人違いも甚だしい!
作者のストレス発散のために書きました。
むしろざまぁを書きたくて書きました!
短編練習中。無駄に長いです。
誤字・脱字・文等の修正をしました。28.7.17
次の修正はもうしばらく後です。
ボムジクス帝国第三皇女ツィフェル・ロン・ボムジクスは今、とても不愉快な思いでここにいる。居させられている、と言う方が正しいのかもしれない。
彼女は明日からかねてよりゾウール大国の王立学院に留学する事になっており転入手続きを完了させるためにやって来た。
ゾウール大国とボムジクス帝国の関係は十三代前の両国の王によって交友関係から和平をずっと結んでいる。
どちらの国も、大国が魔法系統なら帝国は物に関する匠の技術面が長けており円滑に物流が行われていた。
なぜか王族同士がいい関係を築き上げるのだからこの両国の関係は裏切りがない限り壊れる事はないだろう。
大国と帝国。同等の国力を持つもの同士。張り合うことなく同盟を組んでいる。
そしてツィフェルにより更なる礎が築くことになるのだ。
両国に同い年の王子と皇女がいた。異性同士ではあるが二人にとって良い遊び友達として最初は紹介し合うだけだったのだが、二人が揃って一目惚したと言うのだから婚約を結ぶ事になったのだ。
これには両国王が多いに喜んだ。まさか一目惚れで二つの国に更なる絆が繋がるのだからこれからも二国の関係はより良いものになるだろう。
王位継承権が低くすでに次期国王の臣下となる事が決まっているゾウール大国の第三王子ザグンルグ・テン・ゾウールと兄皇子を二人と姉皇女を二人を持つ第三皇女のツィフェル・ロン・ボムジクス。
二人の婚姻には自国で娶るのも他国へ嫁ぐのも自由であった。
今はまだどちらがどちらの国に移籍するか決まっていない。が、それも十八の成人までには定まるだろう。
しかし……………………もしかしたら自分のせいでそれらが壊れるかもしれない、とツィフェルは目の前の光景を見て思った。
そうならないように努力はするつもりのツィフェルだが……相手にはどうも聞く耳がないらしい。話がまったくままならない。うんざりしたくもなるだろう。
(わたくし一人ではどうにもなりませんわ)
学院の教師と話が終わり今は昼時。学院長には事前に許可をとっており婚約者のザグンルグとこの学院で昼食を摂るために食堂に足を運んでいた。
昼食後には一時間ほどザグンルグに学院を案内してもらいゾウールの王宮で王妃とお茶会だ。
最初に見た食堂の印象は清潔で広い。まだ生徒の数はまばらでザグンルグの姿はなかった。
急ぎでもないのでこの学院の規則に乗っ取り『一人でも出来るよう』案内してくれた教師に食堂の使い方を教わり自前でお茶を用意する。
寮の個室以外は自身の食事もお茶も荷物も自分がやらなくてはならない決まりだ。
食事も夜会のパーティーのように並べられた料理を自分、もしくは婚約者が取り分けるしかない。
嫌なら自室で侍女にすべてを任せる他ないと言うわけだ。
しかしツィフェルにとっては皇女が自らお茶を淹れるまたとないチャンスであるため早々に従者を下がらせていた。
彼ら従者や侍女はいくつもの手続きをしない限り学院内を堂々と歩くことを許されない決まりがあり、ツィフェルは大人しく従っているとも言える。
茶器を片手にツィフィルは目立たぬ隅のテーブルを選んだ。留学生の紹介は明日なのでいらぬ騒動を起こさないためだ。
騒ぐ事をあまり好まないザグンルグならばきっと分かると思いこの席を選ぶ。
オープンテラスが見えるそこは丁度日除けにもいい。
向こうに庭園でもあるのかと言いたくなるような植物や木々が並ぶ広い場所。しかし人が増えるにつれその景色もまた複雑に変わる。
細々と歌うような声が聞こえ日当たりのいいテラスで食事を始めたりお茶を楽しんだり。
そんな優雅な一時。そう。優雅な一時の中でツィフィルは待っていたはずだった。
おい、貴様!とまるで怒っていますと言わんばかりの怒声が目の前から聞こえる。
はて、いったいなんだとツィフェルはゆったりと景色を眺めていた水色の瞳を真っ直ぐに向けた。
そこには四人がけの丸テーブルを二つほど挟んだ向かい側に五人の男女が存在した。なぜか喚いている。
捲し立てる言葉には怒りが滲み出ているがツィフィルには理解ができない。
ツィフェルは無表情を顔に張り付け悟られないよう呆れ返った。
要約すると男四人に囲まれているルリナと言うご令嬢が誹謗中傷を受け、他の令嬢とも距離を置かれ孤立させられた。隔週で悪質な手紙や贈り物が送られてくる。私物の紛失もあり水をかけられた。ドレスが切り裂かれたなど。
極めつけはアダクロト公爵の従者に強姦されそうになった、だ。
いつの、なんの話かツィフェルにはわからない。がもし強姦されそうになったのが本当ならば殿方に怯え警戒するのが道理ではないだろうか。
ツィフィルは理解できないとため息をはく。
俺が匿ったがどうのこうのと言っているがそんな事より犯人側としての身元が知られてしまっている公爵の方が気になった。醜聞である。
真実なら、すぐにどんな手を使ってでも握りつぶすか戦うか亡命するかだろう。
ツィフェルなら打撃を小さくするためその従者を切り捨てて噂を握りつぶすと思案する。
回りの生徒たちもひそひそと声を潜ませてツィフェルを睨み始めた。
少なくともアダクロト公爵家の事ならツィフェルでも知っている。
綺麗好きで有名な大国を持つ王と宰相は有名だ。隣国に住まうツィフェルでさえもそれは知り得る事。
国の内情まで詳しく知らなくても、地位が高い貴族ならば隣国にいても調べられる対象であるためわかる。
ましてやアダクロト公爵家となればツィフィルにも面識があった。
第二王子の婚約者を紹介するアダクロト公爵と婚約者であるその娘コルフィナとツィフィルは面識があるのだ。
今ではコルフィナとはしっかりと仲良くなりよく王妃を含めお茶をしている。
限られる中でツィフィルはアダクロト家をそれなりに見極めており、出会った二人は共に尽くすタイプだと知った。
宰相を勤めるその働きはすべて王のためであり綺麗好きは言わずとも分かるだろう。
こんな茶番劇を始める輩に暴かれるくらいならとっとと暗殺や隠密を専門とする陰を使い証拠を消す方を選ぶとツィフェルは推測する。
つまり従者が一人で勝手に動いたと言うことに繋がるのだが。まあ、これが本当だとしても公爵を潰すにはあまりにも弱すぎる。
意図が読めぬまま彼らの話はまだ続くようだ。
彼らに囲まれるように赤茶色の緩やかな巻き毛を腰まで流し怯え潤んだ青の瞳でツィフェルを弱々しく見る可愛らしい少女は男にすがった。彼女がルリナ嬢だ。
背の低いその少女を囲む長身の男たちが四人。怒声を飛ばし続けているのは金髪に緑の瞳をもつ青年。しっかりとその手は少女の腰を支えている。
どこかで見た事のある白銀の髪と睨み付ける青の瞳の青年は今にもツィフェルを掴みあげるため駆け出す勢いだ。
怒りで逆立ったような栗毛の髪の青年も、今にも腰の帯剣で斬りかかろうと柄を握り焦げ茶の瞳で睨み付ける。
水色の髪を後頭部に一纏めにし、一歩後ろに控える青年の拳は音でも出せそうなほど強く握りしめ……やはりツィフェルを睨み付ける金色の瞳。
はっきり言ってツィフェルにとっては見たこともない青年たちだ。みんな立ち姿などが凛としていて顔立ちも麗しい。
ツィフェルにはこの五人がいかに麗しくても記憶にはなかった。ここまで顔が整っていれば覚えやすそうな気もするが、頭をフル回転させても記憶に引っ掛からない。
せいぜいゾウール国内の……身なりからして上流貴族だろうとしか分からない。
だが一つだけ分かったことがあった。
相手は『アダクロト公爵家の従者に強姦されそうになった』などと言っているのだ。ツィフェルの身元も育ちもしっかりとボムジクス帝国なのでこれはあり得ない。
ツィフェルが見覚えがなくても仕方がない、と言うことだ。
そしてはっきり分かったことは最初から間違いなくこの五人は人違いをしている。
先ほどついに啖呵をきって大々的に宣言した婚約破棄に、ツィフェルに向かって名前を呼び捨て言葉を締め括ったのだ。
その名は将来ツィフェルの義姉になる予定のゾウール大国アダクロト公爵令嬢、コルフィナ。
ツィフェル・ロン・ボムジクスとはまったく別人の名前を叫んだ。
まあ、間違うのも少しだけ無理もない気もするとツィフェルは将来の義姉を思い浮かべる。
実はツィフェルとコルフィナは背格好が似ている。とくに後ろ姿は遠目から見たら判断が付きにくいらしい。
背はツィフェルの方が少し低く、少し高めのヒールを履けばほぼ一緒までに。
髪はツィフェルが白金でコルフィナが白銀。二人とも色素が薄いのでよく見ればツィフェルの髪に金が見える。長さはツィフェルが腰まで。コルフィナが腰より少し上だ。
瞳は青と水色。これまた似ている。ただ違うのはツィフェルがつり目美人。コルフィナは少したれ目で清楚感が表れる美人だ。
性格だってコルフィナは頑張り屋で上を目指すタイプ。どんなに辛くても上弱音を吐かず気丈にふるまい我慢する人。
ツィフェルは自分でも分かっている。吟味してから必要な事柄だけを絞ってまとめようやく動き出すタイプ。つまり面倒臭がり。
二人が似ているのはあくまで外見だけの話。
「いい加減、罪を認めたらどうだ!!」
「そんな事を」
「ルリナに謝ればいいだけだろう!それすらも出来ないのかっ!」
「誰にでも分け隔てず優しいルリナに嫉妬とは醜いですよ」
「さっきから黙っているばかりだけど姉さんはもう公爵家の人間じゃないんだからさっさと罪を認めなよ」
これである。短い一言を紡げればいいほどしか喋らせてくれないのに何が謝罪だろうか。
彼らの主張はループして語られた。ルリナが嫌がらせを受けたのは貴様のせいだ。
すべての罪は貴様(コルフィナ?)にあり、そんな罪人を婚約者として傍に置くならば婚約を破棄する事と国外追放する事を宣言する!と金髪の男は叫ぶ。これは二度目だ。
今この場でルリナに謝罪すれば減刑にしてやるから頭を下げろと言う。
何度も同じことを言わなくてもわかる。言いたいことがいっぱいあるのだが、何も言わせてくれないのでどうしようもない。
矢継ぎ早しに語る言葉は止まる事を知らないようでストレス発散でもしているのではないかと疑う。
しかも彼らが喋れば喋るほど食堂で昼食を取りに来た生徒が集い輪になり見世物と化す。
こんなに人が集まるところを見るのは我ら皇族が健在ですよと民衆にお披露目をするあの時ぐらいだ。
違う意味の見世物にされさすがのツィフェルも我慢の限界が来た。
ゆっくりと膝上にあった扇を手に立ち上がり前を見据える。この扇こそが今できる唯一の身元証明。この扇はツィフェルへの侮辱を晒しだす雰囲気を一掃するために使おう。
テーブルに弾けた音が響いた。
さあ。どうするのか答えはすでに決まっている。
「そこの」
「なんだ!」
「そこの銀髪のお前。ちょっと近くに来なさい」
「お前に指図され」
バシン!
「いいから来なさい。お前はわたくしを『姉さん』と呼ぶけれど私に弟などおりませんのよ。声も違うでしょう?とんだ濡れ衣だわ」
扇を叩きつけた響く音のおかげか。つり目が凄みをまして睨み付けると銀髪の男、ラフトルフは唇を噛み締めて怯んだ。
そう言えば――と一つ思い出す。確かコルフィナは第二王子妃になるための大詰めで五年ほど前から実家を出て離宮で過ごしていると聞いている。
学院で見かけると思うのだが五年も空けば姉の顔は忘れるものだろうか悩みどころだ。
一瞬の怯みで主導権はツィフェルに変わった。早く来いと告げるがラフトルフに動く気配はない。
すかさず金髪の男を始めに残る二人も罵声を飛ばすが再び叩かれた扇によって遮られる。
あれだけ遮られたのだ。ここぞとばかりに今度はツィフェルが制して場を支配した。
「貴殿方は分かっていませんわね。わたくしが誰だか分からずに糾弾し濡れ衣を着せる。この国は公衆の面前で一人の令嬢によってたかって罪を擦り付けるのが一般的ですの?随分と姑息で愚かですこと」
「貴様!」
扇を叩きつけて黙らせる。壊れてしまいそうだがあえてツィフェルはやり続けた。
沈黙が訪れた時には扇の少し幅の広い親骨に描かれるそれを見えるように口元を隠す。ボムジクス帝国、皇家の家紋を見せつけるように。
それでも気づかない彼らはツィフェルから見てバカにしか見えなかった。
帝国の長い歴史を否定されるようでさらに怒りが募る。
黙っていたのが悪いのか。それこそ気づかないバカなあちらが悪いのではないかと憤る。
「思い出しましたわ。アダクロト公爵コルフィナお義姉様の婚約者と言えばお馬鹿で有名な第二王子でしたわね?貴方でしたの?」
「貴様!俺を愚弄するとは」
また扇を叩きつける。こうすると勢いが削がれるのか、第二王子だろう金髪の男クロノディス・テン・ゾウールが顔を歪めて黙った。
「貴方が、見世物のように人目を憚らず第二王子の権限で王命を一方的に破りあまつさえ冤罪のコルフィナお義姉様を裁きわたくしに罪を擦り付けるのならば、わたくしも自身が持つ権限を使わせてもらいますわ。わたくし、ボムジクス帝国第三皇女としてツィフェル・ロン・ボムジクスは人違いにも関わらず一方的な断罪により罵られ不快な思いをさせられました。これをゾウール大国の陛下に進言し貴殿方五人に適切な処置を仰がさせていただきますわ」
「なっ!?そんなもの嘘に決まって――」
「わたくしの持つ扇は帝国で古くから伝わる匠の扇。皇族のみが持つことを許されるものでしてよ。ゾウールの大国、第二王子でもある貴方が帝国の家紋さえもわからない事ではないでしょう?」
見えないのか、とでも言うように口元を隠して扇を見やすくする。千年樹の木に繊細な彫刻をし堅く加工したそれはテーブルを叩いても傷がない。
この親骨に掘られた家紋、ボムジクス帝国皇族の家紋は国の象徴であるフロア鳥と皇族が得意とする獲物の斧が描かれている。鳥は羽の一つ一つを描きある部分には誕生花がそれぞれに描かれた一点物なので偽装は難しい。
五人の狼狽える姿が実に滑稽に見える。なにかこそこそと言い合ったと思ったらルリナが前に出てきた。
「嘘だわ!私がクロス様をお慕いしてしまったから、そのように脅すだなんてっ!信じられないっ」
わー、と泣き始める。言いたいことを言った。そんな感じだろうか。わざわざ金髪の男の胸にすがるように泣き出した。
ああ、やはりあの金髪はお馬鹿で噂の第二王子なのか……すがりつくルリナを抱き寄せたと思えば息を返したようにツィフェルを睨み返す。
ツィフェルはすでに頭が痛いと匙を投げたかった。
「貴様っ!」
もう一度強く叩きつければ肩を跳ねさせ喉をつまらせる。これが第二王子……確か剣の腕だけがすごく良かったと聞いていたのだが。
コルフィナが悩むのも無理もないと未来の義姉を思った。
このままゾウール国王に進言してうやむやにされコルフィナだけが傷つくのはツィフェルも嫌である。
まさかツィフェルを陥れるために?とも思ったが人違いをしている時点でそれはなくこれは呆れ返るほど浅はかな事件だ。
とりあえず――証言や諸々を掴むため言葉を投げた。
(ザグ様はいつになったら来てくださるのかしら……)
「先ほど、そこのご令嬢に誹謗中傷を受け、他の令嬢とも距離を置かれ孤立させられた。隔週で悪質な手紙や贈り物が送られてくる。私物の紛失もあり水をかけられた。ドレスが切り裂かれたなど言いましたわね?証拠はございますの?」
「ルリナが言ったのだからそれで十分だろう!」
「不十分ですわ。相手を陥れるのでしたら逃げられないように外堀を囲うのが常識でしてよ。物的な証拠もなく断罪されても弱すぎて捕まえられませんわ」
まさか――そこのご令嬢だけの証言で何も調べていないなどと、言いませんわよね?
どうなのと睨みを利かせればつり目のツィフェルの眼光がより鋭利になる。
これだけで第二王子と言う肩書きを持つクロノディスがたじろいでしまうのだから彼は咎める者がおらず自由で甘やかされ続けていたのかもしれない。
しかし彼らはツィフェルの眼力に逆らうように声をあげる。
水色の髪の男セディールが筆頭に誹謗中傷の言葉と孤立させる手口。贈り物の中身がどういう物で紛失した私物がどんなに大切な物だったのか。
……どれも誰かを特定できる概要のないもので回りも困惑せざる終えない内容だ。
さすがのツィフェルも気を緩めれば頭を抱えたくなるほど酷かった。
「『婚約者に手を出すな』とは誹謗でも中傷でもありませんわ。親が決めたお相手に手を出す方が悪いに決まっています。それを咎めて何が悪いのです。将来夫となる方が堂々と浮気されて黙っているわけがないでしょう。当たり前の事ではありませんか」
「こちらは言い過ぎだと言っているのだ」
「言い過ぎも何も公爵の貴族として当然の働きではありませんか。わたくし、コルフィナお義姉様から聞きましてよ?なんでも婚約者である第二王子は人目も憚らず婚約者でもない娘と白昼堂々、口づけを交わす仲だとか。しかもその娘は複数の殿方とも口づけを交わし侍らしているとも」
「貴様!それは俺たちの事を言っているのかっ!」
今にも襲ってくる勢いなので再びテーブルを叩く。音で怖じ気づいたのかぐっ、と躊躇う姿は本当に滑稽だ。
しかも逆立った栗毛のメビアスが墓穴まで掘ってくれるのだから何も言うまい。第二王子とは言ったが複数の殿方は誰だとは言っていないのに。
まあ――彼ら五人の後ろで見物をしている野次馬がうんざりと肩をすくめる者や大きく頷く者までいるのだ。
視線が誰を指しているのか明白である。
「それと酷い贈り物もコルフィナお義姉様と断定できる要素が何一つございませんわね。女子寮で起こったそれは誰にでもできますわ。誰か確かに見たと言う方はおりませんの?彼女の私物だって奪って何になるのです。大粒のサファイアが付いていたと言いますが公爵のコルフィナお義姉様がそれを奪う理由がありませんわ。万一にコルフィナお義姉様が嫉妬に駆られ奪ったと言うのもあり得ませんでしてよ。コルフィナお義姉様は幼少の頃から第二王子妃として厳しい教育を受けていらっしゃるのです。それはもう厳しくご教授されたと聞き及んでおりますの。誰よりも淑女として貴族としての誇りを持っておられるコルフィナお義姉様がそんな道を外す事を致しませんわ」
お茶会の時も、夜会の時もまず自国の両陛下を称え来賓する貴族を第二王子の婚約者としてたった一人の力で満足にもてなす手腕はツィフェルには真似できない所作だ。
これもどれもお馬鹿で執務も厚遇もままならない第二王子を支えるために身に付けたもの。
コルフィナが嫉妬して間違えるなどツィフェルには考えられない事だった。
なぜならコルフィナの中に嫉妬するほどの愛情はない。
何も言えず悔しそうに唸るメビアスをそのまま黙らせ、今度はコルフィナの弟であるラフトルフがツィフェルに食い下がる。
水をかけられた事、ドレスが切り裂かれた事。被害にあったルリナは涙を飲み続けていたが様子がおかしい彼女から話を聞けばコルフィナが犯人である事がわかったそうだ。
一人の時を狙って大量の水をかけられる事数回。ドレスは胸元を中心に全体を刃物で細かく切り裂かれた物が三着。
なぜかすべてコルフィナのせいになっていた。
すべて誰の目にも止まっていない事後の事件だ。証拠も残っておらずただルリナの言葉だけでこいつだと決めつける。それだけでなぜ糾弾できるのだろうか。むしろ本人の自作自演もあり得るだろうに。
いつ、どこで、どのような被害にあったのか教えてほしい。そう反論すると調べていなかったのかラフトルフは論破できず結局は証拠不十分で終わった。
ふとツィフェルは思う。
この五人はどうしてコルフィナを追い詰めたいのだろうか……?さっぱり分からない。
「では――ルリナがアダクロト公爵の従者に強姦されそうになったと言うのはどう言い訳をするつもりだ。襲われそうになったルリナも、他に二人の証人がいる」
ツィフィルが止める間もなくクロノディスは自信満々にすっと右手をあげ彼の二人が呼び出された。
粛々と野次馬の輪から出てきたのは二人の令嬢だ。威厳たっぷりの赤い髪と紫の瞳を持つ貴族の令嬢と茶色の髪に緑の瞳を持つ――大変大人しいドレスを着る女の子。
どうもちぐはぐな二人にツィフェルは首を傾げた。
「私、見ました!ルリナと一緒にいたので分かります!二人で女子寮に戻ろうとした薄暗い夕暮れ時にアダクロトの従者がルリナにナイフを突きつけて脅し胸に手をかけてきたのですっ」
「私は女性の悲鳴を聞き付け駆けつけました。失敗に気づき逃げようとするその後ろ姿はまさしくアダクロト公爵家の従者でした」
「この証言によりすでに従者は捕らえてある。未だ知らないと嘘を吐いているがこれは言い逃れできないぞ、コルフィナ」
とっとと認めろ。五人からさらに二人を含め十四の目が突き刺さる。コルフィナではないのだが彼らの中では決定事項なのか。
名前を宣言しているのになぜ間違えられたまま話が進んでいるのかがわからない。まさか虚言と思われているのかとツィフィルは首を捻るばかりだ。
しかし野次馬からは困惑の色がよく見える。彼らはツィフェルがコルフィナでないと言うのにそのまま話が進められるし、背を向けている彼ら七人の後ろには野次馬と混じって件の当事者と婚約者がいる。
ツィフェルから見える婚約者は綺麗に微笑んで頷いてくれた。
その隣にいる渦中であるはずの人も首を小さくふり真っ直ぐとツィフェルを見つめ返す。
「もう一度言いますが、わたくしはコルフィナお義姉様ではありませんわ」
「ふざけた事を!捏造もいいところだ。まず帝国の皇女がここにいるわけないだろう?」
――第二王子である彼がそう言った。ならばもういいだろう。ツィフィルが留学することはすでにゾウールに再三と申し入れしている。
「先ほどから聞いていましたけど、そのルリナと言う貴方と証言に前へでた貴方は平民ですわよね?どうしてアダクロト公爵家の従者だとはっきり断言できるのかしら」
「まだ言うか!お前が常に従者を傍に置いたからだろう!!」
「貴方、本当に第二王子ですの?従者を常に傍にいさせられるのはこの国の王子のみでしてよ。コルフィナお義姉様の傍に従者がいるところを見まして?学院内で従者と侍女が行動できる範囲は学院の裏道と主の部屋のみと伺っております。平民が公爵令嬢の従者と顔を会わせると言う事は招かない限りまずありませんわ。自ら下働きの裏方に出向き遭遇したとしても言葉を交わすことは主とその親族を除いて禁じられている事のはずではありませんか。教えられぬ限りわかりませんわ」
「違う!彼がっ……彼が私を好きって言ってくれたから……」
「お会いしていましたの?まあ。とんだ関係でございますわね。そこの五人を侍らしさらに従者まで手なずけただなんて」
「言わせておけばルリナに酷いことばかり!お前の口はそれしか言えないのか!!」
「仮にもし本当にアダクロト公爵の従者が女性を襲ったと言うならこれは公爵家の問題でもありますわ。コルフィナお義姉様の関与について徹底的に洗うのは第二王子自らではなく国を通して監査員がする決まりでしょう。なぜ監査員の調査結果をおっしゃらないのです?なぜ監査員のいないこの学院の食堂で一方的な断罪が行われているのかしら?それに第二王子の権限で証拠を突きつけたとしても貴方にその権限はありませんわ」
「俺は第二王子だぞ!ルリナを虐めるお前に断罪の権限が」
言わせない。とでも言うように前より強く力の限り扇を打ち付ける。
隠していない素顔は忌々しいとでも言うように。つり上がった目はまさに相手を射殺すように睨み凄ませた。
クロノデイス以外の六人も後ずさったような気がしたがツィフェルは構うものかと捲し立てる。
ツィフェルに向かって姉さんと呼んだ青年は青ざめながら何かを悟ったようだ。小声で違うと聞こえるがもう訂正の意味はない。
「もういいですわ。コルフィナお義姉様が今までどれだけお馬鹿な第二王子の尻拭いをしてきたのか知りもしないでよく言えますわね。令嬢が従者を引き連れる意味を理解していないようでわたくし、とても不愉快ですわ!貴方は今までコルフィナお義姉様の何を見て、何を聞いていましたの!?普通に考えて令嬢に従者が傍にいると言うことは親が決めた婚約者がいるという意味ですわ!それは恋を知らない令嬢が他の殿方を好かぬように見張らせると言う意味でもあり少しでも婚約者を知ろうとする殿方の事情、先鋒が裏切られないよう間を繕う楔でしてよ!上流貴族や王族は特に従者を付けさせますわね!」
怒り任せにツィフェルはついに声を張り上げた。貴族の令嬢はあくまで淑女として育てられ本性をそう易々と見せるものではない。のだが。
怒りが心頭し頬を赤く染めたツィフェルはすでに我慢の限界である。愛しい二人を目の前に振りきれてしまっていた。
コルフィナがこのように声を張り上げて怒った事はないだろう。ようやくしてか――今目の前にいるツィフェルがコルフィナではない事が知られたようだ。
どれに衝撃を受けたのかわからない五人はなんとか踏み止まっているようでツィフェルを見据えた。
その中でツィフェルがなぜ従者の意味を叫んだのかを理解した二人――ラフトルフとセディールは息を飲んで目を反らす。
クロノディスの腕の中にいるルリナが「怖いっ」と泣いても、ようやく気づいた二人は距離を置くように移動し絶望した顔でツィフィルを見る。
クロノディスとメビアスはルリナを慰めるのに夢中らしい。
怒りを爆発させたツィフェルは再び扇で口元を隠して囁いた。まだ分からないのか、と。
「――ついでだから教えて差し上げますが、令嬢についた従者が罪を犯したとなれば令嬢はもちろん加害者と疑われますが――従者を送った家はすぐに罪を問われますわ。つまり、第二王子である貴方も罪人ですの。従者はあくまで送り主が正当の主でありますから……仕事を放り女を追いかけた従者を送った家にも当然ながら非がございますわね」
「なっ!?」
「それと言いますけど、貴方が勝手に従者を罪人として吊り上げ捕らえていますが貴方の反応を見る限りその従者は預かり知らぬ事なのでしょうね。書類はどうなっているのかは存じ上げませんが、もし貴方ではなくお家から送くられた話でしたら――貴方の場合は王家が送った従者を勝手に縛り上げた事になりますわね。つまり陛下のご意志を無下にした事により反逆として問われる事は間違いありませんわ。さらについでに教えますが貴方の婚約は王命と聞いていますから、逆らった第二王子の貴方は今後どうなるのかしら?」
言い終えればようやく事の大きさを理解したのか――ルリナの肩と腰を抱いていた手はするりと力を無くし、呆然と立ち尽くす。
それは即ち従者の事はなにも知らなかった。己の過ちに今気づいたと言うことだ。
まだ意味が分かっていないルリナとメビアスはどうしたと言わんばかりにクロノディスを叱責し叫んでいる。
特にルリナは生気を失いかけているクロノディスに愛しているから負けないで。自分の事が好きならここで諦めてはだめだと奮い立たせていた。
メビアスも負けじとクロノディスを奮い立たせようと声をかける。
ルリナをクロノディスに任せる代わりに自分の婚約破棄を手伝わせる約束はどうするのだと言い募って……
そんな中、ツィフェルは真っ正面に見える愛しい婚約者のザグンルグと大好きな義姉のコルフィナに思わず顔を綻ばせ名を呼ぶ。
ゆっくりと歩みよりまずコルフィナを抱き締め次にザグンルグを抱き締めればそのままその腕の中に留まった。
未だ困惑する野次馬と三人を呆然と見つめる七人の中で最初に声を出したのはラフトルフ。本当の姉を目の前に、ついに膝から崩れ落ちた。
「兄上。この騒ぎの落とし前はここできっちりと終わらせましょう」
静かに響くザグンルグの声に反発するのは今だ理解できていないメビアスとルリナだ。
ザグンルグがさっと騎士に命じ七人を取り押さえ抵抗する二人に構うものかと告げた。
「兄上。ルリナに対する誹謗中傷、孤立、悪質な手紙と贈り物、私物の紛失や被害とアダクロト公爵令嬢と従者を陛下と学院長の許可の下で王家直属の最高幹部を揃えた監査員で調べあげました」
「最高、幹部だと……?各支部に配属しているんだ。集まるわけがない」
「陛下が招集をかけましたよ。綺麗にしろと命じられました。調査結果はアダクロト公爵令嬢、ともに従者は白。ルリナには黒と言う判決です。それこそすべて彼女が作り上げた捏造でした」
「嘘よ!私はコルフィナ様から酷い事をされたし言われたわ!水をかけられたしクロス様がくれたドレスだって切り裂かれているもの!」
「わたくしは貴族として、人の婚約者に手を出さぬよう告げただけです。それ以外は言っていません。それが酷い事なのでしょうか?」
「酷いじゃない!親が勝手に決めた婚約でクロス様を縛り付けるなんてあんまりだわ!!」
「それが貴族でしてよ」
ツィフェルはたまらず言う。声のトーンが下がっていてまだ怒りを隠せないツィフェルにザグンルグは黙るように合図を送る。
渋々ながらも愛しい人に言われたら黙るしかない。けれどこの怒りは未だ抑えられそうにないためお馬鹿第二王子を睨み付ける。
ほぼ八つ当たりだ。今更ながらせっかくのお昼がこの五人の人違いによって台無しであるのだから。
「誹謗中傷は思い込み。孤立は今までのルリナの行動により誰もが距離を置いたにすぎない。手紙の筆跡が君の友人と同じであると調べもついたし、贈り物は証拠のはずである物がすべて見つからない。こちらでは特定が難しいが調べれてみれば人目があるところでこれ見よがしにあれが送られてきたと言って泣いただけらしいね?兄上たちは物を見たことがあるの?そもそも学院でそんな事が起きたのなら教師に相談するものだと僕は思うね。なぜ教師や第三王子である僕には噂だけで何も連絡が来なかったのだろうか」
「なん、でっ。なんでザグくんがそんな事を言うの!?怖いから言えなかっただけじゃない!!」
「ザグと呼ぶことを許したのは僕のツィーだけだから、呼ばないでくれるかな?それにね、私物の紛失は装飾以外で君が焼却炉に物を投げ込んでいたと言う目撃者が複数いる。日時もしっかりと覚えているしその目撃者がなぜそこにいたのかも証言が取れているんだ。間違いはないよ。被害だってほとんどまず人目がついていない。すべて事後報告。捏造もいいところだね」
それでもルリナは納得がいかないのかザグンルグに食って掛かる。彼も王族なのだが学院だから関係ないと思っているのか……ツィフェルにはわからなかった。
ではアダクロト公爵の従者に襲われたのはどう説明するのだとメビアスが問えばザグンルグは証言として名乗り出た二人を見る。
すでに震え上がっている彼女らはザグンルグたちと目を合わせないようにか俯き、涙を流していた。
目撃は本当なのか――抑揚のない声でザグンルグが問えば最初に崩れたのは貴族の令嬢だった。
私はそう言えと言われたにすぎない、と。
それは誰だとさらに問えば――ルリナの名が飛び出る。
でたらめだとルリナを始めメビアスも叫ぶが他の二人はすでにルリナを庇うことはしなかった。もう虚ろに近い瞳でザグンルグとツィフェル、二人に並ぶコルフィナを見るだけだ。
しまいにはルリナがもう一人の平民に恫喝まがいの発言により二人の中に亀裂が入り仲間割れ。結局はすべてルリナ自作自演がもたらした事だと分かった。
「陛下から勅書を読みあげる。此度、学業を怠り貴族のらしからぬ目に余る行動によりクロノディス・テン・ゾウールはコルフィナ・アダクロト侯爵令嬢との婚約を破棄し、王家より除名。並びにアダクロト公爵子息ラフトルフ、ティンバーレ侯爵子息セディール、ノクトアゼ伯爵子息メビアスも廃嫡とす。平民のルリナは王が決めた婚約者の略奪により賠償を請求。学院は退学とする。――それと、ボムジクス帝国第三皇女ツィフェル姫を謂れのない罪を被せ晒し者にした罪は陛下に報告したのち、追って沙汰を出していただきます。連れていけ」
冷たく王子としての威厳ある声でザグンルグは指示を出した。
項垂れる六人は抵抗もなく連れていかれルリナだけは最後の悪あがきとでも言うように色仕掛けや泣き落とし、果ては手足をばたつかせ最後まで抵抗して見せた。
「王家の者が騒ぎを起こしてすまない。昼を楽しんでくれ」
それは無理なのでは――と言う言葉は出ない。
この国の王子、件の公爵令嬢、隣国の皇女が手本とでも言えるような礼を返したのだから誰が言葉を発せようか。
短い礼法ではあったがその姿は誰もが羨むほど綺麗であった。
三人が消えてからの食堂にいつもの活気が戻るのはそれからしばらくした後だった。
「もう!これからコルフィナお義姉様とのお茶が難しくなってしまったではありませんか!」
「仕方ないでしょう?まさかツィフェル様と間違えてあんな事をするとは考えていなかったわ」
「確かに。兄上ってば本当に剣に関して以外は馬鹿ですよね」
「結局は引っ掻き回しただけで何も特がありませんわ……コルフィナお義姉様があれと結ばれなかったくらいですわね」
カップを置きツィフェルはため息を吐く。
あの断罪からわずか一日で彼らの処遇は決まってしまった。
どうやらあの学院にはツィフェル以外のボムジクスからの留学生がいたらしく、どうやってかその日に帝国の皇帝――ツィフェルの父の耳に入り追放の嘆願書が届いてあっさりと決まってしまったのだ。
主要となっていた男四人は貴族社会からの除名はもちろん追放処分となりボムジクス帝国とゾウール大国に指名手配され足を踏み入れる事を固く禁じた。
追放先はそれぞれ東西南北に頑張れば三日の携帯食と水で凌げたどり着ける村付近へ。
本当は何も持たせない話だったが捕らえられていた従者にはきちんと食事が与えられていたようでゾウール国王が情けとして捕らえられていた日の分の食料を持たせる事にしたのだろう、とザグンルグは言う。
平民の衣装にしたのはその従者がボロボロだったからだ。因みに従者は三十の半ばで奥さんがいる。
幸いにして打撲と擦り傷程度だったため一週間の静養を与えられているのだとか。
証人として出てきた二人は共に家庭難によりお金が必要だったためルリナに協力していたと吐露した。
クロノディスはそれを知らず結構な金額をルリナに貢いでいたと後から判明している。その額は伯爵邸の屋敷を一括払いできるほどだと。
彼女らは自主退学ののちにゾウール国が納める鉱山で下働きだ。今までもらった金額を返済できれば解放される手はずである。
ルリナはもっとも重い刑だ。第二王子をたぶらかし金を奪い婚約者の略奪。さらにはゾウールとボムジクスの国内情報を他国に売ろうとしていた事がわかり――
ゾウール国の火山付近に存在する修道院へ送られた。そこはとにかく熱くたまに溶岩が噴き出し灰がいつも舞っているのだとか。
とにかく灰まみれのそこはどんなに綺麗にしてもすぐに汚れてしまうため延々と掃除をさせられる修道院、らしい。
ツィフィルは詳しく知らない。ただあそこは常に火山活動が行われており人が住める場所ではないとわかる。
溶岩も灰も有害である。そんなところに修道院があるのか不思議だ。強力な魔法使いが結界を常に張り続けなければ滞在は叶わないだろう。
賠償の話もなくなった。もしかして――火山行きは処分と言う意味なのでは?
真意を問うがザグンルグが「掃除って大変だけど綺麗になるから素晴らしいよね」と笑うのだ。
それは灰を指しているのか、それとも人を指しているのか……ツィフェルもコルフィナもあえて追求はしない。
「ああ……なぜこんな事が起こったのかしら。でもあの第二王子に嫁がれなくてわたくしは嬉しいですけど……コルフィナお義姉様が公爵の跡取りになられましたら会う機会がほっとんどありませんわ……」
「僕がいるのにツィーはコルフィナ嬢が大好きだね」
「ふふふ。昔、わたくしも聞きましたわ。なんでもわたくしの姿は帝国の皇族方々よりも一番似ているそうですわ」
「ザグンルグは見たことがありますでしょう?わたくしは母に似て白金は他におりませんの。コルフィナお義姉様を見ていますと似ているのは誰が見てもわかるでしょう?まるで双子のようだと。わたくしは本当の姉のようで嬉しくて、姉様たちよりコルフィナお義姉様はとてもお優しく博識で憧れですわ!」
「ちょっと羨ましいかな。そんなツィーにちょっとした教えてあげようか」
「まあ、なんですの?」
「ふふ。きっと喜ぶのではないのかしら?」
あのね――…