森での交流
☆今回以降、特に最初に記載のない限り、
人間語は「 」、ハーピィ語は『 』で統一します。
「シスちゃーーーん、おっはよーーーー!!」
「おはよ、おはよっ♪ シオンさん♪」
「おは、よウ。シオン」
「はあい、アーラもおはよっ!!」
先生達が森から帰って、およそ一か月。
僕の望みどおりに、近くの村に残ってくれたシオンさんは、毎朝森の近くまでやってきて、僕らが来るのを待っている。
流石に、村のすぐ傍で送り迎えは出来ないからね。アーラ達からも、森からあんまり離れるなと口を酸っぱくして言われてるし。
舞い降りてくる僕と、アーラにシオンさんは屈託なく笑って挨拶してくれる。
頻繁に差し入れてくれるパイやお菓子の効果もあってか、シオンさんはすっかりハーピィ皆と仲良しです。アーラも、かなり気安く接している。
仲良しさんは、いいことだよね。なにせ、シオンさんを先生とした人間語授業がとてもスムーズに行われるから!
最初から話せたアーラも大分喋れるようになったし、他のハーピィ達もまだまだカタコトだけど、意思疎通が出来るようになってきた。
僕のように、歌って話すハーピィは一羽も居ないけど。何故か。
「それじゃ、いクワよ?」
「はいはーい、お願いしまーす」
他のハーピィ達とも一緒にお勉強会をするから、シオンさんも森の中へ連れて行く。
歩いてたら時間がもったいないので、僕らが運ぶ。僕というかアーラが。
最初は二の腕あたりをわしづかみだったんだけど、怖いし痛いってことで三日後くらいには、シオンさんが自分でブランコみたいなのを作ってきた。
輪っかにした丈夫な縄に、二つ太めの木の枝を結び付けたもの。
片方をアーラが掴んで、もう片方にシオンさんが座って運んでいる。
……気のせいか、なんかこう、有名な妖怪系の漫画にこんなものがあったような気が、しないでもない。
「ネーチャ!」
「ネーネ、オハヨ!」
「おお、おっはよーフレーヌちゃん、グリシナちゃん!」
空中ブランコの途中で、ぱたぱた飛んできたフレーヌとグリシナもご挨拶。
この二羽は、雛だけあってハーピィの中でも食いしん坊で、もうシオンさんがくれるお菓子にメロメロで、すっかり懐いている。
まあ、一回に小さく一つしか食べさせて貰えないのだけど。僕もね。
尚、二羽からのシオンさんへの呼称は、シオンさんご本人の熱烈なる要望の結果であると……言うまでもないかしら。
「はい到着! 今日もありがとうございまーす!」
「どうイタ、…マ、…して?」
「どういたしまして、ね!」
「それ。どうイタしマシテ!」
着地するや否や、そんなやり取りをして笑い合うシオンさんとアーラが大変微笑ましい。
すっかりお友だちだね! 種の壁なんて、大したことないのかしら。
……シオンさんが大らかで自由なせいかもしれないけどね。
さて、あの時会議してた広場が、僕らの主な勉強場所。
近くにシルトの巣がある筈なんだけど……どうやら確認してみたら、巣を移動してしまったみたい。
しょっちゅうハーピィがやってくるから、危険を感じたのかも。ごめんねー、でもこっちは助かるよ。
「さてさてっ、じゃあ今日もいっぱいお喋りしましょう!」
「「ハーイ!!」」
「はーい♪」
「ヨロシク、ね。せんせー」
狩りに行ってるハーピィ以外は、ほぼ全員ここに集まっている。
最初の頃こそ、単語とか文法とか色々授業じみた勉強だったんだけど、皆ほとんど喋れるようになってきているから、今はとにかく沢山喋って、慣れる事! とのシオン先生のお言葉。
シオンさんとだけじゃない。ハーピィ同士でもお喋りをしあって、こういう時はどういえばいいの? とか、そんな時にシオンさんが呼ばれるスタイル。
「シオン、きょうハ、しゅ、……しゅーちゅートックンして、ほしイわ」
「ほえ? どーかしたの?」
「アナタが、おしえテクれる、コトバ、キレイだかラ。…もうスコシ、こう……」
「こう?」
「……あノつりメを、ダマらせるヨウナ、コトバを!」
「アーラ……」
思わず呆れた声を出したのは、シャンテです。
そして僕も出しそうになった。
何がそこまで、彼女を駆り立てるのか……
「そ、そんなにティリノが嫌い? あいつ、口は悪いけど、いいヤツよ?」
「あいツ、サイしょ、ワタシをなにかバカにしたコト、いったワ! そのアトモ、モンクをいいたイなら、ご、ご……ゴイ?」
「語彙ね。理解して使える言葉ってこと」
「ヤッパリ! アイツ、ワタシがしゃべレナイって、バカにしたんだワ!!」
「……あたしらがハーピィ語を喋る事の方が困難だから、そこ馬鹿にするのも変な話だけどねえ…」
語彙の話は僕も聞いたけど、その前に二人に一体何が……?
苦笑するシオンさんに、アーラはハっと気付いたような顔になる。
「そうだワ! ワタシがモットしゃべレルようニナレば、あいツはワタシニおとるってコトよネ?!」
「あ、ああー……。あたし達には、ハーピィ語は完全に鳥のさえずりにしか聞こえないのは確かだけど」
「そうカンガエれば、イマすデニ、ワタシのホウがスグレテるのね! これハ、カッタわ……!」
「……アーラ、ほどほどにー、ねー♪」
言語習得という意味では、色んな音を出せる僕らの方が優れてるかもだけど。
うーん、これは近い将来、人間語で同等に口喧嘩する2人を見る事になるんだろうなあ……。喧嘩する程仲が良いと思って、いいんだろうか。
ティリノ先生は何かあれば感謝や謝罪を言うし、アーラも別にそこに悪意はないようだから、そんな深刻に考える事でもないかな……
午前中は人間語授業。
午後は、狩りをしていたメンバーと入れ替わり。午前中頑張った皆はシオンさんのお手製クッキーを頂いて、ルンルンで長老木に帰るか、森の巡回に行くか。
あ、懸念されていたハーピィの発情期抑制なのだけど、ちゃんと僕の歌で落ち着いていられているみたいです。
朝昼晩と、こまめに歌って聞かせなきゃいけないけども。
なのでお昼には全員で一度長老木に戻り、お歌タイム。
広場に残ってご飯を食べてるシオンさんには、フレーヌとグリシナがくっついているので、危ない動物は近寄ってこないでしょう。ただでさえ、大量のハーピィがたむろってて、匂い満載だろうしね。
「ねえねえー、シオンさーん♪」
「はーい、なにかしらシスちゃーん!」
再度広場に戻り、人数が減った事で少し手が空いたシオンさんに、お外の話を聞こうと思ったのだけど、ふと思いついて顔を上げた。
あ、いま僕、膝の上です。シオンさんの。
それから、魔法については2歳になってからって事なので、まだです。
「シオンさんと、セロさんたちって、ずーーっとナカマなーの?♪」
「ん? いやー、パーティ組んで3年くらいかしら? セロ達は故郷から旅立ってから一緒だけど、あたしはずっと冒険者してるし」
「ぴ? セロさんと、ルストさんは、おなじムラのひーと?♪」
「そうそう、幼馴染ってやつね」
へえ。そりゃあ、カオスティック・スペルを翻訳出来る程慣れてる訳だ。
で、別にシオンさんはその括りではないと……それはそっか。魔女さんなんだもんね。
「シオンさんはー、どーしてセロさんたちとナカマになったのー?♪」
「あら、聞きたい? 興味ある?」
「ききたーい♪」
「にゅふふ、仕方ないわねー。シスちゃんのお願いなら、お姉さんなーんでも叶えてあげちゃう☆」
「わあーい♪」
嬉しいけど、あんまり滅多な事言わない方が良くないかなー? 僕、これでも魔物で、ハーピィの長なんだよー?
いや、別に変な要求するつもりは一切ないけど。
「えっとね、セロがエーレ神の神官って言ってたでしょ? 神官って一言で言っても、神殿に籠ってお祈りしたり祭事を行ったりする司祭とか、他にも神様の系統によって色んな神官がいるの」
「ふーん?♪」
「例えば、実りと豊穣の神クリェスなら、畑の収穫量の調査とか土壌改善の研究とかする人が居るわ。水の神イーニーなら水路の整備計画を担っている人とか、商売人の神シアンテはそれこそ市場を取り仕切っているわよね」
「カミサマ、いっぱい♪」
「そ、いっぱいいるの。人間はだいたいどれかの神の信者よ、まあ自分がメインに信じてる神様じゃなくても、結構気軽にお参りしたりお祈りしたりするけどねえ」
多神教の国で、基本神様同士で仲が良いって事かな?
国の運営に、各々の神官が深く係わってるんだろうな。てことは、逆に王様の権限が、思ったよりは大きくないのかも。
勿論、何かする時には王様の許可居るだろうけど。
「で、セロが目指しているのは正義と公正の神、エーレに所属者が多い、守護騎士なのよね。いざって時に国や人々を助ける、護りの要ってやつよ」
「へー♪ セロさん、かっこいー♪」
「でしょー、セロらしいわよねー。で、守護騎士になる為には、それなりの武術の腕と、モラルというか人生経験を積まなきゃいけないの。それで、修行として冒険者をやってるの。結構多いのよ、神官だけど修行として若い頃は冒険者をやるってパターン」
「ルストさーんは?♪」
「ただの趣味じゃない?」
突然説明が雑になった!!
せ、セロさんの話はすっごい詳しく教えてくれたのに、この扱いの差……!!
しかも、あながち間違ってなさそうな辺りが、なんか凄い。
「んで、故郷の村から二人が出る時に、たまたまあたしも居合わせたのよ」
「ひとーりでー?♪」
「そ、あたしは基本、一人でうろうろしてたから。下手につるむと、好きなトコ行けなくなっちゃうのがイヤだったのよねー」
「ふうん♪ なのに、なんでセロさんたちと、いっしょしてーるの?♪」
「いやあ、それがねえ。…なんというか、転機って突然来るらしくって」
転機とは。
確かにシオンさんは、ほんと色んな意味で自由な人で、行き先ややりたい事を仲間であれど阻害されるのは嫌がりそうだなと思う。
それでも、現実として今はシオンさんはセロさん達のパーティに、3年所属して一緒にいる事になる。セロさん大変そうだったけど。
なんでかな? 大変興味ある。
「その村から、王都に行く途中でねー。リザードマンの群れに出くわしたの」
「りざーどまん?♪」
「二足歩行のドラゴンっぽい見た目の魔物よ。鱗が硬い上に、鎧とか武器で武装するのが厄介なやつ」
なるほど、だいたい想像出来た。
武装するってことは、好戦的なんだろうなあ。なんかこう、イメージからして凄く戦うのが好きそう。イメージだけど。
「むれってことは、いーっぱいいたのー?♪」
「そう! 真冬で寒いのに、雪まで積もってたのに、あいつら冬眠する筈なのに、群れで襲い掛かってきたの!」
「ぴ! たーいへん♪」
「大変よー、冬ってだいたい魔物も動物も縮こまって活動が鈍る筈なのに、めっちゃ必死の形相で襲ってきたんだもの。あれ、たぶんねぐらを何か別の魔物に襲撃されて追い出されたのね」
「ぴぃ……」
「で、襲撃を予想してなかったし、そもそもちっちゃい村の連絡馬車だから、碌すっぽ護衛も居なくてさ。その時、冒険者はあたし一人だけ!」
「セロさんとルストさーんは?♪」
「まだ駆け出しのチビっ子よ? リザードマンってったらCクラスでやっとの魔物だもん、前に出させる訳にいかないじゃない?」
冒険者のクラス分けについては前にきいたんだけど、ってことはなんとか初心者を脱した後の最初の壁、くらいの立ち位置なのかな?
それは、これから冒険者になる! って若者には荷が重すぎるよね。
「そこで、正義感溢れる天才美少女魔法使いシオンちゃんは、毅然と立ち向かう訳なのよ! 馬車に結界陣を張って、守ってあげてね?」
「そんなのも使えるのー?♪」
「使えますとも! 更に、それを維持したまま通常の属性魔法くらい使えるわよ、なんたって可愛くって優秀な魔女だもの!」
そこに可愛いは必要なのかな、と思ったけど言うだけ野暮だよね、これ。
さておき、魔物から範囲を護る結界陣って、凄い事だよね……。こないだの翻訳陣よりも凄い?
ただ、それを何時間も保持するのは、シオンさんでも難しいんだろうな。会議のときだって、2時間くらいおきに休憩入れてたし。
「それで、シオンさんが、ずばーってやっつけたーの?♪」
「そう! ……だったら格好良いんだけどね。さすがに、魔法使い1人じゃねえ」
「ぴ? どうなったの?♪」
「魔法って、結構集中力が要るのよ。ただでさえ結界陣を維持しながら、群れの攻撃避けつつだと、せいぜい牽制になる魔法くらいしか使えないわけ。まあ、リザードマンは魔法耐性が低いから、3発も当てれば倒れるんだけど」
ドラゴンっぽい系は、魔法に弱いのかな? シルトもそうみたいだし。
なんとなく、ドラゴンは魔法に強そうな印象なんだけどな。前の世界のゲームでの話だけど。あ、でもやっぱりどれにしても寒さには弱そう。
「冬で動きが鈍ってたから、ある程度は持ちこたえられたんだけど。やっぱ群れを1人で対処は無理よね、一気に吹っ飛ばせる魔法が用意出来ないんだもの」
「大ピンチだねー♪ でも、シオンさんはここでげんき♪ どーなったの?♪」
「1/3くらい倒した頃かな。さすがにちょっと息が上がっちゃってさ。ほんの一瞬の隙だよね、背後から忍び寄ってたリザードマンの剣が振り下ろされてるのに気が付いてね。あ、これ死んだわ。って思ったよね」
「れーせーだね♪」
「うーん、長年冒険者やってて生き死にに係わってると、ああ自分の番なんだな、って思っちゃうのかも。……まあ死ななかったんだけど」
「どーして?♪」
「セロがね、助けてくれたのよ」
ほ?
まだ駆け出しどころか、冒険者になる前のセロさんが?
そりゃあこれから修行になるんだから、その準備とかは色々してただろうけど、武装して殺気立った魔物の群れの中に、飛び込んだって事?
「守護騎士見習いに贈られる、鎧とか盾くらいは当時もうつけてたからね。ただ、実戦経験のない男の子が、突然そんな状況に放り出されても、普通は戦うどころか動けなくなるわ。だから、結界内に居なさいって、言ったんだけど」
「それでも、ほっとけなかったんだーね♪」
「そういう事なんでしょうね、人を守る守護騎士の素質は、充分あるってことかしら? いやー、もうほんとね……」
「ぴぃ?」
突如、シオンさんが右手で顔の上半分を覆う。
口元は笑ってる。僕やフレーヌ達に構う時のでろでろな笑顔じゃなくて、もうちょっと穏やかなというか、優しいと言うか。そんな感じで。
「どーしたの、シオンさん♪」
「うん……。…こっから先は、内緒よシスちゃん」
「はーい、なーいしょ♪」
「なんと言うかね。いやほんと……あん時のセロ、超かっこよかった」
「ぴ……?」
「恋に落ちるって言うのは、本気で唐突で一瞬なのよ……吃驚した」
……、…え、恋?
つまりは、危機的状態の時に、来ないと思ってた助けとなって表れた男の子に、胸キュンしちゃったって言う……王道中の王道な恋の始まり?!
「シオンさん、ちっちゃいこずきじゃ、なーかったの?♪」
「ほんとそれよ、そうなのよ!! 3年前っつったらセロ15歳よ、流石に守備範囲から外れに外れてるわよ!! なのにキュンってしちゃって治んないの!!」
「ぴ、ぴぃ……」
「とりあえずそのままセロ達にくっついてって、まあそのうち満足するかなって思ったら、戻んないのよ! むしろドツボに嵌ってる感ある……!!」
なんという。重度の性癖すら乗り越えるとは、恋とは異な物かしら……
なるほど、年齢差があって実力と経験差もある、駆け出しの少年達とベテランの魔女さん。なのに出会った時からパーティを組み続けてるのは、そういう理由。
結果としてバランス良いパーティになってるし、きっと経験豊富なシオンさんが一緒でセロさん達は助かったんだろうな。…胃痛以外では。
「……? シオンさん、セロさんがすき♪」
「うん、まあ、そうなのよね」
「じゃ、ふたりはつがい?」
「ぶふぁ?!」
もしかして、あれは夫婦漫才だったかしら??
となれば、すぐ傍に奥さんがいるのに、セロさんをあわよくばハーピィの交尾相手候補……、…言い方悪いな、これ。…旦那さん候補に、するのは不味いよね?
大人しい人だし若いし良いかなってこっそり思ってたんだけど、シオンさんが怒るとなるとやっぱダメかなと聞いてみたら、すっごい勢いで吹き出した。
「ち、違うわよ?!」
「ちがーうの?♪ すきあったニンゲンさんが、つがいになるんでしょー?♪」
「いやそんなに速攻進まないからね?! つがいっていうか、夫婦になる前に、恋人とか婚約者とかそういう関係を挟むから!!」
「じゃ、どーれ?♪」
「どれでもありませんよ!!」
「……、…なーんで?♪」
「なんでって……」
シオンさんの事だから、意識したらそのままぶつけて、なんらかの関係が成立してるもんだと思ってた。
首をかくんと傾げて更に突っ込んだら、勢いを衰えさせて、両手の指をもじもじと動かすシオンさん。恋する女子だなあ。
「ほらー、あたし魔女だしね? 普通の人間の倍は生きるし。あたしらの集落ではそれが普通だけど、セロは人間だけの村で生まれたしー」
「それが、ダメなこーとー?♪」
「ダメっていうか、うーん……いつの時代も寿命問題はデリケートなのさぁ……。あと何よりも」
「なによりも?♪」
「結局今でもロリショタには突進大暴走するあたしを、セロが女性扱いしているかと思えば、そうでもない気がして……」
「……あー」
「歌すら放棄して納得しちゃうのね?!」
ごめん、納得しちゃった。
確かに言っちゃなんだけど、あのロリショタ大暴走を日常でやっていたとして、それを円満に収めようと努力するセロさんの涙ぐましい姿を見ると……
そういうとこがシオンさんの魅力の一つではあるけども、女性とか結婚相手とかで見ると、結構ハードルが……大きいような……
「でも、セロさんとってもやさしーひと♪ シオンさんがちゃーんとスキっていったら、まじめにこたえてくれそうだよー♪」
「すっごい真面目に謝られそうな気がしてならないの」
「……。…がんばって♪」
「もしもの時は、慰めてね!!」
「うん、おやくそく♪」
シオンさん、いい人なのは確実なんだけどね! そもそも、例の魔物の群れ襲撃だって、逃げようと思えば1人でなら逃げられたかもしれないのに、セロさんや他の人達を守ろうとしてたんだから。
こうして、魔物である僕らにも分け隔てなく笑って話して、毎日先生役をしてくれるくらいだし。
日常で苦労かけられてても、そういう彼女の魅力も、3年一緒にいたなら解ってそうなものなんだけどな?
……と、僕が勝手に思うだけで、他の人の気持ちなんて解らないけど。
本当にもしものときは、本当に一生懸命慰めて、いっぱい撫で撫でして歌ってあげよう。そう思うくらいには、僕は優しくって面白くて自由なシオンさんが大好きになったからね。
双方向片思い。
ちなみに、余ってるルストがどうなのかというと、気が付いていて放置の方針でいるようです。
彼の心境も、またいずれ。
あ、三角関係状態にはなっていません。念のため。




