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世界にひとつ、私だけの花

作者:福本銀太郎
中野駅北口サンモール商店街の中を、腕を引っ張られ強制連行されるが如く歩かされている男がいた。田村秀雄だ。寝癖も無精髭もそのままで、酒臭い息を吐いている。このまま連れて行かれるのはまずい。と、田村は動揺していた。
 田村を連行しているのは、大塚昭三。田村が住んでいるアパートの大家だ。10カ月分も溜まっている家賃を回収するべく、連帯保証人である田村の娘・かすみの職場へと向かっていた。
 売れない画家だった田村。酒に溺れて妻に家を追い出され、娘にさんざん心配をかけた挙句、今はアパートで一人暮らしをしていた。それでもまた、酒に手を出し、仕事を辞め、家賃が払えず大塚に追い込まれている。
「娘には言わないでください」と懇願する田村。
「知ったこっちゃないよ」と冷たくあしらう大塚。
このまま家賃の催促をしに娘に会いに行くと、また酒に手を出したことがバレてしまう。酒臭い息のままでは田村は娘に合わせる顔がない。これ以上心配かけたくない世界一の娘だ。
サンモール商店街からブロードウェイを抜けて、早稲田通りに出る道程。田村は酒が抜けるまでの時間稼ぎをするため、手練手管を駆使して大塚の足を止めようとするのだった
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