「はい♪ みーんな可愛い美人さんばっかりです、王子様ゲットです♪」

「ははは、自信満々だな。だが、君の姉達ならば、確かにさぞかし美しい娘たちなのだろう」

「え、それって僕が可愛いってことでーす?♪」

「うん、そうだな。見たことがないくらい美しい。まるで、月の光がそのまま具現化したようだ」


 何この人。

 さらっと照れもなく、ものごっつい事を言いながら、お姉さんはシスデレラの髪をふわりと優しくなでます。

 自分が可愛いと自信をもって自覚してますし、褒め称えてくれる相手にも特に不自由していないシスデレラですがってあんたどんだけだ、もといこんな風に種族補正ではなくまっすぐに褒められると、流石のシスデレラも照れるようです。

 ぽわぽわ頬を染めて、うつむいてしまいました。

 多分お忘れではないと思うんですが、今褒めた方が女性で、褒められた方が男性です。あしからず。


「おねーさんも綺麗でーすよ♪」

「ん、ありがとう」

「ほ、ほんとにほんとでーすよ! 信じてなくないでーすか!♪」

「いやいや、信じているよ。嬉しい」


 反撃とばかりに褒めても、お姉さん全く顔色変わらず。

 これは、明らかに子供だからと甘く見られている。

 子供なのは事実ですが、大変察しが良く聡明なシスデレラは、お姉さんに子供扱いされている事を正しく察知しました。

 自分だけ照れさせられたのが悔しいというか、本当にシスデレラから見たってお姉さんは綺麗なのです。それは本当です。

 白い髪に白い肌、意志が強そうな、けれど優し気に細められる青い瞳。本当に兵士なのかって思いたくなるくらいすらりと伸びた手足。無駄のない、完璧なモデル体型。

 更に言えば、最初に上から声をかけたのに、落っこちたシスデレラを受け止めて着地したって事は、結構な身体能力の持ち主です。完璧超人かよ。


「ホントにっ、おねーさんの方が、僕よりも綺麗でステキでーす!」

「ははは、何度も言わなくても」

「むー! ほんとですからね! 僕のお嫁さんにしたいくらいでーす!」

「おや、それは光栄」


 あっ、全然本気にしてない。

 むううううう、っとほっぺたを膨らませるシスデレラを、とても微笑ましそうな笑顔で見つめるお姉さん。

 しばしその状態が続きましたが、やおらシスデレラは翼を広げ、パっとお姉さんの腕から脱出しました。


「決めまーした! おねーさんは、僕のお嫁さんになるでーすー!」

「ああ、君が大人になるのを待ってるよ」

「ぴゃーーー!! 目に物見せますですかーらねー!」


 完全に子供扱いでしたー! 当たり前ですが。

 顔を赤くして、ぷんすこしながら飛び去るシスデレラと、子供らしいかわいい子だなあと言う笑顔で手を振って見送るお姉さん。

 この微笑ましいイベントが、色々なものを決定づけるとも知らず。







 舞踏会の夜が終わった翌日、未だにシスデレラはぷんぷんしておりました。

 普段はむしろ子供である事を武器に押していく系男子ですが、何やら今回は思うところがあった模様。

 しかし、子供でありながら子供らしからぬのが、シスデレラの怖いところ。

 朝になって目覚めた継母さんのお世話をしながらも、着々と策は練っているのです。


「どうしたい、シスデレラ。随分とご立腹だね」

「からかわれたのですっ、弄ばれたのですっ、ナメられたのですっ」

「おやおや…お前さんらしくない。というか、シスデレラの上を行く相手が居たとはね、世界は広いもんだ」

「まだ上に行かれてませーーーん! これから大逆転でっすっ!」

「ああ、それでこそ私の大事なシスデレラ。存分におやり」

「勿論っでーす!」


 煽らんといて、お母さま。

 ぷんすこしているシンデレラを撫で撫でしつつ、落ち着かせるつもりは一切なく、むしろその行動に全肯定をしちゃうお母さま。

 仕方ないね、彼女もまた、シスデレラ信望者の一人なのですから。

 束の間の撫で撫でほのぼのタイムは、少ししてバターン! というどこからともなく響いた騒音によって中断されました。

 何事か、とぱたぱたとシスデレラはおうちの玄関へと走っていきます。あ、今のぱたぱたは走ってる方の擬音ですから。


「た、頼もう、……おい、シス!」

「あらあら、ようこそティリノせーんせ、あ、じゃなかった王子さまー♪」


 姿を確認して、にこっと笑って出迎えるシスデレラさん。

 ぜえぜえと息を切らせる王子様ですが、何かといえばその肩やら腰やら腕やらにシスデレラシスターズがぺったり張り付いているのです。

 そう、彼女らは昨晩、帰宅しなかったのです。シスデレラとしても、別にその辺咎める理由もありません。


「こ、こいつらを、なんとか、してくれ…!!」

「あら、モテモテじゃないでーすか♪」

「限度がある!!」


 まあ、そりゃギリ一桁の人数を一度にとか、いくらなんでもな。

 いえその、一人だけぺったり張り付きじゃないのもいますが。


「男性は、女性をいっぱい侍らせてのハーレムとか、夢なんじゃないでーす?♪」

「だから、限度が、ある! 一気に9人に迫られても、物理的に無茶だ!!」


 今の発言を下ネタと取るかどうかは、貴方次第です。

 かくんと、無駄に可愛らしく首を傾げるシスデレラに、王子様はちょっと青筋立てて主張していらっしゃいます。

 本当に困ってるなーと、流石に気の毒になって考え込みました。


「でも、お母さまの指示は、王子様の正妻側室愛妾まで、僕らみーんなでがっちり固める事でーすしー……♪」

「おっそろしい指示するな?!」

「どの子もそれぞれ、可愛いですしー、良い子ですしー、王子様に尽くしまーすよー?♪ だめです? 全部まとめてあげまーすよ?♪」

「だからまとめて寄こされても、このレベルの肉食系複数は無理だ! いらんとは言わんから、せめて一人に絞ってくれないか!!」

「えー」

「なんで不満げなんだ?!」


 そりゃ勿論、卵じゃなかった子供産んでくれる身内が多い方が、シスデレラのおうち的には万々歳だからですよ。

 ちょんちょんっと自分のほっぺをたたきながら、考え込むシスデレラ。

 シスターズ自身に一人を選ばせるのは不可能です。何故なら、彼女たちに序列はないから。そんな事させたら、王子様が物理的に分割されるのが関の山。

 それはシスデレラ的にも困ってしまいますし、彼女たちを誰か一人に絞れるのは恐らくシスデレラだけ。

 だから王子様も彼に頼んでいるのですが……

 ぽふぽふとほっぺたを数度たたき、ちらっと9人をにまとわりつかれている王子様を見て……そして、その後方に控える護衛役と思しき兵士さんを一人一人見てから、シスデレラはにこりと……いえ、にやりと笑みを浮かべました。


「解りました、僕の出す条件をのんでもらえたら、一人に絞ってあげましょー♪」

「じょ、条件? なんだ?」

「後ろの白いおねーさんを、僕のお嫁さんにくーださーいな♪」

「「は?!」」


 今声をハモらせたのは、王子様と、本日王子の護衛役を仰せつかっていた、昨晩の白いお姉さんです。

 お姉さんの方とて別に昨晩の事を忘れていた訳ではないのですが、まさか王子様にまとわりついているシスターズがシスデレラの身内とは思いませんでしたし、あまつさえ『お姉ちゃん』達を篩にかける権限があるとも思っていなかった為、この驚きになったようです。

 そして、王子様は後方の兵士さんを見て、再度シスデレラを見て、もう一度お姉さんの方を振り返って。


「……よし分かった、持ってけ」

「Σ王子?!」

「すまんが、俺も命が惜しい!」


 命の危険を感じるほどか。

 あ、いや、まあ、感じるか。肉食系女子9人とか、普通に考えたら命の危険があってもおかしくないですし。


「わーい! じゃあ、おねーさんは今日から僕のお嫁さんでーす♪」

「え、あ、いや、私は……!」

「うふふふ、僕が大人になるまでなんて、待ってあげませーんよ♪ 本気だって言ったじゃないですかー♪」


 にっこり。

 まさかの翌日には有言実行されるだなどと、だれが想像したでしょうか。

 逃がしはしないぜマイハニー、とばかりに笑みを深めるシスデレラに、小さな子供と侮ったと、お姉さんは後悔したでしょうか。

 完全に困惑を隠さないその様子に、満足げにシスデレラは微笑みました。


「……ところで、一人に絞ってくれるんだよな?」

「あ、そうでーした♪ じゃ、アーラいってらっしゃーい♪」

「ええ?! 私なんですか?!」

「王子様、積極的な肉食系、おいやみたいでーすし?♪」


 そうなっちゃいますよねー!

 即決で指名されたお姉さまその1に、ご本人も王子様も一瞬口元をひきつらせましたが、事前に一人を選ばなかったのは王子様です。


「うふふ、これからずーっと一緒です、離してあげませーんよ♪」

「いや、その、私は……」

「僕のお嫁さんになるの、光栄なんですよねー?♪」

「そう、確かに、言ったが……」

「嘘は嫌いでーす♪ 嘘だったとしても、…逃がしませんよ?」


 ぅゎ このショタ っょぃ。

 有無を言わせぬシスデレラに、ああこれダメなヤツだった、と思ったとしても後悔先に立たずというヤツです。

 うん、まあその、大事にして貰えるだろうし、いいんじゃないですかね?

 ハート飛ばしまくるショタのバックで、微妙な距離感保ったまま変な沈黙をしている王子様とお姉さまその1も、まあそれはそれでいいんじゃね。




 かくして、二組のカップルは幸せに暮らしましたとさ。

 めでたしめでたし。












「―――あの。僕の出番は……?」


 あっ。







 あけましておめでとうございまーーーす!!!!!

 セロ、すまん、すまんな……(書き終わってからいないことに気づいた)


 新年一発目から、謎のテンションをお送りいたしました。

 本当は元旦に更新したかったのですが、まーた年末体調崩してぶっ倒れてたのと、ごく普通に年始がクソ忙しかったのでこうなりました。

 大丈夫、まだ3が日中だし!!


 それにしても、私はメインヒロインを後の方に持ってくる縛りでもしてるんですかね……こっちといい、執事さんの方といい……(遠い目)




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